ダース・シディアス

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ダース・シディアスDarth Sidious)は、映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する架空の人物。

概要

ダース・シディアス、本名パルパティーンPalpatine)は、銀河共和国最後の元老院最高議長であり、銀河帝国の初代皇帝でもある。また、彼はダース・ベインの掲げた2人の掟に従った最後のシスの暗黒卿であり、銀河系の歴史上において最も強大なシス卿の一人であると考えられている。

旧三部作(エピソード4-6)では、銀河帝国の最高権力者であるにもかかわらずほとんど登場せず、ダース・ベイダーに比べると目立っていなかった。しかし、エピソード5ではルークの「ダース・ベイダーは暗黒面の支配者ですか?」という問いにヨーダは「違う」と答えており、ベイダーの上に君臨する皇帝の存在が意識されている[注釈 1]。エピソード6ではヨーダが今際の際にルークに発した言葉は「皇帝の力を侮るな」であった。また、ダース・ベイダーはルークに対して「我ら親子が手を組めば皇帝にも勝てる」と発言しており、間接的に皇帝がベイダーよりも強大であることを示している。

新三部作(エピソード1-3)では、最初から重要人物として登場。彼こそがダース・ベイダーを作り出した張本人にして、真の悪役であることも明らかにされている。スター・ウォーズ6部作における一連の銀河内乱の元凶であり、6部作は見方を変えれば、彼の壮大な野望の実現と消滅を描いたものということも出来る。

生涯

ナブー時代

パドメ・アミダラと同じ惑星ナブーのEderlathh Pallopidesという地方出身の人間であるが、家族や先祖、更には幼少時代に関する詳しい記録は一切残っていない。政治家への道に進んだものの、その道程はあまり順風満帆ではなかったようである。特に若い頃は失態続きで、とても将来元老院議員、ましては銀河の支配者になろうとは誰からも思われていなかった。だが彼は、ジェダイ並みの類い希な忍耐力を持っており、シスたるには十分だった。その忍耐心は固い権力欲に支えられていた。

彼がシスの道に入った経緯ははっきりとは示されていないが、エピソード3での自身の発言から、ダース・プレイガスというシス・マスターのもとで修行し、両手であらゆる武器を使いこなす戦闘能力や、人心を巧みに操る能力、フォース・ライトニングに代表される暗黒面のフォースなど、強大なシスの技を会得した後、その師の寝込みを襲って殺害してシス・マスターとなったとする見方が有力である。

壮年期に差し掛かった頃、明らかに彼に吹く風は変わった。ナブーの国政で急速に頭角を現し、君主であるヴェルーナ王を凌ぐ政治の実力者にまで昇りつめた。ヴェルーナ王が失政により退位を余儀なくされた時には、既に銀河共和国元老院の有力議員となっていた彼が、実質的なナブーの支配者であることは間違いなかった。

元老院議員時代

彼は普段、共和国元老院議員「パルパティーン」として過ごし、裏ではシスの暗黒卿「ダース・シディアス」として銀河帝国の樹立とジェダイの排除を画策し、巧みにその手腕を発揮していく。

政治腐敗が進み、賄賂が横行している銀河共和国の元老院において、各議員に対しての根回しは早くから行っていたものと考えられる。彼は水面下で、議長の座を得るための機会を窺っていた。

分裂し弱体化しつつある銀河共和国において、分離組織に対する脅威を煽り、それを現実の脅威として利用するために暗躍。エピソード1では、表向きは惑星ナブーのアミダラ女王の顧問として活動し、裏でシディアスとして弟子のダース・モールと共に通商連合を誘惑することで、ナブーを侵略させる(ナブーの戦い)。この侵略を利用してフィニーズ・ヴァローラム最高議長を失脚させ、同情票を集める形で思惑通りに元老院最高議長の座を掴んだ。

しかし、「ジェダイですら敵うまい」と絶賛していた愛弟子のダース・モールを倒されたことで、新しい弟子に相応しい者、すなわちモールをも越える強大なフォースを持ち、さらにフォースの暗黒面に染まりやすい者を望むようになる。

