クリスマス・キャロル (小説)
テンプレート:基礎情報 書籍 テンプレート:Portal 『クリスマス・キャロル』(原題:A Christmas Carol)は、英国の文豪ディケンズの中編小説。1843年12月19日に出版[1]。「クリスマス・ブックス」の第1作
守銭奴のスクルージがクリスマス・イヴに超自然的な体験をし、それがもとで改心する。クリスマス・ストーリーの中では最も有名なもので、広範囲な読者を獲得し、ディケンズを世界的に有名な作家としたことでも記念碑的な中編である。
原作は英国で出版され、原文は英語である。出版社はロンドンのテンプレート:仮リンクで、ハードカバーとペーパーバックの二つの形態で出版され、挿絵画家テンプレート:仮リンクによる彩色挿絵入りである。
物語の概要
作品の主人公は、エベネーザ・スクルージという初老の商人で、冷酷無慈悲、エゴイスト、守銭奴、人間の心の暖かみや愛情などとはまったく無縁の日々を送っている人物である。ロンドンの下町近くにスクルージ&マーレイ商会という事務所を構え、薄給で書記のボブ・クラチットを雇用し、血も涙もない、強欲で、金儲け一筋の商売を続け、隣人からも、取引相手の商人たちからも蛇蝎のごとく嫌われている。7年前の共同経営者であるジェイコブ・マーレイの葬儀においても、彼への布施を渋り、またまぶたの上に置かれた冥銭を持ち去るほどであった。
明日はクリスマスという夜、事務所を閉めたあと自宅に戻ったスクルージは、7年前に亡くなったマーレイ老人の亡霊の訪問を受ける。マーレイの亡霊は、金銭欲や物欲に取り付かれた人間がいかに悲惨な運命となるか、生前の罪に比例して増えた鎖にまみれた自分自身を例としてスクルージに諭し、スクルージが自分以上に悲惨な結末を回避し、新しい人生へと生き方を変えるため、3人の精霊がこれから彼の前に出現すると伝える。
3人の精霊
スクルージを訪ねる3人の精霊は、「過去のクリスマスの霊」、「現在のクリスマスの霊」、そして「未来のクリスマスの霊」である。
過去の精霊は、眩く輝く頭部に蝋燭の火消し蓋のような帽子を持った、幼くも老成した表情をした霊。スクルージが忘れきっていた少年時代に彼を引き戻し、孤独のなかで、しかし夢を持っていた時代を目の当たりに見せる、また青年時代のスクルージの姿も見せ、金銭欲と物欲の塊となる以前のまだ素朴な心を持っていた過去の姿、そしてかつての恋人との出会いからすれ違いによる破局を示す。スクルージは耐え切れなくなり、彼から帽子を奪い無理矢理被せて光景を消した。次に出現するのは現在のクリスマスの精霊。スクルージが見上げる程の長身に冠とローブを纏い燃え盛る松明を持った、クリスマスの御馳走と贈り物に囲まれた霊である。「私には1800人以上兄弟がいるが、会ったことはないか」と豪語する(本作の書かれた年代が1843年のため)。彼は、スクルージをロンドンの様々な場所に導き、貧しいなか、しかし明るい家庭を築いて、ささやかな愛で結ばれたクラチットの家族の情景、伯父を呼べなかったことを惜しみながらも知人達と楽しい夕食会をしているフレッドの姿を見せる。またクラチットの末子ティムが、脚が悪く病がちで、長くは生きられないことを示す。スクルージがそれにうろたえると、彼が寄付を頼みに来た紳士に対して発した「余分な人口が減って丁度いい」「牢屋や救貧院はないのか」等の言葉を自身、またローブの下の「無知」「貧困」の子供達の口から投げかける。
現在の精霊と共に世界中を飛び回って見聞を広めたスクルージは、疲れ切って眠る。そして再度目覚めると、そこには真っ黒な布に身を包み、1本の青白く細い手だけを前に差し出した、不気味な第3の精霊・未来のクリスマスの精霊がスクルージを待っている。
スクルージは、評判の非常に悪い男が死んだという話を聞くが、未来のクリスマスには自分の姿がない。評判の悪い男のシーツに包まれた無惨な死体や、その男の衣服まではぎとる日雇い女。また、盗品専門に買い取りを行う古物商の老人や、その家で、盗んできた品物を売りに老人と交渉する3人の男女の浅ましい様などを見る。ここでスクルージは、その死んだ男が誰なのかを確認することはできなかった。
また、クラチットの末子ティム少年が、両親の希望も空しく世を去ったことを知る。そして草むし荒れ果てた墓場で、見捨てられた墓碑に銘として記されていた自らの名をスクルージは読む。
スクルージは激しい衝撃に襲われる。しかし、クリスマスの始まる夜明けと共に、彼が経験した悪夢のような未来が、まだ変えることができる可能性があることを知る。彼はマーレイと3人の精霊達に感謝と改心の誓いをし、クラチット家に御馳走を贈り、寄付を再会した紳士達に申し出、フレッドの夕食会に出向く。そしてその翌日、クラチットの雇用を見直すとともに彼の家族への援助を決意する。
