LightWave
LightWave 3D(ライトウェーブスリーディー)は、米NewTek社が開発及び販売を行う3DCGソフトウェア。略称はLW。日本においてもCM・アニメ・ゲームの制作に頻繁に使用されている。比較的安価なため、趣味で使用する個人ユーザー[1]も多い。日本ではディストームが販売している。2014年01月現在の最新バージョンは11.6。
目次
インタフェース
モデリングからアニメーションまで制作できる統合型の3DCGソフト。モデリング・テクスチャを設定する「モデラー」と、モデリングしたデータを配置し、アニメーションを設定しレンダリングする「レイアウト」という2つのソフトから構成されているのが特徴である。当時のAmigaではモデラーとレイアウト両方の機能を備えた単一のソフトウェアではコード量が肥大しメモリを圧迫してしまうため、2つの独立したソフトウェアとして製作したことが、事の発端であると思われる。
モデラーとレイアウトが分離していることで、他社3DCGソフトと較べ動作が軽く高性能のPCでなくとも動作するメリットがある。また、どれだけ作業工程が進んでもモデルを変更、修正することができるという特徴があり、この分離構造を支持するユーザーも多い。その反面、分離されたソフト間のやりとりを嫌い、機能の統合を希望するユーザーの声も大きい。ただしバージョン6からはモデラーとレイアウトを自動で仲介するHUB機能が搭載された。この機能でやりとりの手間は軽減されたが動作が不安定な面もあり、HUB機能を使用していないユーザーも多い。
インタフェースの特徴としては各種機能にアクセスするためのボタンが全て文字で表現されており、アイコンは用いられていない。ボタンの配置とキーボードショートカット、メニューの色はユーザーが自由にカスタマイズすることが可能で、使用者によって様変わりする。座標系はXが左右、Yが上下、Zが奥行きを示す。また、右手座標系ではなく左手座標系が採用されている。回転系はHPB方式[2]が採用されており、その独特の回転系によりジンバルロック問題[3]を長年抱えている。マウスの他にタブレット、3Dマウスにも対応しているが、グローブインターフェイス、ヘッドマウントディスプレイ等には対応していない。バージョン11からはPlayStation Moveに対応。
今もって3DCGソフトにはPhotoshopのようなデファクトスタンダードが存在しないが、LightWave 5.5が世に出た頃は今にもまして混沌としており、大抵のソフトが「難解」「非直感的」と評される状態にあって「粘土をこねるように直感的にモデリングできる」と評された同ソフトが、他の3DCGソフトのインタフェースに与えた影響は大きい。
歴史
もともとはAmiga用のVideoToasterという動画編集用のハードウエアにバンドルされていた3D CG処理ソフトで、スチュアート・ファーガソンがモデラーを、アレン・ヘイスティングスがレイアウトを担当する形で開発された。バージョン4まではAmigaプラットフォームにのみ提供されていたが、コモドール社の倒産に伴いバージョン5ではWindows 95 / 98、Windows NT(x86版およびDEC Alpha版)、Macintosh、SGI IRIX、SparcStationなど多様なプラットフォームに提供。しかしその後はSGI IRIX版もバージョン6.5を最後に開発が打ち切られ、バージョン7以降はWindowsとMacintoshの2プラットフォームにのみ提供されている。
プレイステーションの市販開発キット「ネットやろうぜ!」にはバージョン4.0が付属していた。SonyのVAIOにLightWave 3D express for VAIOとしてバンドルされていた事もある。
バージョンごとの主な追加機能
- バージョン6
- ボーンウェイト、UVマップ、モーフマップ、頂点カラー、メタボール、スケルゴン[4]、スケマティックビュー、アニメーションチャンネルの独立[5]、複数アイテム同時アニメーション制御、ラジオシティレンダリング、サブパッチのレンダリング
- バージョン7
- 対称編集モード、サスカッチライト[6]、影の色の変更、中心点回転機能[7]、モーションパスの直接編集、スプレッドシート[8]、モーションミキサー[9]、操作座標系の切り替え[10]、パーティクルFX
- バージョン8
- テクスチャワイヤー表示、複数カメラを切り替えてのレンダリング、IKブースター[11]、OpenGL表示強化[12]、ドープトラック[13]、クロスシミュレーター、ソフトボディシミュレーター、剛体力学演算
- バージョン9
- エッジ編集機能、キャットマル・クラーク サブディビジョン[14]、ノード方式のマテリアル設定機能(ノードエディタ)、平行カメラ、UV投影カメラ、ファー編集(FiberFX)、IK/FKブレンディング、位置とスケールのIKコントロール、ジョイントボーン、ファイルのドラッグ&ドロップ対応[1][2]
- バージョン10
- ビューポートプレビューレンダリング(VPR)、3Dマウスである3Dconnexion製品ラインナップのサポート、Autodesk社ジオメトリキャッシュ用MDDのサポート
- バージョン11
- インスタンス[15]、フロッキング(群集システム)、フラクチャー(粉砕)、Bullt(剛体、柔体)物理演算、仮想スタジオツール、GoZ(Pixologic(r))サポート[16]、レンダーバッファの拡張、VPRの拡張(セルエッジ対応等)、Pythonスクリプト、FiberFXの拡張(ソリッド・ボリュームモード追加等)、ソフトウェアライセンス[17]、Adobe After Effectsのサポート、Genoma[18]、ローリングシャッター効果、輪郭線のノード編集、UVアンラップ、「メッシュの配置」ツール[19]
- バージョン11.6
- カラー3Dプリント対応、レイキャストノード、スプラインコントロール、CgFXシェーダー、新カラーピッカー[3]
