バンパー

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テンプレート:Otheruseslist バンパー(bumper)とは、衝撃や振動を和らげる緩衝装置のこと。素材自体の弾力性やバネなどを利用して衝撃を吸収・緩和する。機械部品や運送用機器などに取り付けられる。

自動車のバンパー

自動車の前後に取り付けられる。素材はポリプロピレンFRPカーボンファイバーなど多様な素材が用いられるが、金属系の素材はメッキ、樹脂系の素材は塗装により表面を加工されていることが多い。自動車事故により容易に損傷することから、近年ではリサイクルを念頭に置いた製品が開発されている。乗用車においては、「フロントスポイラー」と一体になったエアロパーツとなっているものもある。修理や交換等で廃棄された樹脂バンパーのリサイクルが試みられ、実用化に至っている。

日本国内と海外におけるバンパーの扱いの違い

車両使用時に、また駐車場での接触事故等でついた(つけた)バンパーの傷については、日本国内では他のボディ部位と同様に補修、補償の対象とすることが多いが、海外では元来傷ついて当たり前のものとして放置される傾向がある。ただし、これはあくまで一般論であり、高級車やスポーツカー等においてはこのかぎりではない。

「ヨーロッパでは『バンパーはぶつけてよいもの』という認識」と語られることがある。これについて、イタリア在住の自動車評論家である大矢アキオは「地域による」としている。具体的には、「パリミラノフィレンツェのような大都市の混雑した地域では、縦列駐車の際に他車のバンパーに当てて止める光景を見かける」「しかし、パリの郊外部や地方都市など、スペースに余裕がある地区へ出るにつれて、バンパーを当てる習慣は見られなくなっていく」とのことである[1]

5マイルバンパー

1974年モデルイヤーとなる1973年後半から、アメリカ車北米向け仕様車において大型のバンパーが装着される始める。これは通称「5マイルバンパー」と呼ばれ、その名の通り時速5マイル(約8km/h)以下で衝突した際、バンパーが衝撃を吸収し、復元することを求めた北米の安全基準に基づいて作られたものである。

これは「衝突時に、バンパーそのものや尾灯ラジエーター操舵装置足回り燃料タンク排気系などに大きな損傷が及ばないように」というものであったが、実際は低速度の接触によるバンパーの修理、交換に対する保険金の支払額の多さに辟易としていた保険会社が、「衝突安全性を高める」という建前を元にこの様な安全基準の施行を求めたものであった。

金属製バンパーはそれ自体を強固で変形しにくいものとし、その後普及したポリウレタンポリプロピレンなどの樹脂カバーを用いるものは、高強度のリインフォースメント(内部補強材)と衝撃吸収材を持ち、どちらのバンパーもが伸縮するストラットで支持されている。同時に、高さの範囲も決められており、これに合致しないもの(位置が低いものや細いもの)は、バーや小ぶりのバンパーの追加が行われた(ダブルバンパー化)。

テンプレート:Double image aside 登場当初、特にモデルライフ途中で装備されたものは、大きく突き出したバンパーのみが目立ち、従来のバンパー取り付け部の凹みを埋める部品や伸縮部を隠すラバー類、行き場を失って移設された方向指示器やマーカーランプなどによる「取ってつけた感」が甚だしく、スタイルが著しくスポイルされる結果となった。さらにそれ自体の重量も大きく、同時に進行していた自動車排出ガス規制によるエンジン出力の低下と相まって、性能の低下は免れなかった。前後のオーバーハングに追加されたこの重量物は、特に、軽量さを武器に運動性の高さを訴求して来たスポーツカーにとっては致命的であった。


このように、性能と外観に大きな影響を及ぼし、不評を買うことも多い5マイルバンパーであるが、車種によってはこれをうまく処理して成功した例もある。テンプレート:Double image aside ポルシェ・911、2代目にあたる930型で356C以来のクラシカルな細身のバンパーを、ボディー同色の大型ウレタンバンパーに変更し、陳腐化を払拭して拡販を成し遂げ、モデルライフを1989年まで引き伸ばすことに成功した。これ以降のポルシェは、北米向け以外を含む全生産車が5マイルバンパーとなり、930型も「ビッグバンパー」、あるいは「Gシリーズ」という通称で呼ばれ、一定の愛好家が存在する。

