ロータス・エリーゼ

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エリーゼ(タイプ111、Elise )とはイギリス自動車メーカーロータス製造するロードスター型の軽量スポーツカーである。

特徴

エリーゼの特徴はアルミ合金製の部材を航空機にも利用される接着剤で組み立てたバスタブフレームと、FRP製の外装によって実現された軽量な車体にある。アルミニウムシャシーの組み立てにリベットを使用せず、航空機製造用のエポキシ系の接着剤を用いることにより、剛性を確保して組立て精度を向上しながらシャシー単体で68kgと軽量化に寄与している。

初期ロットのエリーゼはエンジンベイ、リヤハブキャリアもアルミで作られている。ブレーキローターには量産車初のアルミ(メタルマトリックス)ディスクを使っていた。1998年以降のロットにおいてはアルミディスクの供給会社が倒産したため通常のスチールに変更されたほか、その他のアルミ部品もスチール製に変更されて、少なからず重量が増加している。「フェイズ1」や「シリーズ1」などのように通称される最初期のモデルではエアコンやパワーステアリング、ブレーキブースターなどが省略され、車重は公称690kg[1]程度である。2012年現在のモデルはエアコンやカーオーディオ、エアバッグなどの衝突安全装備などを搭載して、900kg程度となっている。またハンドリングにも優れており、軽量なアルミ製シャシーが支えるタイトな走りは、レーシングカーさながらである。

二座のタルガトップクーペスタイルで、エンジンはキャビン後方に横置きミッドシップマウントされ、後輪を駆動する。サスペンションにはフロント、リアともにダブルウィッシュボーンを採用している。キャビン後方のFRPボディ内部には4点式のロールバーが内蔵されていて、布製の幌屋根は手動で梁構造ごと脱着する方式を採用しており、キャビン後方へ折りたたまれる機構は有していない。

大量生産に向かず、量産効果による低価格化が期待できない車体構成でありながら、販売価格は500 - 700万円程度と比較的安価な設定となっている。

エスプリの生産が終了した今、ロータスの主力モデルとなっている。エリーゼはEで始まるロータス伝統の名前が付けられているが、その由来は当時のロータス株主であったブガッティの会長ロマーノ・アルティオーリの孫娘の名前「エリーザ」である、ただし「エリーザ」はイタリア系を連想させるため、「エリーゼ」となった[2]

歴史

ファイル:Lotus TLC-Harajuku Showroom.JPG
2010年のフェイスリフト後のモデル

ロータスが開発したエリーゼは1995年フランクフルトショーでデビューした。翌1996年から販売が開始され、エンジンのバリエーションや派生車種の追加などを受けながら、2001年モデルチェンジされた。このモデルチェンジを境にフェイズ1とフェイズ2、あるいはマーク1(Mk1)とマーク2(Mk2)、シリーズ1(S1)とシリーズ2(S2)のように呼び分けられている。2004年にはトヨタよりエンジンの受給を開始し、さらにモデルバリエーションが増やされた。2010年に再びフェイスリフトが行われ、搭載されるエンジンやトランスミッションが変更された。

エンジンバリエーション

ローバー・18K4F
ローバー社から供給されていたKシリーズと呼ばれるエンジンで、エリーゼが販売開始された1996年から、トヨタ製エンジンに切り替わる2006年5月まで、フェイズ1とフェイズ2に搭載された。1.8L DOHC直列4気筒自然吸気で、最高出力は90kW(122ps)/5,600rpm、最大トルクは168N-m(16.8kg/m)/4,500rpmであった。
ローバー・18K4K
1998年、Kシリーズに可変バルブタイミング機構(VVC)を備えた18K4Kがラインナップに加わり、2006年5月までフェイズ1とフェイズ2に搭載された。最高出力は116kW(156ps)/7,000rpm、最大トルクは174N-m(17.7kg/m)/4,500rpmであった。
トヨタ・2ZZ-GE
2004年に追加された。1.8L VVTL-i付きDOHC直列4気筒の自然吸気で、米国の排気ガス規制をクリアし、最大出力は141kW(192ps)/7,800rpm、最大トルクは181N-m(18.5kg/m)/6,800rpmであった。
トヨタ・1ZZ-FE
ローバー社の破綻によりKシリーズエンジンの供給が打ち切られたため、2006年6月からベーシックグレードに搭載された。これによってエリーゼシリーズに搭載されるエンジンは全てトヨタ製となった。1.8L VVT-i付きDOHC直列4気筒の自然吸気で最大出力は100kW(136ps)/6,200rpm、172N-m(17.5kg/m)/4,200rpmであった。テンプレート:要出典範囲ため、そのスペック差はテンプレート:独自研究範囲
トヨタ・1ZR-FAE
トヨタにおける1ZZ-FEの生産終了に伴って、2011年からベーシックグレードに搭載されている。バルブマチックシステム(可変バルブリフト機構)とデュアルVVT-i(連続可変バルブタイミング機構)を備えた1.6L DOHC直列4気筒で、最高出力は136ps/6800rpm、最大トルクは16.3kg-m/4400rpmである。従来型1.8Lエンジンに比べて、燃費は23%以上向上(欧州の複合モードで16.2km/リッター)している[3][4]

モデル展開

1999年-2001年(フェイズI)

