飾り職人の秀

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テンプレート:Pathnav 飾り職人の秀(かざりしょくにんのひで)は、必殺シリーズに登場した仕事人の一人。初登場作は『必殺仕事人』。三田村邦彦が演じた。

キャラクター

名前通り、表の稼業は飾り職人。裏の仕事の遂行時には、黒装束に身を包む(この装束は山本寛斎をモチーフに、三田村自身がデザインしたものである)。初期の殺し技は、細工用の(のみ)を使用し、相手の急所に素早く突き刺して死に至らしめる(主に背後から飛び掛って骨を貫いていた)。『必殺仕事人』第18話において、所持品検査が厳しい場で仕事を行うために、代わりに焼き入れ加工したを用いた。後に簪が定番の武器となり、殺しの他に威嚇として投げつけることもある。初仕事は『新・必殺仕事人』最終話によると上州高崎における贋医者殺し。

時代劇には珍しい髷を結わない異色キャラクターであるが、必殺シリーズに関しては『助け人』の龍(宮内洋)、『新仕置人商売人』の正八火野正平)、『うらごろし』の若(和田アキ子)、『仕事人Ⅴ・激闘編旋風編風雲竜虎編』の村上弘明)、『橋掛人』の新吉(宅麻伸)など、髷を結わないメンバーはほぼ(坊主頭も含めれば)定番である。後に仕事人シリーズにおいてこのポジションは、花屋・鍛冶屋の政に引き継がれる。政とはキャラクターがかぶるため、秀と政が共演する場合は、どちらかのイメージ(服装、髪型など)が変えられることになる。普段の衣装は、黒い股引、腹掛けの上にデニム地の半纏、手首にブレスレット。1980年代当時、三田村がパーソナリティを務めるラジオ番組に和田アキ子が登場した際の話によると、秀のデニム地の半纏と殺し衣装の足回りは和田演じる若のお下がりであったという。『必殺仕事人』の頃は時折、普通の着流し姿を見せることがあった。また『必殺仕事人・激突!』第20話においては、仕事遂行時も普段着で行っている(旅先での仕事であるため、衣装を持って行けなかったという設定と思われる)。

登場初期は、若さゆえにしばしば感情的に暴走しがちな熱血漢で、中村主水藤田まこと)、畷左門(伊吹吾郎)、おとわ(山田五十鈴)といった落ち着いたキャラクターとは対照的な立場で描かれていた。若い時は仕事人の自覚に欠け、主水や左門やおとわから制裁や叱責を受ける時もあったが、自身も後輩の西順之助ひかる一平)などに行い継承して行くことになる。しかし時を経るごとに角が取れていき、やがて主水とも対等に話せる大人の男へと成長していった。『必殺仕事人・激突!』においては、夢次(中村橋之助)や脇役登場人物を、若造・ガキ扱いするセリフもあった。しかし、その反面ではさだ(麻丘めぐみ)に対して同じ仕事人である夫と娘を死なせてしまった後ろめたさで悩む一面もあった。

飾り職人としての腕はいいものの、気に入った仕事しか受けない気まぐれな面があった。情に厚い一面があり、困った人間を見過ごせない性格が災いして何度も事件に巻き込まれた。棺桶の錠と同じく武士への嫌悪感や不満を抱いているのか、『必殺仕事人』時代にはその思いを直接主水や左門にぶつけたりしていた。また、武士社会の独自の文化(切腹や仇討ちなど)についても「一生かかっても、全く理解できない」という言動が『必殺仕事人』時代には見られた。天涯孤独の身の上(過去については『必殺仕事人』第68話で幼馴染との会話で村から奉公や修行に出て江戸に残っているのは自分と相手だけであると語っている他、『必殺仕事人IV』第21話では妹がいたことを、24話では軽業一座に在籍していたことを語っている)であるが、『必殺仕事人IV』では自分が仕事した男の遺児である少女・お民を引き取って育てていた。しかし、最終回で自分の殺しを子供に見られたことによりお尋ね者となり、一旦はお民共々江戸を去る。

