総理と呼ばないで
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テンプレート:基礎情報 テレビ番組 テンプレート:Sidebar with collapsible lists 『総理と呼ばないで』(そうりとよばないで)は、フジテレビで制作されたテレビドラマである。1997年4月8日から6月17日にかけて同系列局で放送された。英題「FAREWELL, MR. PREMIER」。
ストーリー
無能で性格も最悪で、支持率が1.8%まで低迷していた総理大臣は、次の官房長官を決めなければならない事態に直面していた。支持率が低いために、内閣不信任決議が提出されれば、可決されそうな危機にせまった。もともと予算を通すためだけの内閣で、解散総選挙に出ても敗北は明らかであり、下野は時間の問題であった。しかし、明白な落ち度がないため、野党から内閣不信任決議が出される口実がないままであった。総理大臣以下スタッフは何としてでも、汚点を出さないように奔走する。
概要
- コメディ中心に描かれているが、総理一家を中心にしたホームドラマ的要素、現代の政情を踏まえた政治ドラマ的な要素も盛り込まれている。
- 一部の脇役を除き、登場人物には固有名詞が出てこないというのも本ドラマの特徴のひとつである。下記で紹介してある登場人物はすべて肩書きのみで呼び合っている。
- 舞台となっている国は日本ではなくあくまで「架空の国」である。しかし、アメリカ大使と電話する際日本語が使えるか尋ねたり、憲法前文が日本国憲法前文と同一、政治体制が議院内閣制、首相による宮中への参内、徳川吉宗などの人物名、など日本国との共通点が多い。一方で、軍隊を保有、名誉国民賞の存在、などの違いも見受けられる。
- 脚本の三谷幸喜が「政治ドラマは当たらない」というジンクスを打破するために作った作品である。主演の田村正和と三谷とは、『古畑任三郎』以来のコンビとなった。また、田村が演じる上司に仕える部下を西村雅彦が演じるという点も『古畑』と共通している。ただし、本作では田村演じる上司が無能、西村演じる部下が有能という『古畑』とは逆の設定になっている。
- 放映前のテレビ雑誌によると当初は全12話放送予定であったが、1週早く第11話で終わっている。「視聴率の凋落が原因で、一話分打ち切られた」「三谷幸喜の脚本が遅れて放送が短縮された」とさまざまな説が流れているが、三谷自身は打ち切り説は否定している。ただし、シナリオの完成が遅れたのは事実であり、第1話放送時点ではシナリオは第3話までしか出来上がっていなかったという。
- 第1話の視聴率は22.6%と高視聴率であったが、第2話以降緩やかに数字を落としていき第7話では遂に1桁まで落ち込んだ。しかし、最終回では18.9%まで挽回している。このような視聴率推移は近年では稀である。
- アメリカの人気ドラマである『ザ・ホワイトハウス』としばしば比較されるが、同作品は1999年より放送が始まった作品(日本では2002年より)であり、『総理と呼ばないで』のほうが先に作成された作品である。
- 1997年11月19日に全4巻でVHS化以降、DVD化が実現していなかったが、2010年10月6日にポニーキャニオンよりDVD-BOXが発売された。
出演
- 内閣総理大臣 - 田村正和
- 史上最悪の内閣総理大臣。支持率は5パーセントを下回り、最終的に0.05パーセントまで落ちる。疑獄事件で総理候補が根こそぎ失脚した後だったため、汚職に無縁という理由(企業に相手にされていなかった)だけで総理大臣に選ばれた。総理大臣としての目標は「総理大臣就任最短期間記録を超すこと」。父親も国会議員であり、世襲議員である。
- 政治家としても人間としても無能で、家族や部下含め全国民から嫌われている。性格は我侭・気まぐれ・意地っ張りで、あらゆる面でスケールが小さい。しかし、各回では総理の素直さや、家族や部下を気遣う面が描かれているように、悪人ではなく、成長を見せる場面もある。
- 内閣官房長官 - 筒井道隆
