選定療養
テンプレート:Ambox 選定療養(せんていりょうよう)とは、患者が選定し、特別の費用負担をする追加的な医療サービスのことをいう。
概要
21世紀以降、医療技術の進歩や情報の普及が進んだことから、小泉内閣下の規制改革・民間開放推進会議では、混合診療の解禁を厚生労働省に求めていた。この議論の末、健康保険法の平成18年改正により、従前の特定療養費制度が見直され、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な「評価療養」(将来の保険適用を目指すもの)と、被保険者の選定に係る「選定療養」(保険適用としないもの)とに再編成された(健康保険法第86条)。この「評価療養」及び「選定療養」を受けたときには、療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付(保険外併用療養費、現物給付)をし、特別料金部分については全額自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものである。
主な選定療養
- 特別の病室に入院をした場合(いわゆる差額ベッド代)
- 歯科の金属材料差額(金属床総義歯、金合金等)
- 200床以上の病院の初診、一定期間後の再診
- 予約診察制をとっている病院での予約診療
- 予約時間から一定時間以上待たせたり、医師一人につき1日に診察する予約患者数が40人を超える場合は、徴収は認められない。
- 規定回数以上の医療行為(リハビリなど)
- 診療時間外の診療(緊急やむを得ない場合は保険の範囲内なので対象外)
- 180日以上の入院(入院医療の必要性が高い場合は除く)
- 小児う触の治療後の継続管理(フッ素付加)
医療保険での扱い
選定療養は、通常の保険診療と費用の扱いが異なる。通常の保険診療では、食事療養費などの例外を除いて、医療費は全て保険の対象となり、患者は一部負担金(原則3割)を支払えばよい。
選定療養は通常の保険診療と併用でき、その場合の患者の費用負担は次のようになる。
- 選定療養の特別料金部分
- 保険対象外のため、患者が全額を支払う。正確には入院基本料(処置や投薬、検査は含まれない。携帯電話の基本料金のようなもの)の15%がカットされ、保険者(国保・社保)から医療機関に、患者の負担分を除いた額が支給される。1日100点 (1点は10円なので総額1000円)の入院料が今まで発生していたとすると、選定療養該当後は1日85点の7割しか医療機関は保険者に請求できなくなる。患者は今まで、1000円の3割負担分である300円を医療機関に支払っていたが、850円の3割である255円を医療機関に支払い、さらに医療機関が保険者に請求できなくなった分の150円を支払う事になる。これは保険者の医療機関に対する支払を抑えると同時に患者の自己負担額を増やすことで、高齢化が進むにつれ増大する保険給付を抑制する事を目的とした制度である。
- 通常の保険診療との共通部分(診察・処置・検査・レントゲンなどの、入院基本料以外の部分)
- 保険対象のため、患者は一部負担金(原則3割)を支払う。
このように選定療養では保険対象外と保険対象が混じった費用の扱いになるが、普通は「混合診療」とは言わない。(しかし、少数ながら選定療養を、医療保険制度の中で例外的に許された「混合診療」と捉える人もいる。選定療養が「混合診療」か否かは、「混合診療」という言葉の定義の問題である。)
また、特別料金部分は、高額療養費支給の対象にはならない。
同じ病名で他の病院に移った場合も選定療養は継続となる(一度退院してから3ヶ月以上経過していると、再度入院した日から180日後に選定療養該当となる)。
病院における取扱い
- 選定療養を取扱う医療機関は、院内の患者の見やすい場所に、その内容と費用等について掲示をし、患者が選択しやすいようにすることとなっている。
- 医療機関は、事前に選定療養の治療内容や負担金額等を患者に説明をし、文書により同意を得ることになっている。患者側でも、説明をよく聞くなどして、内容について納得したうえで同意することが必要である。
- 選定療養を受けた際の各費用については、一部負担金とその他の費用とを区分して記載した領収書を発行することとなっている。