アグスタウェストランド AW101

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テンプレート:Infobox 航空機 アグスタウェストランド AW101(AgustaWestland AW101)は、イギリスウエストランド社とイタリアアグスタ社が共同開発した汎用ヘリコプターである。両社は2000年に合併し、現在はアグスタウェストランド社が販売と製造を請け負っている。

イギリスにおける愛称は、コチョウゲンボウを意味するマーリン(Merlin)[1]ポルトガルデンマークでもこの愛称が採用されている。

設計

大量の機材と長大な航続距離を求めた結果、3発のエンジンと巨大な床下燃料タンクを搭載する大型機となったが、オプションのテール及びローター折り畳み機構によって艦載機としての運用を可能としている。

巨大な機内空間は左舷にステップ付きドア、右舷にスライド式カーゴドア、後部にランプ・ドアを備え、民間輸送型で30人を乗せる事ができる。

5枚のメインローターはウエストランド社がリンクスで取り組んだBERPブレードを採用し、特徴的な外見を備えている。

各国での採用

イギリス

ファイル:Ehi aw101 merlin zj123 arp.jpg
イギリス空軍のマーリン HC.3

哨戒ヘリコプターとしてイギリス海軍で44機が発注された。当初は、マーリン HAS.1と命名されたが、すぐマーリン HM.1(Merlin HM Mk. 1)に変更された。1997年5月17日にイギリス海軍へ納入され、2000年6月2日に運用が開始された。コーンウォールのRNAS カルドローズに4個飛行隊が編成された。23型フリゲートインヴィンシブル級軽空母を始め、イギリス海軍の艦艇で作戦行動に従事した。

2004年にテール・ローターの破損で事故を起こし、運用が中止された。その後、テール・ローターハブに製造欠陥が確認され、翌年に運用が再開された。カリブ海では、麻薬取締やハリケーンの救済活動を行い、テリック作戦(イラク戦争)に揚陸ヘリ空母オーシャン」ともに参加した。

輸送機用としてイギリス空軍1995年に22機を発注した[2]マーリン HC.3と命名され、2001年1月に部隊編成が行われた。HM.1との違いは、空中給油機構の装備、燃料タンクの拡張、複列車輪が採用されていることである。

HC.3の初任務は、平和安定化部隊の支援であった。その後、HM.1同様にテリック作戦にも参加した。2007年にデンマークへ引き渡される予定であった6機を購入した[3]マーリン HC.3Aとして追加導入し、空軍参謀総長のグレン・トーピー大将はアフガニスタンイラクでの運用を加速できると発言した[4]

日本

ファイル:EH101 JMSDF.jpg
MCH-101掃海・輸送ヘリコプター

海上自衛隊では、AW101を掃海・輸送ヘリコプターMCH-101と呼称し、掃海機および輸送機として運用する[5]。2013年3月末時点のMCH-101の保有数は5機[6]

ローターと尾部に自動折り畳み機能を持ち、艦載機としての運用性を持たせている[7]。また、自動飛行制御装置(AFCS)、能動制振装置(ACSR)といった電子機器を搭載しており、飛行性の向上と機体への負担を軽減している[8]

海上自衛隊では、掃海機MH-53Eの減勢にともなう後継機として、護衛艦へ発着可能で掃海具の小型化に対応した新型ヘリコプターを必要とし、2003年(平成15年)予算で新掃海・輸送ヘリコプターとして初めて1機が取得された[9]。MCH-101の初号機は完成品輸入として2006年(平成18年)に納入された[7]。2号機は川崎重工業によりノックダウン生産、3号機以降はライセンス生産が行われる[7]。2003年の防衛力整備では、MH-53Eの事故による損耗分を含めた11機の取得が必要だと予算要求された[10]

MCH-101は平成16年度防衛白書において、ひゅうが型ヘリコプター護衛艦に輸送ヘリとして搭載、運用することが示唆されている[11]。2012年にはノースロップ・グラマンが開発したポッド式LIDAR装置である空中レーザー機雷探知システム(AN/AES-1 ALMDS)を導入すると発表された。ALMDSはアメリカ海軍ではMH-60Sで運用される予定で、低率初期生産が開始されたばかりである[12][13]

ファイル:JMSDF CH-101 (8192).JPG
CH-101 二代目しらせ艦載機

三代目南極観測船「初代しらせ」艦載機のS-61A-1の後継として、四代目南極観測船「二代目しらせ」用にCH-101文部科学省予算で調達され、海上自衛隊によって運用されている。CH-101はその任務上極寒冷地対応とされており、所定の追加装備が施されているが、外観上の変化は僅かである。平成16年度と平成17年度の予算で1機づつが発注され、最終の3号機は平成24年度補正予算で調達された。

2007年5月にCH-101初号機がライセンス生産により川崎重工業から「しらせ飛行科」へ納入され、岩国基地の第111航空隊支援の下で試験と訓練を経て、2009年10月に「二代目しらせ」に搭載された[14]。しらせ配備機は、部品調達の関係から今後も第111航空隊の支援を受ける。

MCH-101の調達数(CH-101除く)
予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数
平成15年度(2003年) 1機 平成19年度(2007年) 0機 平成23年度(2011年) 2機
平成16年度(2004年) 1機 平成20年度(2008年) 3機 平成24年度(2012年) 1+2機[15]
平成17年度(2005年) 0機 平成21年度(2009年) 0機 平成25年度(2013年) 0機
平成18年度(2006年) 0機 平成22年度(2010年) 0機 合計 10機

