毒霧

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毒霧(どくぎり、Asian mist)は、口から霧状のものを吹き付ける、日本人プロレスラーがよく使うプロレスの技である。そのため海外では東洋の神秘と言われている。

英語圏内では「Asian mist(ミスト)」と呼ばれ、緑の毒霧の場合はグリーンミストという。

概要

主にヒール系のプロレスラーが用い、口から赤色や緑色などの液体を相手レスラーの顔めがけて噴射し、相手の視界を遮る。粉末を用いることもある。液体では有るが凶器による攻撃の一つであり、基本的には反則技である。そのため、レフェリーが目を離した一瞬の隙に技が繰り出されることが多い。攻撃目的以外に、威嚇目的、あるいはパフォーマンスとして使用される。

経緯

ザ・グレート・カブキ米国遠征中に試合会場のラバク・テキサスに行く道中、マネージャーゲーリー・ハートと自身のキャラクターに肉付けするアイディアを話しあった。その際「火はザ・シークが使用しているため、(口から吹くインパクトがあるものとして)他に何かないか?」という話になった。

試合後、シャワーを浴びている際、蛇口が高い位置で固定されていたため、お湯が頻繁に口に入り、思わず天井に向って吹き掛けた所、蛍光灯の光を通してキレイなができたことから「液体を口から吹く」というアイディアが生まれた。

彼の話では現在のように攻撃で使うというよりは、アメリカ人に不気味なオリエンタルムードを味わってもらうことを第一に考えていた。当初いろいろな色の毒霧を試したが、薄暗い会場の中では赤と緑がライトの光を通して一番映えるため、この2色を主に使用していたという。

扱い

団体によって、毒霧を反則とみなす団体もあれば『技』として認める団体もある。日本国内では新日本プロレスはグレート・ムタの毒霧で反則をとらないが、TAJIRIがG1に初参戦した際には毒霧を使用しない旨の約束状にサインを強いられ、使用した場合は反則となり、試合終了となっていた。また、カブキが全日本プロレス在籍時も反則となり、試合終了となっていた。WWEやWCWも反則として見なしており、基本的にレフェリーが見ていない所で行うことが多い。

仕掛

毒霧をどのようにレスラーが吹いているのかは使用者たちが明らかにしておらず、プロレス界の大きな謎とされている。

緑の毒霧を吹いたその直後にすぐさま赤の毒霧を吹き出すことがあるが、素早く吹き分けないと口の中で混ざってドス黒い色になるとカブキは語っている。また、カブキは半引退になった際にゴム風船やコンドームの中に毒霧の素を仕込んでおいて狙った都度、噛み切って吹くということを明らかにしている。

過去に一度ムタが試合中、毒霧噴射後に口から何かが落ちてそれを目で追い、レフェリーのタイガー服部が拾おうとした所を制止している場面があり、裏付けとなる唯一の事例となっている。口に含んだままでは呼吸や発声が満足にできないうえ、受けた攻撃の衝撃で吐き出してしまうのでは無いか?という疑問については、実際一度吐き出したことがあるため、以後はコスチュームに隠しておいて使用直前に口に含んでいたとカブキは語っている。

しかしながら、リング上で激しく動いた際に毒霧の素を仕込んである風船状のものが破裂するのではないか? という疑問も残り、リング下に隠しておいたり、セコンドに持たせておくなどの説も有力である。どちらにしてもあくまでカブキの証言であり、使用するレスラーの全てがこの手法を取っているかどうかは定かではない。

成分

毒霧の成分についてはアンモニア水説、ニンニク説、玉ねぎ説、炭酸水説、食紅説など諸説あるが、公式には明らかにはされていない。例外としてTAJIRIのグリーンミストの主成分はわさびであることを本人が明かしている。[1]

吹きかけられた相手は、目に染みる、目が焼ける、臭いなどの症状を訴えている。また、アメリカで子供が毒霧を触ったあとに「くさい」と言っている場面が「世界のプロレス」で放送されたことがある。

しかし、使い手によってそれぞれ調合が異なっているとされており(プロレススーパースター列伝内ではカブキの毒霧は13種類の毒草や毒キノコの粉末を混ぜ合わせて作るなどと解説されていた)、グレート・ムタの場合は劇薬や毒蛇の毒、果てはウイルス入りといった毒霧まで開発していると公言している。

カブキが半引退になった際に毒霧の成分のヒントで「食物が材料」だということを語っていたことがある。カブキは「チョークを粉末上にしたものを初めに試しているが、(口内で)ベタついてダメだった」と話している。成分に関しても使用するレスラーの全てが統一しているかどうかは定かではない。

派生

新井健一郎矢野通マサ高梨BUSHIなど、毒霧と同様に水や酒などの水分を飛沫状に口から噴きかける攻撃を得意とするレスラーもいる。トリプルH池田大輔は入場時に天上に向けて口に含んだ水を噴き上げるパフォーマンスを行っている。また現在では緑、赤の他に黄、青、黒、橙(オレンジ)など色のバリエーションも使用者によって増えている。しかしながらカブキの当初の思惑通り「見栄えが悪い」ためかほとんど使用されなくなった色も存在する。

