クロックタワー2
テンプレート:Infobox 『クロックタワー2』(CLOCK TOWER 2、クロックタワーセカンド)は、1996年12月13日にヒューマンから発売されたプレイステーション用アドベンチャーゲーム。1995年に同社から発売された「クロックタワー」の続編。
- ゲームディレクターは前作に引き続き河野一二三。CERO年齢対象区分は12歳以上(C)。
目次
概要
ダリオ・アルジェント監督のホラー映画をモチーフにした古典ホラー的世界観がベースであった前作に対し、今作ではサイコホラー的な世界観が取り入れられ、平穏な日常が殺人鬼の出現によって一瞬にして非日常に変貌してしまう恐怖が描かれている。グラフィックの3D化により、演出、音響面も大きく向上し、前作とは一味違う雰囲気を演出している。
ストーリー
「クロックタワー事件」がノルウェー全土に一大センセーションを巻き起こしてから1年後のオスロが舞台。悲劇のヒロインとして一躍有名になったジェニファーが証言する“巨大なハサミを持った不死身の怪物”がマスコミに「シザーマン」と名付けられ、若者の間で恐怖のシンボルとされる中、彼女の精神治療を担当するバートンはそれを恐怖が生み出した幻想だとしながらも犯人像の割り出しに手間取っていた。そんなある日、死んだはずのシザーマンが再びジェニファーの前に現れる。
登場人物
主要人物
- ジェニファー・シンプソン
- 声 - ルミコ・バーンズ
- 15歳。幼い頃に両親を亡くし孤児院で育った長い黒髪の美少女で、クロックタワー事件の生還者。友人を惨殺されたショックによるトラウマを患うが、現在はヘレン・マクスウェルの保護の元で落ち着きを取り戻している。育ちゆえか、可憐で儚げな容姿とは裏腹に精神的にはタフで逆境に強い。機械や読書は苦手で、大量の本を見ると頭が痛くなるらしい。
- ヘレン・マクスウェル
- 声 - リサ・シライシ
- 30歳。サミュエル・バートン研究室の犯罪心理学助教授。ゼミ参加がきっかけで才能を認められ研究室に入ったが、最近ではバートンのやり方を疑問視している。知的で凛とした美女。
- ノラン・キャンベル
- 声 - ジェフ・マニング
- 26歳。オスロウィーク新聞社の三流イエローペーパー記者。クロックタワー事件に強い関心を持ち、ジェニファーに近付いたことで事件に巻き込まれてしまう。一見軽率だが記者としての洞察力に優れ、ジェニファーたちを積極的にサポートする。
- スターン・ゴッツ
- 声 - ピーター・ストーン
- 42歳。クロックタワー事件担当の警部補。事件発生当事警部が入院中だったため捜査を担当することになった。よくジェニファーに警部と間違えられる。経験至上主義者で超常現象などは一切信じないが、彼もまたシザーマンの恐怖に巻き込まれてしまう。
- サミュエル・バートン
- 声 - ロバート・スペンサー
- 52歳。南オスロ大学犯罪心理学教授。クロックタワー事件を引き起こした犯人に興味を持ちプロファイリングを行う。ジェニファーとエドワードの治療も受け持っている。“不死身の怪物シザーマン”の存在を冷徹に否定する一方、一連の事件を「面白い」と言い放つエキセントリックな一面も。ヘレン編において物語の核となる。
研究室関係者
- ハリス・チャップマン
- 声 - ジョジョ・オオタニ
- 35歳。研究助手。優秀だが陰気で挙動不審であるため研究室では浮いた存在。ロリコン気質の持ち主でジェニファーに対して屈折した愛情を抱いている。
- ベス
- 声 - サヨコ・カメイ
- 23歳。ゼミ生。仮眠室に自分用の枕を持ち込むなど子供っぽさを残し、事件にも面白半分で首を突っ込む。
- ダニー
- 声 - なし
- 25歳。ゼミ生。興味本位でバートンのゼミに参加する。クラッシュしたハードディスクを修復するなどパソコンに強い。
その他の大学関係者
- ローズ
- 声 - なし
- 30歳。フィエロ社会学研究室の一員でヘレンの友人。
- ベイカー
- 声 - なし
- 32歳。フィエロ社会学研究室の一員でローズの恋人。ジェニファー編には登場しない。
その他
- ティム
- 声 - 不明
- ノランの相棒にして抑え役のカメラマン。27歳。太めの体型と赤い帽子が特徴。小説版ではホラー映画マニアとして描かれている。
- リック
- 声 - バリー・ジャーディ
- 65歳。クロックタワー事件の現場となった屋敷に10年前まで執事として仕えていた、バロウズ家の秘密を知る数少ない人物。引退後は何かから隠れるように暮らしていた。ビクターという名前のセント・バーナードを番犬に飼っている。
- サリバン
- 声 - 不明
- 72歳。市立図書館館長でバートンの師の同僚。文化人類学者としても有名で、16歳のときに書いた論文『インセスト・タブーに見られる親族の基本構造』が人類学の教科書に掲載されている。冒険好きでさばけた人物だが、ジェニファー曰く「話が長い」。
