公文書館
テンプレート:複数の問題 公文書館(こうぶんしょかん、アーカイブズ、archives)は、歴史的な史料としての公文書(条約、宣言、外交文書、政府関係者の報告書や伝達メモなど)を保管し、公開する機関、施設である。刊行された図書を収集する図書館、非文書資料を収集する博物館とは区別される。図書館における司書(ライブラリアン)、博物館における学芸員(キューレーター)と同様に公文書館には資料の収集、整理、研究の専門職としてアーキビストが置かれるが、日本では司書や学芸員と異なり、資格の法制化は成されておらず、世間的な認知も低い。
概説
フランス革命後に設置されたフランス国立中央文書館が近代的な公文書館の始まりと言われる。ヨーロッパでは各都市に公文書館が置かれ、歴史的な文書を管理している。
アメリカ合衆国には1934年にヨーロッパに倣って設立されたアメリカ国立公文書記録管理局があり、大量の資料が保存されている。また歴代大統領の公文書は大統領図書館で管理されている。
日本
内閣文庫などで公文書を保管していたが、公文書館の必要性が認識されるようになったのは昭和30年代以降であり、山口県文書館が日本最初の公文書館として1959年(昭和34)に開館した。国においては国立公文書館が1971年(昭和46)に開館している(内閣文庫は廃止され、史料は国立公文書館に引き継がれた)。
公文書館は、重要な法令の原本をはじめ、歴史的な文書を保管している。国立公文書館には、明治時代以降の法令に関する資料や、官吏の任免、内閣の閣議決定などの史料がある。また、幕府から引き継いだ文書もあり、将軍の手文庫に所蔵されていた貴重な漢籍や昌平坂学問所で用いられていた教科書などがある。
これらの史料は過去の政策決定過程を検証し、歴史認識を深めるために活用することが望まれる。とはいっても、アメリカの公文書記録管理局のように閣僚の指示メモに至るまでが収集整理されているレベルとは程遠く、将来の政策決定に資することができるように過去の政策決定過程を詳細に分析するには、現状は力不足の面が否めない。
山口県をはじめ、一部の自治体(都道府県、区市町)でも公文書館を設置している。自治体によっては、文書館、資料館、歴史館などという呼称が使われる場合もある。また県史や市史などは多くの自治体で編纂されているが、刊行が終わると編纂室などは廃止され、収集された史料も散逸してしまう事例もある。本来は歴史資料館や公文書館などで保管し、活用されるべきとされている。近年は頻繁に市町村合併が行われていることから、公文書の移管や管理予算について意見の一致を得ず、合併前にあった公文書室の存続が危うくなることもある。
保存する場合でも、公文書館が整備されていない自治体が多い現状では図書館の司書や博物館の学芸員が公文書の整理・保存業務を担わざるを得ないのが現状である。文書資料の整理保存には学芸員の専門性とは異なる専門性や資質が要求されるし、同様に文書資料を扱うといっても司書のように刊行・冊子化され、定型性の高い資料を扱うことに慣れた者には非定型的な雑多な文書資料の扱いは手に余ることが多く、業務上後回しにされ、文字通り「お蔵入り」の扱いを受けていることもまれではない。日本においてもアーキビスト職の確立が必要、という主張もある。
日本国内の公文書館一覧
国立機関
- 国立公文書館 - 1971年設立。公式サイト
- 国立公文書館アジア歴史資料センター - 2001年設立。公式サイト
- 防衛省防衛研究所図書館史料閲覧室 - 2001年設立。公式サイト
- 外務省外交史料館 - 1971年設立。公式サイト
- 国文学研究資料館アーカイブズ - 1951年設立。公式サイト
- 宮内庁書陵部 - 1869年設立。公式サイト
都道府県公文書館
- 北海道立文書館 - 1985年設立。公式サイト
- 秋田県公文書館- 1993年設立。公式サイト
- 宮城県公文書館– 2001年設立。公式サイト
- 福島県歴史資料館 - 1970年設立。公式サイト
- 茨城県立歴史館 - 1973年設立。(博物館としての機能も有している)公式サイト
- 栃木県立文書館- 1986年設立。公式サイト
- 群馬県立文書館 - 1982年設立。公式サイト
- 埼玉県立文書館 - 1975年設立。公式サイト
