いのくままさお

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いのくま まさお1939年9月28日 - )は、日本映画キャメラマン満州出身。 『がんばれ!!ロボコン』以前は「猪熊雅太郎」名義でのクレジットが確認されている。

経歴

実家のお菓子屋で菓子職人としての修行を積んでいた時期に、撮影の仕事に関心を持ち、映像の世界に入る。『特別機動捜査隊』などに携わった後に、『花と蝶』で、キャメラマンとして一本立ち[1]

人造人間キカイダー』以後は、主に東映の特撮番組を多く撮影している。特撮ヒーロー番組のエンディングのスタッフクレジットで最初に表記される事が多く、低年齢層でも読みやすい平仮名でもあるため、名前は広く知られている。

バトルフィーバーJ』から『星獣戦隊ギンガマン』終盤まで戦隊シリーズのカメラマンを担当し(ただし『太陽戦隊サンバルカン』は不参加で、メインを務めるのは『科学戦隊ダイナマン』から)、1999年度からは松村文雄と入れ替わりに朝8:00枠に移動。以降は『燃えろ!!ロボコン』を皮切りに、『仮面ライダークウガ』をはじめとする平成仮面ライダーシリーズに参加している。

現在まで平成仮面ライダーシリーズに、『クウガ』から『仮面ライダー鎧武』まで全てに撮影監督として皆勤で参加を果たしている唯一の人物でもある。テレビシリーズの撮影監督を務める傍ら、2014年3月公開の映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』を手掛けるなど、74歳を越えてもいまだに第一線で活躍している。また2012年には『特命戦隊ゴーバスターズ』にて13年半ぶりに戦隊シリーズのテレビ作品で撮影監督を担当した。