元老院最高議長時代

次にシディアスは、クローン大戦への布石を行った。元老院最高議長パルパティーンとして、ジェダイ・マスターのサイフォ=ディアスと秘密裏に協議した彼は、危機に備えるという名目で、大量のクローン・トルーパーを惑星カミーノに発注するように要請した。これが後に銀河共和国の正規軍の兵士となるクローン兵である。共和国を案じていたサイフォ=ディアスは、自分の名前で大量のクローン軍団を発注したことを、最高議長とカミーノ人以外には極秘としていた。だがシディアスは、この発注計画の乗っ取りを画策する。

ほぼ同じ時期にシディアスは、元ジェダイ・マスターのドゥークー伯爵(ダース・ティラナス)をシスの新しい弟子にとる。ドゥークーは高名なジェダイ・マスターヨーダの弟子であり、またダース・モールによって殺されたクワイ=ガン・ジンの師匠でもあった。シディアスは、ドゥークー伯爵の旧来からの友人であったサイフォ=ディアスの殺害を命じた。これはサイフォ=ディアスが、最高議長とカミーノ人以外には極秘としていたクローン軍団の発注を乗っ取ると同時に、ドゥークー伯爵がシスに対してどの程度の忠誠を尽くしているかを試す為のテストでもあった。また、最高議長としては親子ほど年の離れたジェダイのアナキン・スカイウォーカーに特別に目をかけるようになり、アナキンもまた父を持たぬ身としてパルパティーンを慕い始めていた。当時アナキンから「父」と表現されていたオビ=ワンは、師という立場から家族としての愛情を表現することはできず、対照的にパルパティーンは明確にアナキンを可愛がった。数年後にはアナキンのオビ=ワンに対する表現は「父」から「兄弟」へと変化するようになる。アナキンがタスケン・レイダーを皆殺しにしたこともパルパティーンは知っており、ジェダイはおろかパドメよりも多くの事をアナキンから打ち明けられる立場になっていたのである。

そして時が過ぎ、クローン大戦への布石が効果を発揮する。共和国といざこざを起こしていた通商連合等の大規模な企業グループが中核を占める独立星系連合が、惑星ジオノーシスで大量のバトル・ドロイド等の兵器を生産し、共和国への武力行使が可能になっているとの報告がもたらされたのである。これを受けて、「分離主義者達との戦争はもはや避けられない状況であり、非常時には強力な権力が必要である」として、元老院のジャー・ジャー・ビンクス代議員(パドメの代理)からパルパティーンに対して非常時大権を与えるという内容の動議が提出され、満場一致で受け入れられた[注釈 2]。パルパティーンは早速手に入れた非常時大権を使いクローン・トルーパーを共和国の正規軍に編入し、創設された共和国軍はジオノーシスで独立星系連合軍と戦い、勝利した。この戦いを発端として、後世にまで銀河史上稀に見る壮大な戦いとして歴史家に認識されているクローン大戦が勃発した。

