ホーカー ハンター
テンプレート:Infobox 航空機 ホーカー ハンター (Hawker Hunter) とはイギリスの航空機メーカー、ホーカー社で開発され、各国で使用されたジェット戦闘機である。イギリス空軍の戦闘機であるグロスター ミーティアの後継機として開始された。1960年代に戦闘機としての役目を終えたが、対地攻撃機型が1970年まで運用された。すでに旧式化しており大半は退役しているが、レバノンでは現役である。
開発と特徴
航空省が発行した仕様書E.38/46のためにシドニー・カムはホーカー P.1052を設計し、これはホーカー シーホークの翼を後退翼に修正した機体であった。1948年に初飛行を行ったが、政府や軍に採用されなかった。しかし、シドニー・カムはP.1052の開発を生かして白昼ジェット要撃機を求める仕様書F.43/46の要求を満たす新たな戦闘機の開発に取りかかった。最初に機首にインテークを配置した試作機が製造された。これは速度の向上に繋がったが、インテークを主翼の根元に配した従来の双ブーム式と比較した際にレーダーの搭載や兵装搭載力に劣った。最終的に安定性を懸念された結果、双ブーム式が選択され、P.1067の名称がつけられた。この機体にはロールス・ロイス製のジェットエンジン、ニーンよりも一回り小さくて出力の大きいエイヴォンを搭載した。
1951年7月20日にエイヴォン Mk. 107 エンジンを搭載して初飛行した。政府側からバックアップとして他社のエンジンを搭載するよう要請を受けたため、1952年11月30日にはサファイアを搭載した試作機が初飛行した。補給省は初飛行に先立つ1950年3月にハンターと命名して、生産を決定した。部隊配備は1954年7月からイギリス空軍で開始された。
ハンターは機動性が良く、ADEN 30 mm機関砲を4門搭載し火力も強力であった。初期型ではトラブルも続出したが、改良されたエイヴォンを搭載したF.4型以降は元来の堅実な設計も相まって非常に信頼性に富んだ機体となった。また機体にモジュラー構造を取り入れていたことから、古い型でもアップグレードや練習機型への改造が容易に行えた。
練習機型においては座席の並列複座配置が採用されたが、この実現のためにコックピットの外形が大きく左右に膨らむこととなり、試作段階ではコックピット後部で激しいバフェッティング(気流の剥離)が起こり問題となった。この問題は困難で時間を要し、当時研究が進んでいたエリアルールに基いてコックピット後方から主翼部分にかけての胴体を整形することにより、ようやくの解決を見た。
配備と運用
ハンターが登場した時期にはアメリカ合衆国やソビエト連邦で超音速の機体が開発・実用化されつつあり、亜音速のハンターは速度の面では同時期の機体に劣っていた。このため、常に旧ソ連の新鋭機に対峙していたオランダ、ベルギーなどヨーロッパ諸国では早い時期に退役している。
しかし、低空での機動性の良さや兵装の搭載量が多さ、そして4連装のアデン機関砲の火力を買われ、様々な紛争に直面していた発展途上国においては、対地攻撃機として長く運用された。この際には、ヨーロッパ諸国で退役した機体がホーカー社によって買い戻され、近代化改修・オーバーホールを受けて再度販売されたケースも多い。また、高等練習機としても使用され、イギリスではコックピットが狭いナット練習機に乗るには大柄すぎるパイロットの訓練を引き受けていた。
イギリス空軍は第二次中東戦争にハンターを派遣したが、航続力不足により活躍する機会がなかった。1960年から当時イギリス領だったアデン保護領(現イエメン)のアデンに常駐していた部隊が、デ・ハビランド ベノムと入れ替わりでハンターとなった。アデンの部隊は1961年にイラクがクウェートへ侵攻する意思を見せたことからクウェートに派遣された。仮にイラクが実際に侵攻を行った場合、イラク軍のハンターとの戦闘が起こり得たが、侵攻は実際には行われず、戦闘は発生しなかった。1962年からアデン保護領においては、北イエメンとの国境地帯において北イエメンによる地元部族への反乱工作が行われ、また北イエメン機による領空侵犯もたびたびあった。続く1963年~1964年にかけて部族による反乱や北イエメンからの越境攻撃があり、ハンターはこれを鎮圧すべく対地攻撃に出撃し、ロケット弾と機関砲による地上攻撃を行った。また、やはりシンガポールに配備されていたハンターの部隊は、1962年から1966年にかけて起こったマレーシアとインドネシアとの対立においてボルネオ島に進出し、哨戒を行い、回数は少なかったがインドネシアからの空挺兵侵入が起こった際には地上攻撃に出撃した。[1]