スタンダード(111)
発売当初からのモデルで、ローバー・18K4Fエンジンを搭載していた。日本への並行輸入車は「エリーゼ」だったが、後の正規輸入車ではテンプレート:要出典範囲開発ナンバーである「111」を使用していた。
111S
1998年に追加され、VVC付きのローバー・18K4Fを搭載していた。リアスポイラーが付きリアタイヤがワイド化され、ボディサイズにも若干の変更が加えられている(スタンダードが全長3,726mm×全幅1,701mmに対し、111Sが全長3,734mm×全幅1,703mm)。
モータースポーツ・エリーゼ
2000年にワンメイクレース専用マシンとして65台が生産された。18K4KからVVC機構を取り外し、独立4連スロットルを付けたエンジンを搭載していた。イギリスのエンジンチューナーであるミニスター・レーシングの手によってチューンされており、ピストンやコンロッド、クランクシャフト、カムなども変更されていた。最高出力は206ps、車重は715kgであった。モータースポーツ・エリーゼの市販仕様がエキシージmk.1である。テンプレート:Main

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2001年-2011年(フェイズII)

ファイル:Lotus Elise at Indy Concours.jpg
エリーゼ・フェイズII

2001年、エンジンバリエーションとモデル展開はそのままに、外装デザインが一新された。オプションとしてエアコンが装備できるようになった。

スタンダード
18K4Fを搭載したモデルである。
111S
18K4Kを搭載したモデルである。
111R
2004年に追加された、トヨタ・2ZZ-GEエンジンを搭載したモデルで、トヨタ製エンジンを搭載するにあたりサブ・フレームを大幅に変更していることから、形式番号はタイプ111ではなくタイプ120となっている。ABSも装備している。
エリーゼS
ベーシックグレードの搭載エンジンがローバー製からトヨタ製に変更されたことに伴い、スタンダードはエリーゼSとされた。型式番号は119とされ、同時にエアバッグやパワーウィンドウ、ブレーキブースターが搭載された。カタログ上の0-100km/h加速は6.1秒で最高速は205km/hとされている。
エリーゼR
スタンダードがエリーゼSとされたのに合わせて、111RはエリーゼRとされた。カタログでは0-100km/h加速は5.2秒、最高速は241km/hとされている。これは高級スポーツカー、フェラーリF911にも対抗できる加速性能である。
エリーゼSC
2007年10月に開催された東京モーターショーで、2008年モデルとしてプレミアされた、エリーゼのハイパフォーマンスグレードである。2ZZ-GEエンジンにロータスが設計したイートン製ローター(M45ユニット)のスーパーチャージャーを加え、220psを発揮すると謳われていた。エキシージではインタークーラーのレイアウトが後方視界を妨げていたが、エリーゼSCは過給器を備えながらもインタークーラーを装備せず、ほかのモデルと同様にタルガトップのボディ形式としている。外観上の特徴は、新たに設計されたリアスポイラーとアロイホイールで、リアタイヤは8Jへとサイズアップされた。カタログスペックで、車重は903kg、0-100km/h加速は4.6秒であり、最高速度は242km/hとされた。

2011年以降(フェイズIII)

2011年モデルでウインカーがヘッドライトユニットと一体化されるなど、外装デザインが変更された。

エリーゼ (エリーゼ1.6)
搭載エンジンがトヨタ・1ZR-FAEに変更されたのちのベーシックグレードである。車重900kg、最高速度は204km/hである。
エリーゼCR
ベーシックグレードに特別色を含むエクステリアカラーに加え、独自の特徴的なインテリアデザインが施されたグレード。専用のブラック軽量鍛造アルミホイールが装着される。
エリーゼS
2012年に追加された、1.8Lスーパーチャージャー付き2ZR-FE搭載モデルである。車重は924kg、最高速度は234km/hである。これに伴い、ベーシックグレードは「エリーゼ 1.6」と呼ばれるようになった。

派生車種

GT1(115)

1997年に始まったFIA GT選手権GT1クラスに参戦するために開発されたモデルで、市販のエリーゼとの共通点は押出し形成のアルミフレームを接着するという構造だけである。当初はエスプリのレース仕様のエンジンを搭載したが、のちにGM傘下時代に設計したコルベットZR-1V8エンジンを許可を得て使用した。しかし、いずれも好成績を残すことなく1998年に撤退した。

340R

1998年10月20日にバーミンガムで行われたNECモーターショーで発表された。屋根やドアのない車体構造で、空調装置も搭載されていなかった。当初は500kgの車重に、170bhpのKシリーズエンジンを搭載する予定で、1t当たりの出力が340bhpであることからこの名が与えられ、生産台数も340台に限られた。しかし実際に販売されたときには、日本の自動車検査証には車両重量が680kg(前軸重270kg、後軸重410kg)と記載されていた。Kシリーズは可変バルブタイミング機構なしで178bhpを発生し、パワーウェイトレシオは3.8kg/bhp、0-100km/h加速は4.4秒であった。

2-Eleven

2007年のジュネーブショーで発表されたモデルで、2005年に発表されたサーキットカープロトタイプをベースとしている。340R同様に屋根やドア、空調装置はなく、当初はシングルシーターのサーキット専用モデルであったが、後に公道用にナンバーを取得できる2シーターモデルが追加された。エンジンはトヨタ・2ZZ-GE型にイートン社製ルーツ式スーパーチャージャーを組みあわせたものが搭載された。最高出力は255ps/8000rpmで、最大トルクは24.7kg-m(242N-m)/7000rpmであった。車重780kgでパワーウェイトレシオは3.1kg/psである。NAバージョンもラインナップされ、最高出力が192ps/7,800rpm、最大トルクが18.5kg-m(181N-m)/6,800rpm、車重は760kgであった。

脚注

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  1. 日本の自動車検査証では750kgと記載されている。
  2. 二玄社刊「CG選集 現代のライトウェイトスポーツカー」ISBN978-4-544-91516-7 p30
  3. WebCG2010年10月14日
  4. WebCG2011年1月20日

関連項目

外部リンク

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