- 千葉県文書館 - 1988年設立。公式サイト
- 東京都公文書館 - 1968年設立。公式サイト
- 神奈川県立公文書館 - 1993年設立。公式サイト
- 新潟県立文書館 - 1992年設立。公式サイト
- 富山県公文書館 – 1987年設立。公式サイト
- 福井県文書館- 2003年設立。 公式サイト
- 長野県立歴史館 - 1994年設立。公式サイト
- 岐阜県歴史資料館 - 1977年設立。公式サイト
- 愛知県公文書館 - 1986年設立。公式サイト
- 三重県総合博物館 - 2014年設立。(博物館に併設)公式サイト
- 滋賀県県政史料室 - 2008年設立。公式サイト
- 京都府立総合資料館 - 1963年設立。公式サイト
- 大阪府公文書館 - 1985年設立。公式サイト
- 兵庫県公館県政資料館 - 1985年設立。 公式サイト
- 奈良県立図書情報館 - 2005年設立。公式サイト
- 和歌山県立文書館 - 1993年設立。公式サイト
- 香川県立文書館 - 1994年設立。公式サイト
- 徳島県立文書館 - 1990年設立。公式サイト
- 鳥取県立公文書館 - 1990年設立。公式サイト
- 岡山県立記録資料館 - 2005年設立。公式サイト
- 広島県立文書館 - 1988年設立。公式サイト
- 山口県文書館 - 1959年設立。日本で最初の文書館。公式サイト
- 福岡共同公文書館 - 2012年設立。福岡市と北九州市を除く福岡県内全地方公共団体共同で設置・運営。公式サイト
- 大分県公文書館 - 1995年設立。公式サイト
- 宮崎県文書センター - 公式サイト
- 沖縄県公文書館 - 1995年設立。公式サイト
政令指定都市公文書館
- 川崎市公文書館 - 1984年設立。公式サイト
- 名古屋市市政資料館- 1989年設立。 建物は国の重要文化財。公式サイト
- 大阪市公文書館 - 1988年設立。公式サイト
- 神戸市文書館 - 1989年設立。公式サイト
- 広島市公文書館 - 1977年設立。公式サイト
- 北九州市立文書館 - 1989年設立。公式サイト
- 福岡市総合図書館 - 1996年設立。公式サイト
市区町村公文書館
- 栃木県小山市文書館 - 2007年設立 公式サイト
- 栃木県芳賀町総合情報館 - 2008年設立 公式サイト
- 埼玉県久喜市公文書館 - 1993年設立 公式サイト
- 埼玉県八潮市立資料館 - 1989年設立 公式サイト
- 東京都板橋区公文書館 - 2000年設立 公式サイト
- 神奈川県藤沢市文書館 - 1974年設立 公式サイト
- 神奈川県寒川文書館 - 2006年設立 公式サイト
- 静岡県静岡市公文書館 – 1994年設立
- 静岡県立中央図書館歴史文化情報センター - 公式サイト
- 静岡県磐田市歴史文書館 – 2008年設立
- 新潟県上越市公文書センター – 2005年設立、2011年改称 上越市公式サイト
- 新潟県長岡市立中央図書館文書資料室 - 1998年設立公式サイト
- 長野県松本市文書館 - 1998年設立 公式サイト
- 長野県長野市公文書館 - 2007年設立 公式サイト
- 滋賀県守山市公文書館 - 2000年設立
- 兵庫県尼崎市立地域研究史料館 - 1975年設立 公式サイト
- 山口県下関市文書館 - 1967年設立。下関市立長府図書館附属。公式サイト
- 香川県三豊市文書館 - 2010年設立。公式サイト
- 福岡県柳川古文書館 - 1985年設立。 公式サイト
- 熊本県天草アーカイブズ - 2002年設立。旧名 本渡市天草アーカイブズ 公式サイト
- 熊本県熊本市歴史文書資料室 - 2004年設立。公式サイト
- 佐賀県歴史的文書閲覧室 - 設立。公式サイト
- 沖縄県中頭郡北谷町公文書館 – 1992年設立 公式サイト
関連項目
参考文献
- 大濱徹也『アーカイブズへの眼』刀水書房ISBN978-4-88708-371-4
- 国立公文書館 関連リンク
- 歴史公文書探究サイト『ぶん蔵』
- 板橋区公文書館だより
- 平成15年度「公文書等の管理・移管・保存施策に関する研究について」
- 歴史資料としての重要な公文書等の適切な保存・利用等のための研究会(中間とりまとめ 平成15年7月)資料集