ハマグリ

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ハマグリテンプレート:Snamei)は、マルスダレガイ上科マルスダレガイ科に分類される二枚貝の1種である。食用として重要な貝類の一つである。季語、三春。

呼称

「ハマグリ」という呼称は、生物学的には唯一の種 Meretrix lusoria を指す標準和名であるが、他にもいろいろな使われ方があるため、生物学や水産学関連の文書以外での「ハマグリ・はまぐり・蛤」などが何を指すのかが不明な場合も多く、注意が必要である。例えばハマグリ属テンプレート:Snamei)の種はどれも外見が似ているため、水産市場や日常生活のなかではそれらもしばしばハマグリと総称・混称される。

なお、国内で流通するハマグリと呼ばれる貝で流通がもっとも多いのはチョウセンハマグリ(汀線蛤[1][2])である。

日本では代表的な二枚貝の一つであるため、和名構成の基幹ともなり、ベニハマグリバカガイ科)、ノミハマグリ(マルスダレガイ科[3]ノミハマグリ属)など、分類学的には縁のない別属や別科の二枚貝にも「~ハマグリ」という標準和名のついた種も少なくない。

さらに「ハマグリの仲間」の意で、一般的な二枚貝類の総称として使われることもある。これは他の言語で二枚貝一般を指す単語、例えば英語テンプレート:En などに通じる用法で、英和辞典テンプレート:En の訳語として出ている「ハマグリ・蛤」もこれに相当する。したがって翻訳文の中で「ハマグリ」と訳されている貝は、実際には真のハマグリとは属はもとより科さえ異なる二枚貝であることも多い(下記 Clamの例も参照)。

2000年頃以降に日本の市場で「白はまぐり」[4]「白蛤」などの名で売られるようになったものは、やや近縁の同科別属のホンビノスガイであるテンプレート:要出典北アメリカ原産の外来種で、日本沿岸では20世紀末から東京湾の砂泥底などに定着するようになり、21世紀初頭から主に市川市など千葉県産のものが市場に出回るようになったテンプレート:要出典

特徴

長さ8cm、幅3.5cm、高さ6.5cmほどの丸みを帯びた三角形の貝殻を持つが、よく成長したものでは殻長が10cm以上になる場合もある。

本来の分布域は日本本土の東北地方以南の地域と、朝鮮半島の一部で、淡水の影響のある内湾の砂泥底に生息する。しかし日本では昭和後期に急激に減少し、少なくとも1980年代以降、干拓埋め立て、海岸の護岸工事などによって生息地の浅海域が破壊されたため、瀬戸内海西部の周防灘の一部、有明海の一部などの局地的な生息地を除くほとんどの産地で絶滅状態になった。

シナハマグリ (テンプレート:Snamei) とは、殻の光沢の有無や斑紋、殻の形によって大まかに見分けることができる。すなわち光沢があり、斑紋が多様で、殻の後端(水管が出る方)がやや伸びるのがハマグリ、光沢乏しく、くすんだ灰色の地に胡麻斑が多く出て、殻の両端の伸び具合がほぼ同様ものがシナハマグリである。

撒かれたシナハマグリが在来のハマグリと交雑して遺伝子交雑を引き起こしている可能性が指摘されている。

漁業

ファイル:YokohamaShellFishDealer.jpg
明治期横浜の魚介店の立体写真。店先で大量のハマグリが売られている。地面には剥いた後の殻が見え、暖簾にも蛤の文字が読める。当時の東京湾はハマグリの一大産地であったが、昭和後期にはほぼ全滅してしまった。