使い手

元祖であるカブキの他にギミック上の息子であるムタも同様に毒霧を繰り出す。その後ECWWWEで活躍したTAJIRIも受け継いだ。ほかに、ムタのオマージュであるキャラクターも共通の定番ギミックとして毒霧を使うが、毒霧使用の正統な系譜としてはカブキの息子であるムタ、その息子であるKIYOSHI(雷陣明)とムタが連れて来たグレート・ボノ(曙太郎)、グレート・ユタ(吉江豊)、グレート・タケ(竹村豪氏)までである。

なお、元祖のカブキが使用者として認めているのはムタとTAJIRIのみである。また、カブキの毒霧はただ綺麗に見せることだけを目的としたもの、ムタの毒霧は噴くタイミングを考えた攻撃としての側面を併せ持つもの、TAJIRIの毒霧(グリーン・ミスト)は単純に攻撃のためだけのものと解説し、攻撃としての毒霧に昇華させたムタを高く評価している。

主な使い手として

ザ・グレート・カブキ
緑、赤を使用。
グレート・ムタ
緑、赤を中心に、青や白を使用したことがある。
黒師無双(武藤敬司)
黒を主に使用。
TAJIRI
グリーン・ミストとして緑を主に使用。時折レッド・ミストとして赤も使用する。
KIYOSHI(雷陣明)
緑、赤を使用。
グレート・ボノ(曙太郎)
橙(オレンジ)を使用。
グレート・ユタ(吉江豊)
緑を使用。
グレート・タケ(竹村豪氏)
赤を使用。
グレート・コジ(小島聡)
赤、オレンジを使用。
グレート・ルタ(TARU)
赤を使用。
グレート・ニタ(大仁田厚)
緑、赤の他に青や黄色を使用したこともある。
グレート・カズシ(宮本和志)
使用色不明。全日本プロレス所属時の海外遠征時に変身。
GREAT MUTA(ジョン・ハガー)
緑を使用。全日本プロレスに参戦した偽物、いわゆる全日版GREAT MUTA。
堀口元気
ブルー・ミストとして青を主に使用。時折レッド・ミストとして赤も使用する。
永田裕志
ブルー・ミストとして自身のイメージカラーの青を主に使用する。

エピソード

  • カブキは試合中に誤って飲んでしまったことが何度かあるという。
  • 上田馬之助がカブキとの対戦の際に顔にペイントを施し[2]黄色い毒霧を吐いたが、慣れていないためか、ただ噴出した感じになっていた。
  • ムタはパワー・ウォリアー戦で至近距離で放った毒霧をイスを盾にして跳ね返され、自分が毒霧を食らってしまったことがある。
  • ムタは蝶野正洋に首を絞められ、毒霧を「操作」されたことがある。
  • ムタの代理人である武藤は試合前の記者会見で花粉症に掛かったことを打ち明け、「うまく毒霧が吹けないかもしれないとムタが言っている」と語ったことがある。
  • 永田裕志がTAJIRIにグリーンミストを喰らってから、時折自身のイメージカラーの青を基調としたブルーミストを使うようになった。
  • 武藤敬司が語るところによると、潔癖症としても知られる木戸修が、グレート・ムタから毒霧を受けた際、武藤は3日間口を利いてもらえなかったらしい。
  • 永田裕志が試合中に自身のブルーミストを誤って飲んでしまい白目を剥いて倒れてしまうというアクシデントが起こった。

テレビ番組において

2011年7月6日テレビ朝日系列で全国放送された「シルシルミシル」で、TAJIRIが一般人に対しグリーンミストの吹き方を指導した。

番組内では、山形県の高校生から「グリーンミストの上手な噴き方」についての質問が紹介され、その後、投稿した高校生の自宅にTAJIRIが実際に向かい、5時間にわたりグリーンミストの吐き方を直接指導した。

番組内で、TAJIRIは以下のようにコメントした。

  • グリーンミストの成分は教えられないが、毒的なもの。
  • 今回は一般人に教えるので、本物の毒ではなく、練習用の液体を使う。
  • グリーンミストは自分の体内で生成している。修行の賜物として、(ハブのように)自分の毒でダメージを受けることはなくなった。
  • 口を「ズ」の形にする・一瞬で吹ききる・飛び出すをイメージする、この3つが上手く吹くコツである。
  • 一般人が真似をするときに、抹茶ラテ等の飲食物を使用するべきではない(食べ物・飲み物は粗末にしてはいけないため)。

注釈

  1. TAJIRIのツイッターでの発言(後述するテレビでの発言とは異なっている)。
  2. このスタイルでアメリカでは「テング」というリングネームで活躍していた。
en:Professional wrestling attacks#Asian mist