VF-4 ライトニングIII
テンプレート:Pathnav VF-4 ライトニングIII(ブイエフ フォー ライトニング スリー LIGHTNING III)は、OVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』、プレイステーション用ゲーム『マクロス デジタルミッション VF-X』などの「マクロスシリーズ」作品に登場する架空の兵器。「ファイター(航空機)」と「バトロイド(人型ロボット)」、そして両者の中間である「ガウォーク」の3形態に変形する可変戦闘機(ヴァリアブル・ファイター=VF)の1つ。愛称(ペットネーム)の「ライトニング」は英語で「稲妻」「雷光」を意味し、実在の戦闘機P-38とF-35(ライトニングII)も同じ愛称で呼ばれている。
概要
河森正治がVF-1 バルキリーに次いで2番目にデザインした可変戦闘機(ヴァリアブル・ファイター)。デザインモチーフは実在の超音速偵察機SR-71 ブラックバードで、この機体が好きだった河森は中学生の頃から三胴型の飛行機をよく描いていたと語っている。TVアニメ『超時空要塞マクロス』の最終話「やさしさサヨナラ」(1983年6月26日放送)に模型として登場した後、OVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』(1987年6月21日発売)でより空力に沿ったデザインに変更されて登場した。この時はファイター(戦闘機)形態の設定しか存在しておらず、アニメでも他の形態は登場しなかった。このため、アニメ誌では非変形バルキリーだと紹介された例もある[1]。ただし、1989年10月発売の「スタジオぬえメカニックデザインブック」では「このタイプもバトロイドに変形する」とキャプションが入っている[2]。
1997年2月28日に発売されたゲーム『マクロス デジタルミッション VF-X』にて正式なガウォーク、バトロイド形態が設定され、以後定着する。
VFシリーズの中では比較的マイナーな機体であるが、立体化もなされている。
機体解説
VF-4 ライトニングIII (寸法は全て大気圏内仕様S型のもの) | |
設計製作 | ストンウェル・ベルコム |
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全長 | ファイター:14.9m |
全幅 | ファイター:14.3m |
全高 | ファイター:3.7m |
空虚重量 | 13,950kg |
エンジン | (主機)新中州/P&W/ロイス熱核タービン FF-2011×2 (副機)P&W高機動バーニアスラスター HMM-1A |
エンジン推力 | (主機)14,000kg×2 |
最大速度 | (海面上)M1.12+ (高度10,000m)M3.02+ (高度30,000m以上)M5.15+ |
乗員 | 1名(B型は2名) |
攻撃兵装 | 単砲身荷電粒子ビーム砲×2(両双胴ナセルに各1門) 3砲身荷電粒子80mmガトリング砲×1 (ガンポッド形式・胴体下に半埋め込み、投棄可) セミ・コンフォーマル式中距離誘導ミサイル×12 (各双胴に6発ずつ、射程65km - 120kmまで各種) 30mm6連ガトリング砲(D型、S型) Gu-11/55m×3連ガンポッド×1(D型、S型) 他、外部ハードポイント用オプション多数 |
ストンウェル・ベルコム社が、VF-1 バルキリーの後継機種として開発した機体。VF-1で問題視された宇宙空間での機動性強化や活動時間の延長を目標とし、通常装備でVF-1スーパーパック装備型の約40%増しの能力を持つ。
機体形状は独特の三胴形式を採用。ストンウェル社が名付けた公式名「ライトニングIII」の他にも、その形状の特異さと美しさからパイロットや整備員によって「アロー」、「サイレーン」などのペットネームで呼ばれることも多かった。
固定武装として、宇宙空間において温度変化や弾丸数、発射速度の影響を受けにくい粒子ビーム砲を標準装備。他にも、半埋め込み式の中距離ミサイルの装備などの特徴が見られる。これはVF-1が主にハードポイントや、ガンポッドに外部兵装を依存したため、汎用性と引き換えに武装時の速度や航続性能、更にはステルス性が悪化した反省を踏まえ配置されたもので、有効射程も更に延長されている。
なお、本機の40%増しの性能向上の判定は、宇宙空間でのVF-1スーパーパック装備型との模擬戦闘テストに於いて、ノーマル状態のVF-4のミサイル射程、命中精度、加速性、及び空間機動性等(いずれもファイター時)に於いての成績を測定した結果である。