エピソード

  • いのくままさおというひらがな表記(芸名)は、実家のお菓子屋が看板に平仮名で屋号表記していたことから、店を継いだ兄から改名を依頼され、自らの通り名もそれで統一することにしたという。近年では同種作品に限らず制作スタッフの芸名やペンネームの使用は珍しくないが、いのくまは1970年代後期に早くも実践していたことになる。
  • 数多くの特撮作品に携わっているが、以前は「俺は特撮に関わるわけないんだ」と思っていたという[2]
  • 電撃戦隊チェンジマン』に出演した柴田時江は、いのくまについて「アクティブ」「お世話になりましたね」と話しており、「最近でもクレジットでいのくまさんの名前を見ると、当時を思い出して涙が出そうに」なるという[3]
  • 超新星フラッシュマン』『地球戦隊ファイブマン』に出演した植村喜八郎は、現場におけるいのくまの仕事ぶりに強い印象を受けたという。「ジャパン・アクション・カメラマン」「高いとこにも平気で登ってっちゃうし。すごいですよ、あの人は」と回想[4]
  • 『超新星フラッシュマン』『超獣戦隊ライブマン』に出演した中田譲治は、いのくまは「面倒見のいい方」で「こういったベテランの方が現場にいることは、すごく貴重」と話している[5]
  • 五星戦隊ダイレンジャー』『仮面ライダー555』に出演した中康治は、いのくまについて「いつも優しくて。素晴らしい方です」と評している[5]
  • 仮面ライダーアギト』に出演した友井雄亮は、「(いのくまに)叱られて、悔しかったこととかいっぱいあるけど、トイレとかで一緒になると声かけてくれて、自分の親父みたいに思ってました」と話している[6]
  • 仮面ライダー555』に主演した半田健人は、いのくまについて「精神的に助けてもらった。あったかい人」と語る。ヒロイン役の芳賀優里亜は、いのくまがいると「元気になるよね」「さまざまなことを教えてくれる教育係のような存在だった」と話している。[5]
  • 仮面ライダーカブト』に主演した水嶋ヒロは、いのくまについて「あの人はすごい」と語り、いのくまのような人間になりたいと冗談まじりで話している。同じく『カブト』に出演した内山眞人も「しんどいところでも、笑わせてくれるもんね」と敬愛[4]
  • 仮面ライダーキバ』に主演した瀬戸康史は、『仮面ライダーアギト』に出演した要潤や『仮面ライダーカブト』に出演した山本裕典と他の作品で共演した際に、自分の出ていないライダー作品での「いのくまさんはどうだった?」という話に興じたという[3]
  • 仮面ライダー響鬼』『仮面ライダー電王』などに出演した中村優一は、『仮面ライダー×仮面ライダー×仮面ライダー THE MOVIE 超・電王トリロジー』でいのくまとまた仕事ができて嬉しかったという。中村はいのくまについて「ものすごい、パワーのある方」「僕も、将来はああなりたいですね(笑)」と話している[7]
  • 劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド NEOジェネレーションズ 鬼ヶ島の戦艦』に出演した柳沢慎吾にもいのくまの印象は強かったようで、後日『ごきげんよう』にゲスト出演した柳沢は、柳沢には優しいがスタッフには厳しいいのくまのモノマネを同番組で披露している[8]
  • 『仮面ライダー555』第7・8話の撮影中に、いのくまを乗せた移動車が石畳の上に転倒する事故があった。その際に「息が出来ないくらい胸を打った」が、「でも痛いからってどうしようもないし」と病院からすぐに戻って撮影を再開したという。普通ならば入院するほどの事態だったので、「人間じゃないって言われましたよ(笑)」と語る[9]
  • 劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王』には裁判官役でカメオ出演している。
  • 仮面ライダーW』第11・12話の撮影中に古希を迎え、撮影現場で仮面ライダーWに紫のちゃんちゃんこを着せられた[10]
  • 快傑ズバット』『燃えろアタック』などで長年コンビを組んだ監督の田中秀夫と対談した際に、いのくまは「田中監督は3本の指に入るくらいの頑固な監督です」と発言している[11]
  • 戦隊シリーズを撮っていたころに、助監督の中澤祥次郎に「お前が監督になったら俺がカメラマンをしてやる」と約束していた。しかし中澤が戦隊の監督に昇進した時期に、いのくまは仮面ライダーシリーズに異動しており、すれ違い状態が長く続いた。そしてこの約束は『仮面ライダーキバ』第36話にて、ようやく果たされることになった。いのくまは、終始機嫌よくカメラを回し続けたという[12]
  • 高寺重徳とも親交深いが、苦言を呈したこともある。「『超力戦隊オーレンジャー』の中盤でロボットの数が増えすぎたじゃないですか。で、毎回ただ新しいロボットが出るだけみたいな話が続いちゃって(高寺に)『やたらにロボットばっかり出てくるだけど、ドラマが見えないよ。そういうのは、どうにかならないの? こっちは玩具のCM撮っている訳じゃないんだから。ドラマとお話を撮ってるわけだから』って言いましたけどね」[13]
  • 監督の坂本太郎とは同じ年齢で、家族ぐるみのつき合いをしているという。坂本が助監督だった『人造人間キカイダー』からのつき合いである。共通の趣味は釣り[2]
  • 監督の長石多可男とも付き合いが古く、いのくまと長石とのエピソードは枚挙に暇がない。
    • 2007年11月に行われた鈴木美潮主催の『長石祭』というイベントでさとう珠緒が語ったことによると、『超力戦隊オーレンジャー』の撮影中、いのくまと長石が口論になった場面を目撃したという。そのときさとうは「いのくまさんと監督が言い争いになったとき、ふたりの背後で言霊がケンカしているのを見た」と冗談ぽく付け加えている。
    • 『仮面ライダーカブト』で山本裕典が迫真の演技を見せて、いのくまが「オッケー!」と言って、長石に「監督、今のどう!?」と聞いたら、長石は「はっ、月を見てた!」と上の空だったという。
    • 溝口琢矢が語ったところによると『劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!』の撮影中がシーンの撮影でカメラのフレームから目をそらしてしまった際、すかさずいのくまが「下を向くな!」と叱り飛ばしたという。その際長石が「私が選んだ役者だ、怒るなら私を怒れ!」と言って庇ってくれたという。
    • いのくまは長石について、「昔は長石監督の指示が訳わからなくて、撮った画を見て納得したんだけど最近は監督が丸くなったのか、俺が慣れたのかはわからないけどついていけるようになった」と語っている。また、長石の感覚的な指示を若い俳優が理解できずにいるときには、いのくまが長石の意図を汲んで俳優に説明することもあるそうで「通訳だね(笑)」と話している[2]
    • 2013年3月に死去、5月に催された長石を偲ぶ会では弔辞を述べた。
  • いのくまの弟子に『大魔神カノン』でデビューを果たし、『天装戦隊ゴセイジャー』で特撮カメラを担当している野村次郎がいる。

主な撮影作品

テレビ

映画

オリジナルビデオ

脚注

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  1. 『特撮ニュータイプ』2003年9月号(角川書店)
  2. 2.0 2.1 2.2 『仮面ライダー電王 公式読本』(2008年、辰巳出版) 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "den-o"が異なる内容で複数回定義されています 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "den-o"が異なる内容で複数回定義されています
  3. 3.0 3.1 『東映ヒーローMAX』Vol.30(2009年、辰巳出版)
  4. 4.0 4.1 『東映ヒーローMAX』Vol.20(2007年、辰巳出版)
  5. 5.0 5.1 5.2 『東映ヒーローMAX』Vol.8(2004年、辰巳出版)
  6. 『仮面ライダーアギトグラフィティ』(2002年、朝日ソノラマ)
  7. 『仮面ライダーマガジン』Spring '10(2010年、講談社)
  8. 2009年5月12日放映。
  9. 『特撮ニュータイプ』2003年11月号(角川書店)
  10. [1]
  11. 『快傑ズバット大全』(2002年、双葉社)
  12. [2]
  13. 『ニュータイプ・ザ・アライブ2011年7月号』(2011年、角川書店)