シリーズ21
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シリーズ21(Series-21)は、近畿日本鉄道の次世代通勤形電車。「人に優しい、地球に優しい」と「コストダウン」をコンセプトに開発された。
目次
[非表示]概要
最初の車両である3220系は、2000年3月15日に近鉄奈良線・難波線・京都線・橿原線・天理線および京都線と直通運転を行う京都市営地下鉄烏丸線で営業運転を開始した。以後、5820系・9020系・9820系といった系列が幅広い線区で導入された。ただし現在の所名古屋線区には1編成も導入されていない(試験走行や塩浜でのイベント開催の回送による入線実績はある)。
けいはんな線の開業の際に導入された7020系は座席構造などがシリーズ21に準じた設計である。
これらの形式は下二桁を20とし、番号は21(大阪線は51)からスタートしている。
「シリーズ21」として2000年グッドデザイン賞・2001年鉄道友の会ローレル賞受賞。5820系は5800系に続き、L/Cカーとしては2代続けてのローレル賞受賞となっている。
内装面では5800系L/Cカーで採用された明るいグレーを基調とした内装材を一部改良の上で本格採用し、車内空間に落ち着きを持たせた。乗降扉の窓ガラスには複層ガラスを採用し車内の保温性を高め、扉間の側窓には固定式で大型1枚のものを採用したほか、高さを3段階とした吊り革や、扉間の6人掛けのバケットシートを採用した。また、5820系の車端部以外では戸袋部分の1人掛け優先座席が「らくらくコーナー」とされ、両側に肘掛が設置されている。これらの座席は住江工業製となっている。
座席定員は従来扉間7人掛け・車端部5人掛けとされていたものを、長さはほぼそのままで6人掛けまたは4人掛けと変更された。1人あたり座席幅も430mmから485mmと、従来よりも格段に広くなった。これは、乗客の体格向上により座席定員を見直したためである。座席定員は1両あたり10~18名減となったが、従来型の車両でも7人掛けのシートに6人で座っているケースがほとんどであったため、影響は少ない。
従前の近鉄では、制御装置のメーカーで車両形式を分けることがあったが、シリーズ21では特に区別していない。そのため、同一形式に三菱電機製の制御装置と日立製作所製の制御装置が混在する(3220系・6820系は現時点で日立に統一されている)。また、最高速度も従来では110km/hまでであることが多かったが、シリーズ21からは120km/hに統一されている(運転最高速度は6820系が100km/hの他は110km/h)。起動加速度も従来車の2.6km/h/s(MT比や車両形式により前後する)から3.0km/h/sに向上した。ただし、在来車との併結時の際には2.6km/h/sに落とされる。
パンタグラフは、下枠交差式とシングルアーム式が編成ごとに混在している。下枠交差式のものは、廃車になった車両のものを再利用しているものもある。3220系のモ3220形、9020系、6820系はパンタグラフを2基装備している。シングルアーム式は他社でよく見られる「< >」のレイアウトではなく、「< <」のレイアウトをとっている。このレイアウトは、特急型の22600系・16600系や阪神1000系(いずれも2両編成の車両)およびJR西日本287系クモハ287形(北近畿方面用編成)でも見られる。
ブレーキ方式は電気指令式を採用している。3220系以外は電磁直通ブレーキ式の従来車と連結可能とするため、ブレーキ指令読替装置を装備している。
2005年度の製造車から、内装のマイナーチェンジを行った。従来は室内灯(蛍光灯)は乳白色のアクリルカバーが付けられていたが、先に登場した7020系に準じてこれを廃止し、蛍光灯が直接照らす方式に改めた(5820系を除く)。関西の私鉄やJR西日本の通勤・近郊型電車ではグローブやカバーを付けることが通例となっていたが、難燃性基準の改正により従来の樹脂製カバーが新製車には取り付けられなくなったことや、コスト面などを考慮したものである。