インド空軍のハンターは、パキスタンとの間に起こった印パ戦争(第二次及び第三次)においてパキスタン軍機との間で激しい戦闘を行い、戦果も上げたが損害も大きかった。
1973年にはイラク空軍が第四次中東戦争に派遣し、イスラエル空軍機と対峙した。
このほか、ベルギー、オランダ、スウェーデン、スイス、ペルー、シンガポール、レバノン、オマーン、クウェート、ローデシア(後のジンバブエ)、ソマリア、ケニア、チリ等多くの国で使用された。
主翼を改良しリヒート付きエイヴォンを搭載した超音速型ハンターのホーカー P.1083も計画されたが、試作機を製作中の段階で、より高速を目指すP1(後のイングリッシュ・エレクトリック ライトニング)の計画が存在したため、予算の制約からホーカー P.1083の開発は1953年6月に中止されてしまった。
なお現在は、アメリカ軍の訓練支援飛行等を行う民間軍事会社の「ATAC」社が、スイス軍で使用されたF.58をアメリカ軍の戦闘機訓練の際の仮想敵機として使用しており、カナダ国籍の民間登録番号をつけた機体が、日本国内のアメリカ軍基地に度々飛来している。
派生型
- イギリス向け
- P.1067 : 試作機
- P.1101 : 複座訓練機の試作機
- ハンター F.1 : 初期量産型。エイヴォン 113を搭載。1953年3月16日に初飛行。139機製造。
- ハンター F.2 : サファイア 101を搭載。1953年10月14日に初飛行。45機製造。
- ハンター Mk.3 : アフターバーナー付きエイヴォン RA.7Rを搭載した試験機。エアブレーキを追加し、ノーズやキャノピーも変更された。
- ハンター F.4 : F.1に翼内燃料ブラダー(タンク)、増槽を追加。燃料・弾薬供給系を整備。エイヴォン 115 (PA.21)装備。1954年10月20日に初飛行。349機製造。
- ハンター F.5 : F.4のエンジンをサファイア 101に換装。
- ハンター F.6 : 前縁にドッグトゥースを追加した新型主翼を採用。ハードポイント追加。エイヴォン 203/207搭載。1954年1月22日に初飛行。384機製造。
- ハンター F.6A : FGA.9の強化された主翼を採用。
- ハンター T.7 : F.4をベースにした並列複座型練習機。サイド・バイ・サイドの配置にするためノーズを変更。
- ハンター T.7A : イギリス空軍のブラックバーン バッカニア向け複座練習機。
- ハンター T.8 : T.7に陸上用アレスター・フックを装備させたイギリス海軍向け複座練習機。
- ハンター T.8B/C : イギリス海軍のバッカニア向け複座練習機。
- ハンター T.8M : イギリス海軍のBAe シーハリアー向け複座レーダー訓練機。シーハリアーのブルーフォックス・レーダーを装備。
- ハンター FGA.9 : F.6を単座戦闘攻撃機に改造したイギリス空軍機。
- ハンター FR.10 : FGA.9をベースにした偵察機。
- ハンター GA.11 : イギリス海軍の単座兵装訓練機。フックとハーレー・ライトを装備。40機のF.4がGA.11に改装された。
- ハンター PR.11 : イギリス海軍の単座偵察機。ライトをカメラに換装。
- ハンター Mk.12 : RAEに送られた複座試験機。1機製造。
- 輸出向け
- ハンター F.50 : スウェーデン向けのF.4
- ハンター F.51 : デンマーク向けのF.4
- ハンター F.52 : ペルー向けのF.4
- ハンター T.53 : デンマーク向けのT.7
- ハンター F.56 : インド向けのF.6
- ハンター FGA.56A : インド向けのFGA.9
- ハンター FGA.57 : クウェート向けのFGA.9
- ハンター F.58 : スイス向けのF.6
- ハンター F.58A : スイス向けのFGA.9
- ハンター FGA.59/59A/59B : イラク向けのFGA.9
- ハンター F.60 : サウジアラビア向けのF.6
- ハンター T.62 : ペルー向けのT.7
- ハンター T.66/66D/66E : インド向けのT.7 エンジンがF.6に準じた仕様になっている。
- ハンター T.66B : ヨルダン向けのT.66
- ハンター T.66C : レバノン向けのT.66
- ハンター T.67 : クウェート向けのT.66
- ハンター T.68 : スイス向けのT.66
- ハンター T.69 : イラク向けのT.66
- ハンター FGA.70/70A : レバノン向けのFGA.9
