コスモタイガーII

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

コスモタイガーIICOSMO TIGER II、コスモタイガー ツー)は、SFアニメ宇宙戦艦ヤマトシリーズ』に登場する、架空の宇宙戦闘機の名称である。初出は『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』で、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』まで登場した。通称「コスモタイガー」。デザイン担当[1]松本零士宮武一貴板橋克己

概要

コスモタイガーIIはブラックタイガーの後継型として採用された地球防衛軍の主力宇宙戦闘攻撃機である。最も多く登場する単座型の他、単座型を改良し、総合性能と攻撃力を上げた新コスモタイガー、複座のキャノピーに1人用銃座を備えた三座型、三座型を元にした雷撃機型が存在する。その後の復活篇までの間に、後継機であるコスモパルサーの登場に伴って置き換えられ、退役した。戦歴は初陣の白色彗星帝国戦役からヤマトの最後の敵であったディンギル帝国との戦いまでと豊富で、地球防衛軍の誇るマルチロールファイターとして、ヤマトを自沈するその日まで支え続けた。なお、退役までの間に新コスモタイガーの普及に伴い、一度制式塗装が変更されている。テンプレート:要出典

機体外観の分類としては無尾翼デルタに属し、水平尾翼が無いのが特徴である。全長に対し全幅がかなり小さく、また2つのデルタ状垂直尾翼も極めて背が低い。主翼は内翼と外翼で構成され、極めて小型、小面積である。外翼には下反角がついている。機体設計が極めて優秀であったためか、本機の後継機であるコスモパルサーにも本機の機体構成を受け継ぎ、発展させた設計が採用されている[2]

エンジンは2基搭載[3]で、大気圏内外で両用可能。また本機はノンオプションのままの単体で地球重力圏及び月重力圏から宇宙空間への離脱が可能[4]なほどの高推力を誇る。補助ノズルを機首部に左右下1基ずつ計3基、底部には左右に縦に2基の計4基を配置している。

ヤマトの艦載機としての面が強いが、月面基地(『さらば宇宙戦艦ヤマト』・『宇宙戦艦ヤマト2』)やガニメデ基地(『宇宙戦艦ヤマト2』)、地球本土基地(『ヤマトよ永遠に』)などのように地上基地での運用もされている。

劇中では、作画の金田伊功によって、特撮を意識して勢いを強調したアクションシーンが描かれており[5]テンプレート:要出典範囲。『さらば宇宙戦艦ヤマト』にみられる、カメラアングルの動きを計算に入れてディフォルメされたコスモタイガーIIは「猫背の飛行機」とも形容されている[5]。『ヤマトよ永遠に』以降はテンプレート:要出典範囲、機首部が長く強調されたパースで描かれることが多くなり、動きもより多彩になっていった。

コスモタイガーのテーマとして作られた「新コスモタイガー」が『新たなる旅立ち』で初めてBGMとして流されて以降、『ヤマトよ永遠に』、『宇宙戦艦ヤマトIII』において随所に流された。シーンでこの曲が流されている時のコスモタイガーは、対艦ミサイル1発で敵艦を撃沈したり、空中戦では敵戦闘機からの攻撃を紙一重に回避したり、パルスレーザー砲で敵艦の武装を機銃掃射して破壊するなど、本機のズバ抜けた対艦攻撃能力と空戦機動能力の演出を見せつけた。完結編でも新たに専用BGM『FIGHTコスモタイガーII』が作曲されており、ヤマト艦載機としては2013年現在においてももっともBGMが多く作曲された機体である[6]

バリエーション

単座型

もっともポピュラーな1人乗りのコスモタイガー。機首下にアンテナを1本備える。ハードポイントは翼下に左右1箇所ずつ、胴体下中央に1箇所と胴体下両端に1箇所ずつの計5箇所である。本機専用ミサイルも設定されている[7]が、劇中では増槽とミサイルの描き分けをしているとは言い難く、これはデザインと塗装が酷似していることから生じた誤解である[8]

