E-2 (航空機)
テンプレート:Infobox 航空機 E-2は、アメリカ合衆国のノースロップ・グラマン社が製造している早期警戒機である。主にアメリカ海軍が航空母艦および地上基地で運用している。愛称はホークアイ(hawkeye:鋭い視力・鷹の目、の意味)
目次
概要
アメリカ海軍が艦上機として運用するために開発した早期警戒機。旧名称W2F-1(後にE-2A)1号機は1960年10月21日に初飛行した。機体背面に大型の円盤型レドームを有し、強力なレーダー・電子機器により、対空警戒・監視を行なう。乗員はパイロット2名のほか、3名のレーダー手が乗り込む。
手ごろな早期警戒機であるため、日本をはじめとした多数の国にも輸出されている。
改良も継続されており、電子機器を改良・換装し、2010年代でも運用されている。
開発
1950年代半ば、アメリカ海軍の空母機動部隊(現空母打撃群)の早期警戒用の空中レーダー母機としては、AD スカイレイダーの派生型が運用されており、WF-1(後のE-1)の開発が行われていた。アメリカ海軍は、より高性能の艦載早期警戒機を求め、1957年にWF-1の開発も行っていたグラマン社(当時)の案を選定した。これは、W2F-1として1959年に機体発注が行われている[1]。
要求としては、大型のレーダーを搭載すること、艦隊の情報システムである海軍戦術情報システム(NTDS)にリンクできることであった。
W2F-1の初飛行は1960年10月21日に行われた。これは、レーダーを搭載しない空力試験機によるものであり[2]、量産型は1961年4月19日に初飛行した[2]。1962年にW2F-1はE-2Aに改称され、1964年1月より部隊配備が行われている。1965年には空母に搭載されベトナム戦争で実戦に参加した。
当初はアナログコンピューターの処理機能が低く、稼働率も低かった[2]。そのため、A型の生産は1967年で終了し、搭載コンピューターをアナログ型からデジタル型へ改修したB型が開発された。1969年から1971年にかけて、A型よりB型へ49機が改装されている[2]。
E-2C
1971年からは陸上低空目標捜索能力が優れたAPS-120を搭載し、ALR-59PDS(パッシブ探知装置)を持つC型が生産されている。C型ではエンジンが強化され、胴体の冷却気取入れ口も改修されている。
C型のレーダーや電子機器は順次改良されており、グループ0からグループ1、グループ2と分類されている。APS-120レーダーは、APS-125,138(グループO)へとアップグレードされ、1989年からはさらに高能力でECMにも強いAPS-139レーダーとALR-73PDSを搭載し、エンジンも強化されたグループI(163535以降)が18機引き渡された。1991年からは、APS-145搭載のグループ2となっている。
1994年からはグループ2の能力向上としてホークアイ2000計画が検討されている。これは、コンピューターを換装し、共同交戦能力を有している。2001年より部隊配備が開始されている[1]。このほか、アメリカ海軍の機体においては1997年よりNP2000と呼ばれる、全複合材製の八翅の新型プロペラの研究が行われ2006年からプロペラの換装が行われている。 テンプレート:-
E-2D 先進型ホークアイ
E-2の最新の型であるE-2D 先進型ホークアイ(Advanced Hawkeye)は現在運用中である。最初に製造された「デルタワン」の初飛行は2007年8月3日。以下に主な向上点を示す。
- レーダーの換装:AN/APS-145からAN/APY-9へ
- GPS/CEC/SATCOMのアンテナをAPY-9レーダーのロトドーム内に内蔵
- 共同交戦能力(CEC)への対応:USG-3共同交戦送信処理セット(CEC能力用)用アンテナが胴体下部に膨らんでいる
- 新型コックピット(17inカラー液晶×3面 など)
- 無線機群と統合衛星通信能力(ARC-210/HF121C)
- 新型発電機、強化型冷却機:発電・冷却能力の向上
- 機体構造の強靭化
E-2Dでは2人のうちの片方のパイロットも4人目のオペレーターとして活用するために、後席操作員と全く同じだけのすべての任務情報に関与できる。操縦席にあるスイッチ類での操作のため能率は悪い[3]。
機体・システム
非常に特徴的な形態を持った航空機である。背面に大型の円盤型レドームを搭載している。エンジンはターボプロップエンジン2基。主翼は高翼配置で、後方へと折り畳むことができる。垂直尾翼は艦載機としての大きさの制限から4枚に分割され、全高が抑えられている。なお、方向舵はこのうちの3枚に付いているが、2重ヒンジとし利きを良くしてあり、水平尾翼も大きめの上半角が付けられている。艦載機であるため、着艦フックやカタパルトバーも装備している。乗員は、操縦員2名のほか、オペレーター3名。
- E2C-Hawkeye01.jpg
艦載機として開発された為、主翼は折りたたみ式になっている
- US Navy 100715-N-5446H-385 An E2-C Hawkeye prepares to land aboard USS George H.W. Bush (CVN 77).jpg