主として熊本県産のものが流通しているが、ひな祭りなどハマグリを食べる時期を除けば、輸入品であるシナハマグリの流通量に比べるときわめて少量である。

千葉県レッドデータブックでは、ハマグリは野生絶滅(EX)[5]であり、現在千葉県で産出するものは在来のものではない。

環境省レッドデータブックでは、2012年に新たに絶滅危惧II類に指定された。

食材として

日本人にとって非常に古くから親しまれてきた食材で、『日本書紀』にも記述がある。成分にコハク酸を多く含み、旨みに富む。吸い物やクラムチャウダー鍋物の具、酒蒸し、焼き蛤、佃煮土瓶蒸し串焼き寿司など、幅広い料理で利用される。ビタミンB1を分解してしまう酵素アノイリナーゼを含むため、生食には向かない。

ハマグリは元々の組合せ以外の貝殻とはぴったりかみ合わない。そこで、結婚式でハマグリの吸い物が出されることも多い。また、「よい伴侶にめぐり合えるように」との願掛けからひな祭りにハマグリを潮汁などの料理にして食べる風習がある。

料理

パエリヤ炊き込みご飯など、和洋中華料理に用いられる。 いずれの場合も十分な加熱処理で使用する。

ハマグリの酒蒸し
砂出ししたハマグリを、日本酒で蒸し煮にしたもの。醤油ニンニク等で調味することもある。
ハナグリの炭火焼き
ハマグリのガソリン焼き
北朝鮮郷土料理に屋外の調理で「ハマグリのガソリン焼き」というものがある(日本の俗称に「ハマガソ」と呼ぶことがある)。生のハマグリの上にガソリンを掛け一気に焼き上げると言う、生貝を蒸し焼する調理の一種で、意外にもガソリン臭さは無く美味であるという。尚、ガソリンの代わりにアルコールを使う調理法もあり、こちらの方が調理法としては上等なものとされる。[6]ただし、一見簡単な調理法だが、室内調理は禁忌(現地でも行わない)、燃料を貝の中へ混入させない工夫、手短に十分加熱するといった要領処理が求められる。引火しやすい燃料を用いるため、火災やけど(2013年福知山花火大会露店爆発事故のような危険もある)、急激な加熱から貝殻が破裂し怪我につながる場合があり、不安定な火力から不十分な加熱は食中毒につながることもある。このため安易な模倣調理は極めて危険で、行うべきでは無い。
また、高温で予め熱したオーブンを用いたり、火中に吊すなどの加熱処理で同等の風味は再現できるが、調理器具の性能熟知した上で、要領が求められる。


食用以外の利用

言葉

テンプレート:独自研究

語源

「ハマグリ」という言葉は、浜辺にあり、と形が似ていることから「浜栗」と呼ばれたことに由来するとの説や、石ころをクリと呼ぶことから浜にある石のような貝との意でハマグリと称されたとの説などもある。後者の説は八丈島の方言でタカラガイ類をハマグリと呼ぶのにも通じる。

ぐれる

少年などが非行に走ることを「ぐれる」というが、この言葉はハマグリに由来する。江戸時代から使われるようになった。

ハマグリの貝殻は貝合わせという遊びにも使われるように、ペアになっている殻以外とはぴったりと形が合わないという性質を持っている。このことから、「はまぐり」の倒語として「ぐりはま」という言葉が生まれ、食い違って合わないことを意味するようになった。これが「ぐれはま」に変化し、さらに「ぐれ」と略されるようになる。そして、この「ぐれ」が動詞化したものが「ぐれる」である。

ちなみに、「ぐりはま」の漢字は、「蛤」をそのまま180度回転させ、見た目を逆さまにしたものである。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister テンプレート:Refbegin

テンプレート:Refendテンプレート:Asbox
  1. 大洗観光協会 鹿島灘ハマグリ
  2. 今が旬、鹿島灘ハマグリ jf-net JF全漁連
  3. テンプレート:Cite
  4. 商標「プリップリッ白はまぐりちゃん」第5104724号(2008年1月11日登録)の指定商品又は指定役務は、ホンビノスガイとされる。
  5. 千葉県レッドデータブック
  6. ハマグリのガソリン焼き 朝鮮日報オンライン 2001年10月17日