無限の住人

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テンプレート:Infobox animanga/Header テンプレート:Infobox animanga/Manga テンプレート:Infobox animanga/TVAnime テンプレート:Infobox animanga/Footer テンプレート:Sidebar with collapsible lists無限の住人』(むげんのじゅうにん)は、沙村広明による日本漫画作品。講談社月刊アフタヌーン』にて1993年6月から2012年12月まで連載された。作者のデビュー作であり代表作である。略称は「むげにん」。

アフタヌーン四季賞で1993年に四季大賞を受賞した同名の作品を連載化したもので、受賞作は同年に『月刊アフタヌーン』に掲載され、単行本第1巻に「序幕」として収録されている。単行本は講談社より2013年2月、全30巻刊行されている。

1997年に第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。また、英語版が2000年にアイズナー賞最優秀国際作品部門を受賞している。2008年夏よりテレビアニメ全13話が放送された。

概要

江戸時代を舞台にしており、人物の造形や所作などが写実的に描かれている一方、主人公が不死の肉体を持つという設定や、時代考証を無視した奇抜な衣装、様々なギミックを施した独創的な武器、擬音の描き文字に漢字を使用するなどの作風から、しばしば「ネオ時代劇」と宣伝される。

連載初期は、主人公・万次が敵を一人ずつ倒していくわかりやすい剣客活劇であったが、連載半ばから登場人物が多数登場し、複数のエピソードが同時に進行する入り組んだ物語が描かれるようになった。また、初期にはパンクロックのような風貌の人物が登場したり、戦闘場面で大ゴマや見開きの背景に花や鳥を描写した一枚絵のような表現が多数あったが、こうした派手な表現も連載途中より控えられるようになった。作風が変化した経緯については沙村広明#『無限の住人』を参照。さらに本作品の特徴として、ペンでは描写できない微妙な陰影を、鉛筆描きによる濃淡で表現しているものが挙げられる。沙村広明#画風も参照。

あらすじ

剣客集団・逸刀流(いっとうりゅう)に両親を殺され、実家の剣術道場を潰された少女・浅野凜(あさの りん)は、仇討ちを遂げるために、不死の肉体を持つ男・万次(まんじ)に用心棒を依頼する。一方、天津影久(あのつ かげひさ)率いる逸刀流は、浅野道場を潰した後も次々に他の剣術道場を傘下に収めて勢力を拡大し、幕府の役人・吐鉤群(はばき かぎむら)の依頼で幕府の剣術指南役を引き受けるまでになるが、同時期に各地で謎の集団・無骸流(むがいりゅう)から襲撃されるようになる。

そんな折、天津が加賀へ向かうことを知った万次と凜は、2人に接触してきた無骸流と協力して天津の殺害を試みるが、暗殺を察知した天津の替え玉作戦により失敗した。その後、凜は万次を置いて単身で天津を追跡し、その凜を万次が追うことになる。紆余曲折を経て、万次と凜は加賀の地にて再会するが、同じ頃、逸刀流は幕府の謀略により、天津が不在の間に多数の幹部が暗殺され、壊滅状態に陥っていた。無骸流による逸刀流剣士の暗殺や天津の加賀行きなど、すべては逸刀流殲滅のために吐が仕組んだものであった。

さらに吐は、不死の肉体を持つ万次に興味を抱き、彼を江戸城地下に監禁したうえで人体実験を繰り返すが、江戸城に潜入した凜が万次を救出したことで、失敗に終わった。騒乱の責を問われ切腹を命じられた吐は、残された日を逸刀流壊滅に費やすことを決意し、新たに私兵隊・六鬼団(ろっきだん)を結成する。一方、市井に潜伏していた逸刀流の残党は、他流派の剣士を新たに引き入れ、幕府への決起に臨む。そして、凜と万次は、逸刀流の顛末を見届けるため、最後の旅に出た。

世界観

血仙蟲

「血仙蟲(けっせんちゅう)」は、チベット仏教のラマ僧によって作り出されたという設定の架空の延命術である。これを施された人間は、体内で無数の「蟲」が培養され、傷を負ってもその「蟲」が損なわれた体組織を代用し直ちに修復されるようになり、また年も取らなくなる(腕などを切り落とされても傷口を合わせれば再接合できる)。ただし、施術される以前にもともと欠損していた肉体の部位は修復されず、また傷を負う際の痛みがなくなるわけでもない。「血仙蟲」を持った人間を殺害するには「血仙殺」(けっせんさつ)という毒で血仙蟲を無効にするか、絞殺・溺死など酸素の供給を断つ手段を用いるか、首を斬り落とすしかない。また、極端な低温状態に晒して凍死させることも可能(温度の低下によって蟲の働きが鈍る)。

