常念岳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:Infobox 山

常念岳(じょうねんだけ)は、飛騨山脈(北アルプス)南部の常念山脈にある標高2,857 mである。山体すべてが長野県に属し、松本市安曇野市にまたがる。常念山脈の主峰。日本百名山のひとつ[1]

概要

安曇野からは全容が望め、ピラミッド型のその端正な山容は一目瞭然ですぐ見つけられる[2]。常念岳のこの印象的な形状は東に隣接する前常念岳の峰が重なって見える安曇野市豊科以南から眺める場合で、安曇野市穂高以北になるとそれぞれの峰が独立して見えるためまた印象が違って見える。
なお、安曇野から眺められる北アルプスは、常念山脈が主役で、穂高岳槍ヶ岳といった山々は、常念岳、蝶ヶ岳大滝山といった前衛の常念山脈に隠れ、場所によってその間から顔を出す程度である。安曇野のシンボルであり、長野県立こども病院のマークにも使われている。常念岳の北側の山体は花崗岩質からなり、南側の不変成古生層と大きく異なる境界となっている[3]。東側の山腹には常念岳断層が確認されている[4]高山帯の山頂部には花崗岩の岩塊が積み重なっている。

ファイル:Mount Jyonen from Azusa River 1996-04-29.jpg
残雪部前常念岳の中央に、黒い姿のとっくりを手にした坊さん雪形の常念坊が見られる。

常念坊と山名の由来

古くは乗鞍岳と呼ばれていた[3]。常念岳の由来は、昔、毎年暮れに不思議な常念坊という山姥が酒屋に酒を買いに来たからという説や、坂上田村麻呂がこの地に遠征した際に、重臣である常念坊がこの山へ逃げ込んだとされることから付けられたという説など、いくつかの説がある。春に前常念岳の東北東の雪の斜面に、とっくりを手にした坊さんの黒い姿の常念坊の雪形が見られ、安曇野に田植えの時期を知らせる雪形とされている[5]。安曇野名誉市民の山岳写真家の田淵行男が、『山の紋章 雪形』の著書でこの雪形を紹介している[6]テンプレート:Clear

歴史

ファイル:Jyonendake and yokotooshidake from River-Azusa 1996-4-29.jpg
安曇野の梓川右岸から望む
常念岳・横通岳
ピラミッド型の山容の常念岳(左)

動植物

標高約2,400 mの上部は、森林限界を越える高山帯でライチョウの生息地となっている。山腹にはホシガラスメボソムシクイの鳥類やツキノワグマカモシカキツネニホンザルなどの哺乳類が生息していて、近代登山史以前から猟師の狩猟場となっていた[3]。常念乗越など周辺の山域は、ミヤマモンキチョウやタカネヒカゲなどの高山が生息し、田淵行男が100回以上常念岳に登り[1]、高山蝶の研究を行った[14]。当時9種類を確認し、タカネヒカゲは長野県の天然記念物に指定されている。ハイマツ帯にはアオノツガザクライワギキョウクロマメノキコマクサチングルマ、ハイマツ、ミヤマキンポウゲなどの高山植物が自生している[15]

ハイマツ ライチョウ コマクサ チングルマ ミヤマモンキチョウ
125px 140px 125px 110px 120px

登山

登山ルート

ファイル:Mount Jonen from Mount Yokotooshi 2004-5-2.JPG
横通岳から望む5月初旬の常念岳
山小屋開きと共に残雪期の春山登山シーズンが始まる

安曇野側及び上高地側からのルート及び常念山脈の稜線上に登山道が開設されている[16]。東の安曇野側にからは、中房登山口、一ノ沢登山口、三股登山口などが利用されている[17]。安曇野の麓の中学生が夏休みに、一ノ沢の登山口から常念小屋に一泊して学校登山を行っている例がある[18]。西側からは、上高地奥の徳沢や横尾などの登山口などが利用されている[19]。また他に大滝山を経由する中村新道や槍ヶ岳方面から大天井岳を経由した常念山脈の縦走路が利用される場合もある[20]。山頂の岩場には、祠と方位図が設置されていて、360度の展望が得られる。