クローン大戦

ダース・ティラナス率いる独立星系軍は、共和国軍と戦って銀河各地に争いの種をまき、多くの文明的な惑星を荒廃させ、銀河共和国の政治・行政指導能力を壊滅寸前にまで追い込んだ。パルパティーンは戦争の早期終結の大義名分の元、任期満了後も最高議長の座に留まり、幾度も法律を改変して多くの権限を手中に収めた。緊急時とはいえ、この最高議長への権力集中を危惧し、パルパティーンに異議を唱えた元老院議員も少なからず存在した(2000名が名を連ねる請願書が提出された)が、議長の独裁を食い止めることはできなかった。さらにダース・シディアスとしても、ダース・ティラナスとグリーヴァス将軍が率いる大艦隊に首都惑星コルサントを襲撃させ、自身を誘拐させた[注釈 3]。ダース・ティラナスはこれはジェダイを誘い込み殲滅し、アナキン・スカイウォーカーを暗黒面に誘惑するという作戦だと聞いていたが、そこにはティラナスよりも若く、より強力な力を見せていたアナキンを据えようとしていたシディアスの二重の陰謀があった。思惑通りアナキンは無抵抗のティラナスを殺害し、シスの暗黒面に堕ちる片鱗を見せた[注釈 4]が、オビ=ワンは生き延び、グリーヴァスは逃亡するという二つの誤算が生じた。ともあれ、謀られた救出劇でのアナキンの活躍を絶賛したパルパティーンは、ジェダイ評議会に対して彼を「最高議長の代言人」として評議員に加えるよう提案。ジェダイ評議会はこれを渋々承認するが、逆にアナキンに対してパルパティーンのことをスパイするよう命じた。評議会はパルパティーンの独裁的な姿勢に疑問を持ち、彼の近くにシスがいるのではないかと疑っていたのである。アナキンはパルパティーンへのスパイ任務を承諾したが、評議会への不信感を抱くようになる。反対に長年父のように慕い、常に自分の実力を評価し、励ましてくれるパルパティーンをアナキンはこれまで以上に信頼するようになっていた。また、評議員に加えながらマスターの地位は与えないというジェダイ評議会の決定もスパイ任務と同様にアナキンのジェダイに対する不信感を増大させた。

そんなアナキンの立場を見透かしたかのようにパルパティーンはアナキンに繰り返し助言し、シスには人を死から守る術(ダース・プレイガスの秘技)が存在すると吹き込んだ。そしてアナキンが分離主義者達の最後の柱であったグリーヴァス将軍と共和国軍が交戦状態に入ったと報告に現れた時、パルパティーンは自分がシスの暗黒卿「ダース・シディアス」であることを暴露し、自分の弟子になれと提案する。自分の人柄に心酔し、最愛の妻であるパドメ・アミダラの死を恐れ死人を生き返らせる術を会得したがっているアナキンが既に弓を引くことができないとの確信があったからである。アナキンから報告を受け、ジェダイ・マスター、メイス・ウィンドゥは、同行を申し出たアナキンをジェダイ聖堂に留め置き、エージェン・コーラーセイシー・ティンキット・フィストーらジェダイの騎士と共にパルパティーンを拘束するため、彼の元へ乗り込んだ。メイス達と対面したパルパティーンは、自分が逮捕されることを聞くと、長い間溜め込んでいたジェダイに対する憎悪を開放するかのごとく奇声を上げて跳躍しながらジェダイに襲い掛かった。真紅のシスのライトセーバーを振るい、瞬時にエージェン・コーラーを倒し、次いで仲間の死にひるんだセイシー・ティンを殺害し、続いて数太刀打ち合っただけでキット・フィストーも倒した。だが、ジェダイの中でも屈指の実力を誇り、特にライトセーバー戦においては最強とも評されたメイスには苦戦し、活路を見出せぬまま自らのライトセーバーを蹴り落とされて(小説版では斬り捨てられて)危機に瀕した。

その時、アナキンが現れた。アナキンはパルパティーンがメイスによって殺され、愛する妻の死を避ける唯一の方法である死人を生き返らせる秘術が永遠に失われてしまうことを恐れてやってきたのである。パルパティーンは、メイスの勝利宣言に怒りを覚えフォースの電撃を放つが、メイスのライトセーバーで偏向され、顔は醜く歪み、顔色は白く、黄色い眼となった。メイスと、パルパティーンは互いを反逆者と呼び合いアナキンは混乱する。だが、アナキンの目にはパルパティーンはメイスに必死に抵抗する丸腰の弱々しい老人にしか見えなかった。そして必死に命乞いをするパルパティーンを殺そうとするメイスを説得しようと試みるが、それに構わずメイスはパルパティーンを殺そうとしたその時、アナキンはとっさにライトセーバーを振るいメイスの手をライトセーバーごと切り落としていた。この時を待っていたパルパティーンは全身全霊を込めたフォースの電撃を放ち、メイスはコルサントの摩天楼に向かって吹き飛ばされた。こうして許されざる行為に全てを失ってしまったアナキンをシスの暗黒面に引き入れることに成功し、シディアスはアナキンをシスの弟子としダース・ベイダーという名を与えた。