生産開始は2012年。「メガロード01」の出航に間に合わせる形で配備が行われ、以後2020年までにはほぼ全ての宇宙航空隊に配備が完了した。しかし大気圏内の性能は、最大速度・加速性は良好なものの、機動性・低空特性はVF-1より幾分劣っていたため、完全な代替とまではならず、並行してVF-1の改修と生産も継続された。2022年の生産終了までに8245機が生産されたが、2020年代後半には大気圏内での機動性に優れるVF-5000 スターミラージュ が量産・配備されたため、本機は宇宙空間を主領域として運用されることとなる。
結局、VF-1の汎用性までをもカバーした完全な後継機は、2030年代に制式採用されるVF-11 サンダーボルトの登場を待たねばならなかった。なお、本機の航宙機としての能力はVF-14 バンパイアに受け継がれる。ネオ・グラージ、エルガーゾルンなどの三胴型の機体にも影響を与えている[3]。
2047年のミルキードールズ誘拐事件時のオルフェウス作戦に当たったステルス強襲潜航母艦ヴァルハラIIIにもVF-4Gが搭載されているが、この時点ではもはや旧式機とされている。
開発経緯
VF-1の後継機種は当初はVF-X-3とVF-X-4の競作で進められたが、その後、第一次星間大戦の戦火によってVF-X-3は開発施設もろとも焼失してしまい、VF-X-4の開発が進められることになる。VF-1とのパーツの共通化によって開発期間の短縮を図っており、2012年に完成する。開発には一条輝など、当時のエースパイロットの意見が取り入れられた。
機体名について
初期は単に「ライトニング」と呼ばれた時期もあった。現在でも文献により双方の表記の混在が見られる。このローマ数字のIIIは以下現実戦闘機の命名の歴史にちなんだ事情による。
第二次世界大戦時に連合国各国空軍・陸軍航空隊で使用された双発双胴の戦闘機、ロッキード(後のロッキード・マーティン)P-38は「ライトニング」という愛称で呼ばれた。21世紀初頭から配備が始まったF-22は「ラプター」の愛称で呼ばれているが、YF-23との競争試作および実用試験当初は「ライトニング II」という愛称であった。VF-4はこれらの機体の名を受け継ぐものとして"III"のローマ数字を使用した。このことについては、河森本人もテンプレート:要出典範囲でコメントしている。
なお、現実において「ライトニング」の愛称がつけられた軍用機としては他にイングリッシュ・エレクトリック ライトニング、F-35 ライトニング II があるが、後者の場合、VF-4 はこれよりずっと以前に設定されており、命名に関しては全くの無関係である。
しかしながら、この設定は1995年以降に各種ゲーム媒体での添付資料から付加されたものであるため、それ以前の資料などでは、同機の試作実証機で形状の細部が大幅に異なるVF-X-4 サイレーンの呼称や、無印のライトニングの呼称が混在している状況である。河森はサイレーンの名が、『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-』に登場する「VA-1SS メタル・サイレーン」と紛らわしいために改称したともコメントしている。
VF-4 は日本国外でハーモニーゴールド USA (Harmony Gold USA)社がマクロスほか2作品のライセンスを取得、同一世界の異なる時代と世代を描いた、連続する1つの大河ストーリーとして翻案、再編集された作品である『ロボテック』(Robotech)版に於いても、2003年のワイルドストーム(Wildstorm)社(DCコミックの子会社)が出版した『Robotech: From the Stars』にも登場。Rick Hunter(一条輝)による飛行試験中に、反乱ゼントラーディ人の待ち伏せで危機に陥った旧式のVF-1A(量産型)や指揮官機VF-1Rで構成された小隊の救援に急行する活劇における「真打ち登場」的な見せ場が用意される等、国内よりも知名度が高い。
バリエーション
- VF-X-4
- 後の生産型と共通性の少ない試作機。『超時空要塞マクロス』に模型として登場。
- VF-X-4V1
- 試作1号機。VF-1との部品共用率は約35%[4]。
- VF-4A-0
- 増加試作型。VF-1との部品共用率は約25%。
- VF-4A
- 最初の生産型。当初は不要ということでバトロイドへの変形機能はロックされていたが、パイロットの要望もあり、後期の「生産ブロック」( Production Block )では機能付加された。
- VF-4B
- 複座の攻撃機能強化型。後席は電子戦士官搭乗だが、操縦機能が残されているため、練習機としても使われる。
- VF-4C
- 大気圏内仕様への換装可能な発展型。大気圏内・外双方の活動機会がある部隊に優先配備。
- VF-4D
