PS2 Linux

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テンプレート:Infobox OS PS2 Linux(ピーエスツー・リナックス)は、PlayStation 2上で動作するLinuxディストリビューション。現在は販売が停止されている。

発売に至った経緯

もともと、PS2の開発環境はLinuxベースであることが知られており(ただし、開発機材に接続されるPCがLinuxベースであるというだけで、よく誤解されていたようにPS2でLinuxが動いていたわけではない)、「SCEIはLinuxに積極的なようだ」「PS2でもLinuxが動くのではないか」という期待が一部で高まっていた。

そのような状況で、SCEIの久夛良木健社長が、日本Linux協会の生越昌己会長に対し「(PS2で動くLinuxは)出そうと思えば明日にも出せる」と発言したことから、ネット上で「PlayStation2で動作するLinuxの発売を求める署名運動」が開始された。2001年3月4日のことである。

これを受け、同年4月26日SCEIからPS2 Linuxの発売が公式に発表された。5月9日にベータ版の予約注文の受付が始まり、7月ごろ発送された。後に、2002年1月30日に正式版(Release 1.0)が発表された。

沿革

  • 2001年
    • 4月26日 - SCEIからPS2 Linuxを発売することが公式に発表された。
    • 5月9日、午後2時 - ベータ版の予約注文の受付。予約注文が殺到したため、わずか8分で予定台数である2000セットに達し、約3500セット分のキャンセル待ち状態が発生した。
    • 5月19日 - 7000セットを追加生産することが発表された。最終的に、この初期版は合計で約7900セット出荷された。
  • 2002年
    • 1月30日 - 正式版(Release 1.0)が発表
    • 2月13日 - 正式版の受注開始。

内容

ハードウェア

PS2 Linuxはソフトウェア媒体だけではなく、HDDユニット、イーサネットアダプタ、USBキーボード、マウス、VGAケーブルとセットで販売された。 後日、正式版が販売された時点でベータ版購入者には媒体のみの販売が行われた。

キーボード、マウス

後に純正周辺機器として販売された物と同一品である。

一部のPS2ゲームソフトとは異なり、Linuxは専用品であるか否かのチェックを行わないので、CPU切り替え機等に接続する等の運用も可能である。

VGAケーブル

VGAケーブルより出力される信号は、同期信号を専用の信号線に出力する一般的なタイプではなく、緑色の画像信号に重畳させて出力するSync on Greenという方式を取っている。 このため、対応できるディスプレイが限られ、ユーザを悩ますこととなった。

なお、プログレッシブ出力(480P)に対応する一部のPS2ゲームソフトもVGA出力に対応しているが、VGAケーブルは純正品としては発売されていないため、ある意味貴重なケーブルである。

HDDユニット、イーサネットアダプタ

添付されているHDDユニットとイーサネットアダプタは、後に発売されたHDDユニットやPlayStation BB Unitと全く同一であるが、HDDユニットに添付されているハードディスク設定ユーティリティや、BB Unitに添付されているPlayStation BB Navigatorは添付されていない。 しかし、後にBB Unitのユーザー向けにBB Navigatorのバージョンアップディスクが実費で提供されたため、これを利用することでBB Unitと同等の環境を構築することが可能である。

また、HDD対応ゲームソフトとの共存は保証されていないが、ベータ版でps2fdiskを用いてパーティションを設定すると各種のHDD対応ゲームソフトと共存できることが確認されている。

ソフトウェア

Kondara MNU/Linuxベースのディストリビューションである。 一般的なRPMベースのディストリビューションの持つソフトウェアの他に、PlayStation 2のCPUや機能に関するドキュメントおよびツールを含んでいる。また、sdrやmgeditなどのKondara由来のツールも入っている。

ブートプロセス

インストール時にPlayStation 2標準オプション品であるメモリーカードをフォーマットし、そこにLinuxカーネルを入れることとなる。 PS2 Linux Kit付属のDVD-ROMとこのメモリーカードを挿入し、電源を入れると DVD-ROM から "Runtime Environment" なるプログラムが起動する。ここからメモリーカード上のカーネルを読み込み、起動する。

逆に言えばDVD-ROMIPLとしてのみ使用されている訳であり、PARでPS2を起動し、該当部分のみを焼いたCD-Rに入れ替え、起動することも可能である。

一瞬のブーム

発売前後、PS2 Linuxはブームとなり、Linux Magazine誌にPS2 Linuxプログラミングの連載が組まれるまでに至った。 しかし、リリース後実際に使っていく上で、以下のようなさまざまな難点が判明した。

  • Linux Magazine誌の連載によって、PlayStation 2の性能を生かしたプログラミングの技術が非常に難しいものであることが明らかとなった。
  • PS2 LinuxからはDVD-ROMドライブやメモリーカードのデータを読み書きできないようになっていた。
  • ゲーム向けの機能を利用しない単なるLinuxマシンとしてのPS2は、300MHzのMIPSプロセッサに32MBのRDRAMという貧弱な性能にすぎなかった。
  • バイナリパッケージも不十分であったため、何かソフトをインストールしようとすると、毎回苦労してセルフコンパイルするか、PCで環境を整えてクロスコンパイルする必要があった。
  • PS2の演算性能に期待して科学技術計算用途を考えていた者もいたが、ハードウェアでは単精度浮動小数しかサポートしていないため、およそ実用的ではなかった。

このためPS2 Linuxユーザーコミュニティの活発さは急速に衰えていった。 結局、PS2 Linuxは試験的に数千本を提供したのみで販売停止されている。

なお、PlayStation BB NavigatorはPS2 Linuxと同様にLinuxで動作していることが確認されており、PS2 LinuxはBB Navigator開発の副産物であったと考えられる。 冒頭の「明日にも出せる」発言も、そのような経緯の中で出てきたものとみられる。

外部リンク

テンプレート:家庭用ゲーム機/ソニー