ビデオCD
ビデオCD(VCD)は、CD-ROMに動画や音声などを記録し、対応機器で再生するための規格。
概要
ビデオCDの映像画質は「VHS(ノーマルVHS)の3倍モードと同程度」とされるが、VHSのアナログ形式と異なりデジタル形式で格納されているため、画像の劣化がVHSより目立たない。特に、ジッターと呼ばれる映像の横揺れはなく、ノイズや色むらなども少ない。これはDVDと同様、映像記録時に意図的に目立たない部分の情報を割愛して圧縮しているためである。ただし、ビットレートが低いため、動きの激しい映像では、ブロックノイズが多発する場合もある。
CDの物理規格を映像記録に転用したものであるため、比較的安価に製造できる。そのため、DVDが登場する以前から、レーザーディスクより安くVHSより高品質なメディアとして、香港やフィリピン、台湾などのアジア地域で広く普及した。
DVDが普及した2009年現在でも需要があり、正規ルートで供給されるビデオCDの映像作品が存在する一方、海賊版も多い[1]。DVDと違い、ビデオCDにはコピーガードおよびリージョンコードが導入されていないことも海賊版が多い一因となっている。日本の作品での例として、アニメやドラマなどの全話を収録したLD-BOXが数万円で販売されていた時期に、香港や台湾において同じく日本のアニメやドラマを全話収録したビデオCDが数千円程度で販売されており、こういった商品はネットオークションなどを通じて、日本にも出回っていた。香港や台湾への日本人旅行者が、ビデオCDを購入して持ち帰ることもある。 旧来の一般的なDVDプレーヤーには、ビデオCDの再生に対応しているものも多かったが、2000年代半ば以降は記録型DVDや、MPEG-4 AVCフォーマットの普及に伴い対応機器の数は減っている。2009年現在で広く普及しているDVDレコーダーやBDレコーダーなど、録画機能付き機器でその傾向にある。
規格仕様
ビデオCDに収録される形式は標準化されている。映像の解像度はNTSCでは352×240ピクセル、PALでは352×288ピクセルとなっており、DVD(480i、576i)と比較した場合、約4分の1の画素数である。再生の際に少ない画素を演算処理で補完する事により、テレビ画面ではNTSCの場合では720×480ピクセル、PALでは720×576ピクセルで出力される。また、SECAMでも画素が補完される。映像の圧縮形式はMPEG-1で、1秒当たりのビットレートは1150kbit(キロビット)、オーディオの圧縮形式はMPEG-1 Layer 2で、1秒当たり224kbitが割り当てられている。
ビデオCDではシステムストリームがCD-ROMフォーマットに準拠して記録されるが、セクタ長が2048byteであるモード1ではなく、誤り訂正能力が落ちる反面ビットレートや容量を大きく確保できるモード2フォーム1(CD-ROM XAフォーマット)が採用されており、ビットレートはオーディオCD(1411.2 kbps)とほぼ等しい。そのため、容量が650MB(メガバイト)のコンパクトディスクには、オーディオCDと基準時間と同じ長さである74分の映像が収録できる計算となる。
Version 2.0では簡易メニュー機能(プレイバックコントロール)を持たせ、高精細な静止画の再生もできるようになっている。
同様の形式
本規格を改良し、映像をMPEG-2に対応させ、より圧縮率を高めた「スーパービデオCD(SVCD)」も存在するほか、「KVCD」と呼ばれるものも存在する。これらは通常のビデオCDと比較してビットレートがかなり高く(最大2.6Mbps)、一枚あたりの記録時間はそれらの規格より短くなる(30分程度)。NTSC・PALいずれにも対応している。これらの形式は正式に標準化はされていないが、既存技術の組み合わせであるため、ソフトウェアの設定次第でパソコンのCD-ROMドライブで再生できる。また、いくつかのDVDプレーヤーでも再生ができる場合がある。
そのほかにも中華人民共和国だけで普及している形式として、DVCDやダブルビデオCDも存在する。