テンプレート:Double image aside アメリカ生まれのポニーカーマッスルカーには、レーシーなイメージを持たせるため、バンパーレススタイルとしたものがあった。ジョン・Z・デロリアン時代のポンティアックブランドのGTOファイアーバードもそれで、新たな保安基準の前にデザインコンセプトの変更を余儀なくされたが、ファイアーバードはシボレー・カマロと共に「スラントノーズ」を提案し、新たな顧客を掴むことに成功した。

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現在の日本車も、北米向けや北米現地生産車には5マイルバンパーが装備されており、国内向けの同型車に比べてバンパー自体も大きくなっているため、接触や衝突の可能性が高い教習車にこれを流用しているメーカーもある。またもう一つの理由として、車体サイズが国内サイズでは教習車の最低基準を満たさないが故に5マイルバンパーを採用して対応するというものがある。(例:三菱教習車(≒ランサー))

一方、日本国内向けモデルでは外観が北米向けと同じであっても、5マイルバンパーとしては機能しないものがある。これらや日本国内専売モデルは一部の高級車や高額車を除いて伸縮式ストラットを持つものが殆ど無く、軽量化と低価格化のためにリインフォースメントが省略されているか、リインフォースメントという部品名であっても、板厚や面積の不足で、「ガワ」を支持するステー程度の役割しか果たさないものが多く、5マイルバンパーほどの衝撃吸収力は期待できない(後述)。 テンプレート:-

日本仕様車の現状

フロントバンパーについては、スペースの制約の厳しい軽自動車を除き、内部に金属骨格と緩衝材を配置しステー部をクラッシュボックスとする事で補修性に配慮した造りが主流になっている。しかしリアバンパーに関しては内部には骨格も緩衝材も配置せずバンパー外皮の樹脂の弾力だけで対処しているケースが多いのが現状である。なお、日本ブランドの車でも欧州からの輸入車トヨタ・アベンシス等)や輸出仕様車にはリヤバンパーにも金属骨格と緩衝材を配置している例が見られる。

日本仕様車の現状例

バンパーモール

バンパーを保護する目的で、バンパーモールという部品がカー用品店などで数多く販売されており、主に欧州車を中心として純正装備される例もある。近年は、単にバンパーを保護するだけでなく、車外装飾を目的として、美的にも優れたバンパーモールが市販されている。

ヒュンダイ・エラントラセダン(XD系後期)に見る、同一車種における仕向地別のバンパーモール有無例

バンパーステッカー

リアバンパーに自分の宗教政治社会運動に対する意志や思想(アウェアネス・リボンなど)、あるいは好きな自動車部品メーカーやスポーツチームなどのステッカーを貼る人がいる。特に顕著な車社会アメリカにおいてよく見られる。

カンガルーバー

金属製の板やパイプを曲げて造られた大型バンパー。グリルガード(Grill Guard)やオージーブルバー(Aussie Bull Bar)とも呼ばれる。オーストラリアカンガルー避けに開発されたが、1990年代からファッション性を高める理由で大型SUVに標準装備されるようになった。対人事故を起こした場合、人体に与えるダメージが大きいため、大型動物のいない都市部で無意味なカンガルーバーをつけることにはテンプレート:誰範囲。これに準じ2000年代から各自動車メーカーはオプション設定をすることをやめている。しかし、ピックアップトラックSUVの人気が高いアメリカの農村部では未だに装着している車が多い。理由としては、鹿を中心とした野生動物と車との衝突事故が日常茶飯事であり、平原や山野部の道路でそのような事態に陥り走行不能状態になった場合に危険であることと、またそのような地域では狩猟を趣味や生業としている人も多く、そういう人々は安易にディアホイッスル(ディアワーニングとも。鹿避け笛)を車に装着できないなどの事情がある。

プッシュバンパー(Push Bumper)

アメリカのパトカーに見られる装備。バンパーの前に、さらに頑丈なバンパーを装着する。先述のカンガルーバーと似たような見た目をしているもの。アメリカでは、逃走する被疑者車両の後部側面を押して目標をスピンさせる「PITマニューバ」という技術が度々使用される。プッシュバンパーはPIT実施時に目標を押したり、またPIT及びスピンした車両をパトカーでブロックする時に車体を保護する役目がある。
またハイウェイ上で故障して立ち往生した車両を事故防止の為に最寄の出口まで押して移動させる事にも使われる。
形状はグリル正面だけを保護するオーバーライダー的なものから、グリルガードよろしくヘッドライトやウィンカーまで覆うものなど様々であり、緊急車両部品メーカーが市場に供給している。装着するか否かは各警察機関の判断なので、装着していない場合も珍しくない。

脚注

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  1. テンプレート:Cite web