塗装は灰色を基調とし、機首上面からキャノピー前部にかけて黒色に塗られ、機首・増槽・ミサイル先端、エンジンノズル部分がオレンジとなっている。山本明率いる山本隊の機体はオレンジの部分を黄色に塗っていた。

固定武装として機首部に30mmパルスレーザー機関砲を左右に4門ずつ計8門と、主翼に12.7mm実体弾機関銃を左右に5門ずつ計10門備える。しかし、劇中では機首部から実体弾を出すシーンがあるなど、描き分けはなされていない。キャノピー後部にエアブレーキと噴射ノズルを1基備える。

『さらば宇宙戦艦ヤマト』から『宇宙戦艦ヤマトIII』にまで登場した。敵航空機との格闘戦はもちろんのこと、敵艦へのミサイル攻撃まで幅広い任務をこなした。

三座型

「戦闘爆撃機タイプ」と呼ばれることもある[9]、3人乗りのコスモタイガー。内訳は機首キャノピーに2名、胴体背面の回転銃座に1名である。機首下のアンテナが単座型の1本に対し2本であり、胴体下部のハードポイントは2箇所しかない(中央部のものが無い)。固定武装は背面に20mm2連装パルスレーザー旋回機関砲を1基備えるが、その分、機首部の30mmパルスレーザー機関砲が左右3門ずつ計6門、主翼の12.7mm実体弾機関銃が左右3門ずつ計6門に減らされている。 尾翼は引き込み式で、回転銃座の射界を妨げないようにしている。塗装は単座型に準ずる。

本機の活躍は白色彗星帝国との最終決戦が挙げられる。『さらば宇宙戦艦ヤマト』においては、古代進操縦の本機に真田志郎斉藤始が同乗してカタパルト発進し、他の機にも空間騎兵隊隊員が同乗して多数が都市帝国に突入する。真田・斉藤によって動力炉に爆弾がセットされた後、残っていた1機を古代が操縦し加藤三郎を乗せて都市帝国を脱出したが、加藤は後部銃座で戦死していた。『宇宙戦艦ヤマト2』では、古代と真田の乗る機体がコスモ・ゼロに変更され、脱出シーンでは加藤操縦の三座型に古代と真田が乗り、操縦席で加藤が息絶えている。

その後は『ヤマトよ永遠に』で登場するが、地球の第7有人機基地で暗黒星団帝国軍戦闘爆撃機に地上撃破されただけで活躍シーンはない。この作品が三座型の最後の登場になった。

雷撃機型

三座型コスモタイガーのバリエーション機。『宇宙戦艦ヤマト2』第20話にのみ登場。「CT-II改 雷撃機(コスモタイガーII改雷撃機)」と呼ばれる。機首が短く、胴体部両端のハードポイントに大型の宇宙魚雷を各1本、計2本懸吊する。さらに翼下には増槽とは形が異なる、対艦ミサイルと推測されるもの(何なのかは明言されていない)を計2発装備する。胴体背面に装備された自衛用の20mm2連装パルスレーザー旋回銃座以外は固定武装は無く、空戦は考慮されていない。また、機首部のアンテナがない代わりに、対艦レーダーと思われるでっぱりが付いている。機体は赤茶色系を基調としており、機首上面からキャノピー手前にかけて黒色に塗られ、機首・増槽・ミサイル先端、エンジンノズル部分が黄色となっている。

劇中では主力戦艦改造の宇宙空母に搭載されており、フェーベ沖で出撃。古代進搭乗のコスモ・ゼロの指揮下に入り、ヤマト艦載のコスモタイガーと交代し、白色彗星帝国軍の空母を多数葬った。なお、古代は本機による攻撃を「急降下爆撃」と言っていた。

新コスモゼロ 古代機

ヤマトよ永遠に』に登場した古代進用コスモタイガー。本作ではコスモ・ゼロではなく、識別のため垂直尾翼を赤く塗装し、ミサイル装備を変更した新しいコスモタイガーIIに搭乗している。設定画には「新コスモゼロ 古代機」と記載されているが、この名称にはさすがに無理があると製作側は解っていたようで、劇中でそう呼ばれることは無かった。

