熱帯雨林気候

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熱帯雨林気候 (Af) の分布図

熱帯雨林気候区(ねったいうりんきこうく)とはケッペンの気候区分における気候区のひとつで熱帯に属する。記号はAfでAは熱帯、fは湿潤(feucht)を表す。

アリソフの気候区分では気候帯1-1.赤道大陸性気候および2-4.東岸性季節風気候そして3-4.海洋性高気圧の西縁気候に相当する[1]

特徴

赤道直下の島々、大陸の中西部に分布。年中多雨で気温の年較差は少ない。人の背丈から数十メートルの高さまでになる多種類の熱帯性植物がうっそうと茂っており、午後からはスコールと呼ばれる激しい雨が降る。

成立条件

  • 最寒月平均気温が18℃以上(ヤシが生育できること)。
  • 年平均降水量が乾燥限界以上。
  • 最少雨月降水量が60mm以上。

弱い乾季のある熱帯モンスーン気候も含まれることがある。また、「最少雨月降水量が60mm以上」という条件からこの気候に属する地域の年平均降水量は720mm以上あることになる。

分布

分布地域

シンガポールのような大都市もあるが、ほとんどは人口密度の低い地域である。

典型的な都市

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アフリカ

アメリカ

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気候の特徴

一年中熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響を受けるため、年間を通して降水量が多い。また太陽高度が年間を通して高いため気温は年中高く、年較差が少ない。気温が高いため蒸発量が多く、湿度が高い。また雲による遮蔽や高緯度地域に比べて夏も昼間があまり長くならないことなどから、日照時間はあまり多くない。

昼間を中心に海洋では積乱雲が発達し、スコールと呼ばれる突風と激しい雨に見舞われることが多い。冷たい空気が降りてくるため、適度な風もあってスコールの後は涼しくなる。

海岸に近いほど海洋性気候の特徴である朝の冷え込みの緩和が現れ日較差は比較的小さいが、一日を通して気温が高い。

土壌と植生の特徴

年中多雨なことから、内陸まで入り組んだ大河川が発達している。河川流域には多種多様の常緑広葉樹が密をなして階層的に広がり、その高さは数十メートルに及ぶ。この地域の森林は熱帯雨林と呼ばれ、特に南米のアマゾン川流域のものはセルバ、それ以外の東南アジアやアフリカのものはジャングルと呼ばれる。

熱帯雨林二酸化炭素の吸収、酸素の生産、水分の保養など世界規模の自然環境保全に大きな役割を果たしている。この区の土壌は雨によって溶脱したラトソル(ラテライト)や赤色土からなる。これらの土は一般にやせており、森林がいったん伐採されると日光で土壌が固まり砂漠化が起こる。また同時に降水量が多いため土壌流失や侵食が起こりやすくなり、それに伴った洪水土砂崩れも増加する。

産業の特徴・その他

土壌は雨によって溶脱したラトソル(ラテライト)や赤色土からなり農業には向かない土地であるが、多くの地域で焼畑農法によるキャッサバタロイモヤムイモの生産、一部ではプランテーション(栽植農業)による天然ゴム油ヤシカカオなどの生産が行われている。

近年、焼畑などによる森林破壊が問題となっている。特に熱帯モンスーン気候に近い地域では乾季の乾燥によって焼畑が大規模な森林火災に発展し、長期間にわたって煙害を受けることがある。

熱帯雨林の奥地や太平洋中部の未開の島嶼部では、独自の文化生活が営まれている地域もある。ただ外から入ってきた資本によって短期間の好景気がもたらされたあと資源不足やコスト増などの理由で資本が撤退し、経済が破綻して多額の債務を抱えたり貧困が深刻化したりする例もある。また、古くは資源採掘やその他の労働のために原住民が奴隷などとして利用された例もあった。

独自のテリトリーを有する原住民と移住者、あるいは隣接する原住民同士の対立なども見られる。

脚注

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参考文献

  • 矢澤大二『気候地域論考―その思潮と展開―』古今書院、1989年11月20日、738pp. ISBN 4-7722-1113-6
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  1. 矢澤(1989):354ページ