作中に登場する組織

逸刀流

「逸刀流(いっとうりゅう)」は、特定の流儀・格式を持たず、あらゆる武器・剣技を用いることを認められ、「一対一で戦うこと」を唯一の身上とする剣客集団である。元は約50年前、無天一流の門弟であった天津三郎が、師である浅野虎秀を助けるために振るった剣が「邪道」とみなされて破門されたことへの遺恨から、自身の正しさを証明するために興した流派である。天津三郎の孫にあたる天津影久が統主になってからは、近隣の道場を次々と併呑し、江戸に千人の門徒を抱えるようになる。

無骸流

「無骸流(むがいりゅう)」は、逸刀流を標的にする少数精鋭の暗殺者集団である。「百人斬り」こと万次が逸刀流を追っていることを聞き、共闘を持ちかけた。その実態は、吐鉤群が死罪人を集めて組織した私兵隊である。逸刀流剣士を一人殺害するごとに最低1両2分が支給され、50両を納めれば無罪放免されることになっている。逸刀流がほぼ壊滅したのを期に解党した。

六鬼団

「六鬼団(ろっきだん)」は、吐鉤群が無骸流解体後に新たに組織した私兵団である。主戦力である「花組」6名と「蛇組」多数名からなる。「花組」は無骸流と同じく死罪人からなるが、「蛇組」は食い詰めた浪人などを吐の私費で雇っている。

登場人物

テンプレート:Main

卍 / 万次(まんじ)
本作品の主人公である隻眼の剣士。元は旗本・堀井重信の腰物同心だったが、堀井の不正を見かね、彼を斬殺したためにお尋ね者となった。その際に追っ手100人を斬ったことから「百人斬り」の異称で呼ばれるようになる。その後、八百比丘尼によって血仙蟲を身体に移植され、不死の肉体を持つに至った。着物の中に多数の武器を隠し持っており、しばしば気に入った敵の武器を自分のものにするという設定である。
浅野凜(あさの りん)
本作品のヒロインである無天一流統主・浅野虎厳の一人娘。16歳。天津影久率いる逸刀流に両親を殺害され、仇討ちを誓う。
天津影久(あのつ かげひさ)
逸刀流二代目統主。22歳。色白で線の細い優男だが、祖父・天津三郎から幼少の頃より鍛錬を受けたことで、天才的な剣才を持つ。祖父の遺志を継ぎ、あらゆる流派の垣を取り除くことを目指す。部下を率いて無天一流の道場を襲撃し、門下生全員と凜の父親である統主・浅野虎厳を殺害した。幕府の軍事力を逸刀流の理念で染め上げることを悲願としていたが、最終話直前、自ら凜に殺される。
凶戴斗(まがつ たいと)
逸刀流創設時からの古参で、逆立てた髪と口元を覆う覆面が特徴の青年剣士。西洋由来の仕込み刀を使う。もとは百姓の出で、「凶」の苗字は自分で付けた。山育ちの経験から、地の利を生かした戦いを得意とする。また、幼少時に妹を侍に殺されたという過去のために武士階級を憎んでいる。
乙橘槇絵(おとのたちばな まきえ)
天津影久が「揺籃の師」と仰ぐ人物で、彼のはとこに当たる女性。元の姓は春川。10歳のとき、次期無天一流統主と目されていた兄を剣術で破り、割腹に追い込んだことで母親と共に春川家から絶縁され、遊女に身をやつしていたところを天津に身請けされた。
尸良(しら)
短髪・太陽柄の着物を着た剣士。長浜出身。16歳から金銭と引き換えに人を殺して生活していた。相手の四肢を切断し、無抵抗状態にしてから弄り殺しにしたり、女を犯しながら刺殺するという手口で性的快楽を得るなど、作中では残虐な描写がなされている。刀身の背が鋸刃になっている刀を愛用する。百琳の半年ほど後に無骸流に入り、30人以上の逸刀流剣士を殺害した。
百琳(ひゃくりん)
金髪・高下駄で姉御肌の女性。騙し討ち専門で真理路と組んで逸刀流を狩っていた。戦闘時は腕につけた折りたたみ式のボウガンのような武器で戦う。
偽一(ぎいち)
サングラスのような黒目鏡をかけた禿頭の男。手錠のような独特の鎖鎌を使い、60人もの逸刀流剣士を殺害した。冷静・寡黙な人物で敵には容赦しないが、使命で傷を負い戦えなくなった百琳を気遣うなど人情を解する面もある。
吐鉤群(はばき かぎむら)
幕府の新番頭にして無骸流の影の頭目。

