12人の優しい日本人
『12人の優しい日本人』(じゅうににんのやさしいにほんじん)は、三谷幸喜が東京サンシャインボーイズのために脚本を書き下ろした舞台劇、およびそれを原作とした1991年制作の日本映画。
概要
映画『十二人の怒れる男』へのオマージュとして、「もし日本にも陪審員制度があったら?」という架空の設定で描かれる法廷劇・密室劇。『十二人の怒れる男』での展開や設定を基にしたパロディが各シーンでみられる。
1990年、シアターサンモールで東京サンシャインボーイズ公演として初演。このときは三谷幸喜も『一橋壮太郎』という芸名で陪審員6号を演じた。再演・再々演を経て、2005年12月 - 2006年1月にかけて四演され、WOWOWで公演の生放送も行なわれた。 また、1991年には中原俊監督・三谷幸喜脚本で映画化された。
ストーリーの大筋は各舞台版・映画版とも共通だが、脚本は他の三谷作品同様『当て書き』(演じる役者に合わせて台本を都度改訂する)が行なわれており、また時代を反映した会話なども盛り込まれているため、各々で違いがみられる。
ストーリー
ある陪審審理のために、素性も考えも裁判への意気込みも全く異なる、12人の一般市民が陪審員として会議室に集められた。
評決は全員一致が原則である中、最初の決で12人全員が『無罪』に挙手。呆気なく審議終了・解散となりかけたところ、陪審員2号が「話し合いがしたいんです」と言って意見を『有罪』へと翻す。いざ話し合いが始まってみると、意見があやふやな人・やる気の乏しい人・他者に流される人・意固地な人・・・。議論するたび、有罪無罪の決をとるたびに各自の考えは二転三転。
こんな状況で、『良くも悪くも日本人らしい12人』がある男性の死をめぐって事件か事故か、有罪か無罪かで激論を交わす。
舞台劇
キャスト
出演者は、初演舞台版(1990年) / 再演版(1991年) / 再々演版(1992年) / 四演版(2005年)、の順。
- 陪審員1号 : 小原雅人 / 小原雅人 / 甲本雅裕 / 浅野和之
- 陪審員2号 : 相島一之 / 相島一之 / 相島一之 / 生瀬勝久
- 陪審員3号 : 阿南健治 / 阿南健治 / 小林隆 / 伊藤正之
- 陪審員4号 : 小林隆 / 小林隆 / 阿南健治 / 筒井道隆
- 陪審員5号 : かんみほこ / 岡崎淑子 / 横田由和 / 石田ゆり子
- 陪審員6号 : 一橋壮太郎 / 一橋壮太郎 / 近藤芳正 / 堀部圭亮
- 陪審員7号 : 梶原善 / 梶原善 / 梶原善 / 温水洋一
- 陪審員8号 : 斉藤清子 / 斉藤清子 / 斉藤清子 / 鈴木砂羽
- 陪審員9号 : 西村雅彦 / 西村雅彦 / 西村雅彦 / 小日向文世
- 陪審員10号 : 宮地雅子 / 宮地雅子 / 宮地雅子 / 堀内敬子
- 陪審員11号 : 野中功 / 野中功 / 野中功 / 江口洋介
- 陪審員12号 : 伊藤俊人 / 伊藤俊人 / 伊藤俊人 / 山寺宏一
- 守衛 : 福島三郎 / 福島三郎 / 小原雅人 / 不登場
- 青年 : 甲本雅裕 / 甲本雅裕 / 不登場 / 不登場
- 裁判長(声のみ) : 山本亘 / 山本亘 / 不登場 / 不登場
上演データ
- 初演
- 1990年7月30日 - 8月3日(シアターサンモール)
- 再演
- 1991年3月21日 - 29日(THEATER/TOPS)
- 再々演
- 1992年9月8日 - 20日(渋谷パルコスペースパート3)
- 四演
- 2005年11月30日 - 12月30日(PARCO劇場)
- 2006年1月6日 - 29日(シアター・ドラマシティ)
映画
登場人物
- 陪審員1号:塩見三省
- 40歳の女子高校体育教師。 本件では陪審員長を務める。4年前にも陪審員の経験がある。
- 陪審員2号:相島一之
- 28歳の精密機械製造会社の社員。裁判自体に疑問を抱く。気は弱いが頑固。 妻と別居している。
- 陪審員3号:上田耕一
- 49歳の喫茶店店主。 真面目な議論や会議が苦手なアル中の中年男。
- 陪審員4号:二瓶鮫一
- 61歳の元信用金庫職員。 被告は無罪という意見を終始一貫して変えなかった唯一の人物。
- 陪審員5号:中村まり子
- 37歳の商事会社庶務係。 気が強いキャリアウーマン。公判の内容も全てメモしているというメモ魔。
- 陪審員6号:大河内浩
- 34歳の医薬品会社セールスマン。早く仕事に戻りたいらしく、審議も上の空である。
- 陪審員7号:梶原善
- 32歳。現在はしがない職人だが、実家は資産家らしい。 べらんめえ口調で気性が激しい。独身。
- 陪審員8号:山下容莉枝
- 29歳の主婦。 被告女性と同世代。マイペースで天然ボケだが場に流されやすく、意見が変わりやすい。
- 陪審員9号:村松克己
- 51歳の開業歯科医。冷静沈着で良識人な印象だが、自信家で偏屈な一面もある。
- 陪審員10号:林美智子
- 50歳のクリーニング店経営者。 気弱だが純真。タバコの煙が苦手。
- 陪審員11号:豊川悦司
- 年齢不詳の役者男。 最初は議論に全く参加しなかったが、中盤で「自分は弁護士」だと言って積極的に参加し始める。
- 陪審員12号:加藤善博
- 30歳の大手スーパー課長補佐。 仕切りたがりで、9号曰く「理性でものを考えるタイプ」。
- 守衛:久保晶
- ピザ屋の配達員:近藤芳正
スタッフ
- 監督:中原俊
- 原作:三谷幸喜
- 脚本:三谷幸喜、東京サンシャインボーイズ
- 製作:岡田裕
- プロデューサー:笹岡幸三郎、垂水保貴
- 撮影:高間賢治
- 編集:冨田功、冨田伸子
- 美術:稲垣尚夫
- 録音:志満順一
- 照明:磯貝幸男
- 音楽:エリザベータ・ステファンスカ
- 助監督:上山勝