西表島

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テンプレート:Infobox 西表島(いりおもてじま)は、沖縄県八重山郡竹富町に属するであり、八重山諸島最大の島である。

地理

ファイル:Hatoma island.jpg
隣の鳩間島から望む西表。手前の砂浜が鳩間島。海をはさんで向こう側に見えているのが西表島である。この写真のように、原生林で覆われた西表の上空にだけ雲が発生している状況は頻繁に見られる。

面積289.30km²[1]、周囲130.0km[2]の島で、日本第12位、沖縄県内では沖縄本島に次いで面積第2位である[3]。2005年度国勢調査に基づく人口は2,347人[2]。八重山諸島では最も大きいが、山がちで平地に乏しい。名称については西の表で、表は石垣島於茂登岳を指し、於茂登岳の西にある山の意とも言われる。また、古くは古見島も使われたとも[4]

地勢

島の面積の90%は亜熱帯の自然林で覆われ、山の斜面・森林ともに海の間近にまで迫っており、平地はほとんどない。人の居住地は海岸線沿いのわずかな土地に限られる。また、島の面積の約8割は国有林である[5]

島を構成する古見岳(こみだけ、標高469.5m)、テドウ山(標高441.2m)、御座岳(ござだけ、標高420.4m)の三峰は琉球諸島全体の中でも屈指の標高を有する。太古の海進期にも完全に水没することなく、結果として島の生物群は独特の生態系を維持したまま現在に到る。上記のような山は島の中央ではなく周辺部にあり、島全体が山で覆われるものの、中央が高いわけではない。平地は島周辺にほんのわずかにあるが、連続していない。外から見ると台形の島である。仲間川浦内川はいずれも沖縄県では大きな川で、共に島の端近くの山から流れて反対側に出る。

川は数多く、島の外側が急斜面であるため滝も多い。カンピレーの滝マリユドゥの滝ピナイサーラの滝は観光的にも重視される。

崎山湾は自然環境保全地域に指定されている。

気候

亜熱帯海洋性気候に属する[6]。また月別平均気温の平年値(1981-2010年)に基づけば熱帯雨林気候(Af)に相当する。

  • 西表島(祖納)
    • 最寒月平均気温18.5℃(1月)
    • 乾燥限界614mm<年平均降水量2342.3mm
    • 最少雨月降水量152.5mm(12月)
  • 大原
    • 最寒月平均気温18.0℃(1月)
    • 乾燥限界612mm<年平均降水量2223.5mm
    • 最少雨月降水量146.4mm(12月)

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生物的自然

山奥から流れ出す浦内川は、上流ではマリユドゥの滝などの多くの景勝地と、下流の汽水域では広大なマングローブ林を形成する。その他にも海岸線の河口や内湾には多くの場所でマングローブ林が発達する。日本産のマングローブ植物7種がすべて分布するのは西表島だけである。立派な板根を形成するサキシマスオウノキもここで見られる。内陸はイタジイウラジロガシを中心とする森林に覆われている。

特別天然記念物カンムリワシイリオモテヤマネコ、天然記念物のセマルハコガメキシノウエトカゲサキシマハブなど、珍しい動植物の宝庫である。10,386ha西表石垣国立公園の特別地域に指定されており、そのうち浦内川の源流部が特別保護地区(1,786ha)である。イリオモテヤマネコヨナクニカラスバト等の希少な野生鳥獣の保全を目的として、島の森林地域のうち約3841haが国指定西表鳥獣保護区(希少鳥獣生息地)に指定されており、そのうち2306haが特別保護地区である。

熱帯系の生物が多く、熱帯域の植物でミミモチシダニッパヤシなどはこの島が北限になっている。八重山諸島に固有の動植物も数多い。イリオモテヤマネコのように西表島固有のものはあるが、多くは石垣島など他の八重山諸島の島々と共通である[7]