以前の単座型からの改良としては、胴体下中央に大型ミサイルを1発搭載する他、胴体下両端のハードポイントに設置されたパイロンに1箇所につき対艦ミサイルを2発ずつ搭載することが可能になった(劇中では、従来の単座型機と描き分けはできていない)。当初は古代機専用のエンブレム(大鷲、または鷹が翼を広げた図)が考案されていたが、不採用となった[10]。その後、この機体は新コスモタイガーに名称変更されている。

劇中では、黒色艦隊前線補給中間基地を攻撃するため、他のコスモタイガーを率いて出撃した。発進はコスモ・ゼロと同じくカタパルトからであった。なお、この場面では指揮下の機体もすべて古代機と同じ姿で描かれている。中間基地に攻撃を開始した場面で、ミサイルを発射した時の加藤四郎機も同様である。

『宇宙戦艦ヤマトIII』では、第2話でヤマトのカタパルト上で古代が本機を整備しているシーンがあるが、その後登場しなかった。

新コスモタイガー

単座型コスモタイガーのバリエーション機。上記新コスモゼロと同一の機体。『宇宙戦艦ヤマトIII』の第4・5話にて通常の単座型に混じって本機が複数描かれている。

『完結編』においてはカラーリングが変更され、機体上面を濃緑色、下面を明灰白色とする、いわゆる旧日本海軍機色となり、機首先端及び機首下アンテナとキャノピーの縁、エンジンノズル上部が黄色に塗装されている。機首上面からキャノピー背面にかけて白色で、加藤四郎の機体は垂直尾翼も白く塗られている[11]。翼下のミサイルは海軍色に、胴体下両端のミサイルは灰色を基調として先端部分を紺色に塗られるなど両者の区別がされている。『完結編』の状況から、この仕様がコスモタイガーの最終生産型として採用されたようで、『完結編』では旧来の単座型に代わり、ヤマトに多数が配備されていた。[12]

なお、『完結編』では作画ミスにより、冥王星会戦で古代進が乗るコスモ・ゼロが、一部のシーンのみ新コスモタイガーで描かれている。

諸元

単座型諸元

  • 全長:17.4[13]m
  • 全幅:8.2m
  • 全高:3.2m
  • 総重量:18.5t
  • 乗員:1名
  • 武装
    • 30mmパルスレーザー機関砲 8門(機首)
    • 12.7mm実体弾機関銃 10門(翼内)

三座型諸元

  • 全長:17.4m
  • 全幅:8.2m
  • 全高:3.2m
  • 乗員:3名(キャノピーに2名、銃座に1名)
  • 武装
    • 30mmパルスレーザー機関砲 6門(機首)
    • 12.7mm実体弾機関銃 6門(翼内)
    • 20mm2連装パルスレーザー銃座 1基(胴体背部)

PlayStation版における変更点

PlayStation版『さらば宇宙戦艦ヤマト』に登場するコスモタイガーは、アニメ版とは基本的には変わらないものの、若干の違いがある。宮武一貴により再度デザインされており、外観はステルス要素を少し取り入れ、平べったいデザインとなった。「一式艦上戦闘攻撃機」という正式名が与えられ、三座型は複座型に設定変更されている。しかし複座型のデザインはアニメ版三座型のものをそのまま流用しているため、劇中における機体の外観が単座とは異なる。

さらにPlayStation 2版『宇宙戦艦ヤマト 二重銀河の崩壊』では、複座型をヤマト艦内で改造した早期警戒型である「一式艦攻改・副座艦上偵察機」が登場している。こちらも宮武によってデザインされている。基本的にはレドームを上部と下部に取り付け、必要があれば分離可能となっている。