テレビアニメ

2008年7月13日より、AT-Xにて放送された。また、2009年3月5日からはテレ玉アニたま』枠にて放送された。物語初期から凛や無骸流が登場し、吐が天津影久に講剣所の師範を依頼するなど、ストーリーの時系列に一部変更がある。殺陣も原作の残酷な描写から、TV向けの極力押さえたものになっている。ちなみに、原作者の沙村も第10話に脇役で登場している。

スタッフ

  • 原作 - 沙村広明「無限の住人」
  • 監督 - 真下耕一
  • シリーズ構成 - 川崎ヒロユキ
  • キャラクターデザイン - 山下喜光
  • 得物デザイン - 肥塚正史
  • 色彩設計 - 小島真喜子
  • 特殊効果 - 加茂あゆみ
  • 美術監督 - 海野よしみ
  • 撮影監督 - 五十嵐慎一、斎藤仁
  • 音響監督 - なかのとおる
  • 音楽 - 大谷幸
  • エグゼクティブプロデューサー - 針生雅行、関澤新二、石川みちる
  • プロデューサー - 松下卓也、木下哲哉、森下勝司、山田昇
  • アニメーションプロデューサー - 村岡秀昭、丸亮二、清水孝泰、田中憲一朗
  • アニメーション制作協力 - Production I.G
  • アニメーション制作 - ビィートレイン
  • 製作 - 浅野道場復興会

主題歌

オープニングテーマ「赤いウサギ」
作詞 - 愛華 / 作曲 - 大谷幸 / 歌 - 枕草子 
エンディングテーマ「wants
作詞 - 田中和将 / 作曲 - 亀井亨 / 編曲 - 長田進&GRAPEVINE / 歌 - GRAPEVINE 

キャスト

各話ごとのサブキャラクター

第一話『罪人』
第二話『征服』第三話『恋詠』
第四話『天才』
第五話『執人』
第六話『蟲の唄』第七話『三途』
第八話『爪弾』第九話『夢弾』
第十話『變面』
第十一話『羽根』
第十三話『風』

各話リスト

話数 サブタイトル 脚本 絵コンテ 演出 作画監督
第一話 罪人 川崎ヒロユキ 真下耕一 黒川智之 山下喜光
第二話 征服 澤井幸次 天崎まなむ
第三話 恋詠 有江勇樹 天崎まなむ
門智昭
第四話 天才 モリヲカヒロシ 津幡佳明
第五話 執人 黒川智之 佐々木睦美
第六話 蟲の唄 有江勇樹 天崎まなむ
第七話 三途 澤井幸次 山下喜光
第八話 爪弾 モリヲカヒロシ 落合瞳
第九話 夢弾 黒川智之 津幡佳明
第十話 變面 金巻兼一 澤井幸次
有江勇樹
澤井幸次 佐々木睦美
第十一話 羽根 澤井幸次 天崎まなむ
第十二話 斜凜 川崎ヒロユキ モリヲカヒロシ 落合瞳
第十三話 澤井幸次 黒川智之 山下喜光

関連商品

無限の住人ポストカードブック 三十二幻唱(1996年、講談社
作中のイラストを使用したポストカードブック
無限の住人 イメージアルバム(1996年、ポニーキャニオン
人間椅子によるアルバムCD。沙村広明が女性の背中に描いた凛のイラスト(浮世絵風)をジャケットに使用。
(2002年、プレイステーション2用ゲームソフト、スパイク
アクションゲーム。ゲーム自体は『無限の住人』の作品世界と何の関係もないが、隠しキャラとして万次が登場。一定の条件を満たすことで妹守辰政を携えた彼を操作できるようになる。21巻掲載の「おとづれ」にてこのゲーム最初の地点の川辺らしき場所が出ている。万次はそこに小屋を建て住んでいるという設定(ゲーム場面にも小屋がある)
無限の住人 武器屋(えものや)24時間 武器コレクションフィギュア(2006年、ボーフォードジャパン
登場人物ではなく、登場武器をフィギュア化するという異例の企画。沙村広明監修。全10種+シークレット1種。大きさ10~13センチ程度。
艶浪 「無限の住人」画集(2008年、講談社)
初の大判本格画集。カラー、鉛筆画100点強を収録。
無限の住人 刃獣異聞(2008年、講談社)
大迫純一によるノベライズ作品。内容は小説オリジナル。2013年2月に講談社ラノベ文庫からも刊行されている。
無限の住人 凛と卍の切り捨て御免(2008年、講談社)
モバイルゲームサイトの会員向けコンテンツ。チャンバラゲーム。

外部リンク