イリオモテの名を持つ生物には、以下のようなものがある。

西表島にのみ分布する固有種亜種変種を含む)には以下のようなものがある。

河川

テンプレート:Multiple image

  • ナダラ川
  • クーラ川
  • ゲーダ川
  • 大見謝川
  • ヨシケラ川
  • ユチン川
  • ホーラ川
  • ホネラ川
  • 相良川
  • 与那良川
  • 後良川
  • 前良川
  • 後港川
  • ヒドリ川
  • クイラ川
  • ウダラ川
  • アヤンダ川

歴史

マラリア発生地であったため、定住することが困難であり、古くからの集落はごく少ない。東部の古見と西部の祖納集落が例外といえるくらいで、特に古見は古見間切の主邑で1678年には造船所が置かれ、明和年間(1764年 - 1772年)には一時800人を数えるくらいだったという。だが明和の大津波やマラリア流行で人口激減、衰退したため全体として困難な状況は続いていた[8]琉球王朝時代には何度か波照間島黒島新城島からの強制移民が行なわれたが、ほとんど失敗している。

1886年(明治19年)、三井物産会社は炭鉱採掘の許可を受け、坑夫200余名に採掘させたが、3年間で100余名の死者を出し、残り過半もマラリアに罹患し、そのため1889年(明治22年)に事業を休止した。その後も開発は進まず、人口希薄の状態が続いた(1919年(大正8年)頃の総人口2889人)[9]大正末期から昭和初期にかけて、北部内離地区に西表炭坑が開かれ、一時はかなり発展したが、第二次世界大戦中に次第に衰退した。

第二次世界大戦末期に、石垣島や波照間島の住民が強制的にこの地域に疎開を命じられ、この地で多くの住民がマラリアにかかり死亡した。これを戦争マラリアとよんでいる。これらのことより開発が遅れ、結果として豊かな自然が残ることになった。マラリアは現在では撲滅された。

地域

島内に存在する地域と集落廃村を含む)は以下の通りである。かつては集落ごとに小字が存在したが現在は廃止されており、番地表示が実施されている。

東部地区

西部地区

文化

祭礼

アカマタ・クロマタ・シロマタ
アカマタ・クロマタ・シロマタは古見集落に伝わる祭事。全身を草で包まれ、赤と黒及び白の面を着けた神が山から下りてくる。秘祭であり写真撮影はもちろん録音、スケッチなども一切禁止されている。この祭事は小浜島や石垣島の一部地区にも伝わっている。

観光

ファイル:Heritiera littoralis - Sakishimasuo - Iriomote island Japan.jpg
サキシマスオウノキ 仲間川上流に成育する樹齢400年、樹高約20mにおよぶ日本最大の個体。

2007年の西表島への入域観光客数は405,646人で10年前と比較して約2倍に増加している[13]。西表島の特有な自然環境を対象とした「エコツアー」が人気であるが[14]ゴミの処分や下水道設備の増設が不十分で、急激な観光客数の増加に対応できないままである[15]

主な観光名所

西表島リゾート開発差止訴訟

観光産業は地元資本のホテル民宿や個人商店等があったが、上原地区のトゥドゥマリ浜にてリゾート開発工事が強行されたことから、住民のみならず国内の有志もが原告に参加した「西表島リゾート開発差止訴訟」(原告側弁護団長 井口博弁護士)が2003年7月14日に那覇地方裁判所に提訴され、一審で住民側の請求は棄却された。二審も控訴が棄却された。

交通

立地の悪さと自然保護の観点から空港は存在せず、アクセスは専ら隣の石垣島からの定期船に頼る。島内の幹線道路は沖縄県道215号が白浜地区から大原地区周辺まで島の東岸沿いを走り、内陸や西岸経由で車が通れる道路はない。北西部の端にある集落の船浮(ふなうき)には、道路が続いておらず、島内の他地域との交通手段は船である。信号は島内に2箇所しかなく、うち小学校の前に設けられたものの設置目的は交通安全教育のためである。

航路

島外との航路

大原港(仲間港
ファイル:Oharakou.jpg
大原港(仲間港)

