ザ・ビートルズ (アルバム)

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『ザ・ビートルズ』("The Beatles")は、イギリスにおいて1968年11月22日に発売されたビートルズの10作目 のオリジナル・アルバムである。(1987年のCD化においてイギリス盤公式オリジナル・アルバムと同等の扱いを受けたアメリカ・キャピトルレコード編集アルバムのマジカル・ミステリー・ツアー2009年9月9日にリリースされたデジタルリマスター盤において発売日順に従い9作目に順番付けられた。これにより1順番押し出されて現在10作目とされている。しかし、イギリス盤公式オリジナル・アルバムとしては9作目である。)

解説

概要

ビートルズ唯一の2枚組オリジナルアルバムで、ビートルズ自身が設立したアップル・レコードから発売された最初のビートルズのアルバム。リチャード・ハミルトンによるアルバムジャケットは白一色で、そのジャケットのイメージから現在では『ホワイト・アルバム』という俗称で呼ばれることが多い。

2枚組30曲入りというヴォリュームでかつ多種多様な楽曲が収録されており、現代音楽の全ての要素が詰まっていると評されるほど多彩な作品が集められている。前作まででみられたサイケデリックな雰囲気は影をひそめ、アレンジ面ではバンド・サウンドを活かしたシンプルなものが多くなった。しかしながらソロ作品の集合体といった趣もあり、全体としてのまとまりに欠けると評されることもある。

このレコーディングの途中から8トラック・レコーダーが導入されたことにより、4人が同時に演奏する必要が無くなり、メンバーが個別にレコーディングされたものが多くなる。また、プロデューサージョージ・マーティンは、曲を絞って1枚のアルバムとすべきという意見であったが、最終的にはメンバーの主張が押し通された。ジョージ・ハリスンの作品「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」にはエリック・クラプトンリードギターで参加した。また、レコーディングの期間中リンゴ・スターが一時グループを脱退したエピソードがあったことから、ビートルズ崩壊の始まりと言われる作品でもある(ただしリンゴ・スター自身は前アルバムよりも本アルバムの制作の方が楽しかったと語っている)。ポールは後年、「このアルバムは脈絡がないだとか、ソロばっかりだとか言われるけど、後から言うのは簡単さ。ビートルズのホワイト・アルバムだぞ。黙れってんだ」と語っている。

当時の英国盤レコード番号:Apple PMC 7067 - 8(モノラル盤)/PCS 7067 - 8(ステレオ盤)
当時の英国盤にはモノラル盤とステレオ盤の2種類があり、両者でミキシングに違いのある曲が多い。米国ではこの作品よりステレオ盤のみの発売となるため、モノラル盤はリリースされなかった。

セールス

イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、計8週間第1位を獲得。アメリカの「ビルボード」誌では、計9週間第1位を獲得し、1969年度年間ランキングでは第9位を記録している。70年代以降、アルバム・チャートに何度かランキングされている。全米レコード協会(RIAA)の売り上げ枚数の認定によると2000年11月までのアメリカ国内での累計売り上げ数は900万セット(RIAAの認定では2枚組の場合は1セットで2枚売れたと見なしているので枚数としては1800万枚の売り上げとなる。)のセールスを記録している。「キャッシュボックス」誌では、計12週間第1位を獲得し、1969年度年間ランキングでは第4位を記録している。2枚組のアルバムとしてはアメリカで最も売り上げた作品である。Rolling Stone's 500 Greatest Albums of All Time』(Wenner Books 2005)では10位にランクされている[1]

アルバム・ジャケット

サイケデリック調の派手なデザインのジャケットが多かった当時、真っ白なジャケットにタイトルをエンボス加工し、通し番号が振られたジャケット(当時の英国盤や日本盤、初期米国盤など。リマスター盤CDの初期盤ではエンボス加工されているが通し番号はなし。米国再発盤や1987年の初CD化当時ではグレーの文字でタイトルが印刷されている)は逆に新鮮なものであった。映像版アンソロジーでのポール・マッカートニーの発言によれば、ジョン・レノンが通し番号A1を所有していたとされる(現在はリンゴが所有)。

前作『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』同様、アルバムには付録がありメンバー4人のポートレイト、裏面には歌詞が印刷された様々な写真を散りばめたコラージュ・ポスターが添えられていた。こうした措置は前作に引き続いて、難解になっていく自分たちの歌詞を少しでも聴き手に理解してもらおうという試みでもある。

収録曲

DISC 1

アナログA面

  1. バック・イン・ザ U.S.S.R. - Back in the U.S.S.R. (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'43" - stereo version)(2'43" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  2. ディア・プルーデンス - Dear Prudence (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'55" - stereo version)(3'53" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
  3. グラス・オニオン - Glass Onion (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'17" - stereo version)(2'17" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
  4. オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ - Ob-La-Di,Ob-La-Da (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'08" - stereo version)(3'09" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  5. ワイルド・ハニー・パイ - Wild Honey Pie (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(0'52" - stereo version)(0'53" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  6. ザ・コンティニューイング・ストーリー・オブ・バンガロー・ビル - The Continuing Story of Bungalow Bill (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'14" - stereo version)(3'14" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
    曲の一部でオノ・ヨーコがソロを歌う。ビートルズのメンバー以外がソロを歌った唯一の例である[2]
    エンディングでジョンが"Eh up"と叫ぶ。
  7. ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス - While My Guitar Gently Weeps (Harrison)
    演奏時間:(4'44" - stereo version)(4'47" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン
    リード・ギターはエリック・クラプトンによる[3]
  8. ハッピネス・イズ・ア・ウォーム・ガン - Happiness is a Warm Gun (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'44" - stereo version)(2'44" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン

アナログB面

  1. マーサ・マイ・ディア - Martha My Dear (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'28" - stereo version)(2'28" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  2. アイム・ソー・タイアード - I'm So Tired (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'03" - stereo version)(2'03" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
    アウトロで、ジョンが"Monsieur, monsieur, How about the another one?"と呟く。
  3. ブラックバード - Blackbird (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(218'" - stereo version)(2'18" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  4. ピッギーズ - Piggies (Harrison)
    演奏時間:(2'04" - stereo version)(2'03" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン
  5. ロッキー・ラクーン - Rocky Raccoon (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'32" - stereo version)(3'32" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  6. ドント・パス・ミー・バイ - Don't Pass Me By (Starkey)
    演奏時間:(3'50" - stereo version)(3'45" - monaural version)、リード・ヴォーカル:リンゴ・スター
    ステレオ・ヴァージョンはテンポが遅くピッチが低めであるが、モノラル・ヴァージョンはテンポが速くピッチが高めである。共にハ長調
  7. ホワイ・ドント・ウイ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード - Why Don't We Do It in the Road? (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(1'40" - stereo version)(1'41" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  8. アイ・ウィル - I Will (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(1'45" - stereo version)(1'44" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  9. ジュリア - Julia (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'56" - stereo version)(2'53" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン

DISC 2

アナログC面

  1. バースデイ - Birthday (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'42" - stereo version)(2'42" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  2. ヤー・ブルース - Yer Blues (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(4'00" - stereo version)(4'13" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
    冒頭でリンゴの"Two, three"のカウントが入る。
  3. マザー・ネイチャーズ・サン - Mother Nature's Son (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'47" - stereo version)(2'46" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  4. エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー - Everybody's Got Something to Hide Except Me and My Monkey (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'24" - stereo version)(2'24" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
  5. セクシー・セディー - Sexy Sadie (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'15" - stereo version)(3'14" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
  6. ヘルター・スケルター - Helter Skelter (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(4'29" - stereo version)(3'39" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
    ステレオ・ヴァージョンはエンディングでフェードアウトしたあと再びフェードインしリンゴが"I've got blisters on my fingers."(指にマメができちまったよ!)と叫ぶが、モノラル・ヴァージョンはフェードアウトしたままで終わる。
  7. ロング・ロング・ロング - Long, Long, Long (Harrison)
    演奏時間:(3'06" - stereo version)(3'05" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン

アナログD面

  1. レヴォリューション1 - Revolution 1 (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(4'15" - stereo version)(4'15" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
    冒頭でリンゴが"I think take two."と言い、ジョンが"O kay"と答える。
  2. ハニー・パイ - Honey Pie (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(2'41" - stereo version)(2'40" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ポール・マッカートニー
  3. サヴォイ・トラッフル - Savoy Truffle (Harrison)
    演奏時間:(2'54" - stereo version)(2'53" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョージ・ハリスン
  4. クライ・ベイビー・クライ - Cry Baby Cry (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'01" - stereo version)(3'01" - monaural version)、リード・ヴォーカル:ジョン・レノン
    曲の終了後、ポール・マッカートニーによる即興曲"Can You Take Me Back?"が収録されているが未クレジット。
  5. レヴォリューション9 - Revolution 9 (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(8'21" - stereo version)(8'23" - monaural version)、リード・ヴォーカル:(ビートルズのメンバーではジョン・レノンとジョージ・ハリスンの声が入っている)
    「レヴォリューション9」の前にジョージ・マーティンとアリステア・テイラー(アップル社のオフィス・マネージャー)の会話が入る。
    "I'd bught you a little claret for you I'd realized."
    "Well, do next time."
    "I've forgotten all about it,George. I'm sorry, will you forgive me?"
    "Yes, you bitch."
  6. グッド・ナイト - Good Night (Lennon - McCartney)
    演奏時間:(3'13" - stereo version)(3'12" - monaural version)、リード・ヴォーカル:リンゴ・スター

関連文献

脚注

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外部リンク

テンプレート:ビートルズのアルバム
  1. 500 Greatest Albums of All Time: The Beatles, 'The White Album' | Rolling Stone - 2012年6月25日閲覧
  2. ただし、ミュージック・コンクレートの「レヴォリューション9」でもヨーコの話し声が入っており、これをソロと捉えると二つの事例となる。
  3. ビートルズが自分たちで演奏できる楽器に関して外部ミュージシャンを起用した事例は、本作とプロデューサの指示によって「ラヴ・ミー・ドゥ」のドラムス及び「P.S.アイ・ラヴ・ユー」のパーカッションアンディ・ホワイトを起用した例と、ビートルズ自らオーヴァー・ダビングを自粛した「ゲット・バック・セッション」でキーボード奏者に起用したビリー・プレストンの例があるのみである。