機は熟したと見たシディアスは、全銀河のクローン・トルーパーに対してオーダー66を発令した。これは銀河各地のジェダイを共和国に反旗を翻した反逆者として急襲し抹殺せよという、クローンに製造段階で密かに組み込まれたプログラムである。ベイダーことアナキンに対しては、ジェダイ聖堂に残る全てのジェダイの抹殺と、惑星ムスタファーに立て籠もるヌート・ガンレイ総督をはじめとする分離主義勢力の幹部たちの殺害を命令した。オーダー66によって、銀河全体に広く散らばっていたジェダイは大半が殺され、ジェダイ聖堂にいた者たちはベイダーとクローン・トルーパーの特殊部隊・第501大隊によって、子供のパダワンまでもが皆殺しとなった。

パルパティーンとして銀河元老院に立ったシディアスは、ジェダイのせいで自分の顔が醜く歪んだと断罪し、ジェダイが共和国に対して反乱を起こしたことを議員達に説明し、ジェダイ抹殺を正当化した。そして平和と新しい秩序の構築のために自ら全権をもって事にあたるため、共和国の統一的支配を請け負う旨を宣言した。この提案は、銀河元老院の彼の支持者の大喝采をもって承認され、銀河共和国を法的に継承した銀河帝国の終身皇帝として全銀河の頂点に立った。なお、この宣言とほぼ同時期に、以前からパルパティーンへの権力集中を危惧し、独裁に異議を唱えていた元老院議員たちは、『国家の敵』というレッテルを貼られ、身柄を拘束されたとされる[注釈 5]。こうしてシディアスは、歴代のシス卿達が果たせなかったジェダイの殲滅と銀河系の支配権獲得を、合法的に行うことに成功したのである。

長年にわたって共和国の平和と秩序を守ってきたジェダイ騎士団が壊滅し、銀河系の経済に大きな影響力を持つ通商連合などの大企業(分離主義勢力を構成)の指導者たちが死亡し、自らに異議を唱える元老院議員たちを排除したことで、シディアスの銀河系支配の障害となる存在の大半は消滅した。

しかし、皇帝となったシディアスのもとへ、ジェダイ・マスターヨーダが単身やってくる。彼はオーダー66から逃れたジェダイの一人であり、銀河唯一のグランド・マスターの称号を持つ実力者だった。ヨーダは「お前の支配は今日限りだ」と宣告し、シディアスもこの最後の障害を取り除くために全力で迎え撃った。だが、シスの暗黒卿の力はヨーダの予想をはるかに上回っていた。ヨーダはこれ以上戦っても敵の増援もくるため勝ち目が無いと悟り、クローン・トルーパーの捜索の手を逃れベイル・オーガナ議員の手引きによって議事堂から脱出した。決着を付けることはできなかったが、皇帝は最後の障害を取り除くのに成功したのだった。

一方同じ頃、ムスタファーではダース・ベイダーがもう一人のジェダイの生き残りオビ=ワン・ケノービと戦って敗北し、サイボーグになることを余儀なくされた。シディアスはそれより少し前にベイダーの危機をフォースで予見し、ヨーダの捜索をクローンに任せ、自ら救援を指揮して彼の命を救った。彼はベイダーがかつての自分と同じように、師である自分を倒し、皇帝の座と銀河の支配権を手に入れようと欲していることもまたフォースによって見抜いており、以後、サイボーグ化されていない完全な、そしてより従順な弟子を手に入れることを密かに望み始めたのだった。