西表島東部の各集落への玄関口となる港。テンプレート:要出典範囲

  • 八重山観光フェリー
    • 石垣島・石垣港(離島桟橋) 所要35分、朝から夕方の間に10往復が就航。
    • 竹富島 大原港発の1日1便のみ就航。
    • 小浜島 所要30分、1日1往復のみ就航。
  • 安栄観光
    • 石垣島・石垣港(離島ターミナル) 所要35分、朝から夕方の間に10往復が就航。
      • 貨客船(カーフェリー)が週3便就航。
    • 波照間島 団体利用がある時のみ、波照間島 - 石垣港航路のうち1本(2便目)が不定期に寄港する。
  • 石垣島ドリーム観光
    • 石垣島・石垣港(離島桟橋) 所要35分、朝から夕方の間に6往復が就航。
    • 竹富島 所要40分、大原港発の1日1便のみ就航(石垣行のうちの1便)。
    • 小浜島 所要40分、大原港発の1日1便のみ就航(石垣行のうちの1便)。
上原港

西表島西部の各集落への玄関口となる港。西表の観光スポットへの利用が便利。八重山観光フェリーと安栄観光は、高速船の上原港発着にあわせて上原港 - 祖納 - 白浜間で無料送迎バスを運行している。秋から冬にかけては北風の影響で海が大荒れすることが多く、外洋を走る上原行の運休が多発する。数日にわたって欠航が続くこともある。その際は、両社の石垣港 - 大原港発着便に振り替えられ、大原港 - 上原港 - 祖納 - 白浜間の無料送迎バスを利用することになる(船賃は石垣港 - 上原港分が必要)。

  • 八重山観光フェリー
    • 石垣島・石垣港(離島ターミナル) 所要40分、朝から夕方の間に5 - 8往復が就航。
      • 貨客船(カーフェリー)が週3便就航。
    • 鳩間島 貨客船(カーフェリー)のみ、鳩間島発が週3便就航(上原港→鳩間島便は無く、石垣島経由となる)。
  • 安栄観光
    • 石垣島・石垣港(離島ターミナル) 所要40分、朝から夕方の間に9往復が就航。
      • 貨客船(カーフェリー)が週3便就航。
    • 鳩間島 1日2往復が就航。
      • 貨客船(カーフェリー)が週1 - 2便就航。
  • 石垣島ドリーム観光
    • 石垣島・石垣港(離島ターミナル) 所要55分(上原発の場合)、週3便就航。
    • 鳩間島 鳩間島発が週3便就航(上原港→鳩間島便は無い)。

島内航路

道路がない船浮集落と結ぶため、船浮海運により白浜港と船浮港の間を1日3便往復運航されている。

路線バス

西表島交通

1日6往復

  • 白浜 - 祖納 - 干立 - 浦内川 - ニラカナイ - 浦内 - 住吉 - 星砂の浜 - 中野 - 上原小学校前 - 上原 - ヒナイビーチ前 - 船浦 - 西表島温泉 - 由布水牛車乗場 - 美原 - 古見 - 大富 - 大原 - 大原港 - 大原診察所前 - 豊原

道路

放送

  • ラジオテレビとも島東部では石垣島の石垣中継局から受信可能だが、西部では祖納に祖納中継局が設置されており、当中継局から受信している。ここでは西表島西部の受信状況について述べる。