『仕事人IV』の一件からしばらく経った後、真砂屋に奉公していたおゆみ(野坂クミ)と関係を持つも逃げられ自暴自棄になりつつも、彼女の恨みを晴らすために真砂屋徳次(伊武雅刀)との激しい死闘を繰り広げたり(映画『必殺! III 裏か表か』)、神楽坂宗右衛門(睦五朗)配下の仕事人として吉原遊女見習い・若紫を見請けする金を稼ぐべく奔走したり(『必殺まっしぐら!』)、奉行所を狂わせた奥田右京亮(真田広之)の一味と闘うために再び主水たちと組む(映画『必殺4 恨みはらします』)など、断続的に江戸に帰郷し、大役を果たしている。

TVスペシャル『必殺スペシャル・春 世にも不思議な大仕事 主水と秀 香港・マカオで大あばれ』では依頼する女性への想いから自身の意思で主水にも協力を求め、二人で香港において仕事を組んだ。

必殺仕事人・激突!』において再レギュラー出演。主水の他、お歌や夢次と組んで裏稼業を再開。その際に仕事人仲間だった男の妻と関わりを持つ。映画『必殺!5 黄金の血』においては裏稼業から足を洗っていた政が悪党・地獄組の悪事によって死んだ恋人・お浅(酒井法子)のかたき討ちに再び裏稼業へ足を踏もうとしたところを諭す。その後、地獄組との激戦で駆けつけた政によって外道の不意打ちから救われたものの、その代償で政は致命傷を負うことに。外道を間一髪で仕留め、政の最期を看取った。それ以後TV本編において最後の大仕事を終えてからは再び江戸を去っていった。

映画『必殺! 主水死す』で、江戸城大奥の派閥争いに巻き込まれ、主水、三味線屋の勇次中条きよし)、おけい(東ちづる)と共に仕事に向かうが、主水が過去の仲間との複雑な関係の果てに小屋の中で爆死。それを勇次、おけいと見守った後、一人江戸を去っていった。その後の消息は全くつかめていない。

本来なら三田村の『太陽にほえろ!』の出演問題もあって『必殺仕事人』第26回(当初は最終回の予定)で他の殺し屋組織との抗争で命を落とす予定であったが、それを知ったファンからの熱烈な助命嘆願により大幅に脚本が変更され、最後まで生き残ることとなった[1]。同作品のヒットと秀の人気が出始めたこともあって同作品最終回まで生き残り、次々作『新・必殺仕事人』でも登場することとなった。このエピソードに表されるように、『仕事人』以降のいわゆる後期必殺シリーズにおいては、三味線屋の勇次と並んで人気の高いキャラクターである。この後もシリーズには頻繁に登場しており、主役である主水を除けば、シリーズに最も多く出演している。

バラエティ番組における「必殺」のパロディにも必ず登場しており、加藤茶梅宮辰夫田代まさし渡辺徹今田耕司などが過去に演じている。

演じる三田村は出演当時は「金をもらって人を殺す」趣旨のドラマに当初から嫌悪感を抱くあまり、撮影期間中にストレスでジンマシンを起こすまでになってしまい早めの降板を申し出たが、スタッフや藤田まことに「あんた、ここで降りたら中途半端な役者で終わるで」と説得され改心し藤田を恩人として心底尊敬するようになった。

出演作品

TVシリーズ

TVスペシャル

舞台

  • 納涼必殺まつり(京都南座
    • 必殺女ねずみ小僧(1981年)
    • 必殺・鳴門の渦潮(1982年。その前に名鉄ホールで先行して上演されたが、秀は三田村でなく内藤剛志が演じたという情報もあり)
    • 必殺ぼたん燈籠(1983年)

劇場版

パチンコ機

いずれも京楽産業.から発売。秀が登場するリーチは頻度は高いが信頼度が極めて低い(信頼度の高い予告を全否定するぐらい弱い)。

補足

  1. この結果、『太陽にほえろ!』の方は、わずか1年という(新人ではない刑事としては)短期間で、不本意ながら降板を申し入れなければならなくなった。しかし事情を理解した『太陽』側から快諾されるとともに“いつかまた戻ってきてもらいたい”という願いも込められて、同番組としては異例となる「栄転」という形での卒業となった。

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