アレース
アレスもしくはアーレース(テンプレート:Lang-grc-short)は、ギリシア神話に登場する神で、戦を司る[1]。ゼウスとヘーラーの子とされる[1]。オリュンポス十二神の一柱[1]。アイオリス方言ではアレウスもしくはアーレウス(Ἄρευς, Areus)とも。日本語では長母音を省略してアレスとも呼ばれる[1]。聖獣はオオカミ、イノシシで聖鳥は啄木鳥、雄鶏。聖樹はトネリコ。
本来は戦闘時の狂乱を神格化したもので、恩恵をもたらす神というより荒ぶる神として畏怖された[2]。「城壁の破壊者」の二つ名がある。戦争における栄誉や計略を表すアテーナーに対して、戦場での狂乱と破壊の側面を表す[2]。その性格も粗野で残忍、かつ不誠実であった。
神話
人間であるディオメーデースに敗北したり(アテーナーがディオメーデースの支援をしていたが)、巨人の兄弟アローアダイ(オートスとエピアルテース)により青銅の壺の中に13か月間幽閉されるなど、神話ではいいエピソードがない[1]。これはアレースの好戦的な神格がギリシア人にとって不評だったこと、主にギリシアにとって蛮地であるトラーキアで崇拝されていたことによる[2]。
基本的に神々の中では嫌われているが、愛人のアプロディーテーや従者と子供達、そして彼が引き起こした戦争が冥界の住人を増やすことから、冥界の王・ハーデースとは交際がある。
戦場では普段は徒歩だが、場合によっては黄金の額帯を付けた足の速い4頭の神馬に戦車を引かせ、青銅の鎧を着込んで両手に巨大な槍を持ち、戦場を駆け巡った[2]。
男神の中では1、2を争う程の美貌を持っている。身長も高く、人間の前には大抵人間サイズの大きさで現れるが、真の姿だと、その身長は200メートルを優に超える。体重は不明である。
ポセイドーンの息子の1人・ハリロティオースがアレースの娘アルキッペーを犯し、激怒したアレースはハリロティオースを撲殺した[1]。ポセイドーンは激怒し、アレースを神々の裁判にかけることを主張し、それを認められた[1]。こうしてアレースの丘で世界初の裁判が開かれることになった[1]。アレースは情状酌量の余地があるとして無罪となり、これ以降重大事件の裁判がアレースの丘で行われるようになった[2]。
係累
ヘーパイストスの妻であるアプロディーテーを恋人とし、ポボス(フォボス、敗走)とデイモス(恐慌)の兄弟、娘ハルモニアー(調和)の父となった[1]。エロースをアレースとアプロディーテーの子に加える説もあるが、これは元々関係のなかったアプロディーテーとエロースを関連付けるために作られたものである[1]。他にも、アマゾーンをはじめとする多くの蛮族の父である[1]。
また、エリスやエニューオーも彼の従者であり一般的には妹とされているが[1]、姉や妻とされることも多く、また特にエニューオーは母や娘とされていることもある。
命名
ローマ神話のマールスに相当し[1]、また火星と同一視される。このため火星と同様に赤く輝く天体であるさそり座のα星はアンタレス(アンチ・アレス、アレスに対抗する者の意)と呼ばれている。火星の衛星フォボスとダイモスはアレースの子の名から採られている。