「ジョージ・H・W・ブッシュ」に着艦するE-2C
- US Navy 021207-N-1810F-014 E-2C Hawkeye flies directly over the flight deck.jpg
機体下部
レーダー
E-2は、強力なレーダー・電子機器により、同時に250個の目標を追尾し、30の要撃行動を管制することができる。前任者のE-1では、4-6個の目標を追尾し、2の要撃行動を管制することしかできなかったことと比べると、これは格段の進歩であった。
レドームの直径は7.31m、厚さは0.76mある。E-2の各型は、その強力なレーダーを用いることにより、2,460万km3の空域と38万km2以上の地表面を同時に監視することができる。レドームは、回転するレーダー・ディッシュ(いわゆるロート・ドーム)である。レドームの直径は7.31mで、通常は1分間に6回転している。空母の格納庫への収納を考慮して、61cmほど下げることが可能なほか、飛行中に角度を調整して揚力を発生させ、重量と空気抵抗を相殺することもできる。レーダーの使用帯域はUHF帯であり、シークラッター除去に有利なことから選定された。
A型で搭載されていたAN/APS-96は、機体が標準的な作戦高度(9,150メートル: 30,000フィート)を飛行している場合、370キロメートル(200海里)の探知距離を発揮できた。C型グループ0で搭載されたAN/APS-120レーダーは、探知距離を460キロメートル(250海里)に延伸し、さらに目標情報処理にデジタル制御を採用、ESM装置も統合されている。これはさらに、新型のレーダー情報処理装置(ARPS)を採用したAN/APS-125、低サイド・ローブ化されたAN/APA-171アンテナを採用したAN/APS-138に発展した。
C型グループ2に搭載されたAN/APS-145は、探知距離が560kmに達し、2,000個以上の目標を同時に追跡可能であり、機上管制官は最大で40機の要撃機を一度に指揮することができる。
そしてD型で搭載されるAN/APY-9では、アンテナをアクティブ・フェイズド・アレイ(AESA)式にしている。このロートドームはL3COM社製ADS-18と呼称されており、使用周波数は従来通りのUHF帯(300MHz - 3GHz)であり、この周波数を使うAESA(UHF-ESA)としては世界初のものである。最大探知距離はAPS-145とほぼ同程度で、航空機に対して555km以上、水上目標に対して360km以上とされているが、探知高度は海面高度からテンプレート:Convertまで対応しており、探知可能範囲は従来と比して250%増とされている。この性能を実現するため、APS-145では機械式走査1チャンネルのみであったのに対し、APY-9では電子式走査18チャンネルを備えている。動作モードは下記の3種類がある[4]。
- 先進早期警戒監視(Advanced AEW Surveillance, AAS) - 10秒間で全周360度を監視するモード。
- 拡張セクタースキャン(Enhanced Sector Scan, ESS) - ロートドームの回転による全周監視を行いつつ、特定のセクターに対して電子的にビームを指向して拡張探知追跡を行うモード。
- 拡張追跡セクター(Enhanced Tracking Sector, ETS) - ロートドームの回転を止めて、特定のセクターにビームを集中的に指向するモード。他のモードよりも遠距離での探知が可能とされる。
またAPY-9では、離陸から5分で探知可能になるという優れた即応性を備えている。なおADS-18では、レドームも外皮を複合素材製とすることで、旧来のものより軽量としている[4]。 テンプレート:-
C4Iシステム
本機の最大の特徴は、空中戦術情報システム(ATDS)への対応にある。これは当時、海軍が艦隊配備を進めていた海軍戦術情報システム(NTDS)の空母航空団版であり、本機はATDSの中核的ユニットとして計画された。
戦術情報処理装置
E-2C グループ0においては、リットン社製OL-77コンピュータ・システム(L-304コンピュータ×2基)を中核として、3名の電子システム士官それぞれにAPA-172コンソールが配置されている。L-304コンピュータは、同時に600個の目標情報を処理することができる。また、グループ1においては、処理できる目標数が倍増したCP-1469/Aコンピュータによって更新された。
戦術データ・リンク
当時、空母航空団においては、水上艦および航空機との要撃管制用2-wayデータ・リンクとしてリンク 4が運用されており、本機においても、作戦機に対する要撃管制用として運用されている。また、これに加えて、本機はリンク 11にも対応しており、NTDS対応の水上艦艇との間で共通戦術状況図を生成することができる。これによって本機は、搭載するレーダーのほか、艦隊の各艦が搭載する対空レーダーの情報を利用して要撃管制を行えるようになった。