かつて槍沢の一ノ俣谷出合には一ノ俣小屋があり、そこから一ノ俣に沿って常念乗越に至る上級者向けの谷コースがあったが、現在は廃道化している[21]。 1919年の常念坊乗越小屋開業当時は、上高地から槍ヶ岳へのルートはまだ整備されておらず、「有明 - 中房温泉 - 大天井岳 - 常念乗越 - 一ノ俣谷 - 槍沢 - 槍ヶ岳」のルートが利用されていたが、その後小林喜作が整備した表銀座の喜作新道がメインのルートとなった。

  • 中房登山口 中房温泉 - 合戦小屋 - 燕山荘 - 蛙岩 - 切通岩 - 大天井岳 - 東大天井岳 - 横通岳 - 常念小屋 - 常念岳
  • 一ノ沢登山口 ヒエ平 - 王滝ベンチ - 胸突八丁 - 常念小屋 - 常念岳
  • 三股登山口
    • 三股 - 前常念岳(一等三角点と石室) - 常念小屋 - 常念岳
    • 三股 - 本沢吊橋 - 力水 - まめうち平 - 蝶ヶ岳 - 蝶ヶ岳ヒュッテ - 蝶槍 - 常念岳
  • 横尾登山口 上高地 - 徳沢 - 横尾 - 蝶槍 - 常念岳
  • 徳沢登山口 上高地 - 徳沢 - 長塀山 - 蝶ヶ岳 - 蝶ヶ岳ヒュッテ- 蝶槍 - 常念岳

周辺の山小屋

山頂北側の横通岳との鞍部である常念乗越には、山小屋常念小屋とそのキャンプ指定地があり、そこから西に槍ヶ岳が東鎌尾根越しに見られる。また周辺の登山ルート上に以下の山小屋がある[16][22]。夏期のシーズン期間中に、常念小屋では信州大学医学部の夏山診療所が開設されている[23]

画像 名称 所在地 標高
(m)
常念岳からの
方角と距離(km)
収容人数 キャンプ
指定地
備考
70px 大天荘 大天井岳山頂
直下南
 2,850 テンプレート:Direction北北西 3.3</Div>  200人 テント
30張
安曇野市
70px 常念小屋 常念乗越  2,450  テンプレート:Direction北 0.9</Div>  300人 テント
40張
夏山診療所
70px 蝶ヶ岳ヒュッテ 蝶ヶ岳山頂
直下北
 2,660 テンプレート:Direction南 4.1</Div>  300人 テント
30張
70px 大滝山荘 大滝山北峰と
南峰との鞍部
 2,610 テンプレート:Direction南南東 5.9</Div>  50人 テント
10張
30px 横尾山荘 上高地奥の横尾  1,620 テンプレート:Direction南西 4.4</Div>  300人 テント
150張
入浴施設あり

地理

周辺の山

ファイル:YariKamikohchiTagged.jpg
上空から望む常念岳周辺の山
ファイル:Karasawa&Zyonen.jpg
涸沢上部から望む常念岳(左上)と蝶ヶ岳

飛騨山脈南部に位置し、その主稜線上にある槍ヶ岳から東尾根を経て派生する常念山脈のほぼ中央部にある[16]。山頂からは東の前常念岳へと延びる顕著な尾根がある。前常念岳の山頂には点名「常念岳」の一等三角点が設置されている[24]。常念山脈の西側に梓川を挟んで、穂高岳と槍ヶ岳の山並みを眺める絶好の展望台となっている。また山頂付近からは、安曇野、浅間山などを望むことができる。