- 政治学を勉強する20代の大学院生。家庭教師アルバイトの口を捜す掲示板を首席秘書官が見かけたことをきっかけに総理の娘の家庭教師として依頼される。家庭教師の面接のために官邸を訪問した際、話題性のために成り行きで現役大学院生にも関わらず官房長官に就任させられる。根っからの政治家でないため政界の人間には浮かばない考え方が出来るが、言動は青臭く不正を嫌い正論を吐くために、官邸スタッフから基本的に煙たがられることが多く、最終的には持論を曲げなかったために官房長官を罷免される。
- 副総理 - 藤村俊二
- 昼間はほとんど眠っているが、夜になると活発に仕事に取り組む。好々爺とした人物で、誰に対しても穏やかな態度で接している。総理の信頼が厚く、彼も副総理に対しては敬語で接している。不人気内閣で人手不足のため外務大臣と農林水産大臣も兼務しているが基本的に副総理と呼ばれており、本人も兼任していることを忘れてしまっていることさえある。老齢のため、副総理就任前は引退も考えていたが、総理が彼に最後に一花咲かせてやろうと思ったことから登用される。「ぼんくら副総理」を自認しているが、「人を見る目だけは確か」らしい(本人談)。普段は呑気で失敗をすることもあるが、総理や官房長官には時々助言をし、それが重要なアドバイスになることもある。総理が不在の際には内閣の面々を統率する場面も見られる。総理と同郷で、総理のことは彼の父親が現役時代から知っている。
- 首席補佐官 - 小林勝也
- 総理の元秘書。強面で声が大きい。補佐官が正式なポストではないため、官邸での居場所がない。総理の父親の代から秘書として仕えており、総理令嬢のことも小さい頃からよく知っている。総理にとても忠実で、彼のことはどこまでも支持する男だが、結果的に総理が退陣に追い込まれるきっかけを作った張本人となってしまう。
- 内閣官房事務副長官 - 仲本工事
- 全国官僚のトップ。冷静で冷徹な判断、提案をするものの、結局は総理や取り巻きのペースに乗せられてしまうことが多々ある。聞かれた質問に対しては常に正確なデータを返してくる。自分たち官僚が国を動かしているという自負がある一方、そのことに少し懐疑的な考えも持っている。
- 内閣官房政務副長官 - 田山涼成
- 良いのは視力だけという無能副長官(右目2.0、左目2.3)。副長官である自分を差し置いてポストに就いた官房長官のことを快く思っていない。支持率が0.05パーセントまで下がったとき、その支持率調査に街頭でたまたま遭遇し、「総理を支持する」と答えた唯一の人物。官房長官に昇格するのが夢。官房長官の罷免により、数日だけ官房長官の椅子を手に入れるも、官房長官の肩書き入りの名刺ができた当日、内閣総辞職が確実になる。子供が3人いる。
- 内閣官房首席参事官 - 青柳文太郎
- 内閣官房の事務的な仕事を担う参事官。青年官房長官には従順で優しく接する。汗かきで常にハンカチで顔を拭っている。官房長官が罷免され官邸を去る際、「内閣官房」の文字が彫られた筆記用具一式を記念にプレゼントする気配りを見せた。
秘書官
- 首席秘書官 - 西村雅彦
- 現内閣を支える首相秘書官。非常に有能で、この内閣は自分と官邸事務所秘書係主任だけでもっていると自認している。総理の失態のカバーと支持率のアップに奔走し、周囲には事の大小を問わず頼られ的確に指示をする。総理夫人に淡い恋心を抱く。総理の推薦により、新総理の下でも首席秘書官を務めることになる。
- 官邸事務所秘書係主任 - 戸田恵子
- 首席秘書官と共に内閣を支える。総理夫人の学生時代の先輩で、彼女に対して憎まれ口をよく叩くが、総理一家には忠実。首席秘書官に想いを抱くようになる。昔、児童劇団に所属していた。語学堪能で通訳を担当する。
- 事務秘書官 - 郷田ほづみ
- 一応官邸のメンバーではあるが、大蔵省からの出向なので総理のことなどどうでも良いと考えている。そのため総理と官房長官に対しては度々陰口と嫌味を言っており、官房長官のことは「正論坊や」と呼んでいる。記者の知り合いがおり報道・通信関係の業務をこなす。国会での証人喚問を控える総理に答弁をレクチャーする際、総理を追及する野党議員役を務め、迫力のある追及ぶりを副総理に賞賛された。
- 事務員 - 相沢友子
- 大人しめの女性事務員。職務には忠実だが、内閣の行く末には匙を投げている。