搭乗したことがある人物

商品化

  • バンダイプラモデルシリーズ「宇宙戦艦ヤマト メカコレクション」に「ヤマト艦載機 コスモタイガーII」の商品名で三座型がラインナップ。シリーズ番号はNo.02。
  • 上記とは別に同じバンダイで単座型が二周りほど大きいプラモデルが発売されていた。
    • 同じシリーズの宇宙空母のプラモデルでは、コスモタイガーIIの小型モデルが3機付属した。
  • バンダイの「ビッグスケール ポピニカ魂 宇宙戦艦ヤマト」では、ヤマト艦載機として山本機と加藤機が付属する。1/625スケールで塗装済み完成品。
  • バンダイの「宇宙戦艦ヤマト メカニックファイル」に、ヤマト艦載機として単座型3機と三座型2機が付属する。スケールは1/144。
  • バンダイから発売されている「宇宙戦艦ヤマト 1/350スケールプラモデル」には単座型3機が付属。
  • バンダイのEXモデルシリーズとして2007年5月に発売された。2008年11月現在で一番新しいプラモデルであり、造形も一番細かい。スケールは1/100で、同スケールの山本明のフィギュアが付属し、単座型と三座型が選択可能。
  • ザッカピー・エイ・ピーのブラインド商品宇宙戦艦ヤマト メカニカルコレクション」に、ラインナップ。
    • PART.2で、単座型4機と山本機のセットが製品化。
    • PART.3では、三座型5機セット、コスモタイガーII改雷撃機4機とコスモ・ゼロ1機セットで商品化。
    • 艦載機篇では、単座型、山本隊の単座型、三座型、山本隊の三座型、新コスモゼロがラインナップ。シークレットは単座型の対艦ミサイル搭載機。スケールは1/144。
    • さらば宇宙戦艦ヤマト メカニカルコレクションには、PART.2、PART.3に登場した単座型セット、三座型セットが再び登場した。

脚注

  1. 松本は原案デザイン、宮武は「単座型」と「三座型」、板橋はその他の機体を担当。
  2. 宇宙戦艦ヤマト復活篇より
  3. 劇中では単発機を思わせる作画がほとんどだが、近年の商品化の際には双発機として再現される。また当時も、『さらば宇宙戦艦ヤマト』の古代機発進シーンや、『別冊てれびくん3‘宇宙戦艦ヤマト2’』に掲載された内部図解(エネルギーチューブが2本並列に並んでいる)など、双発を思わせる描写はある。
  4. 『宇宙戦艦ヤマト2』第5話では月面基地からヤマトに合流し、第25話ではメガロポリス沖から大気圏を離脱した白色彗星帝国の都市帝国をヤマトと共に追撃している。
  5. 5.0 5.1 テンプレート:Cite book
  6. 宇宙戦艦ヤマト完結編より
  7. 『デラックス版 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』より。
  8. 増槽をミサイルとして発射している場面はシリーズを通して多く見られる。
  9. 『てれびくんデラックス2‘宇宙戦艦ヤマト大全集’』より。
  10. エンブレム案、およびエンブレムを付けた新コスモゼロの設定画は『ファイナルデラックス版 ヤマトよ永遠に』(西崎音楽出版)のP227に掲載。
  11. シーンによっては加藤機以外にも垂直尾翼が白色になっている機体が登場している。
  12. 『完結編』における冥王星会戦、都市衛星ウルク戦など。
  13. 『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』の公式資料においては全長が17.1mにされている。コスモ・ゼロは17.4mのままであり、大きさに差がつけられていた(のちの『ヤマトよ永遠に』の対比図にある新コスモ・ゼロも全長は17.1m)。ただし『完結編』における対比図では17.4mに戻されている。

参考文献

  • 『デラックス版 さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』(オフィスアカデミー・1979年)
  • 『宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』(同上・1980年)
  • 『ファイナルデラックス版 ヤマトよ永遠に』(西崎音楽出版・1980年)
  • 『別冊てれびくん3‘宇宙戦艦ヤマト2’』(小学館・1979年)
  • 『てれびくんデラックス2‘宇宙戦艦ヤマト大全集’』(同上・1979年)
  • 『ロマンアルバムエクセレント53・54 ‘宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL1・2’』(徳間書店・1983年)
  • 『ロマンアルバムエクストラ56‘宇宙戦艦ヤマト完結編’』(同上・1983年)

関連項目

テンプレート:宇宙戦艦ヤマト