専門職学位

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テンプレート:日本の学位 専門職学位(せんもんしょくがくい)第一専門職学位、職業学位、First professional degreeとは、日本において、専門職大学院の課程(大学院の専門職学位課程)を修了した者に授与される学位のことである。

専門職学位は学校教育法第67条、第68条の2において「文部科学大臣の定める学位」として規定され、更に学位規則第5条の2において、この「文部科学大臣の定める学位」を専門職学位と称している。専門職学位はその名称中に、博士や修士といった語を含むが、通常の大学院の課程で研究業績に対して授与される「博士」や「修士」とは別箇の学位とされている。

日本の学位等の分類
分類 大区分 小区分 授与される標準的な課程
学位 博士 規定なし 大学院の博士課程
(前期2年の博士課程を除く)
修士 規定なし 大学院の修士課程
(前期2年の博士課程を含む)
専門職学位 法務博士(専門職)[1] 法科大学院
教職修士(専門職)[1] 教職大学院
修士(専門職)[1] 専門職大学院
(法科・教職大学院を除く)
学士 規定なし 大学
短期大学士 規定なし 短期大学
分類 大区分 小区分 授与される標準的な課程
称号 準学士 規定なし 高等専門学校
高度専門士 規定なし 特定の専修学校の専門課程
(主に4年制以上)
専門士 規定なし 特定の専修学校の専門課程
(主に2〜3年制)

専門職学位の名称

名称についての検討過程

専門職学位の名称については、中央教育審議会で検討が行われた。

2002年(平成14年)4月18日の「大学院における高度専門職業人養成について」の中間報告では、次の3つの案が示された[2]

案の1
「原則として「○○修士」(例えば「経営管理修士」)とするが,国際的通用性や修業年限等を考慮して、適切と認められる場合には「○○博士」(例えば「法務博士」)といったように,新たな専門職学位を授与する。この場合,各専攻分野ごとに専門職学位として使用できる名称を法令等に限定列挙するものとする。」
案の2
「既存の学位名称に専門職学位であることを示す表現を付け加えた新たな学位名称とする。例えば、原則として「実務修士(○○)」又は「専門職修士(○○)」(例えば「実務修士(経営管理)」)とするが、国際的通用性や修業年限等を考慮して、適切と認められる場合には「実務博士(○○)」又は「専門職博士(○○)」(例えば「実務博士(法務)」)を授与することとする。」
案の3
「専門職学位として新たな名称の学位(例えば碩士[3]等)を創設する。」

更に審議が行われた結果、同年8月5日に、案の1をベースにした次の答申がなされた[4]。すなわち、「「○○修士(専門職)」(例えば、経営管理修士(専門職))や「○○修士(専門職学位)」(経営管理修士(専門職学位))などのように、修得した職業能力を適切に表す専攻分野の名称を修士の前に付けて表記し、既存の学位と区別するため、専門職学位であることを修士の後に付記することとする方向で新たな学位名称を表記することが適当と考えられる。また、専門職大学院の専攻分野には多様なものがあり、標準修業年限が3年以上で法令上定める専門職大学院において授与される学位については「○○博士(専門職)」(例えば、法務博士(専門職))や「○○博士(専門職学位)」(法務博士(専門職学位))などとすることが適当と考えられる。」というものである。ただ、この時点でも括弧書きは、「(専門職)」とするか、「(専門職学位)」とするかは定まっていなかった。

このように、当初、専門職学位の新設検討段階では、博士や修士の学位の区別化のために碩士の名称が充てられることも考えられたが、最終的には既存の学位名称である博士、修士の文字を充てた。

学位規則上の種類

専門職学位の種類(学位規則第5条の2)
区分 学位
専門職大学院の課程(次項以下の課程を除く。)を修了した者に授与する学位 修士(専門職)
法科大学院の課程を修了した者に授与する学位 法務博士(専門職)
教職大学院の課程を修了した者に授与する学位 教職修士(専門職)

修士(専門職)

学位規則上は、法務博士及び教職修士以外の専門職学位は、単に「修士(専門職)」とのみ規定されているが、各大学の学位規程等により、専攻分野を冠した形で「○○修士(専門職)」という名称で授与されている。次のものなどがある。

専門職学位の意義

大学院の専門職学位課程、いわゆる専門職大学院は社会経済の各分野において指導的役割を果たす、高度専門職業人を養成することを目的として設立されたものであり、専門職学位とはその職業人たる最低限の素養を認定する意義を有している。具体的な専門職大学院としては海外のロースクールに倣って創設された法科大学院が代表的であるが、その他の専門職大学院には公共政策大学院会計大学院なとがあり、その他ではビジネス・スクールが多い。今後は法曹育成を行う法科の他、政治家行政官NPONGOのリーダー、ジャーナリストなどの方面に人材を供給する公共政策の他、企業戦略、ファイナンス、会計、助産師、学校教育つまり教員養成、大学経営、医療経営、社会福祉、医療系、工業系、原子力系、情報技術系、心理系、環境系、健康科学系、デザイン系、日本が誇る文化であるアニメーションをはじめメディアコンテンツなどの分野など序々に高度専門教育の裾野が広がりつつあり、専門職学位の種類も増えていくことが予想される。

