ジュゴン目

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テンプレート:生物分類表 ジュゴン目(ジュゴンもく)もしくは海牛目(かいぎゅうもく)は、海生哺乳動物の分類名。ジュゴンマナティーの仲間が含まれる。現生種では2科4種のみの小さなグループである。

生態・形態的特徴

ジュゴン目の動物はいずれも草食性の温厚な動物である。水中生活に適応して前脚が鰭(ひれ)になっており、後ろ脚は退化し胴体に隠れてしまっている。

ジュゴン目の動物には、草食性の海生獣に特有の問題としてエサとなる植物を胃内で発酵させることによって発生するガスの問題があった。大量のガスが体内にたまり比重が小さくなることによって、潜水・遊泳は困難となる。この動物たちは、他の動物よりも比重の高い骨格を備えることで、この問題に対応していると考えられる。

食性

ジュゴン目はジュゴン科マナティー科の2科に分かれるが、いずれも暖かい地域の浅海に生えるアマモなどの海草類を主なエサとする。アマモは藻類ではなく、単子葉類顕花植物であり、陸上のに近い植物である。 ジュゴン目の分布域が主に熱帯から亜熱帯に限られていること、また、ジュゴン目が進化史上あまり繁栄しなかったこと(中新世鮮新世にはそれなりに多様化を遂げているが)は、アマモ類の生息状況による制限があったためである。

ステラーカイギュウ
ジュゴン科のうちの1系列は、中新世以降の地球の寒冷化の際に、分布域が狭まったアマモ類から、増え始めたコンブ類などに食性を広げ、体を大型にすることで、冷たい海に適応した。かつて北太平洋に分布したが、ベーリング海の一部海域まで分布域を狭めた末に乱獲によって1760年代に絶滅したステラーカイギュウは、このタイプのカイギュウ類の最後の1種であった。なお、脊椎動物の歴史において、海藻類という非常に歴史の古い豊かな蛋白源を積極的に利用するものは、この寒冷適応型のカイギュウ類以外、ほとんど知られていない。
ステラーカイギュウ亜科
通常、同じジュゴン科でも、ジュゴンなど暖海性のカイギュウ類のグループを「ジュゴン亜科 Dugonginae 」、ステラーカイギュウなど寒冷適応型のカイギュウ類を「ステラーカイギュウ亜科 Hydrodamalinae 」として区別するが、後者は歯の退化や前足の指の消失など、マナティー類とも暖海性のジュゴン類とも大きく異なった特徴をもっており、「ダイカイギュウ科」として、1科を立ててジュゴン類と分ける説もある。「日本のカイギュウ類化石」も参照。

イメージと伝承

これらの動物は、人魚伝説のモデルになったと言われている。

また、ジュゴン目のラテン名 Sirenia は、ギリシャ神話に登場する女怪セイレーンに由来する。セイレーンは、その妖艶な姿と歌声で船乗りたちを魅了し、海に引きずり込んだとされる。

進化系統

海生の哺乳類には、ジュゴン目、鯨偶蹄目クジラ類ネコ目鰭脚下目(アザラシ等)、絶滅した束柱目(デスモスチルス目)の4つのグループがある(これらのほかに、ラッコなども海で暮らす哺乳類に数えられる)。このうち、比較的繁栄した2つのグループ、クジラ類と鰭脚下目が肉食性であるのに対して、2つの小さなグループ、ジュゴン目は草食性、束柱目の食性は今なお不明(一般には草食性中心ではないかとされる)である。

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カイギュウ類(ジュゴン目)は、一見アザラシ類やイルカ類と姿が似ているが、カイギュウ類とこれら鰭脚類やクジラ類との間に系統的な類縁関係はなく、収斂進化である。

始新世のはじめに、近蹄類の1種から分岐したと考えられるが、同じく近蹄類から派生したと考えられるゾウ目(長鼻目)と近縁であり、ゾウ目から直接分岐したとする説もある。ゾウ目、ジュゴン目と、同様に近縁の束柱目は、テチス海周囲で初期の放散を開始したと見られ、「テチス獣類(テチテリア Tethitheria)」という上位クレードにまとめられる。