- ハンター FGA.71 : チリ向けのFGA.9
- ハンター FR.71A : チリ向けのFR.10
- ハンター T.72 : チリ向けのT.66
- ハンター FGA.73/73A/73B : ヨルダン向けのFGA.9
- ハンター FGA.74/74B : シンガポール向けのFGA.9
- ハンター FR.74A : シンガポール向けのFR.10
- ハンター T.75/75A : シンガポール向けのT.66
- ハンター FGA.76 : アブダビ向けのFGA.9
- ハンター FR.76A : アブダビ向けのFR.10
- ハンター T.77 : アブダビ向けのT.7
- ハンター FGA.78 : カタール向けのFGA.9
- ハンター T.79 : カタール向けのT.7
- ハンター FGA.80 : ケニア向けのFGA.9
- ハンター T.81 : ケニア向けのT.66
採用国
- テンプレート:ABU
- テンプレート:Flagicon ベルギー
- テンプレート:CHI - 1973年9月11日にクーデターを起こしたピノチェト将軍側に立ち、アジェンデ大統領が立てこもる首都サンティアゴのモネダ宮殿(大統領官邸)を空爆した。近代化改修が行なわれて、1980年代まで現役であった。
- テンプレート:Flagicon デンマーク
- テンプレート:IRQ1963 - イラク革命前にイギリスから購入。革命後はインドの支援を受けて運用していた。六日間戦争及びヨム・キプール戦争に出動するが、大きな損害を蒙る事が多かった。
- テンプレート:Flagicon インド - 印パ戦争の際は、パキスタン空軍のF-86 セイバーやF-104 スターファイターと交戦。
- テンプレート:Flagicon ヨルダン - イラク同様、六日間戦争及びヨム・キプール戦争などに出動。現在は退役している。
- テンプレート:Flagicon ケニア
- テンプレート:Flagicon クウェート
- テンプレート:LIB - 六日間戦争の際、イスラエル領空に(誤って?)侵入した2機が撃墜された。また、レバノン内戦中に起きた山岳戦争に出動したが、イスラム教ドルーズ派民兵のZSU-23-4によって、いくつかの機体は撃墜され、被弾したものの飛行可能な機体はキプロスに不時着している。それ以降は活動休止に陥ったとみられるが、内戦終結後にオーバーホールと近代化改修が行なわれた。すでに旧式化しており、一部の機体は同空軍の博物館に展示されている。その一方で、後継機であったミラージュIIIが全機パキスタンに売却され、ロシアからのMiG-29導入も中止された事から、現在においても少数の機体が第一線機として運用されており、レバノン軍の大演習や軍事パレードにおいて飛行する姿が目撃されている。
- テンプレート:Flagicon オランダ
- テンプレート:Flagicon オマーン
- テンプレート:Flagicon ペルー
- テンプレート:Flagicon カタール
- テンプレート:RHO - ケニアから購入したとされ、ローデシア紛争においてCOIN作戦に従事した。
- テンプレート:Flagicon サウジアラビア
- テンプレート:SIN
- テンプレート:SOM - オガデン紛争により1980年代にバーレ政権(当時)が旧ソ連の影響下から旧西側に移行した際、支援途絶により低稼働となったMiG-21など旧ソ連製主体の空軍戦力を補うため、オマーンから少数のハンターを購入したとされる。MiG-21よりも旧式であったため、パイロットからは不評を買っていたともいわれる。ソマリア内戦によってソマリア空軍は自然消滅し、同空軍のハンターはスクラップになって放置されている。[2]
- テンプレート:Flagicon スウェーデン
- テンプレート:SUI - 1990年代まで現役にあり、パトルイユ・スイスでも1994年まで使用した。
- テンプレート:ZIM - 旧ローデシアの機体を継承。しかし、すでに旧式であった事からJ-7などに変更されており、現在は退役したとみられる。
民間
スペック (F.6)
出典
- ↑ 世界の傑作機No.66 ホーカー・ハンター (ISBN 4-89319-063-6)文林堂、1997
- ↑ Somali Hunters by Mick Toal
登場作品
- OVA版で後世日本軍の主力戦闘機『閃電改』として登場。
関連項目
外部リンク
- Hawker Hunter, www.thunder-and-lightnings.co.uk
- Hunter Development & Variants, www.vectorsite.net