アホウドリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

テンプレート:生物分類表 アホウドリ(信天翁[1][2][3]、阿房鳥[1][3]、阿呆鳥[4][2][3]テンプレート:Snamei)は、ミズナギドリ目 アホウドリ科 キタアホウドリ属に分類される。信天翁の漢字音読みにして、「しんてんおう」とも呼ばれる。

分布

太平洋[5]に分布しており、夏季はベーリング海アラスカ湾アリューシャン列島周辺で暮らし、冬季になると繁殖のため日本近海への渡りをおこない南下する[6][7]鳥島尖閣諸島北小島南小島でのみ繁殖が確認されていた[5][8][9][10][11][a 1]。2011年と2012年、2014年にはミッドウェー環礁でも繁殖が確認されている[12][13]

形態

全長84-100センチメートル[7][11]。翼開張190-240センチメートル[5][10][11]体重3.3-7キログラム[5][9]。全身の羽衣は白い[5][6][9]。後頭から後頸にかけての羽衣は黄色い[5][6][7][9][11]。尾羽は白く、先端が黒い[5][7][8][9][11]。翼上面の大雨覆の一部、初列風切、次列風切の一部は黒く、三列風切の先端も黒い[9][10][11]。翼下面の色彩は白いが外縁は黒い[5][7][9]

嘴は淡赤色で[5][7][8]、先端は青灰色[9][11]。後肢は淡赤色[5][7]、青灰色で[11][a 1]。水かきの色彩は黒い[10]

雛の綿羽は黒や暗褐色、灰色[5][a 1]。幼鳥は全身の羽衣が黒褐色や暗褐色で、成長に伴い白色部が大きくなる[7][10][11][a 1]

2011年東京大学鳥取大学らの共同研究チームが遺伝子解析を行った結果、遺伝子上で明らかな違いの見られる2集団が存在することが発見された。見た目ではほとんど同じこの2集団は、体格その他に多少の違いがみられるらしく、今後別種として扱われる可能性があるという[14]

生態

海洋に生息する[a 1]

食性は動物食で、魚類甲殻類軟体動物、動物の死骸を食べる[5][6][a 1]。水面近くや水面に浮かんでいる獲物を水面に飛翔しながら降りて捕らえる[5]

繁殖形態は卵生。集団繁殖地(コロニー)を形成する[5]。頸部を伸ばしながら嘴を打ち鳴らして(クラッタリング)求愛する[5][7]。斜面に窪みを掘った巣に、10-11月に1回に1個の卵を産む[5][6][8]。巣を作るのは、通常、雄の役目であるが、雌が作る様子も確認されている[15]。雌雄交代で抱卵し、抱卵期間は64-65日[5][6][a 1]。生後10年以上で成鳥羽に生え換わる[11]

人間との関係

羽毛目的の乱獲により生息数は激減した[5][6][7][9]。和名は人間が接近しても地表での動きが緩怠で、捕殺が容易だったことに由来する[2][6]1887年から羽毛採取が始まり、1933年に鳥島、1936年に聟島列島が禁猟区に指定されるまで乱獲は続けられた[6]。当初は主に輸出用だったが、1910年に羽毛の貿易が禁止されてからは日本国内での流通目的のために採取され計6,300,000羽が捕殺されたと推定されている[5]。以前は小笠原諸島大東諸島澎湖諸島台湾)でも繁殖していたとされるが、繁殖地は壊滅している[5][6][9][a 1]。また彭佳嶼西之島でも繁殖していたとされる。1939年には残存していた繁殖地である鳥島が噴火し1949年の調査でも発見されなかったため絶滅したと考えられていたが、1951年に鳥島で繁殖している個体が再発見された[5][6][7][9][a 1]。以降は測候所(後に気象観測所)による監視と保護が続けられていたが、1965年に火山性群発地震による気象観測所の閉鎖に伴い保護活動は休止した[5][6][9]1976年から調査や保護活動が再開しハチジョウススキ(1981年1982年)やシバの植株と土木工事による繁殖地の整備、1992年には崩落の危険性が少ない斜面に模型(デコイ)を設置し鳴き声を流す事で新しい繁殖地を形成する試みが進められ繁殖数および繁殖成功率は増加している[5][6][9]1971年に南小島の個体群も再発見され[9]1988年には繁殖が確認されている[5][8][a 1]。また2001年に北小島での繁殖も確認された[8]テンプレート:Sister テンプレート:Sister 日本では1956年3月3日に「鳥島のアホウドリ及びその繁殖地」として天然記念物に仮指定[16]1958年4月25日に「鳥島のアホウドリおよびその繁殖地」として国の天然記念物に指定[17]1962年4月19日に特別天然記念物に指定、1965年5月10日に特別天然記念物の名称が「アホウドリ」へ変更された。1993年種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている[6]1951年における生息数は30-40羽、1999年における生息数は約1,200羽と推定されている[5]2010年における調査で鳥島集団の総個体数は2,570羽と推定された。[18]

絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト[a 1]
ファイル:Status jenv VU.png

鳥島で火山活動が活発化する兆しがあるため、小笠原諸島聟島に繁殖地を移す計画が2006年から進められている。鳥島で産まれたアホウドリの雛の一部を聟島に運んで育てることで、聟島を新たな繁殖地として認識させるというもので、2012年12月時点では、2008年から2009年にかけて旅立った25羽のうちの12羽が帰島している。2012年12月になり、NHKのカメラによってつがいが産卵していることが確認されていたが[19]、孵化はしておらず未受精卵だったと考えられる[20]聟島#アホウドリの繁殖地計画も参照)。

ちなみに、尖閣諸島久場島に鳥の名にちなんだ「信天山」という山がある。

参考文献

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

関連項目

テンプレート:Sister テンプレート:Sister

外部リンク

テンプレート:Reflist

  • 1.0 1.1 広辞苑 第5版』、岩波書店
  • 2.0 2.1 2.2 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社2008年、36-37頁。
  • 3.0 3.1 3.2 フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.36 1988年 永岡書店
  • 『明鏡国語辞典』、大修館書店
  • 5.00 5.01 5.02 5.03 5.04 5.05 5.06 5.07 5.08 5.09 5.10 5.11 5.12 5.13 5.14 5.15 5.16 5.17 5.18 5.19 5.20 5.21 5.22 5.23 5.24 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社2000年、60-63、190頁。
  • 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 6.13 加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、畑正憲監修 『日本の天然記念物』、講談社、1995年、642-645頁。
  • 7.00 7.01 7.02 7.03 7.04 7.05 7.06 7.07 7.08 7.09 7.10 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版、2000年、28-29頁。
  • 8.0 8.1 8.2 8.3 8.4 8.5 河野裕美 「アホウドリ」『沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(レッドデータおきなわ)-動物編-』、沖縄県文化環境部自然保護課編 、2005年、61-62頁。
  • 9.00 9.01 9.02 9.03 9.04 9.05 9.06 9.07 9.08 9.09 9.10 9.11 9.12 9.13 長谷川博 「アホウドリの保護」 黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科7 鳥類I』、平凡社1986年、60-61頁。
  • 10.0 10.1 10.2 10.3 10.4 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、66-67頁。
  • 11.0 11.1 11.2 11.3 11.4 11.5 11.6 11.7 11.8 11.9 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、21頁。
  • テンプレート:Cite web
  • テンプレート:Cite web
  • アホウドリは2種類? 遺伝子解析で可能性共同通信(47NEWS) 2011年10月8日付
  • ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜 小笠原で初産卵!若きアホウドリ夫婦の挑戦(5月26日放送)
  • 同日、東京都教育委員会告示第9号「文化財保護法第七十条第一項の規定により、仮指定する件」
  • 同日、文化財保護委員会告示第37号「文化財保護法第六十九条第一項の規定により、指定する件」
  • 東邦大学による第104回鳥島アホウドリ調査報告
  • テンプレート:Cite web
  • テンプレート:Cite web

  • 引用エラー: 「a」という名前のグループの <ref> タグがありますが、対応する <references group="a"/> タグが見つからない、または閉じる </ref> タグがありません