上位分類

(†は絶滅)

下位分類

ファイル:Pezosiren portelli.jpg
ペゾシーレン・ポーテリ(Pezosiren portelli)の骨格標本。国立科学博物館の展示。

ジュゴン目の現生群は、ジュゴン科とマナティー科の2科に分類される。

ジュゴン目の最古の化石は、ジャマイカの始新世の地層で発見されたペゾシーレン(ペゾシレン)Pezosiren である。ペゾシーレンは、水生に適応しながらも、四肢を持ち、陸上での体重負荷に耐える関節を残していたと見られる[1]

分布

ジュゴンはインド洋太平洋に生息しており、マナティーは大西洋フロリダアマゾン川など大西洋に注ぐ河川に生息している。

日本南西諸島に少数のジュゴンが生息するが、これはジュゴン分布域の北限である。

絶滅したステラーカイギュウは、ベーリング海を中心に生息していた。

日本のカイギュウ類化石

ジュゴン目の別名、海牛目(海牛類)は、マナティーを指す「海牛(カイギュウ)」から来ている。「マナティー」の名が一般化した現在、現生のマナティーがこの名で呼ばれることはほとんどなくなったが、絶滅種のステラーカイギュウをはじめ、化石種の多くにも「○○○カイギュウ」の名が付けられ、これら絶滅種は「カイギュウ(類)」と呼ばれることが多い。

日本では約30か所でカイギュウ類の化石が発見されている。発見地の約20か所は北海道であり、ステラーカイギュウと同じ寒冷適応系のカイギュウ類が多い。

キタヒロシマカイギュウ
北海道石狩支庁北広島市から発見。世界でただ1体のステラーカイギュウ化石だったが、後に房総半島でもステラーカイギュウの化石が発見された。正式名称は、ステラーカイギュウ北広島標本。体長約7m。約100万年前。
ヤマガタダイカイギュウ
1978年8月、山形県西村山郡大江町用(よう)の最上川河底の岩盤から小学生が発見。体長約3.8m。約800万年前。学名:Dusisiren dewana
アイヅタカサトカイギュウ
1980年福島県喜多方市高郷町(旧・耶麻郡高郷村)塩坪の阿賀川畔で発見。体長約3.7m。約800万年前。ステラーカイギュウ亜科アイヅタカサトカイギュウ属、学名 Dusisiren takasatensis 。 
タキカワカイギュウ
1980年8月、北海道空知支庁滝川市を流れる空知川で発見。北海道のカイギュウ化石研究の嚆矢。後に道東地方でも同種の化石が発見されている。体長8m以上。約500万年前。
ピリカカイギュウ
1983年夏、北海道檜山支庁今金町美利河地区で、美利河ダムの建設工事に伴う取り付け道路から発見。復元されたものとしては、世界最大のカイギュウ化石。体長8m以上。約120万年前。ステラーカイギュウ属。
ショサンベツカイギュウ
1967年、北海道留萌支庁苫前郡初山別村で発見された、日本初のカイギュウ化石。ただし、その後地元小学校の理科準備室で長らく保管され、研究者によってカイギュウと確認されたのは1990年。非常に珍しい、出産直前の胎児を伴う妊娠個体の化石であった。また、カイギュウ発見地点としては国内最北だが、寒冷適応系ではなく、現生のジュゴンと同じく温暖な海に棲むカイギュウ類だった。母親約3.6m、胎児約1.5m。約1,100万年前。
  • 2003年8月、札幌市南区砥山の豊平川河床から、1,000万年 - 750万年前のカイギュウ化石(肋骨と胸骨)が発見された。寒冷適応型カイギュウでは日本最古。後期中新世(1,100万年前-530万年前)。

出典

  1. テンプレート:Cite journal

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