南芳一

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テンプレート:Infobox 将棋棋士

南 芳一(みなみ よしかず、1963年6月8日 - )は、将棋棋士日本将棋連盟関西本部所属。木下晃七段門下。棋士番号は147。大阪府岸和田市出身。王将棋聖棋王のタイトルを獲得。名人戦A級通算9期。竜王戦1組通算16期。

棋歴

1980年度(昭和55年度)にプロ入りした強豪集団、いわゆる「55年組」の一人であり、タイトル通算7期は彼らの中で最多である。

10歳の頃に父に教わり、将棋を始める[1]

上達は速く、1975年に11歳で奨励会試験に合格し、賀集正三門下で7級で奨励会に入会する。しかし、すぐにB(降級の一歩手前)になり同年9月に退会。半年後に再度入会試験を受けるが不合格[2]。それでもあきらめず、1977年に改めて挑戦して合格し、木下門下で5級で再入会。後にプロ入りした人物としては極めて珍しい、奨励会退会後の再入会を経験した。初段昇段まではスピード出世。三段時代が約1年で一時苦しんだが、1981年1月にプロ入り(四段昇段)を果たす。

1981年度、初参加の順位戦(第40期順位戦C級2組)で9勝1敗・3位の成績を収め、いわゆる‘1期抜け’でC級1組に昇級(五段昇段)。

1982年度は破竹の勢いで活躍。まず、若手の登竜門・第5回若獅子戦棋戦初優勝(決勝の相手は中村修)。また、第6回オールスター勝ち抜き戦で、A級棋士やA級経験者を相手に5連勝(5連勝以上は棋戦優勝扱い)。さらには、第41期順位戦C級1組で9勝1敗で2位となり、2年連続昇級でB級2組に昇格(六段昇段)。これらの活躍により、第10回(1982年度)将棋大賞の新人賞、勝率第1位賞(0.769)、連勝賞(15連勝)を受賞。

1983年度は、第6回若獅子戦で2年連続優勝(決勝の相手は島朗)。

1984年度と1985年度は順位戦に星を集める。1984年度(第43期・B級2組)で9勝1敗・1位の成績、1985年度(第44期・B級1組)は9勝2敗・1位の成績。デビューから僅か5年で4度の昇級をし、一気にA級八段に昇格。22歳でのA級昇級は、加藤一二三谷川浩司に次ぐ3位タイの記録(ほかには中原誠羽生善治[1]。1985年度は15連勝を記録し、将棋大賞の連勝賞を受賞。

1986年度は、第49期(1986年度後期)棋聖戦で活躍する。二次予選通過後、本戦で4人のタイトル経験者(米長邦雄高橋道雄大山康晴、加藤一二三)をなで斬りし、桐山清澄棋聖に挑戦。しかし、五番勝負は1-3で敗退。

1987年度は飛躍の年となる。第51期(1987年度後期)棋聖戦では本戦で中原誠、田中寅彦らを破り2度目の挑戦権を獲得。桐山棋聖に3-0のストレートで勝利して前年の雪辱を果たし、初タイトル・棋聖を奪取(1988年1月12日)。一方、第37期王将戦では二次予選で桐山清澄、加藤一二三らを破ってリーグに初進出。リーグでは中原誠、米長邦雄、森雞二、および、「55年組」の高橋道雄、塚田泰明、島朗を相手に6戦全勝。同じく55年組の中村修王将への挑戦者となる。七番勝負はフルセットの戦いとなり、2-3の後の2連勝で王将位を奪取。一気に二冠となる(1988年3月25日)。将棋大賞の殊勲賞を受賞。

1988年度、初のタイトル防衛戦となる第52期棋聖戦(1988年度前期)では田中寅彦を挑戦者に迎え、2-1からの2連敗で失冠。田中の初タイトル獲得を許す。しかし、第38王将戦は島朗の挑戦を4-0のストレート退けて防衛に成功。この時点でタイトル通算3期となり、25歳にして九段に上りつめる。さらには、第14期棋王戦では、本戦準決勝で一度羽生善治に敗れるも、敗者復活戦で羽生に勝ち、決勝では田中寅彦を破り、谷川浩司棋王に挑戦。五番勝負は2連敗からの3連勝で奪取。再び二冠となる。なお、この年度は第1期竜王戦で1組に参加して本戦進出しており、また、第22回早指し将棋選手権で準優勝している(決勝で森雞二に敗れる)。将棋大賞の敢闘賞を受賞。

1989年度、第54期(1989年度前期)棋聖戦で中原誠棋聖に挑戦。先勝の後の3連敗で奪取失敗。そして、挑戦者・米長邦雄がと南を挑発して(人物・エピソード の項を参照)話題となった第39期王将戦では3-1の後の3連敗で失冠。しかし、第15期棋王戦では66歳の大山康晴の挑戦(タイトル挑戦の最年長記録)を3-0で退けて防衛。また、第23回早指し将棋選手権で優勝(決勝で中原を破る)。オールスター勝ち抜き戦では9連勝。将棋大賞の技能賞を受賞。

