熊川哲也
テンプレート:Infobox 人物 テンプレート:Portal 熊川 哲也(くまかわ てつや、1972年3月5日 - )は、日本の北海道出身のバレエダンサー・振付家である。バレエ団「Kバレエカンパニー」主宰。愛称は、テディ(Teddy)。血液型はA型。身長174cm。
略歴
北海道旭川市生まれ[1]。父親は富良野市出身[2]。3歳の時に父の転職に伴い、札幌市に移る[1]。10歳の時、従弟の高橋宏尚(現・英国ノーザンバレエシアタープリンシパル)の影響でバレエを習い始める[3]。久富淑子、久光孝生に師事[4]。
1986年(昭和61年)、14歳のときに参加した講習会で、世界的名バレエ教師のハンス・マイスターにその才能を認められ、翌1987年(昭和62年)9月英国ロイヤルバレエ学校に留学[5][6]。在学中の1988年(昭和63年)、日本人としては初めてソ連(当時)・ペテルブルクのマリインスキー劇場で踊った[7]。翌年には、第17回ローザンヌ国際バレエコンクールに出場、日本人初の金賞を受賞し[3]、その演技は絶賛された[8]。
1989年(平成元年)2月、英国ロイヤル・バレエ団に東洋人として初めて入団し[9][10]、同年7月にバレエ団最年少でソリストに昇進[11]。12月にはケネス・マクミランの新作『パゴダの王子』の道化役に抜擢される[12]。1991年(平成3年)ファースト・ソリスト[13]、1993年(平成5年)5月にプリンシパルに昇格[9][14]。天性の体のバネを生かした、滞空時間の長い跳躍と切れ味鋭い回転が持ち味で、『ドン・キホーテ』のバジルを始め、数多くの作品に出演した。1996年には、ロイヤルの男性プリンシパル4人とともに、初のセルフプロデュース公演「メイド・イン・ロンドン」を日本で行い成功させる[15][4]。同バレエ団には約10年間在籍し、世界各国の舞台で踊る。1998年(平成10年)に退団した[16]。
その後99年1月に熊川は、自らKバレエカンパニーを創立[16][4]。以来国内外で活動を続ける傍ら同カンパニーの芸術監督としてプロデュース・演出・振付なども手がけ、現在は年に二度の全国ツアーを中心に、年間約10万人の観客を動員し公演を行う。主な上演作品には「ドン・キホーテ」「白鳥の湖」「ロミオとジュリエット」「海賊」「シンデレラ」「くるみ割り人形」など古典作品の改訂を中心に、サー・フレデリック・アシュトン、ジョージ・バランシン、ローラン・プティによる作品、熊川自身による新作振付や、若手振付家による作品の上演も行っている。マヤ・プリセツカヤ、シルヴィ・ギエム、ダーシー・バッセル、吉田都など、内外の有名ソリストとの共演も多い。
2007年(平成19年)5月15日に札幌市で行われた『海賊』の公演中、ジャンプの着地の際に右ひざをひねり公演途中で舞台を降板した。翌日、都内病院で右膝前十字靭帯損傷と診断され、約20年間のバレエキャリアで初めて代役を立てる事態となったが、翌年3月の新作『ベートーヴェン 第九』で復帰した。
2011年(平成23年)6月30日に、2012年からBunkamura オーチャードホールの芸術監督に就任することが発表される。任期は5年[17]。
2003年Kバレエカンパニーの附属バレエスクールとして、Kバレエスクールを設立[4]。小石川、恵比寿、吉祥寺、横浜で開校する。特に小石川校ではプロダンサーを目指す子ども達を対象にするため、オーディション制をうたっている。 またそれぞれのスタジオでは、大人のためのバレエスタジオ「バレエゲート」を併設している。
受賞
- 1989年 ローザンヌ国際バレエコンクール 金賞、高円宮賞
- 1989年 ユーロビジョン・ヤング・ダンサーズ クラシック賞
- 1998年 日本アカデミー賞 主演男優賞(『F』)
- 2001年 第27回橘秋子賞特別賞
- 2003年 第3回朝日舞台芸術賞 舞台芸術賞(『白鳥の湖』)
- 2005年 第5回朝日舞台芸術賞 舞台芸術賞(『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』、Kバレエカンパニーとして受賞)
- 2005年 芸術選奨文部科学大臣賞
- 2013年 紫綬褒章
人物・エピソード
- 『Kバレエカンパニー』では、古典の全幕作品に次々と取り組み、再振付から音楽・衣装・装置・宣伝・DVDの編集、さらにそれらを回して行く財務・経営に至るまで、全て自らのポリシーを貫いている[18]。
- 次世代の才能ある芸術家をひとりでも多く見いださなければという強い思いで、バレエスクールを開校。若き才能の育成に取り組み、自ら指導にもあたるほか、創設・芸術監督を務めるKバレエカンパニーでは積極的に才能ある若いダンサーの起用を行う等、後進の育成にも力を注いでいる。また、バレエ経験のない大人から上級者まで通えるバレエスタジオの運営にも力を入れる事業家でもあり、子どもから大人まで幅広い支持を集めている。
- バレエや著名なバレエ音楽の作曲家に関する古書などのコレクションにこだわりを持ち、 書店街での収集の過程では偉大な歴史の片鱗に遭遇する事もあると語っている。
- 無類の車好きとしても知られる。
主なレパートリー
- ドン・キホーテ(バジル)
- 白鳥の湖(ジークフリート、チャルダッシュ、ナポリの踊り)
- 眠れる森の美女(王子、青い鳥のパ・ド・ドゥ)
- くるみ割り人形(王子、中国の踊り)
- ラ・バヤデール(ソロル、ブロンズアイドル)
- ジゼル(アルブレヒト、ペザントのパ・ド・ドゥ)
- ロメオとジュリエット (ケネス・マクミラン振付、ロミオ、マキューシオ)
- シンデレラ(フレデリック・アシュトン振付、王子、道化)
- パゴダの王子(ケネス・マクミラン振付、道化)
- マノン(ケネス・マクミラン振付、ベガー・チーフ)
- 三人姉妹(ケネス・マクミラン振付、主役)
