やまじ風
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やまじ風(やまじかぜ)とは、愛媛県東部の四国中央市一帯や新居浜市、西条市でみられる南よりの強風のこと。春や秋に多い。日本三大局地風の一つ。
その原理は、低気圧の中心が日本海を通過する際に、四国山地に南から吹き付けた強風が、石鎚山系と剣山系の間の鞍部になっている法皇山脈に収束し、その北側の急斜面を一気に吹き降りることにより発生する。
特に、台風が日本海を通過する時には最大風速30~40m/sもの猛烈な突風となり、コンクリートの電柱がなぎ倒されたことすらある。1993年6月2日のやまじ風では、男性1人が倒れた電柱の下敷きになって死亡した。
1991年の台風19号のさいには、非公式記録ながら旧伊予三島市の翠波高原で最大瞬間風速73.2m/sもの強烈なやまじ風が観測されている[1]。
これほどまでに強い風が吹くため、この地区、特に旧・土居町から旧・伊予三島市の西部(豊岡地区)にかけての民家は、古くは屋根に重し石を載せ、漆喰で瓦を固めていた。今日ではコンクリート造としているものが多い。
やまじ風が吹くときは、必ずフェーン現象を伴うため、時間帯に関係なく昇温する。天気予報で東予地方の気温予想には新居浜市が用いられるが、やまじ風の際には四国中央市(以前のアメダス観測点は三島、2009年2月13日からは旧川之江市妻鳥町)の気温はこれに5~8℃も上乗せされる。例えば2007年3月24日の最高気温は、新居浜市・西条市・今治市が12℃台だったのに対し、三島では20.5℃を記録している。
なお、この地域では強風で水稲が傷みやすいため、稲を避けてサトイモなどの根菜類の栽培が盛んである。当地のサトイモは、煮崩れしにくいので、いもだき(いもたき)やおでんに適している。
脚注
- ↑ イカロス出版『近・現代日本気象災害史』281頁