- サンドラ
- 声 - なし
- 年齢不詳。図書館の職員。
- ケイ・サターホワイト
- 声 - マヤ・ムーア
- 26歳。グラニット孤児院の教師でエドワードの後見人。
- エドワード
- 声 - テリー・オサダ
- 推定10歳。クロックタワー事件の現場から救出されたもう一人の生存者。見る者に恐れを感じさせるほどの雪肌を持つ金髪碧眼の美少年。発見時、事件を含むすべての記憶を失っており、身元不明のままグラニット孤児院に引き取られた。「エドワード」はケイが与えた仮の名前。ジェニファーとともにバートンの治療を受けている。
- シザーマン
- 声 - 不明
- 巨大なハサミを用いた凶行からマスコミが呼び習わした、クロックタワー事件の犯人像。
なお、前作で共闘したジェニファーの友人たちは、生存エンディングのある者も含め全員が殺害されたことになっている。
前作の登場人物についてはクロックタワー#登場人物を参照
システム
- カーソルとクリックポイント
- 常に画面に表示されている矢印(カーソル)の移動とクリックの組み合わせによって、移動、アイテムの入手・使用、選択肢の決定などの全てのアクションを行う。イベントの設定された場所はクリックポイントと呼ばれ、その上ではカーソルの形が変化する。カーソルは色の変化で体力を表示するほか、激しい点滅によってキャラクターがパニック状態に陥っていることを知らせる。
- アイテムウインドウ
- シナリオ中、保有アイテムがアイコンで表示されるウインドウ。カーソルを特定の位置まで移動させることで表示される。表示中もゲームの進行が止まらず、シザーマン出現の不安を常にプレイヤーに与え続ける。尚、アイテムによっては入手したのにアイテムウインドウに表示されないものもある。
- シナリオ
- シザーマンに襲われた主人公が脱出を図る、ゲームの主軸となるパート。プロローグ・シナリオ1・シナリオ2・ラストシナリオの4部構成。ただしプロローグではシザーマンは出現しない。
- 通常状態
- シナリオ中、シザーマンが出現していない状態。調査や脱出へのフラグ立てはこの状態でしか行えない。
- 逃走状態
- 主人公がシザーマンに追跡されている状態。クリックポイントが通常状態と異なり、何らかのイベントによってシザーマンを撃退、もしくは回避しない限り解除されない。シザーマンの出現パターンは時間経過による「ランダム出現」と特定の地点をクリックした時の「トラップ出現」、特定のイベントによる「イベント出現」の三種類
- パニック状態
- 主人公が生命の危機にさらされている状態。カーソルが点滅している間に×ボタン(マウスでは右ボタン)を所定の回数連打することで回避できる。連打に失敗した場合は死亡する。体力が最低値の場合は連打に関わらずゲームオーバーとなる。メニュー画面に戻った後、コンテニューを選ぶと殺された地点に入室した直後の状態から再スタートとなる。
- なお、階段等の段差がある場所でシザーマンに追い詰められた場合、連打の有無に関わらず殺されてしまう事がある。
- なお、本作ではパニック状態を回避するために特定の手順を踏まなければいけないパターンもある。
- スタッフはこのボタン連打による緊急回避を「Renda Sezuniwa Irarenai(連打せずにはいられない)」の頭文字を取ってRSIシステムと命名している。
- オープニング状態
- シナリオの冒頭部分。日常と非日常の境目。主に人物との会話を行ってフラグを立てる半自動進行で、シザーマンの出現をもって逃走状態に移行する。クリックポイントが通常状態と異なる。プロローグとラストシナリオにはこの状態は存在しない。
- インターミッション
- シナリオとシナリオの間に挿入されるパート。オスロ市の俯瞰図から施設に入り、そこにいる人物と会話をすることで次のシナリオへのフラグを立てていく。昼間の時間帯=日常のシーンであり、シザーマンが出現しない。
- 大学研究棟
- 南オスロ大学の研究棟。サミュエル・バートン研究室がある。1階には警備員が2人常駐している。
- 大学職員官舎
- ヘレンとジェニファーが住む南オスロ大学の職員寮。
- 市立図書館
- サリバンが館長を務める図書館。シンボルの大時計は長い間動かされていない。
- ノルウェー国際ホテル
- ケイとエドワードが滞在しているホテル。
- オスロウィーク新聞社
- ノランとティムが勤める新聞社。
- 警察署
- ゴッツが勤務する警察署。
- リックの家
- オスロ郊外に位置する邸宅。
- シナリオ分岐/マルチエンディング
- プロローグでの行動によって、物語はジェニファーが主人公の「ジェニファー編」とヘレンが主人公の「ヘレン編」に大きく分岐する。その後もプレイヤーの行動によって展開は変化し、それぞれA~Eまで用意されたエンディングのいずれかを迎えることになる。また、主人公以外の人物の生死もその多くがプレイヤーに委ねられている。