- 真夏の夜の夢(フレデリック・アシュトン振付、パック、オベロン)
- バレエの情景(フレデリック・アシュトン振付、主役)
- ラプソディ(フレデリック・アシュトン振付、主役)
- ペトルーシュカ(ミハイル・フォーキン振付、タイトルロール)
- 放蕩息子(ジョージ・バランシン振付、タイトルロール)
- シンフォニー・イン・C(ジョージ・バランシン振付、第3楽章)
- フー・ケアーズ?(ジョージ・バランシン振付、主役)
- 若者と死(ローラン・プティ振付、若者)
- カルメン(ローラン・プティ振付、主役)
- プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ(トワイラ・サープ振付、主役)
- イン・ザ・ミドル、サムホワット・エレヴェイテッド(ウィリアム・フォーサイス振付)
- エボニー・コンチェルト(アシュレイ・ペイジ振付)
- 海賊(振付:熊川哲也、アリ)
- ロミオとジュリエット(振付:熊川哲也、ロミオ)
- シンデレラ(振付:熊川哲也)
- ジゼル(再振付:熊川哲也、アルブレヒト)
- 眠れる森の美女(再振付:熊川哲也、王子)
- 白鳥の湖(再振付:熊川哲也、王子)
- コッペリア(再振付:熊川哲也、フランツ)
- ドン・キホーテ(再振付:熊川哲也、バジル、エスパーダ)
- くるみ割り人形(振付:熊川哲也、くるみ割り人形/王子)
- ベートーヴェン第九(振付:熊川哲也、第4楽章主役)
- ウォルフガング(振付:熊川哲也)
- パッシング・ヴォイス(振付:熊川哲也、主役)
- ソリチュード(振付:熊川哲也)
メディア出演
- 映画
- テレビドラマ
- GOOD LUCK!! - 本人役でのカメオ出演
- ラジオ
- 熊川哲也のバレエ音楽スタジオ(2011年4月-、NHK-FM放送)
- CM
- 書籍
- プリンシパルへの道 - 熊川哲也の青春(1997年、新書館)
- クリスタリン(1997年、筑摩書房、写真集)
- ONE DAY(1998年、角川書店、写真集)
- Made in LONDON(1998年、文藝春秋)
- ドメイン(2000年、集英社)
- バレエが選んだ男(2003年、新書館 、写真集)
- DVD
- ジゼル(2000年)
- カルメン(2001年)
- Being a Dancer(2001年)
- 白鳥の湖(2003年)
- コッペリア(2004年)
- ドン・キホーテ(2005年)
- ラプソディ(2005年)
- くるみ割り人形(2006年)
- 若者と死(2007年)
- Dancer(2008年)
- ロミオとジュリエット(2010年)
- 海賊(2010年)
- 情熱大陸×熊川哲也 プレミアム・エディション(2011年)
- THE BEST OF KUMAKAWA(2012年)
- CD
- レベランス
- 熊川哲也バレエ名曲セレクション
- 熊川哲也の「くるみ割り人形」
- 音声ガイド
- 魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展(2014年6月18日 - 9月1日、国立新美術館)
脚注
- ↑ 1.0 1.1 テンプレート:Cite web
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」44頁
- ↑ 3.0 3.1 「プロ力 - 仕事の肖像」、29 - 30頁
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 「プロ力 - 仕事の肖像」、41頁
- ↑ 「プロ力 - 仕事の肖像」、30 - 31頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」48-49頁
- ↑ 「Made in LONDON」、66 - 67頁
- ↑ 同コンクールでは、決選以外は拍手を禁止されているが、予選の段階から観客の拍手が鳴り止まなかった。また、当時のテレビ解説者が熊川のドン・キホーテのバジルを評して「少し芝居がかっていますが、素晴らしいですね。彼は既にプロとしてやっていけます。今は膝下が少し短いようですが、成長すればそれも…。」とコメントした。なお、このコンクールの解説者は、クロード・ベッシー元オペラ座バレエ学校校長と混同されがちだが、東京大会の解説者はヴィオレット・ヴェルディである。
- ↑ 9.0 9.1 「プロ力 - 仕事の肖像」、31 - 32頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」66頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」76頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」76-77頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」82頁
- ↑ 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」87-88頁
- ↑ 「プロ力 - 仕事の肖像」、33頁
- ↑ 16.0 16.1 「プロ力 - 仕事の肖像」、34頁
- ↑ 熊川哲也がBunkamura オーチャードホールの初代芸術監督に就任(シアターガイド、2011年6月28日)
- ↑ 「プロ力 - 仕事の肖像」、36 - 37頁
参考文献
- 「プリンシパルへの道 熊川哲也の青春」、新書館、1997年
- 熊川哲也「Made in LONDON」、文藝春秋、1998年12月
- 「プロ力 - 仕事の肖像」AERA編集部編、朝日新聞出版、2009年3月。熊川の項の執筆者は清野由美