ゴッタルドベーストンネル
ゴッタルドベーストンネル(テンプレート:Lang-de)あるいはゴッタルド基底トンネル(ゴッタルドきていトンネル)は、スイスで現在建設中の鉄道トンネル。2本の単線トンネルで構成され、ウーリ州エルストフェルトとティチーノ州ボディオを結ぶ。全長は57km、縦坑や関連する連絡路を含めた総延長は153.5kmに上る。完成時には日本の青函トンネルを抜き、道路および鉄道用のトンネルとしては世界最長となる予定である。
概要
ベルン州とヴァレー州を結ぶレッチュベルクベーストンネルと共にアルプトランジット計画の一環として建設されており、曲がりくねった山岳ルートを高速鉄道と重量貨物列車の通過に適した線形の路線にすることを狙っている。新トンネル開通によって旅客列車は250km/hで走行が可能となり、チューリッヒ - ミラノ間の所要時間は3.5時間から50分短縮される。さらに関連するツィンメルベルクベーストンネルとチェネリベーストンネルが完成すれば短縮時間はあわせて1時間となる。なお、近隣には1881年完成のゴッタルド鉄道トンネルと1980年完成のゴッタルド道路トンネルがある。
当初は2015年に完成する計画であったが、トンネル工事の遅れによって2018年までずれ込む見込みとなっている。また、ミラノ都市圏が旅客輸送を重視して貨物輸送を忌避しているため、イタリアの鉄道網との連絡は不確実なものとなっている。
並行する2つの単線トンネル[1]は325mおきに連絡路で結ばれ、途中テンプレート:仮リンクとテンプレート:仮リンクには多目的駅が設けられている。これらの駅は換気設備とその他の機械類を備えるほか、列車がトンネル間を移るための渡り線が設けられる。通常客扱いは行われないが、非常時には脱出ルートとしても機能する。なおセドルンには客扱いを行う駅としてテンプレート:仮リンクを建設する計画だったが、2007年9月に無期限延期となった。
背景
ビアシナ渓谷を横断しゴッタルド峠を通過する道路やそのトンネルは、アルプス山脈を縦貫してヨーロッパの南北軸を形成する最重要交通路である。交通量は1980年以来10倍以上に増加しており、道路トンネル、鉄道トンネル共に容量は限界に達している。1994年2月20日、貨物自動車の通過交通量増加を受けたスイスは交通政策に関する投票を行い、1999年10月8日に交通移行法が成立した。これは同年にアルプス保護法で規定された鉄道貨物への移行のため、ドイツ南部とイタリア北部との間で貨物自動車やコンテナを列車に搭載して輸送させるものである。
その実現のためアルプスを高速で通過できる平坦な交通路が必要となり、従来より600m低い位置でゴッタルド山塊基部を貫くこのトンネルの建設が決定した。現在のゴッタルド鉄道では、標高1100mにあるトンネルまで峡谷沿いにループ線を含む険しい路線で登り、貨物列車は2~3両の機関車を連結しても最大2000トンに制限されている。新トンネルが完成すれば最大4000トンの貨物列車が走行可能となり、アルプス山脈が輸送の障壁とならなくなる。
建設
建設事業はスイス連邦鉄道(スイス国鉄)の完全子会社であるアルプトランジット・ゴッタルド株式会社(AlpTransit Gotthard:AG)が担当している。トンネル中央部は発破、その外側はトンネルボーリングマシン(TBM)を用いて掘削される。工期短縮のため4つのアクセストンネルが掘削され、エルストフェルト、アムステク、セドルン、ファイド、ボディオの5箇所から掘削を行えるようにしている。セドルン駅が建設されている現場へはセドルン渓谷から800mの縦坑を下り、そこから1kmの水平トンネルを進む険しいルートとなっている。
工事の進捗
各月の始めのトンネル掘削距離を示す。ファイド西側のトンネルボーリングマシンは2007年6月6日にセドルンへ向けて再発進した。
2010年10月15日、貫通した。
年 | 月 | 掘削済み長さ | 全151.8km中の割合 |
---|---|---|---|
2004 | 6 | 52.34km | 34.1% |
2005 | 6 | 74.59km | 48.6% |
2006 | 6 | 94.10km | 61.3% |
2007 | 6 | 103.67km | 67.6% |
10 | 105.1km | 68.6% | |
2008 | 3 | 108.02 km | 70.4% |
4 | 109.00km | 71.0% | |
7 | 113.20km | 73.8% | |
8 | 115.20km | 75.1% | |
10 | 118.40km | 77.2% | |
2009 | 1 | 124.00km | 80.8% |
3 | 127.30km | 83.0% | |
5 | 131.00km | 85.0% | |
6 | 133.00km | 86.8% | |
7 | 134.8km | 88.8% | |
8 | 136.6km | 90.0% | |
9 | 137.3km | 90.4% | |
10 | 138.6km | 91.3% | |
11 | 140.0km | 92.2% | |
12 | 141.38km | 93.0% | |
2010 | 141.82km | 93.4% | |
142.48km | 93.8% | ||
143.80km | 94.7% | ||
144.80km | 95.4% | ||
145.40km | 95.8% | ||
146.10km | 96.2% | ||
146.60km | 96.6% | ||
147.33km | 97.0% | ||
147.98km | 97.5% | ||
149.10km | 98.2% | ||
149.90km | 98.7% | ||
150.40km | 99.0% | ||
2011 | 150.49km | 99.1% | |
150.77km | 99.3% | ||
151.26km | 99.6% | ||
151.70km | 99.91% | ||
151.75km | 99.94% | ||
151.82km | 99.99% | ||
151.82km | 100% |
要目
- 全長:56.978km(西トンネル)57.091km(東トンネル)
- 総トンネル長:151.8km
- 建設開始:1993年(試掘)、1996年(準備開始)、2003年(機械掘削開始)
- 建設完了:2016年 - 2017年
- 使用開始:2018年
- 総工費:80億3500万スイスフラン (約7850億円)
- 1日の通過列車数:200~300
- 土砂掘削量:2400万トン(1330万m³、ギザの大ピラミッド5個分)
- トンネルボーリングマシンの数:4(2つがアムステクからセドルンへ向け南進、2つがボディオからファイド・セドルンへ向け北進)
- 全長:440メートル(予備設備を含む)
- 重量:3000トン
- 効率:5メガワット
- 最大日掘削量:25~30メートル(良好な岩盤条件下)
- トンネルボーリングマシンの総掘削長:約45km
- 製造者:ヘレンクネヒト株式会社(ドイツ、シュヴァナウ)