1990年度、第55期王将戦リーグで森下卓との4勝2敗同士のプレーオフを制し、米長に挑戦。七番勝負は1-2からの3連勝で王将位奪還。これで三たび二冠となる。しかし、その6日後の第16期棋王戦第4局(1991年3月18日)で羽生善治に敗れて一冠に戻る。これは羽生にとって棋王12連覇の始まりでもあり、タイトル在位連続20年超の始まりでもあった。

第58期(1991年度前期)棋聖戦で、前年に史上最年少タイトル保持者となった屋敷伸之棋聖を3-2破り、4度目の二冠となる。そして、日程が並行した第59期(1991年度後期)棋聖戦と第41期(1991年度)王将戦は、いずれも谷川浩司が南への挑戦者として名乗りを挙げてくる。南は棋聖戦0-3、王将戦1-4でいずれも谷川に敗れ、無冠となる。一方の谷川は、自身初の四冠となった。同年度、第17期棋王戦では谷川らを破り羽生棋王へのリターンマッチの権利を得るが1-3で奪還はならず。なお、A級順位戦(第50期)では、谷川、南、高橋、大山が6勝3敗で並び、史上初の4名によるプレーオフとなったが、南を破った高橋が名人挑戦権を得た。

1993年度、オールスター勝ち抜き戦で7連勝。同年度、第19期棋王戦で羽生に挑戦し、0-3で敗退。また、NHK杯戦でベスト4。

1995年度、第29回早指し将棋選手権戦で準優勝(決勝で羽生に敗れる)。

1997年度、第23期棋王戦で挑戦者決定二番勝負を郷田真隆(敗者復活)と戦うが、0-2で挑戦権獲得を逃す。

1998年度、第11期竜王戦で1組優勝。

2002年、第43期王位戦リーグ入り。

2009年、第17回達人戦(非公式戦)で、有楽町マリオンにて公開対局として行われた決勝戦で塚田泰明に勝ち、初優勝。

棋風・所作

対局中、正座したままほとんど動かず、棋界一寡黙とも言われ、堅実で腰の重い棋風もあって石のお地蔵様と指しているようだとして「地蔵流」と呼ばれる。デビュー直後は四間飛車を多く指していたことから、「リトル大山」と呼ばれていた[3][4]

人物・エピソード

  • 王将戦・棋王戦といった冬に行われるタイトル戦に強かったためテンプレート:要出典範囲
  • 横歩取りが流行しても、あまり指していなかったが、1990年(1989年度)の第39期王将戦で南への挑戦者になった米長邦雄が「横歩の取れない男に負けるわけにはいかない」と新聞上でコメントして挑発。そして、七番勝負のうち南の先手番である第2、第6局で米長は横歩取りに誘ったが、南は2局とも横歩を取った。結果は、第2局は南が、第6局は米長が勝ち、1勝1敗。
  • 第56期(2006年度)NHK杯戦の本戦2回戦の対郷田真隆戦で、まだ序盤とも言える局面で自分のと郷田のが交換になってしまい、解説の森下卓が「初回の満塁ホームラン」と表現した。しかし、結果は南の勝ちとなった。
  • 1988年に創設された岸和田市民栄誉賞(第1号)を受賞した。ちなみに2人目の受賞者は、2004年に受賞した読売ジャイアンツ(当時)の清原和博である。

昇段履歴

  • 1975年4月 7級 = 奨励会入会
  • 1975年9月 奨励会退会
  • 1977年10月 5級 = 奨励会に再入会
  • 1978年8月 初段
  • 1981年1月19日 四段 = プロ入り
  • 1982年4月1日 五段(順位戦C級1組昇級)
  • 1983年4月1日 六段(順位戦B級2組昇級)
  • 1985年4月1日 七段(順位戦B級1組昇級)
  • 1986年4月1日 八段(順位戦A級昇級)
  • 1989年2月22日 九段(タイトル3期)

主な成績

獲得タイトル

タイトル 番勝負 獲得年度 登場 獲得期数 連覇
竜王 七番勝負
10-12月
名人 七番勝負
4-6月
王位 七番勝負
7-9月
王座 五番勝負
9-10月
棋王 五番勝負
2-3月
88(第14期)-89 5 2期 2
棋聖 五番勝負
6-7月
87後(第51期), 91前(第58期) 6 2期
王将 七番勝負
1-3月
87(第37期)-88, 90 5 3期 2
登場回数合計16、 獲得合計7期
(最新は1993年度の棋王挑戦敗退)

一般棋戦優勝

優勝合計 6回

在籍クラス

竜王戦と順位戦のクラスは、将棋棋士の在籍クラス を参照。

将棋大賞

  • 第10回(1982年度) 勝率第一位賞・連勝賞・新人賞
  • 第13回(1985年度) 連勝賞
  • 第15回(1987年度) 殊勲賞
  • 第16回(1988年度) 敢闘賞
  • 第17回(1989年度) 技能賞

著書

脚注

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関連項目

外部リンク

テンプレート:日本将棋連盟所属棋士 テンプレート:将棋竜王戦 テンプレート:将棋順位戦

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  1. 1.0 1.1 平成10年版「将棋年鑑」(日本将棋連盟)
  2. 将棋世界」(日本将棋連盟)2000年1月号付録
  3. (編注)大山康晴振り飛車の名手として著名な棋士。で、15世名人。
  4. テンプレート:Cite book ja-jp