テンプレート:Col

各仕様と装備品

全周監視レーダー、双方向データリンク、統合作戦システム
  • 対潜哨戒 ASW/ASuW
ディッピングソナーソノブイ、統合作戦システム、魚雷
自衛機材、防御火器
掃海器具、AMCM
  • 要人輸送 VIP
振動緩和システム、追加装備(厨房、トイレなど)
  • 警察型
サーチライト、画像伝送装置、暗視装置

派生型

ファイル:EH101-112ASuW.jpg
イタリア海軍のEH101 AEW
胴体下に大型のレドームを装備している
EH101
原型、民間販売用もこの名称。
マーリン HM.1
イギリス海軍向け対潜哨戒機
マーリン HC.3/HC.3A
イギリス空軍向け輸送型。
EH101 ASW
イタリア海軍向け対潜哨戒機。
EH101 AEW
イタリア海軍向け早期警戒機。
CH-148 ペトレル
カナダ軍が発注した当初の名称。後に中止。
CH-149 コルモラントCH-149 Cormorant
カナダ空軍向け捜索救難機。
MCH-101
海上自衛隊の掃海・輸送用機。11機導入予定。5機納入済。
CH-101
日本南極観測船(砕氷艦)「二代目しらせ」の艦載機。3機導入予定。2機納入済。
VH-71 ケストレル
アメリカ海兵隊の次期大統領専用機「マリーンワン」(旧名称US101)27機導入予定だったが、2009年6月に開発契約を破棄。

性能・主要諸元

テンプレート:航空機スペック・ヘッダー

  • 主回転翼直径:18.6m
  • 尾部回転翼直径:4.0m
  • 胴体長:19.5m
  • 胴体幅:4.6m(テールフィン除)
  • 全長:22.83m(テールローター含、メインローター除)
  • 全高:6.66m(テールローター含)
  • 空虚重量:10.5t
  • 有効積載量:5.443t
  • 最大離陸重量:15.6t
  • 発動機(民間用):GE CT7-6A(2,000軸馬力(shp)ターボシャフト3基
  • 発動機(軍事用):GE T700-T6A1(2,145軸馬力(shp)またはR&R/チュルボメカ RTM322(2,263軸馬力(shp)ターボシャフト3基
  • 超過禁止速度:311km/h
  • 巡航速度:278km/h
  • 乗員2名+乗客30
  • ホバリングIGE : 3307m
  • 航続距離 : 1370km

年表

イギリス国防省はウエストランドでライセンス生産されていたシーキングに代わる新型対潜ヘリコプターの研究が開始された。この候補としてウエストランドはWG.34を提案した。一方、イタリアでもアグスタでライセンス生産されていたシーキングの代替機を構想しており、イギリス国防省が国際協同開発の可能性を考慮して委員会を設けた
イギリス、イタリアの2か国で開発協定が締結された。
イギリス海軍とイタリア海軍の次期対潜哨戒ヘリコプターとして提案すべく、ウエストランド、アグスタ両社の出資によってEHインダストリーズ(EH Industries、EHI。ユーロ・ヘリコプター・インダストリー(Euro Helicopter Industries)とも)が設立された。
  • 1987年にイギリスは、大型で汎用性の高いEH101(本機の旧名)の採用を決定したため、海軍向け中型汎用ヘリNFH90の生産プログラムから脱退している。
9機の試作機製造が発注された。EHIでは、WG.34という土台があったため開発は進んでいたが、イギリスとイタリアが望む能力を保持しつつ多用途で運用できる可能性が認められ、旅客輸送や兵員輸送能力を満たす大型汎用ヘリコプターの開発に軌道修正された。
パリ航空ショーではモックアップが公開された。
ウエストランドで製造された試作機が初飛行した。同年の11月26日にはアグスタで製造された試作機も初飛行を行った。
民間向けの試作機が初飛行した。
  • 1991年のイギリス海軍からの発注に始まり、日本東京警視庁航空隊に世界で最初の民間型EH101(グリフォン)を「おおぞら1号」として導入した。
ウエストランドとアグスタが合併してアグスタウェストランドとなる。
EHインダストリーズがアグスタウェストランドに吸収合併された。
EH101の名称はAW101と改められた[16][17]

出典

  1. テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web
  5. "平成20年度における防衛力整備の主要事項について". 防衛省. 2010年5月13日閲覧テンプレート:リンク切れ
  6. 平成25年度防衛白書 資料13 主要航空機の保有数・性能諸元
  7. 7.0 7.1 7.2 テンプレート:Cite web
  8. "ヘリコプター". 丸紅エアロスペース株式会社. 2010年9月1日閲覧
  9. "平成15年度 防衛力整備と予算の概要 防衛庁". 防衛省. 2010年5月13日閲覧
  10. "2 次期掃海・輸送ヘリコプター". 平成14年度 事前の事業評価. 防衛省. 2010年8月4日閲覧
  11. "平成16年度防衛白書". 2章3節.
  12. http://www.asagumo-news.com/news/201204/120405/12040504.html
  13. http://www.militaryaerospace.com/articles/2012/04/almds-lrip.html
  14. テンプレート:Cite news
  15. +は補正予算分
  16. AGUSTAWESTLANDテンプレート:リンク切れ
  17. テンプレート:Cite web

関連項目

外部リンク

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