家族・使用人
- 総理夫人 - 鈴木保奈美
- わがままな史上最悪のファーストレディ。秘書係主任の学生時代の後輩。オヤジ好きである。自由奔放に周囲を振り回しながらも、実際は総理夫人という立場ゆえの寂しさを味わっている。総理とは1ヶ月間口を利かなかったこともあり、日常的にお互い直接口をきくことを避けようとする。間男と不倫し家出したが、問題が解決した後は夫婦関係は大分改善された。
- 総理令嬢 - 佐藤藍子
- 浪人生。総理とその前妻との間に生まれ、総理夫人との血縁はない。快活な性格で、総理家族の中では一番の常識人。総理との仲は良い。来年成人式を迎える。女優を志しており、劇団へろへろ共和国に所属し練習に打ち込むが、総理は快く思っていない。
- メイド - 鶴田真由
- 人手不足の中、使用人頭がやっとのことで見つけてきたメイド。官邸使用人頭の「妹の連れ合いの母親の友達のお嬢さんの幼馴染」にあたるらしい。天然でおっとりした性格で、よくお皿を割ってしまうなど失敗が多い。総理に気に入られており、よくセクハラを受けそうになるが彼女は総理のことを嫌っている。一度、家出をした総理夫人の代わりに彼女に成りすまして外国大使夫妻の相手をした際には、その天真爛漫さが相手に大変気に入られ外交関係の改善に貢献した。
- 官邸使用人頭 - 小松政夫
- 丁寧な口調で喋る。総理の事はあまり好きではない。使用人達を統率しており、総理一家のこともよく理解している。総理に意見を求められたときは「私には分かりかねます、総理」と答えることにしている。昔、バンドをやっていた関係で総理にマラカスを教えた。
- 賄いさん - 松金よね子
- 傍観者的立場だが、詮索好き。よく愚痴をこぼしている。相手がだれであっても、たとえ総理に対しても遠慮なしに強気で怒る。厚化粧であり、頬紅が濃いと何度か指摘されている。昔、ガールスカウトで団長をやっていた。得意料理はサツマイモの天ぷら。
- 世話人 - 篠井英介
- オカマっぽい総理のスタイリスト兼一家の世話役。総理家族とは付き合いも長いが、よくいいように使われてしまう。しかし、総理一家との仲は良く、夫妻とカラオケで楽しんだこともある。総理一家のことを大切に思っている。飛行機に乗るのが苦手。
その他
- 画伯 - 小林隆
- 総理の肖像画を描いている画家。ここ10年、歴代の総理の肖像画は彼が描いている。何度も絵を破き、なかなか完成しない。肖像画は鼻から描く主義。
- SPキャップ - 二瓶正也
- 今まで8人の総理に仕えてきた。総理のことは嫌いだが、職務には忠実。総理と、総理一家を守るためによく駆け回っている。孫がいる。総理の退陣とともに退職した。
- 国対委員長 - 佐々木勝彦
- 国民の人気が高いことから総理から官房長官の後任を要請されたが、支持率が消費税の数値以下を理由に内閣不信任可決前に総辞職すべきと主張して拒否する。
- 前官房長官 - 森富士夫
- 暴漢に総理夫人が襲われたのを庇ったために怪我をして入院し、官房長官を辞任。怪我は大したことなかったが、直に沈む内閣に巻き込まれないように入院を長引かせ逃げた。
- 冒険家 - 内藤剛志
- たらい(ラフレシア号)で太平洋を横断し、総理が名誉国民賞を送ろうとするが、途中漁船に引っ張ってもらっていたことが発覚し、窮地に立たされる。最終的に名誉国民賞を辞退した。
- 劇団へろへろ共和国座長 - 小原雅人
- 総理令嬢の恋人。顔やスタイルはいいが非常に独特の口調と考え方の持ち主で、話す人間を次々と嫌な気持ちにさせてしまう。総理から「娘に手を出したら殺すぞ」と脅された。
- 間男 - 風間杜夫
- 総理夫人の不倫相手。しかし相手が総理夫人ということは知らず、ただの金を持っていそうな有閑マダムと思って近づいた。俳句が趣味。ビジネスで失敗した友人を救うためという名目で総理夫人に間接的に金を要求した。不倫がばれた際には、内閣の面々に散々脅され、総理に念書を書かされる。
- 新総理 - 唐沢寿明
- 総理大臣の後任として30代の若さで就任した、新内閣の若きリーダー。前総理のことを軽蔑している。国を変える理想に燃え、なにかやってくれそうな何かを感じさせる。官邸の秘書官室に10台のファックスを設置する「ファックス目安箱」の構想を得意げに披露するが、既に罷免され、引き継ぎのために官邸を訪れていた前官房長官に「それ、みんなやってるんですよね」と水を差される。