ラジオ

  • 1990年までNHKの中継局が石垣島にあるだけで山を挟んだ島西部では受信しにくく、民放はほとんど受信不可能だった(2003年までRBCiラジオは宮古島のみ中継局があったが、ROKは沖縄本島にある親局のみだった)。
  • AM放送は夜間に外国からの混信で受信困難であるため、中継局はすべてFM波で放送している。NHK1991年11月にラジオ第1が、2003年10月にラジオ第2がFMによる中継局を設置(特にラジオ第2は1972年に沖縄の本土復帰で沖縄県内3ヶ所に設置して以来31年ぶり)。2004年4月には琉球放送(RBCiラジオ)とラジオ沖縄(ROK)がFMによる中継局を設置した。
  • FM放送はNHKFMFM沖縄ともに中継局を設置していない。NHKFMは石垣島にある中継局(87.0MHz)から受信可能だが(島西部では受信困難)、FM沖縄は島内や石垣島も含め先島諸島で受信不可。
ラジオ中継局周波数一覧
所在地 NHK1 NHK2 NHKFM RBCi ROK
石垣 540 1521 87.0 89.0 87.8
祖納 85.2 83.1 83.9 81.5
  • 周波数単位は石垣局のNHKAMのみkHz、あとはずべてMHz。
  • 出力は石垣局がNHKAMが1kW、あとは100W。祖納局はいずれも10W。

テレビ

  • NHKと沖縄県内の全民放テレビ局が中継局を設置。1967年にNHK沖縄放送局の前身である沖縄放送協会(OHK)が開局、1976年にようやく沖縄本島・日本本土と同時放送となったものの長年NHKしか受信できなかった(島のみならず竹富町内すべて)。1993年12月に民放(RBC・OTV)が開局した。
  • NHKは石垣島北部の川平テレビ中継局から受信し、さらに与那国島へ電波を送る必要があるため(民放も同じ)、100Wで送信していたが、1998年に送信方法が改善し、与那国中継局はVHFからUHFにチャンネル変更したため、祖納局の出力をこれまでの1/3の30Wに減力した(民放はUHFのため100Wのまま)。
  • 琉球朝日放送(QAB)のアナログ放送は島内や石垣島も含め、先島諸島に中継局が未設置だったため受信不可だった。このためテレビ朝日系の番組は民教協の番組(RBC・OTVで放送)を除き地上波では見られない状況が続いていた。
  • 2006年に沖縄県内でも開始された地上デジタルテレビジョン放送について、島東部で受信できる石垣中継局、西部の祖納中継局は2009年に全てのチャンネルが開局(石垣中継局のNHK2波は2008年に先行開局)。アナログでは未開局だったQABは、本島地域での開局から14年遅れにして、デジタル新局として(西表島含む)先島諸島での放送を開始した。出力はUHFアナログ放送の100Wからさらに減力し1W(アナログ放送10Wに相当、実質1/10減力)となった。
テレビ中継局周波数一覧
所在地
リモコンキーID
総合
(1)
教育
(2)
RBC
(3)
OTV
(8)
QAB
(5)
石垣(出力100W) 26 24 33 35 36
祖納(出力1W) 17 13 32 42 48

インフラストラクチュア

電源

島に発電所はなく、石垣島から海底電線で送電している。

水道

電気とは逆に、豊富な水資源を海底パイプラインで石垣島に送水している。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  • 新川明、『新南島風土記』、(1978)、大和書房

関連項目

テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:八重山諸島
  1. テンプレート:Cite web
  2. 2.0 2.1 テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite book
  4. 新川(1978)
  5. テンプレート:Cite web
  6. テンプレート:PDFlink クロモトロープ酸を担持した陰イオン交換カラムを用いる超微量ホウ酸のオンライン濃縮/HPLC定量法の改良と沖縄県西表島の天然水分析への応用, 分析化学 60(10), 785-789.
  7. 以下のリストを含む生物記事は保育社の『日本の野生植物シリーズ』、沖縄県のレッドデータブックなどを参考としているが、全体としては西表島との関連が少ないので、参考文献として列記するのは避ける。
  8. 『郷土資料事典・沖縄県』人文社
  9. 内務省衛生局保健衛生調査室編『各地方ニ於ケル「マラリア」二関スル概況』1919年発行
  10. 1972年より旧島民を中心に再入植が開始され、2005年時点で24名が居住している。
  11. 「星立」とも表記される。
  12. 「舟浮」とも表記される。
  13. テンプレート:Cite web
  14. テンプレート:Cite web
  15. テンプレート:Cite web