銀河帝国皇帝時代

銀河皇帝としての権力は、共和国最高議長の権力にクローン大戦時に手に入れた非常時大権を常時大権として加えたものである。これにより皇帝は最高指揮官として軍を自在に動かす事ができ、法廷において絶対的な権限を持つ裁定者となった。新たな秩序を求めた人々は銀河帝国の発足を喜び、銀河皇帝の誕生を心から喜んだ。しかし、権力を無暗に行使しなかった最高議長時代と違い、シディアスは自らの欲望のままに権力を自由に動かした。人間種族である彼は、自分の政治や軍隊を編成するにあたり同じ人間(特に男性)を重用し、幾つかの例外を除いてほとんどのエイリアンを公式に人間の奴隷とすることを許可した。皇帝となった彼はその絶対権力の名の下にこれらの勢力を力で弾圧し始めたため、帝国に対する反対勢力の軍事蜂起が始まるのにそう時間はかからなかった。帝国軍はどこかナチス時代のドイツ国防軍を彷彿させる風貌をしているが、この対立がある意味人種的な争いも包括していることを暗に表現している。とはいえ、有能なエイリアンに対しては個人的に目を掛けることもあった。またシディアス時代にはダース・モールと、また元老院最高議長としてはマス・アミダやスライ・ムーアを重用しているように、本質的には種族の違いよりも、自分に忠実かつ使える駒であるかどうかが大事であり、人間であっても逆らうものは皆殺しにしたことから、人間中心主義は分割統治や、銀河の多数を占める人間種族の不満をそらすための政策という面も強い。赤いローブを着たロイヤル・ガードを常に従え、またスピンオフ作品では『皇帝の手』と言われる刺客、マラ・ジェイド、エグゼクター・セドリス、ジェレクなどのダーク・ジェダイを組織している。

銀河各地で蜂起した反乱同盟軍に銀河元老院の影を見たシディアスは、元老院を永久に解散し、各星系に帝国軍の総督を置き、軍事的威圧による直接支配に乗り出した。その象徴として、惑星さえ破壊可能な超巨大宇宙要塞、デス・スターを建造したが、反乱同盟軍の起死回生的作戦によって破壊されてしまった。デス・スターを破壊した反乱軍の兵士がベイダーの息子ルーク・スカイウォーカーであることを知ったシディアスは、若き日のアナキンに比肩する強力なフォースを見せていたルークを味方に引き入れようと考え始める。エンドアの戦いの最中、第二デス・スターにおいてルークとベイダーが対決。ベイダーを追い詰めたルークに、シディアスはかつてベイダーにティラナスを殺させて暗黒面に引き込んだ時のごとく、父であるベイダーを殺すように促すが、ルークは強い意志でそれを拒否した。ここに至って、シディアスはルークをシスの新しい弟子にするのはもはや不可能と判断、フォースの電撃によって殺そうとした。しかし、それを見ていたベイダーが、かつてパルパティーンに言われるがままドゥークーやメイスの命を奪った若き日の自分とは全く違う、息子の騎士としての毅然とした姿と、父を信じ続ける叫びに心を打たれ、ジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーとして復活。シディアスは彼の捨て身の行動でエネルギー炉に落とされ、死亡した。ベイダーも皇帝の電撃によって生命維持装置が破壊され、まもなく死亡。これにより、史上初めて銀河を恐怖支配することに成功したシスによる帝国は、遂に終焉を迎えたのである。帝国誕生から約30年後のことだった。

その後(銀河帝国崩壊後)

『スター・ウォーズ』の拡張世界(小説、コミックなどのスピンオフ、外伝)に分類されるコミック『ダーク・エンパイア』(邦訳版は小学館より)では、パルパティーンの魂は生き残り、ディープ・コアの惑星ヴィスに作っておいたクローン施設で自分のクローンを作り、自身の魂を乗り移らせて復活する[1]スローン大提督による攻勢で疲弊した新共和国の隙を突いて再び銀河の覇権を手に入れようとし、『ワールド・デヴァステイター』や超弩級スーパー・スター・デストロイヤー『エクリプス』などの軍事力を温存していた。一時はルークをダークサイドに引き込み自分の弟子とする。しかし、ルークやレイアハン・ソロなどの反乱軍の英雄たちやジェダイによる反撃、また内部からの裏切りによって失敗し、その魂は永遠の苦しみを味わうこととなる。現在未邦訳である『Empire's End』が一連のシリーズの最後のエピソードとなり、この作品で皇帝の本当の最期が描かれている。