シナリオ
プロローグにおけるプレイヤーの行動によって主人公がジェニファーもしくはヘレンに決定され、前者なら「ジェニファー編」、後者なら「ヘレン編」として以降の物語が進行する。
- プロローグ
- 大学研究棟(サミュエル・バートン)
- 何としても事件の手がかりを得たいバートンはジェニファーに退行催眠を施す。
- シナリオ1
- 大学研究棟(ジェニファー・シンプソン/ヘレン・マクスウェル)
- ジェニファー編:ノランとのデートの帰り、誰かにつけられているような気配を感じたジェニファーは南オスロ大学に逃げ込む。
- ヘレン編:仮眠室で休んでいたヘレンは何者かのノックの音に目を覚ます。
- シナリオ2
- リックの家(ノラン・キャンベル/スターン・ゴッツ)
- ジェニファー編:ジェニファーの依頼でリック宅を訪れたノランはイギリスにあるというバロウズ城の話を聞かされる。
- ヘレン編:ヘレンの依頼でリック宅を訪れたゴッツはイギリスにあるというバロウズ城の話を聞かされる。
- 市立図書館(ヘレン・マクスウェル)
- シザーマンの手がかりを得るために希覯本閲覧室を訪れたヘレンは歴史書にバロウズ城の記述を発見する。
- ラストシナリオ
- バロウズ城(ジェニファー・シンプソン/ヘレン・マクスウェル)
- シザーマンの謎に迫るためイギリスへ飛んだ一行はバロウズ城付近の森でキャンプを張るが、翌朝ジェニファー、ハリス、エドワードの3人が姿を消してしまう。ヘレンたちは急いでバロウズ城へと向かう。
キーワード
これらは後述のノベライズ版にて明らかにされた設定である。
- バロウズ家
- 15世紀初頭、バーシー家の従臣から辺境領主として起こったイングランドの貴族。スコットランドとの国境を5世紀に渡り統治していた。1912年にイギリスからノルウェーへ移住。
- セオドール・バロウズ
- バロウズ家初代城主。百年戦争から帰還した後、極端に死を恐れるようになり邪教を崇拝するようになる。死と恐怖を求める神にそれらを献上するという信仰の元、領地の子供を誘拐しては虐殺したため「人喰いバロウズ」と畏怖された。
- バロウズ城
- イングランド北部、イギリス海峡に面した崖の上に立つ城。15世紀半ば、当時この地方の領主だったセオドール・バロウズが百年戦争から帰還した際に建造。簡素で戦闘的であるにもかかわらず城壁や堀を持たない外観は、非物理的な力による防衛が図られていたことを示している。
- 偉大なる父
- バロウズ家が信仰する宗教における神。人々に死を与え、彼を崇拝する者には魂の不死を与えると言われる。
- 偉大なる父の息子
- バロウズ家が信仰する宗教で、崇拝者に死と恐怖をもたらす存在。彼らに肉体を滅ぼされることで崇拝者は魂の不死を得、人々の恐怖を糧に永遠の時を生きるとされる。神学における天使のような存在で、巨大なハサミを持ち、扉を開いてやってくると言われる。女の腹を通じて生まれ、生後10年を「サナギ」と呼ばれる巨大な嬰児の姿で過ごした後、成体となる。ただし生殖機能はない。「偉大なる父の使徒」とも。強力なサイ・パワーを有し、その肉体は物理的衝撃の一切を無効化する。
- クェンティン・バロウズ
- バロウズ家13代目城主。初代セオドールから4世紀に渡り続いてきた邪教信仰に反対した人物。自らの代に生まれた偉大なる父の息子を滅ぼし邪教信仰を根絶しようと試みたが、邪教派により暗殺された。
- グラニット孤児院
- ジェニファーが育った孤児院。ケイはジェニファーがバロウズ邸に引き取られた後ここに就任した。
- 時計塔屋敷
- 巨大な時計塔に由来するバロウズ邸の別名。付近の人々はこの鐘の音を合図に生活していた。
- 大きな城のリトルジョン (Little John from the Castle)
- バロウズ城の怪物をモチーフに周辺地域で歌われた童歌。ラストシナリオで聞くことになる。3番まであり、ファミ通攻略本に歌詞が掲載されている。
スタッフ
- ディレクター - 河野一二三
- メインプログラマー - 樋口正樹
- ビジュアルディレクター - 島崎洋一郎
- サウンドディレクター - 高添香織
- ミュージックコンポーザー - 新倉浩司
メディア展開
ラジオドラマ
ラジオ番組「子安・氷上のゲムドラナイト」でラジオドラマがオンエアされた。リスナーの投票で放送されるシナリオが決まるというもので、同作品を収録したドラマCDには未放送分も完全収録されている。
- キャスト
小説
牧野修が手がけたノベライズ版『クロックタワー2 アドベンチャーノベル』が、『ジェニファー編』と『ヘレン編』の2作発売された。選択肢によって展開が分岐する方式でゲームの雰囲気を再現する試みがなされている。ストーリーはゲームにほぼ忠実だが、ゲーム中では語られなかった多くの設定が明らかにされている。