- 上記型の海軍(艦上機)仕様。宇宙用装備を外されて大気圏内専用になった機体も多いが、 機動性が劣るためドッグファイター以外の目的、主に迎撃や、ミサイルを活かしての対艦戦闘攻撃機として使用された。
- VF-4S
- 上記型の大気圏内専用仕様。Sは海上 (SEA) の略とも言われており、不要装備の除去、エンジン換装、塩害対策などが施されている。
- VF-4SL
- エンジンを 新中州 / P&W / ロールス・ロイス plc製 FF-2011 熱核タービン(宇宙空間最大推力165KN×2。チューンナップにより出力20%向上)、その他 P&W 製高機動バーニアスラスターHMM-1A、スラスト・リバーサー、3D機動ノズル装備し、防御用兵装として「エネルギー転換装甲SWAGシステム」一式を搭載。ライトニングIIIの大気圏内仕様であるS型の腕部と一部変形機構をオミットし、対艦攻撃・邀撃機に特化した仕様で“VF-4軽装型”と呼ばれることもある。バトロイドへの変形は行なえず、腕のないガウォークにのみ変形が可能。統合軍の移民船団護衛部隊で愛された同機のほとんどは、VF-11 サンダーボルト、VF-14 バンパイア(可変攻撃機の派生型VA-14 ハンターを含む)への機種転換によって民間に払い下げられており、この機体でオストリッチ・レースのように腕部を必要としないレースなどに参戦している姿が描かれている。
- VF-4G
- シリーズの最終型で本来の用途である宇宙戦能力を強化した機体。エンジン、アビオニクス、粒子ビーム砲などが新世代の技術で改良されている。
商品化
本機は、本格的なアニメ登場がOVAでのファイターモード飛行シーンのみである事から、マスプロ製品(いわゆるプラモ、トイなどの量産品)としての商品化には長らく恵まれていなかったが、ガレージキットの世界では80年代から何度も製品化されている。その中には、原作者河森正治自らが「軽装型」・「長距離偵察侵攻用ブースター装備型」の設定のラフスケッチ画を描き起こした 1/72 のムサシヤのキットや、97年にプレイステーション用ゲームVF-Xの発売に際し、変形を前提とした3形態の画稿が発表されてからは、クラブMの1/72やイエロー・サブマリンの1/100スケールモデル、更には3形態への変形を可能にし、河森正治書き下ろしの指揮官用頭部を付属したスタジオ・ハーフアイの完全変形モデルなどが発売されていた。
長らく発売されていなかった、本機のマスプロ製品だが、2010年には、バンダイのマクロスファイターコレクション3のシークレットアイテムとして1/250モデルが登場、2012年には株式会社やまとが 物語設定上の最初の量産型(A 型)の生産開始であり「メガロード01」の出航に間に合わせる形で配備が行われた西暦2012年にちなんで、1/60 完全変形モデルをオンラインストア限定商品として発売すると告知している。
登場作品
- 超時空要塞マクロス - TVシリーズ最終話にて VF-X-4 の模型が登場。
- 超時空要塞マクロス Flash Back 2012(OVA) にて VF-4A 一条輝機が登場。
- 超時空要塞マクロス 永遠のラブソング - ゲーム終盤に主人公の乗機として登場。三段変形の公式設定が出る前であるため、バトロイド形態のプロポーションは公式設定とは大きく異なっており、さらにはマクロスシリーズにはないはずの装備であるファンネル装備型も登場している。
- マクロス デジタルミッション VF-X 「ヴァルハラ III」所属の VF-4G が登場。
- マクロスM3 - VF-4Gマックス機、ミリア機が登場。
- マクロスアルティメットフロンティア - VF-4 スカル飛行大隊所属の指揮官(航空団(群)司令/CAG)機一条輝機が登場。
- 小説マクロスF「カブキ・ウォーバード」 - 「オーディーン II」所属の VF-4G が登場。
- ワイルドストーム(Wildstorm)社のフルカラー漫画とグラフィックノベル版の単行本である『From The Stars(星界から) 』に VF-X-4 が登場。
- 南極出版社(Antarctic Press)フルカラー漫画の第二部「試作機 001 派生型」(Prototype 001 Variants)に VF-4(シリーズ記号不明)が登場
- マクロス・ザ・ライド - VF-4S 型を基本に大気圏内専用の対艦攻撃・邀撃機用途のために腕部と一部変形機構を省略し「軽装型」としたVF-4SL 型が民間の「バンキッシュ・レース」用途に払い下げられ腕部を必要としない「オストリッチ・レース」等に参加。
- なお、模型作例は、先述の1/72ムサシヤ製ガレージキット用に河森正治氏自らが描き起こした設定画に存在した、軽装型の設定[5]を参考に製作されている。
脚注
外部リンク
- 1/60 完全変形VF-4G ライトニングIII(やまとオンライン)