山容 名称 標高[25][24]
(m)
三角点等級
基準点名[24]
常念岳からの
方角と距離(km)
備考
80px 燕岳 2,762.85  二等
「燕岳」
テンプレート:Direction北 9.1 燕山荘
日本二百名山
80px 有明山 2,268.34  二等
「有明山}
テンプレート:Direction北北東 8.3 日本二百名山
80px 槍ヶ岳 3,180 テンプレート:Direction西北西 7.4</Div> 槍ヶ岳山荘
日本百名山
80px 大天井岳 2,921.91  三等
「天章山」
テンプレート:Direction北北西 5.0 大天荘、常念山脈最高峰
日本二百名山
80px 横通岳 2,766.99  三等
「赤樽」
テンプレート:Direction北 1.9
80px 常念岳 2,857 テンプレート:Direction 0 常念小屋
日本百名山
80px 前常念岳 2,661.78  一等
「常念岳」
テンプレート:Direction東南東 1.0</Div> 安曇野側の前衛峰
石室、祠
80px 蝶ヶ岳 2,677 (三等「蝶ヶ岳」)
2,664.32 m
テンプレート:Direction南 4.2 蝶ヶ岳ヒュッテ
三角点の位置は旧山頂
80px 穂高岳 3,190 テンプレート:Direction西南西 8.2</Div> 飛騨山脈の最高峰
日本百名山

源流の河川

源流となる以下の信濃川水系河川であり、日本海へ流れる[26]。常念乗越は、一ノ俣谷と一ノ沢との分水嶺となっている。

  • 本沢、一ノ沢、二ノ沢 (烏川支流
  • 一ノ俣谷 (梓川の支流、山頂から1.5 km西に常念ノがある。)

交通・アクセス

常念岳の風景

常念岳の山容

東側(安曇野)や西側などから眺めた時の、ピラミッド型のその山容がその特徴である。

170px 160px 160px 142px
赤岩岳から望む
常念岳
南側の登山道から望む
秋の常念岳
蝶ヶ岳から望む
常念岳と前常念岳
槍ヶ岳から望む
常念岳とご来光

常念岳山頂からのパノラマ展望

山頂は蝶ヶ岳と共に、穂高岳から槍ヶ岳へと連なる山並みを望める絶好の展望台である。

295px 345px
焼岳 - 穂高岳 - 槍ヶ岳、下方に梓川 (秋の紅葉) 南岳 - 槍ヶ岳 - 大天井岳、遠景は鷲羽岳 - 水晶岳 (春の残雪)

テレビ番組

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連書籍

関連項目

テンプレート:Sister

テンプレート:日本百名山

テンプレート:一等三角点百名山
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 テンプレート:Cite book
  2. テンプレート:Cite web
  3. 3.0 3.1 3.2 テンプレート:Cite book
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite web
  6. テンプレート:Cite book
  7. テンプレート:Cite book
  8. テンプレート:Cite book
  9. 9.0 9.1 テンプレート:Cite book
  10. テンプレート:Cite book
  11. テンプレート:Cite book
  12. テンプレート:Cite web
  13. テンプレート:Cite book
  14. テンプレート:Cite book
  15. 15.0 15.1 テンプレート:Cite web
  16. 16.0 16.1 16.2 テンプレート:Cite book
  17. テンプレート:Cite web
  18. テンプレート:Cite web
  19. テンプレート:Cite web
  20. テンプレート:Cite book
  21. テンプレート:Cite book
  22. テンプレート:Cite book
  23. テンプレート:Cite web
  24. 24.0 24.1 24.2 テンプレート:Cite web
  25. 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「hyoko」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  26. テンプレート:Cite web
  27. テンプレート:Cite web
  28. テンプレート:Cite web
  29. テンプレート:Cite web
  30. テンプレート:Cite web
  31. テンプレート:Cite web、実際の撮影は安全性などを考慮して、常念岳ではなく美ヶ原の王ヶ鼻で行われた。