イングランド銀行
イングランド銀行(イングランドぎんこう、テンプレート:Lang-en-short)は、イギリスの中央銀行。正式名称は「Governor and Company of the Bank of England」となる。
本店がシティのスレッドニードル通りに所在するため、「スレッドニードル通りの老婦人」と呼ばれることがある。現任の総裁は2013年7月1日に就任したマーク・カーニー。なお、歴史的には、「英蘭銀行」と表記されることもままあった。この場合「英蘭」は「イングランド」の音訳であり、「イギリスとオランダ」(英蘭戦争など)を意味するものではない。
歴史
イングランド銀行は、スコットランド人のウィリアム・パターソンと財務府長官のチャールズ・モンタギューにより当時大同盟戦争(ファルツ継承戦争)下にあったイングランド王国の軍事費を資金する目的で1694年に創設され、イングランド王国政府の銀行として同年7月27日のウィリアム3世・メアリー2世の勅令により認可された。初代総裁はジョン・フーブロン(John Houblon)であった。これは、名誉革命によって国王となったウィリアム3世治下のイングランドがオランダ財政に学んだ結果でもあった。当時、同銀行の設立に加え、証券市場の成立などの改革も進められた[1]。
ウィリアム・パターソンは翌年のスコットランド王国政府のスコットランド銀行設立にも関わっているが、スコットランド銀行は経済的に深刻な状況にあったスコットランド国内への投資およびスコットランド会社によるダリエン計画への投資を目的としておりその性格は異なっている。
なおスコットランドの経済破綻に伴う連合王国の成立はこの10年余り後の1707年である。
イングランド銀行は、1734年には現在地に移転し、次第に敷地を拡張していった。
バルト海貿易で富を築き、イングランド銀行総裁を務めたジョン・ソーントンは、息子ヘンリやサミュエルらとともに奴隷貿易廃止法案に尽力した[1]。
1807年、大英帝国内での奴隷貿易は禁止された。
19世紀半ばのヴィクトリア朝時代から第一次世界大戦の終わりまでのイギリスは「世界の銀行」と呼ばれ、世界各地の政府、鉱山、工場、プランテーションなどに投資して、利子を稼いだ。
統計によれば、1914年における、世界の海外投資の43パーセントをイギリスが占めていたという。
ロンドン旧市街のシティ・オブ・ロンドンには、こんにちでも400以上の外国銀行や証券取引所、海上保険庁その他の金融機関が並んでいる。
2013年7月1日から初めての外国人のマーク・カーニーが総裁になった。
第二次世界大戦中の1939年、ナチス・ドイツがチェコスロバキア中央銀行(のちのチェコ国立銀行、スロバキア国立銀行)から略奪した金塊(現在の価値で7億ポンド相当)を売却するのに協力していたことが、2013年7月に公開された歴史文書で判明。
機能
1998年イングランド銀行法で制定された諸機能、つまり物価安定の維持と英国政府の経済政策支援を遂行する。
- イングランドとウェールズにおける通貨発行権(UKポンド参照)
- 政府の銀行であると共に「最後の貸手」として銀行の銀行である。
- 外国為替と金準備を管理し、政府の証券(国債)を登録する。
- 政府統合基金の運営
かっては銀行業界の規制・監督も行っていたが、この責任は1998年以来、金融サービス機構(FSA)に移行した。 また1997年以来、金融政策委員会が政策金利など金利設定の責任を有している。 スコットランドと北アイルランドの通貨発行権はその地域の銀行がもっているが、イングランド銀行に通貨発行額とほとんど同額の預け入れを義務付けられている。
歴代総裁
1899~2014年現在までのイングランド銀行の歴代総裁は以下の通り。ただし、以下の表はイングランド銀行ホームページの資料を基に作られたものである[2]。
名前 | 期間 |
---|---|
サミュエル・グラッドストン(Samuel Gladstone) | 1899-1901 |
アガストゥス・プレボスト(Augustus Prevost) | 1901-1903 |
サミュエル・モーリー(Samuel Morley) | 1903-1905 |
アレクサンダー・ワラス(Alexander Wallace) | 1905-1907 |
ウィリアム・キャンベル(William Campbell) | 1907-1909 |
レジナルド・ジョンストン(Reginald Johnston) | 1909-1911 |
アルフレッド・コール(Alfred Cole) | 1911-1913 |
ウォルター・カンリフ(Walter Cunliffe) | 1913-1918 |
ブライアン・コケイン(Brien Cokayne) | 1918-1920 |
モンタギュー・ノーマン(Montagu Norman) | 1920-1944 |
トーマス・カット(Thomas Catto) | 1944-1949 |
キャメロン・コボルト(Cameron Cobbold) | 1949-1961 |
ローランド・バーリング(Rowland Baring) | 1961-1966 |
レスリー・オブライアン(Leslie O’Brien) | 1966-1973 |
ゴードン・リチャードソン(Gordon Richardson) | 1973-1983 |
ロバート・リー=ペンバートン(Robert Leigh-Pemberton) | 1983-1993 |
エドワード・ジョージ(Edward George) | 1993-2003 |
マーヴィン・キング(Mervyn King) | 2003-2013 |
マーク・カーニー(Mark Carney) | 2013- |
脚注
- ↑ 1.0 1.1 井野瀬(2007)
- ↑ テンプレート:Cite website
参考文献
関連項目
- ノーザン・ロック
- バンク駅 - ロンドン地下鉄のバンク駅の名はイングランド銀行に近いことに由来。銀行に駅出入口が併設されている。
- フランス銀行
- ゴードン・バンクス - 鉄壁の守備と名前からイングランド銀行になぞらえ「Banks of England」の異名を持ったサッカーのゴールキーパー。