『ダーク・エンパイア』においては、ロイヤル・ガード、カノア・ジャックスの裏切りによりクローンの元となった遺伝子が傷つき肉体の老化が進行していたことと、ダークパワーの酷使でパルパティーンの身体はほぼ使い物にならなくなっていた。最終局面でルーク率いる若きジェダイたちとの戦いに敗れ、その肉体をソロのブラスターで撃ち抜かれたパルパティーンは、自らの魂をソロとレイアの息子であるアナキン・ソロに宿らせようとするが、皇帝の攻撃で重傷を負ったサイボーグ・ジェダイであるエンパトジェイオス・ブランドがパルパティーンのダークサイドの力を肉体にとどめて共に死んだことで、長きに渡るパルパティーンの野望は砕かれることとなる。

また、ディズニーパークのアトラクション「スター・ツアーズ」では第三のデス・スターが建設されている。これはクローンによって復活したパルパティーンによるものである。

能力

戦闘能力
歴代最強のシスであるシディアスの戦闘能力は高く、エピソード6以来おなじみの必殺技ともいえる「フォース・ライトニング(いわゆる「フォースの電撃」)」の他、エージェン・コーラーら3人のジェダイを一瞬にして倒したことでも分かるようにライトセーバーの扱いにも巧みである。
なお、ライトセーバーを2本所持しており、『クローン・ウォーズ』シーズン5では、二刀流でかつての弟子ダース・モールとサヴァージ・オプレスの二人を相手に圧倒している。内一本はシスの復讐におけるメイス・ウィンドウとの戦闘で喪失しており、残った一本も劇中終盤でのヨーダとの闘い以降は使用していない。優れた剣術を持っていながら、ライトセーバーをジェダイの武器と断じており、必要最低限にしか使用しない。ヨーダとの戦いでは戦いが議場に移った時点ですでにライトセーバーを使っておらず、ダースモールとサヴァージ・オプレスとの戦いでは頻繁にライトセーバーを出し入れしながら戦い、わずかな隙がある度にライトセーバーを収納している。
この他に物体の移動(これも攻撃手段としている)、人の心を操る「マインドトリック」や予知能力などフォースのあらゆる力を駆使することができ、巧みな話術も併せ、ドゥークー伯爵やアナキン・スカイウォーカーなど熟練のジェダイをも説き伏せ暗黒面へ引きずり込む事ができた。
ジェダイに匹敵するほどの忍耐力を持ちながら、必要とあれば一気にその凶暴性を爆発させることができ、攻撃のさいには一切のためらいを持たないことも最強のシスたる所以だといえる。
晩年には杖を突いて歩いていたが、フォースを操る能力はまるで衰えを見せなかった。
政治的手腕
知略謀略に極めて優れ、片や分離主義者たちの黒幕ダースシディアス、片や元老院議長パルパティーンという一人二役を演じ、また周囲の状況と人物達を的確に利用してゆく事で、表面上においては現行法に違反することなく万雷の拍手の中、合法的に銀河帝国を作り上げた。また有能なジェダイを誘惑する際、アナキンやルークに対して自分の弟子となることを強制せず、敢えて自らに選択させて後戻りできなくするなど、単なる策士ではなく、政治的駆け引きに長けた部分も持ち合わせていると言える。
パルパティーンが皇帝になる経緯について、スタッフはヒトラーカエサルなど歴史上の独裁者の手腕を参考にしたという。
その他
劇中に登場したシスの中でもダースモールやドゥークー伯爵やアナキン・スカイウォーカーが「師に対する忠誠」「腐敗した共和国への憤り」「愛する者を救いたい」と言った一種の美学を持っていたり道を踏み外した理由に同情の余地があるのに対し、彼だけは自らの師を殺す事で暗黒面の支配者となり、弟子さえも捨て駒としか見ていない等とりわけ邪悪な存在として描かれている。一方でアナキンに対してはある程度思い入れがあるのか、危機に貧した彼を自ら救出に向かっている他、小説版では自らの後継者となることを望んでいる台詞がある。「ジェダイの帰還」では自分に跪くベイダーに対して「友よ」と声を掛けている。
また最強のジェダイであるヨーダを退けたことから、アナキンやルークの未知の力や小説等の登場人物を除けば実質シリーズ中最強の存在であり、上記のように物事を予知したり人の心を操る能力すらも持ち合わせていたが、最期にダース・ベイダーがアナキン・スカイウォーカーとして他者を助ける為に動く事が理解できずに身を滅ぼす事となった。