スタッフ
- 企画 : 石原隆、小川泰
- プロデューサー : 関口静夫
- 脚本 : 三谷幸喜
- 演出 : 鈴木雅之、河野圭太、平野眞
- 音楽 : 服部隆之
- 撮影 : 川田正幸
- 演出補 : 宇田川尚良、谷口和彦
- 記録 : 奥康代、山本明美
サブタイトル
各話 | 放送日 | サブタイトル | 視聴率 | 演出 | |
---|---|---|---|---|---|
第1話 | 1997年4月8日 | 史上最低の男 | 22.6% | 鈴木雅之 | |
第2話 | 1997年4月15日 | 陰気なパーティー | 20.8% | 河野圭太 | |
第3話 | 1997年4月22日 | カニを食う男 | 14.3% | 鈴木雅之 | |
第4話 | 1997年4月29日 | ヘルメットの首相 | 14.2% | 河野圭太 | |
第5話 | 1997年5月6日 | うそつき | 12.0% | 平野眞 | |
第6話 | 1997年5月13日 | 総理夫人の恋人 | 11.0% | 鈴木雅之 | |
第7話 | 1997年5月20日 | 愛と哀しみの果て | 9.3% | 河野圭太 | |
第8話 | 1997年5月27日 | カラオケの総理 | 10.7% | 平野眞 | |
第9話 | 1997年6月3日 | 罠にはまった総理 | 10.4% | 鈴木雅之 | |
第10話 | 1997年6月10日 | 総辞職 | 13.8% | 河野圭太 | |
最終話 | 1997年6月17日 | 君たちを忘れない | 18.9% | 鈴木雅之 | |
平均視聴率14.4%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ) |
その他
- 総理は総理大臣在任最短期間記録の54日を更新しないことを目標にしているが、現実世界の総理大臣在任最短期間記録も東久邇宮稔彦王の54日である。
- 20代の官房長官が誕生するが、実際の戦後の最年少閣僚は放映時点(1997年4月)では船田元経済企画庁長官の39歳。その後1998年8月に野田聖子郵政大臣(37歳)、2008年9月に小渕優子少子化対策担当大臣(34歳)と更新されている。
- 現職首相の証人喚問の場面があるが、放映当時は議院証言法で静止画での放送しか出来ず、このドラマでもそれを模し静止画の証人喚問になっている。現実世界で現職首相が証人喚問された例として、1948年7月6日に芦田均が、1948年12月12日に吉田茂が喚問された例がある。
- 当ドラマでは総理のイメージキャラクターを作る案が官房長官によって提案されたが、周りのスタッフは冷ややかな目で見ていた。しかし2001年に現実世界で小泉純一郎が総理になった時、総理のイメージキャラクターが作られた。
- 同様に官房長官が「FAX目安箱」を提案しているが、首相官邸直通のFAXは1994年に羽田内閣で設置されている。ドラマでは、官房長官が提案をするも「歴代の内閣も設置したが、長続きもしないし意味もない」として一蹴されてしまう。最終話で官邸入りした新総理も同じことを提案するが、既に罷免されていた前官房長官から「それ、みんなやってるんですよ」と逆に一蹴される。
- スカンジナビア四国の一つと称しノルウェー海に浮かぶ島国ドレスカデン王国が登場するが、実在しない。筋金入りの社会主義国フリドニア、メイドと仲の良い大使夫人の国スモジランド王国も、共に架空国である。劇中に登場する実在国はアメリカとスペインである。またドレスカデン王国は、『古畑任三郎』の「すべて閣下の仕業」で黛大使に勲章を授与した国として登場する。
- 劇中に古畑任三郎第一シリーズのエピソード「殺人公開放送」のBGMが一部使用された。他にCX系ドラマ「HERO」でも使用されている。
- 声優・舞台女優として長く活動してきた戸田恵子の連続ドラマデビュー作でもある。その後、戸田は数多くのドラマにレギュラー格で出演し続けている[1]。