「先代旧事本紀大成経」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
(関連項目)
 
(相違点なし)

2014年5月14日 (水) 17:25時点における最新版

先代旧事本紀大成経(せんだいくじほんきたいせいきょう、先代舊事本紀大成經)は、『先代旧事本紀』を基に江戸時代に作られたと推測される偽書。この文献をめぐって「大成経事件」(先代旧事本紀大成経事件、伊雑宮事件)が起こった。


先代旧事本紀大成経事件

1679年(延宝7年)、江戸の書店で『先代旧事本紀大成経』(七十二巻本)[1]と呼ばれる書物が発見された[2]。この大成経の内容が公開されると大きな話題となり、学者神職僧侶の間で広く読まれるようになった。しかし、大成経の内容は伊勢神宮別宮の伊雑宮の神職が主張していた、伊雑宮が日神を祀る社であり内宮・外宮は星神・月神を祀るものであるという説を裏づけるようなものであることがわかり、内宮・外宮の神職がこの書の内容について幕府に詮議を求めた。

1681年(天和元年)、幕府は大成経を偽書と断定し、江戸の版元「戸嶋惣兵衛」、書店にこの書物を持ち込んだ神道家・永野采女と僧 ・潮音道海[3]、偽作を依頼したとされた伊雑宮の神職らを処罰した。後に大成経を始めとする由緒の明らかでない書物の出版・販売が禁止された。しかし、幕府の目を掻い潜って大成経は出回り続け、垂加神道などに影響を与えている。

関連書籍

  • 『先代舊事本紀大成経』全9巻 須藤太幹解読 先代舊事本紀研究会 2001年(平成13年)
  • 安本美典 (編集) 『奇書『先代旧事本紀』の謎をさぐる』付編「 偽書『先代旧事本紀大成経』事件(もう一つの『先代旧事本紀』?―『大成経』偽書事件)」 批評社 2007年
  • 今田洋三『江戸の禁書』 吉川弘文館 2007年
  • 後藤隆『謎の根元聖典 先代旧事本紀大成経』 徳間書店 2004年
  • 藤原明『日本の偽書』 文藝春秋 2004年
  • 野澤政直『禁書 聖徳太子五憲法』 新人物往来社 2005年
  • 小川龍『高僧 道海と消された経典』 幻冬舎 2007年(小説)

関連論文

  • 佐藤俊晃「近世仏教者の神国意識 : 『近代旧事本紀大成経』と徳翁良高著の『神秘壷中天』」(印度学仏教学研究, 97 (49-1))
  • 佐藤俊晃「潮音道海の神国意識: 『先代旧事本紀大成経』との出逢い前後」 (印度学仏教学研究, 100 (50-2))
  • 湯浅佳子「『先代旧事本紀大成経』の「帝皇本紀」: 聖徳太子関連記事を中心に」 (東京学芸大学紀要: 第2部門 人文科学, 49)
  • 湯浅佳子「『先代旧事本紀大成経』の「神代皇代大成経序」」 (東京学芸大学紀要: 第2部門 人文科学, 50)
  • 岩田貞雄「〈皇大神宮別宮〉伊雑宮謀計事件の真相 : 偽書成立の原由について」 (國學院大學日本文化研究所紀要:33、 1974年3月)
  • 古田紹欽 「徳翁良高に於ける宗弊改革思想の淵源 ―黄檗潮音道海との関係―」 『大倉山論集』2
  • 古田紹欽「潮音道海の神道思想」神道宗教 75

脚注

  1. 本項目で解説した書は「延宝版」、「潮音本」、「七十二巻本」などと呼ばれることがある。『鷦鷯(ささき、さざき)伝本先代旧事本紀大成経(大成経鷦鷯伝)』(三十一巻本、1670年(寛文10年)刊)及び『白河本旧事紀』(伯家伝、三十巻本)は異本。すべて『先代旧事本紀』を基にして江戸時代に創作されたと言われている。後に多数現れる「古史古伝」のルーツ、種本とみる人もいる。
  2. 1675年(延宝3年)、江戸の版元「戸嶋惣兵衛」より『聖徳太子五憲法』と称する書物が刊行された。この書物は聖徳太子の憲法は「通蒙憲法」「政家憲法」「儒士憲法」「釈氏憲法」「神職憲法」の五憲法であり、「通蒙憲法」が日本書紀の十七条憲法であるとする。1679年(延宝7年)に現れた『先代旧事本紀大成経』巻七十「憲法本紀」は1675年(延宝3年)の『聖徳太子五憲法』と同じ内容である。
  3. 潮音道海(ちょうおんどうかい、1628年-95年)は黄檗宗の僧。著書に『摧邪輪(さいじゃりん)』『坐禅論』『霧海南針』などがある。

関連項目

外部リンク