配役

実写

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2013年の「スター・ウォーズ セレブレーション ヨーロッパ」でのイアン・マクダーミド

1983年の『エピソード6 ジェダイの帰還』以来、スコットランド出身の舞台俳優として有名な イアン・マクダーミドが演じている。映画とは直接関係はないが、2005年ローマ教皇となったベネディクト16世と、イアン・マクダーミドが演じたダース・シディアスの外見が似ていることがニューヨークの週刊紙「The Village Voice」で取り上げられた。

エピソード5では、ホログラム映像および声のみで皇帝が登場するが、公開当初は無名の役者であるエレイン・ベーカーが演じている映像にチンパンジーの目を合成し、クライヴ・レヴィルが声を当てた物が使われていた。後にDVD化される際にCGおよび吹き替えでイアン・マクダーミドに差し替えられ[注釈 6]、全体の整合性を図られている。

ジョージ・ルーカスがエピソード1の撮影を始める前に英国に訪問した際、それを聞きつけたイアンは彼に会いに駆け付けた。するとジョージは「パルパティーンの役者を探してるんだ。誰か適任者に心当たりないかな」と聞く。その時イアンは「ひょっとして今目の前にいる奴がそうじゃないかい?」と答えたと言う。その結果、エピソード1から若き日のパルパティーンを演じることになったが、歳を重ねてから、既に初老とはいえかつて演じた役の若い頃を演じるという、非常に珍しいケースとなった。マクダーミドはインタビューで「役作りに25年かかったよ」と語っている。エピソード6公開当時、イアンはまだ39歳だった。

イアンは実績ある舞台俳優であり(2006年にはトニー賞の最優秀助演男優賞を受賞している)巧みな台詞回しや発声の変え方[注釈 7]で、温厚で威厳ある元老院議長と、狡猾・邪悪・凶暴なシスの暗黒卿という二面性のある役柄を見事に演じきっている。ヨーダとの対決シーンの撮影は、実際にはいない存在と戦うことになるためためマクダーミドにとっては非常に骨の折れた演技だったという。

アニメ

アニメ『スター・ウォーズ クローン大戦』やゲーム作品(2006年まで)ではニック・ジェイムソンが声を演じている。

アニメ映画『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』と続編のテレビアニメではイアン・アバークロンビーが声を演じている。

吹き替え

日本語吹き替え版の声優は以下の通り。

備考

  • ジェダイの帰還』の小説版では、彼の口元からは「腐臭が漂う」という表現がある。『シャドウズ・オブ・ジ・エンパイア』では、プリンス・シゾールの印象では「生ける屍」と語られている。
  • ジョージ・ルーカスは、2005年のエピソード3公開時の来日記者会見で、記者に好きなスター・ウォーズキャラクターを聞かれた際、「特にヨーダ、アナキン、皇帝が好きだ」と答えている[2]

参考資料

  • ケヴィン・J・アンダースン/ダニエル・ウォーレス 共著 横沢雅幸/高貴準三 監訳『スター・ウォーズ クロノロジー(上・下)』ソニー・マガジンズ、2002年

脚注 

  1. ケヴィン・J・アンダースン、ダニエル・ウォーレス『スター・ウォーズクロノロジー 上』208頁、ソニーマガジンズ、2002年
  2. ジョージ・ルーカス監督、来日記者会見リポート(朝日新聞 2005年7月20日)

注釈

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外部リンク

テンプレート:スター・ウォーズ・シリーズ

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