法例

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法例(ほうれい)とは、一般には、法の適用に関する通則を指し、法律明治31年法律第10号など)の題名や、一部の法律の冒頭部分の通則規定の部分の見出しとして用いられた。

なお、法律としての法例は、2006年(平成18年)に全部改正され、新たに法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)が公布施行されている。→日本の法律の名称としての法例を参照。 後述のように、後者の用例における「法例」も、近年は通則に言い換えられている。

法例という用語

中国の刑法における用法

穂積陳重によると、もともと「法例」という語は、において刑罰法規としての法律適用の例則という意味で用いた「法例律」(賈充が編纂した晋律20編における用法)という用語が始まりとされている(『晋書』の第30巻刑法志など)。その後は「名例律」という用語が代わって用いられるようになったため、中国の刑法においてこの用語を使うことはなくなったとされる。

近代日本の法令用語としての用法

日本において、法例という語は、法律の名称としてだけではなく、一部の法律内においてその法律の適用関係や適用範囲を定める内容を有する部分の章節名としても用いられた。

穂積陳重によれば、新律綱領においては、中国に習い「名例律」という用語を用いていたものの、1880年に日本で刑法(旧刑法)を制定する際、刑法の適用に関する通則をまとめた第1編第1章に「法例」という章名を付け、晋以来の用法を復活させたとされる。その後、1890年に旧民法(いわゆるボアソナード民法)の公布の際に併せて公布された、法律の適用に関する規定をまとめた法典の題名を「法例」としたことにより、本来刑法の適用に関する法規範に関する語であった法例という用語が、法律の適用一般に関する法規範に関する語となった(以下の「日本の法律の名称としての法例」の節を参照)。

例えば、商法は、その第1編第1章が商法の適用関係に関する通則をまとめており、その章名が「通則」になっているが、会社法制定前においては、「法例」という章名であった。また刑法についても、第1編第1章が刑法の適用関係に関する通則をまとめており、その章名が「通則」になっているが、1995年に条文が口語化される前は「法例」という章名であった。

もっとも、近年の法改正により「法例」という用語は、(法律の名称としての法例に言及する場合を除き)用いられていない。強いて挙げるなら、少年法第40条の見出し部分(準拠法例)に残るにとどまっている。

日本の法律の名称としての法例

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法例(ほうれい。明治31年法律第10号。平成18年法律第78号により全部改正。)は、法の適用関係に関する事項を規定することを目的とした法律である。もっとも、その内容は、法律の施行期日に関する規定(1条)、慣習法の効力に関する規定(2条)を除き、すべてが準拠法の指定を目的とした国際私法に関する規定であった。

1898年(明治31年)6月15日天皇の裁可(親署)及び国務大臣内閣総理大臣を含む)の副署がなされたあと、同年6月21日官報公布され、同年7月16日に施行された。これにより、それまでの法例(明治23年法律第97号。旧・法例)は廃止された。

法例中の国際私法に関する規定に関する見直しのため、法例を全部改正する法案が第164回国会に提出され成立。法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)として、2006年(平成18年)6月21日に公布され、2007年(平成19年)1月1日に施行された。なお、法例における基本的な制度や解釈論は法の適用に関する通則法においても維持されているため、法例の条文など内容の解説については、法の適用に関する通則法の項目を参照のこと。

外部リンク

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