蜃気楼

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秋冬型の蜃気楼(富山県魚津市沖)

蜃気楼(しんきろう 英:mirage)は、密度の異なる大気の中で屈折し、地上や水上の物体が浮き上がって見えたり、逆さまに見えたりする現象。光は通常直進するが、密度の異なる空気があるとより密度の高い冷たい空気の方へ進む性質がある。

種類

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光の屈折による下位蜃気楼

大気の密度は大気の温度によって粗密を生じるが、低空から上空へ温度が上がる場合、下がる場合、そして水平方向で温度が変わる場合の3パターンがある。それぞれによって蜃気楼の見え方が異なる為、以下のように分類される。

上位蜃気楼

温度の低い海面等によって下方の空気が冷やされ密度が高くなると、元となる物体の上方に蜃気楼が出現する。水平線(地平線)の下に隠れて見えない風景や船などが見える場合があり、通常ニュースなどで取り上げられる蜃気楼は、この上位蜃気楼を意味する場合が多い。

ヨーロッパを中心に、ファタ・モルガーナ(Fata Morgana)という俗称も広く浸透している。

北海道別海町野付半島付近や紋別市などでは、この対応の蜃気楼の一種として、四角い太陽が観測されることがある。四角い太陽は、気温が氷点下20度以下になった早朝、日の出直後の時間帯に、通常は丸く見える太陽が四角く見える現象である。極地域では他にもこれが観測される場所がある。16世紀末、ウィレム・バレンツらの北極海探検時にノヴァヤゼムリャで発見されたので、ノヴァヤゼムリャ現象という別名もある。

下位蜃気楼

最も一般的に目にする機会の多い蜃気楼。アスファルトや砂地などの熱い地面や海面に接した空気が熱せられ、下方の空気の密度が低くなった場合に、物体の下方に蜃気楼が出現する。

ビルや島などが浮いて見える浮島現象逃げ水現象もこのタイプに属する。

鏡映(側方)蜃気楼

物体の側方に蜃気楼が出現する。報告が最も少なく、極めてまれな現象であると言える。スイスジュネーブ湖で目撃されたという報告がある。また、日本で不知火(夜の海に多くの光がゆらめいて見える現象。九州八代海有明海などで見られる)と呼ばれるものも、このタイプの蜃気楼に属すると言われている。

歴史

蜃気楼と見られる記述が初めて登場したのは、紀元前100年頃のインドの「大智度論」第六まで遡る。この書物の中に蜃気楼を示す「乾闥婆城」という記述がある。また、中国では『史記』天官書の中に、蜃気楼の語源ともなる大蛤「(あるいは)の気(吐き出す息)によって楼(高い建物)が形づくられる」という記述がある。日本語の「貝やぐら」は、蜃楼の蜃を「かい」、楼を「やぐら」と訓読みにしたことばである。

日本では近世に成立した『北越軍談』において上杉謙信が蜃気楼を見たとする逸話を記しているほか、『魚津古今記』(1700年頃)では、加賀藩当主である前田綱紀魚津で蜃気楼を見て吉兆であると「喜見城」(「きけんじょう」=須弥山の頂上の忉利天にある帝釈天の居城)と名づけたと伝えられていたり、その他、同じく加賀藩当主、前田治脩は、1797年4月に江戸から金沢への参勤交代帰城道中に魚津で蜃気楼を発見し、その絵を描かせたと伝えられている。

蜃気楼を描いた芸術作品

関連項目

外部リンク

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