なおこの改正後は、近鉄のほか阪神電鉄・南海電鉄などが新型車両導入にあたりカバー設置を取りやめ直接照明としている。他には阪急9300系・阪急9000系が半間接照明方式、JR西日本223系(2006年度以降製造の車両)・225系・321系・521系・京阪3000系(2代目)がガラス繊維製カバー取り付けで対処している。なお、京阪では10000系の途中および13000系で省略している。
奈良・京都線用の5820系・9020系・9820系については阪神電鉄直通運転対応工事を行い、同社用のATSと列車種別選別装置の取り付けを完了した(9020系9035F - 9039Fと9820系9829F・9830Fについては新製時から取り付けを完了している)。なお、3220系は阪神直通対応はされていない。これにより狭軌用の6820系以外の形式は他社線に乗り入れることとなった。阪神なんば線開業後は、阪神直通対応車両が京都線系統で使用されることは少なくなった。
行き先案内表示機では、種別表示に従来からの幕式表示機、行き先表示にLED式表示機を採用している。弱冷車の車両(冷房使用時のみ)は側面のLED行き先表示機に、行き先の英字と「弱冷車」の表示が交互に出る。また、途中駅で切り離しがある場合は行き先の英字と「この車両○○まで」(○○は赤で表示)の表示が交互に出る。
ノッチ段数の設定は在来車は奈良線用が進め保ち式、京都・大阪・名古屋・南大阪線用が指令式を採用していたが、本系列では使用線区を問わず指令式に統一し、乗務員の教育にかかるコストを削減している。ただし、大阪線所属車は車内設備などが異なる関係上、奈良線所属車との区別から、50番台に区分されている。
シリーズ21投入の影響
車齢が高く、老朽化の進んだ扇風機装備車・ラインデリア装備車の代替という位置づけでシリーズ21は投入されたが、上記の阪神との直通運転を行うため、奈良線系統に大半のシリーズ21が投入されている。その結果、老朽化の進んでいない車両にも余剰が生じるようになったため、奈良線系統の界磁チョッパ制御装置搭載車が他線区に転属している。
9000系の全車両が名古屋線に転属し、老朽化した1810系を置き換えており、現在の所シリーズ21が投入されていない名古屋線では玉突きのような形で車両の淘汰が行われている。
9200系(9208Fを除く)や8810系8812Fは大阪線高安検車区に転属した。これにより、大阪線所属の2430系・2800系の中で4両編成の車両を3両編成に減車の上、名古屋線富吉・明星車庫へ転属する編成が発生している。また、2004年から2006年にかけて、8810系の1編成が高安や塩浜の車庫で3 - 4ヶ月間の交代で休車となっていた。
車両
通勤タイプ(ロングシート車両)
- 3220系(京都市営地下鉄烏丸線乗入対応)
- 9020系(奈良線所属車両は阪神電気鉄道乗入対応)
- 9820系(阪神電気鉄道乗入対応)
- 6820系(狭軌仕様)
- 7020系(第三軌条仕様、大阪市営地下鉄中央線乗入対応)
近郊タイプ(L/Cカー)
- 5820系(奈良線所属車両は阪神電気鉄道乗入対応。大阪線所属車両はサ5550形・ク5750形に車椅子対応トイレ装備。)
運用路線
なお、2010年時点では名古屋線での定期運用はないが、2003年4月のイベント「きんてつ鉄道まつり」での展示で5820系5852Fが名古屋線の塩浜まで入線したことがある。志摩線や信貴線には定期運用では入線したことが無い。但し5820系のみ団体運用で志摩線に入線する事がある。
標準軌線区
- 難波線
- 奈良線
- 京都線
- 橿原線
- 天理線
- 大阪線
- 山田線
- 鳥羽線
- 京都市営地下鉄烏丸線(3220系のみ)
- 阪神なんば線(5820系・9020系・9820系のみ)
- 阪神本線尼崎駅 - 神戸三宮駅間(同上)