また、E-2C グループ2では、統合戦術情報伝達システム(JTIDS)クラス2Hを搭載して、新しい標準規格であるリンク 16に対応した。さらにホークアイ2000ではより緊密な情報連携を可能にする共同交戦能力(CEC)に対応、E-2DではNIFC-CA/BMC2(Navy Integrated Fire Control-Counter Air)に対応するとともに、リンク 16の端末もMIDS-JTRSに更新する予定である[4]。
- US Navy 081111-N-9565D-035 Lt. j.g. Doug Fitzpatrick, left, and Lt. Cmdr. Brian Beck conduct airborne early warning and strike group coordination.jpg
コックピット
- US Navy 081111-N-9565D-040 t. Brett Whorley, left, and Lt. Andrew Leatherwood, assigned to Airborne Early Warning Squadron (VAW) 115, the .jpg
要目
- E-2C
- 全長:17.56m
- 全高:5.58m
- 全幅:24.56m
- 空虚重量:17,265kg
- 最大離陸重量:24,721kg
- エンジン:テンプレート:仮リンク ターボプロップ(5,100馬力)×2基
- 最大速度:338kt(625km/h)
- 巡航速度:273kt(505km/h)
- 実用上昇限度:11,280m
- 航続距離:1,541nm
- 無給油最大滞空時間:6.25h
- 乗員:5名(操縦士2名(パイロット、コパイロット)、電子システム士官3名(右前から、レーダーオペレーター(RO)兼ウエポンシステム士官(WSO)、CIC士官(CICO、ミッションコマンダー)、航空管制士官(ACO)
派生型
- E-2A
- 初期型。APS-96レーダー搭載、後にAPS-111に換装。59機生産。
- TE-2A
- A型より2機改装。
- E-2B
- A型より改修。コンピューターをデジタル化。52機改修。
- E-2C
- グループ0
- 初期はAPS-120レーダー搭載。1978年からはAPS-125、1984年からはAPS-138に換装。
- グループ1
- エンジンをT56-A-427に換装。APS-139レーダーを搭載。
- グループ2
- APS-145レーダーを搭載。新型ESM装置:ALQ-217ESM
- Hawkeye 2000
- コンピューター・航法装置・自動操縦装置などを強化した性能向上型。既存機からの改修が可能。ニュープロペラ(ブレード8枚)、PCMU、ロッキード・マーティン社製新型コンソール(20inカラー液晶表示コンソール等)、新MCU(ミッション・コンピューター(LR-304)、データローダ/レコーダー(RD-664A/ASH DLR)
- E-2D Advanced Hawkeye
- 開発中の近代化型。2007年初飛行・2014年実用化を計画
- E-2T
- 台湾空軍向け。E-2Cより改修。APS-145レーダー搭載。
- E-2K
- E-2TのHawkeye 2000仕様機。
- C-2
- E-2の機体をベースに開発された輸送機。陸上飛行場-空母間の物資輸送に使用される。
採用国
テンプレート:Multiple image テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- 短期間使用、現在はP-3 AEW&Cを使用。
- ベレンコ中尉亡命事件で低空レーダー網に盲点があることが発覚したために、急遽1979年度よりE-2Cを調達開始、1983年より部隊配備を開始した。
- 13機を調達し、飛行警戒監視群隷下の第601飛行隊(三沢基地)、第603飛行隊(那覇基地)にそれぞれ配備している。
- 2005年よりHawkeye2000相当へ改修されたE-2Cの部隊配備を開始した[5]。
- 台湾空軍は1995年にE-2Tを4機導入、2013年に同4機をE-2Kに改修済。2011年にE-2Kを2機導入。
- エジプト空軍が1987年以降、5機導入。
- シンガポール空軍が1987年以降、4機導入。
- 海軍航空隊向けに3機導入[1]。2機がグループ2、1機がホークアイ2000。原子力空母「シャルル・ド・ゴール」に搭載。
- メキシコ海軍 イスラエルの中古×3
登場作品
- 小説
- 『原子力空母「信濃」』シリーズ(鳴海章作品)
- 映画
- 航空自衛隊のE-2Cがイリスを捕捉する。
- 撮影に実機は用いられておらず、外観はミニチュア、機内はセットである。
- 主役である原子力空母「ニミッツ」の艦載機として登場。
- 漫画・アニメ
- 航空自衛隊のE-2Cが登場。日本列島に接近するバックファイアBを探知。
- 『エリア88』
- プロジェクト4の所属機。エリア88の航空部隊を探知する。
- 『紺碧の艦隊』
- 『戦闘妖精・雪風』
- OVAで日本海軍所属の原子力空母「アドミラル56」艦載機として登場。実機と異なり、エンジンからの外翼に後退角がついている。
- マイクロトランスフォーマーの一人であるサンランナーが変形する。
- ゲーム
- 『大戦略シリーズ』
- 『エースコンバットシリーズ』