のちにスクルージは、病気も治ったティムの第二の父とも呼べる程の存在となり、「ロンドンで一番クリスマスの楽しみ方を知っている人」と言われるようになるのだった。
日本語訳
- 森田草平訳『クリスマス・カロル』:1926年、(岩波文庫ほか)
- 村岡花子訳『クリスマス・カロル』:1952年、新潮文庫(ISBN 4102030085)
- こだまともこ訳『クリスマス・キャロル』 :1984年、講談社青い鳥文庫(ISBN 4061471546)
- 吉田新一訳『クリスマス・キャロル』 :1989年、太平社(ISBN 4924330167)
- 脇明子訳『クリスマス・キャロル』 :2001年、岩波少年文庫(ISBN 4001145510)
- 池央耿訳『クリスマス・キャロル』:2006年、光文社古典新訳文庫
- 櫛田理絵訳、WIPジャパン監修『クリスマス・キャロル』:2013年、ゴマブックス
その他の各種翻訳については、ディケンズ・フェロウシップ日本支部のサイト内にある詳細な書誌[1]を参照。
映画化作品
- 『クリスマス・キャロル』 (A Christmas Carol):1951年、アメリカ映画(白黒版)、監督:ブライアン・デズモンド・ハースト
- 『クリスマス・キャロル』 (Scrooge):1970年、イギリス映画(ミュージカル)、監督:ロナルド・ニーム
- 『クリスマス・キャロル』 (A Christmas Carol):1984年、アメリカ映画(20世紀フォックス)、監督:クライブ・ドナー
- 『ミッキーのクリスマスキャロル』 (Mickey's Christmas Carol):1983年、アニメ映画(ウォルト・ディズニースタジオ)、監督 バーニー・マティンソン - スクルージ・マクダックがエベネーザ・スクルージ(スクルージ・マクダックの名前の由来でもある。)、ミッキーマウスがボブ・クラチット(クラチット夫人はもちろんミニーマウス)、グーフィーがマーレイに、スクルージ・マクダックの甥のドナルドダックがエベネーザ・スクルージの甥のフレッドに扮しているなど、全ての登場人物をディズニーキャラクターが演じている。
- 『マペットのクリスマス・キャロル』 (The Muppet Christmas Carol):1992年、アメリカ映画(マペット版)、監督:ブライアン・ヘンソン
- 『クリスマス・キャロル』 (A Christmas Carol):1999年、アメリカ映画、監督:デビッド・ヒュー・ジョーンズ
- 『クリスマス・キャロル』 (Christmas Carol The Movie):2001年、アニメ映画、監督:ジミー・T・ムラカミ
- 『Disney'sクリスマス・キャロル』 (A Christmas Carol):2009年、3DCGアニメ映画、監督:ロバート・ゼメキス
舞台化作品
日本における上演
- 『クリスマス・キャロル』:1990年〜2010年、劇団昴(ストレートプレイ)
- 『スクルージ』:1994年・1997年・1999年・2013年、ミュージカル、主演:市村正親[2]
- 『クリスマス・キャロル』:1996年・1998年・2001年・2004年、ストレートプレイ、主演:市村正親
- 『クリスマス・キャロル』:2010年、ニコニコミュージカル、演出・脚本・音楽:湯澤幸一郎、主演:堀江貴文
- 『クリスマス・キャロル』:2013年、劇団スイセイ・ミュージカル、演出・脚本:西田直木、音楽:張替政彦、主演:草刈正雄
コミック化作品
- 勝田 文 『小僧の寿し』 収録の第5話「クリスマスキャロル」pp.133-198 (マーガレットコミックス)
関連項目
外部リンク
- A Christmas Carol 英原文(プロジェクト・グーテンベルク)
- A Christmas Carol 英原文(HTMLヴァージョン)
- A Christmas Carol 英原文(検索可能・HTMLヴァージョン)
- A Christmas Carol - In Prose - A Ghost Story of Christmas 英原本イラスト(グラスゴー大学・特別コレクション)
- A Christmas Carol 森田草平譯(舊字舊假名版)
- A Christmas Carol 森田草平譯(ハイパー・マルチメディア・テクスト版)
- 『クリスマス・カロル』森田 草平訳:新字新仮名(青空文庫)
- 『クリスマス・キャロル』櫛田 理絵訳、WIPジャパン監修(ゴマブックス)
- クリスマス・キャロル katokt訳 (プロジェクト杉田玄白正式参加作品)
脚注