パイプライン輸送
パイプライン輸送(パイプラインゆそう)とは、一般に石油や天然ガスなどを恒久的に設置した導管により輸送するものをいう。世界各国で多く利用される。
概説
パイプラインは石油やガスのような可燃性の液体や気体の輸送管である[1]。内陸にある油田と石油輸出ターミナルあるいは製油所などを結んで設けられる[2]。最初のパイプライン事業は1865年にアメリカ合衆国・ペンシルバニア地方の油田地帯に始まる[1]。パイプラインは遠距離の大容量の輸送に適しており経済的である[2]。しかし、パイプラインは初期投資として巨額の建設費用がかかり燃料の輸送費用のかなりの部分を償却費が占めるといわれる[1][2]。また、パイプラインは輸送元と輸送先が固定的でありフレキシビリティが無いといった短所がある[2]。なお、パイプラインは広義には上水道管、下水道管、暖房用熱気送管、郵便物輸送用の空気送管(気送管)などを含む[1]。なお、パイプラインの敷設は野生動物の生息域の分断を招くとの指摘もある。
日本における石油、ガスなどのパイプライン輸送は、土地の所有権が細分化されている上に地価が高いこと、起伏が多い地形や地震などの理由から採算が合わず少なかったが、天然ガスの分野では石油資源開発(JAPEX)が精力的にパイプラインを敷設した。JAPEXの総延長は2012年2月現在、苫小牧市〜小樽市、新潟市〜仙台市、白石〜郡山の間など総延長826kmにも及ぶ。ロシアサハリン州沖で天然ガス田(サハリン1)の開発が進められている。この天然ガスの輸送には、ロシア〜日本間の大規模パイプラインの建設が検討されてきた。しかし、2004年11月に、開発の主体であるエクソンモービル社は中国のエネルギー需要の伸びに目をつけ、日本向けのパイプライン輸送を白紙撤回する方針を固めた。2006年には全量が中国へ輸出されることが決定し、計画は頓挫した。
海外の原油パイプライン
- トランス-アラスカ パイプライン システム - アメリカ合衆国・アラスカ
- ドバ油田パイプライン - チャド~カメルーン間
- ドルジバパイプライン - ロシア連邦・サマーラ~東欧各国
- アドリアパイプライン - オミシェリ(クロアチア)~シサク~ボサンスキ・ブロド(ボスニア・ヘルツェゴビナ)~ノヴィ・サド(セルビア)~パンチェヴォ
- タップライン - サウジアラビア~ヨルダン~シリア~レバノン間。政情不安等により、1983年よりシリア~レバノン間は送油が停止している。
- イラン・トルコパイプライン
- BTCパイプライン - バクー油田~トビリシ~ジェイハン
- アブダビ・フジャイラパイプライン - アラブ首長国連邦
- ミャンマー・中国パイプライン - 建設中
- 東シベリア・太平洋石油パイプライン - ロシア連邦・タイシェト~ナホトカコズミノ港 (中国・大慶へ支線)
事件・事故
- 詳細リストは英語版参照。
パイプラインへの襲撃
- パイプラインの破壊は、一国の経済を左右することとなりかねず、戦争・内乱やテロの標的となりやすい。
- 2006年5月12日 ナイジェリア国営石油公社のパイプラインが爆発。死傷者は推定200人という大惨事となった。爆発の原因は、地元住民がパイプラインに穴を開け、窃盗していた際に何らかの火が引火したものとされている。
- 2010年12月20日、メキシコプエブラ州でペメックスが管理するパイプラインが爆発。27人が死亡、52人が負傷。爆発の原因は、何者かが石油の抜き取りを行なったものと推測されている[4]。
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 靑野寿郎・保柳睦美監修『人文地理事典』 p.404 1951年 古今書院
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 日本エネルギー学会編『エネルギーの事典』朝倉書店 2009年 p.207
- ↑ 青島パイプライン爆発事故、警察当局が9人拘束(読売オンライン2013年11月26日)
- ↑ メキシコで石油パイプラインが爆発、27人死亡。街は火の海に(AFP.BB.NEWS 2010年12月20日)