特に高齢化社会の進展する中で生涯学習の時代に突入した21世紀の教育環境は社会に出た後もキャリアアップを目的として再び教育を受けようとする人口が増え、社会人大学院夜間大学院が脚光を浴びてきておりキャリア教育の重要性が高まっている。実践的なスキル修得や専門的教育を施す機関として社会人大学院の中でも有力な受け入れ先である専門職大学院には取得する学位の代表的なものとしてMBAMOTMPHMPAMPMなどがある。

取得できる学位の中で最も代表的なのはビジネスマンのステータスであるMBAすなわちMaster of Business Administrationであるが、新しく出来た専門職大学院の中では経営管理学修士(専門職)または経営学修士(専門職)として置かれている場合が多い。MBAの上位には通常DBAすなわちDoctor of Business Administration(和文表記: 経営管理学博士)の学位もあるが、専門職大学院の制度が未発達段階にあることとニーズの関係から専門職大学院の学位としては未だ置かれていない。その他、企業戦略やファイナンス大学院、会計大学院で授与する学位も、和文表記では個々の専攻領域だが、英文表記としてはMBAとして一律化しているのも特徴である。MOTすわなちMBA in Technology Managementの学位も日本では技術経営管理学修士(専門職)などの名称で置いている。その他、法政大学の様にMBITという学位を置く大学もあるが、これはMaster of Business information technologyといい、情報技術修士(専門職)という和文表記が主に用いられている。

専門職大学院の前身である専門大学院制度の下で成立した公衆衛生大学院では疫病の治療予防の研究を目的とした人材育成がなされ、当該大学院修了者にはMPH、つまりMaster of Public Health、和文表記: 公衆衛生修士号の学位を授与している。またDPH(Doctor of Public Health、和文表記: 公衆衛生博士号)やPh.D.(Doctor of Philosophy、和文表記: 学術博士)を授与する大学院もある。また、次に代表的なものは公共政策大学院の学位である。これらの大学院で取得できる学位にはMPAやMPP、MPMという学位などがある。MPAはMaster of Public Administrationの略で日本では行政修士と訳す。MPPはMaster of Public Policyの略で日本では公共政策学修士(専門職)または公共政策修士(専門職)としている。MPMはMaster of Public Managementの略で日本では早稲田大学公共経営研究科という公共政策大学院を設置し、このMPMにあたる公共経営修士(専門職)の学位を授与している。

なお、専門職学位は、大学の教授となることのできる資格の要件の一つでもある[5]。また、准教授講師助教となることのできる資格の要件の一つでもある[6]。これらに加えて、専修学校専門課程教員資格でもある[7]。それゆえに今後、専門職技能を有する教員を大学や専修学校で確保する上でも専門職学位を有する高度専門職業人の活躍が期待されるところである。

専門職学位創設の参考とされたアメリカ合衆国の職業学位

日本では、学位令発足以来、学位といえば、アカデミックな学位をさした。しかし、米国では、研究学位と職業学位に分けられ、学術的な研究に従事する研究者と実務に携わる専門家双方に別個の教育・学位の授与がなされてきた。その代表例がロー・スクールメディカル・スクールなどである。

職業学位の種類としては、以下のように実に多彩な職業学位が設置され、多彩な専門教育のプログラムを有している。

職業学位の目的および種類

など。

その他

教育職員免許状で、専修免許状を「別表第一」[8]で授与申請する場合の基礎資格は、原則、「修士の学位を有する」ことが条件となり、「教科又は教職に関する科目」[9]24単位以上の修得により、すでに所有する一種免許状を基礎免許状として授与されるが、「専門職学位」を「修士の学位」と同等とみなし、「修士の学位」の部分を「専門職学位」に置き換えて授与申請することが可能である。

脚注

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  1. 1.0 1.1 1.2 学位規則(昭和28年文部省令第9号)第5条の2
  2. 「大学院における高度専門職業人養成について」(中間報告)[1]
  3. 碩士とは、中華民国中華人民共和国及び大韓民国で、日本の修士に相当する学位の名称として用いられている語である。
  4. 「大学院における高度専門職業人養成について」(答申)[2]
  5. 専門職学位を有し、当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者であって、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者というのが一つの要件。大学設置基準14条3号。
  6. 専門職学位を有する者であって、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者というのが一つの要件。大学設置基準15条3号、16条1号及び16条の2第2号。
  7. 文部科学省の定める大学設置基準第14条に「学位規則(昭和28年文部省令第9号)第5条の2に規定する専門職学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有し、当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者」とある。また専修学校教員資格については同じく文部科学省の専修学校設置基準第18条に「その担当する教育に関し、専門的な知識、技術、技能等を有するもので次の各号に該当するもの」とあり、その条件の5にて「修士の学位又は専門職学位を有する者」と定められている。
  8. 養護教諭免許状に規定される「別表第二」、栄養教諭免許状に規定される「別表第二の二」についても同様。
  9. ただし、特別支援学校教諭専修免許状については「特別支援教育に関する科目」、養護教諭専修免許状の場合は「養護又は教職に関する科目」、栄養教諭専修免許状の場合は「栄養に関わる教育又は教職に関する科目」となる。いずれも、24単位以上となる。

関連項目

外部リンク

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