他3DCGソフトとの比較
他社製ソフトのMaya、3ds Max、Softimageではハイエンドなレンダラーmental rayを導入しているが、LightWaveはmental rayを未だに導入しておらず、3ds MaxにおけるV-Ray、Brazilのようなサードパーティープラグインの対応数が少ない。LightWaveは標準でラジオシティが扱え、高速なレンダリングであったが、他社ソフトに高性能なレンダラーが搭載されたためにアドバンテージは過去のものとなっている。(version9.6にてラジオシティは大幅に改良され、高速化された)
Ver11以前では群集シミュレーション機能が存在していなかったが、Ver11.0にてフロッキング(群集)シミュレーターが実装され、動物、魚、昆虫などの群れ、更には飛行機や宇宙船の集団といった、通常複雑かつ膨大なデータ量を必要とするシーンを簡単に作成することができるようになった。Ver11.5からは簡単なAIが実装された。
他3DCGソフトに比べ弱い点も存在するが、プロの使用にも耐える3DCGソフトの中では随一のコストパフォーマンスを誇り、現在でも一定のシェアを保っている。
プラグイン
当初から非常に先進的なプラグイン・アーキテクチャを採用しており、ソフトウェア本体は単なるプラグインサーバに過ぎず、基本的なコア機能もプラグイン機構を通じて実装されている。
またその仕様もオープンにされていたため、大量のサードパーティー製・個人製プラグインが製作された。プラグイン・アーキテクチャの利点のひとつはそのフットワークの軽さであり、3DCGの先進のトピックが、他の高額なハイエンドソフトウェアを差し置いていち早くLightWave上で実現されることさえあった。そして標準の機能の不便さを、開発元の対応を待たずに私製プラグインで補うことも盛んに行われ、その成果はたびたび広く公開された。
また、市販のCコンパイラ等で構築するプラグイン機構の他にも、独自のスクリプトであり、C言語をベースとしたLScriptを備えている。 LScriptはインタプリタであり、プラグインとして用いることができる。その簡便性から、プラグイン構築のハードルを下げている。 Ver11からはPythonにも対応した。
現在でこそ、こうしたプラグイン機構は珍しいものではなく3DCGソフトなら備えていてしかるべきという感があるが、当時の同価格帯ソフトではプラグイン機構の採用を見合わせているものも多く、LightWaveがプロ・アマ問わず広く支持された背景には、こうした大量のプラグイン(とユーザーコミュニティー)の存在に負うところが大きい。
代表的なプラグイン
- unReal Xtreme:伝統的アニメのような質感を出せる、セルシェードレンダリングのためのプラグイン。
- Sasquatch:モデルに毛を生やすためのプラグイン。
- FPrime:LighwaveにはVIPERというマテリアル調整をする際に発生するレンダリング待ちの時間を減らす為のリアルタイムテストレンダラーがついているが、FPrimeというレンダリングの速いリアルタイムレンダラーがWorley Laboratoriesから発売され、マテリアルやライティングを調整する為のレンダリング待ちの無駄な時間が大幅に減り作業効率の向上に一役買っている。FPrimeではVIPERでは不可能であったラジオシティなどの高品質のレンダリングが可能である。(LWバージョン10からは類似の機能がVPRとしてLW本体に搭載された。)
- Automaton:3ds Maxにおけるcharacter studio のような人体アニメーション支援プラグイン。
注意事項
- LightWaveは不正コピー防止のためハードウェアキーであるドングルを採用している。ドングルを付けたままOSを再インストールするとドングルが故障する場合がある。Ver11.5からはドングル不要のソフトウェアライセンスが導入された。
著名人物・団体
- 青山敏之(有名なライトウェーバー。氏の作品群がLightWaveの名を日本に広めた)
- 北田清延(有名なライトウェーバー。青山敏之とのコンビで主にモデリングを担当した)
- 笹原和也(有名なライトウェーバー。LightWave関連の著書がある)
- 由水桂(有名なライトウェーバー。「リッジレーサー」のキャラクター「永瀬麗子」を産み出した)
- うもとゆーじ(有名なライトウェーバー)
- 羽田宗春(有名なライトウェーバー。LightWave関連の著書がある)
- 樋口 誠(有名なライトウェーバー。LightWave関連の著書がある)
- 佐野昌巳(LightWave関連の著書がある)
- 神風動画(アニメーションの製作にLightWaveを使用している)
- 赤松健(漫画家。背景などをLightWaveで作成している)
- 新海誠(アニメ作家。自主制作映画「ほしのこえ」にMac版LightWaveを使用している)
- 日本ファルコム(LightWaveを全面的に開発ラインに取り入れているゲーム製作会社)
- FREEDOM(日本のアニメーション映画。全編がLightWaveで製作されている)
- Battlestar Galactica(米国のテレビドラマ。LightWaveが使用されている)
関連項目
- 3次元コンピュータグラフィックス
- modo (LightWaveの初期開発スタッフを中心に開発されているソフト)
脚注
外部リンク
- LightWave 3D
- エヌジーシー ディ・ストーム(国内代理店)
- ↑ LightWaveのユーザーを俗にライトウェーバー(LightWaver)と呼ぶ。ただし、現在では完全に死語である。
- ↑ HPBは飛行機の回転軸を示す言葉で、Hはヘディング、Pはピッチ、Bはバンクを示し、それぞれ、垂直軸回転、水平軸回転、奥行き軸回転を示す。
- ↑ BはPの、PはHの子供という親子関係にある。その都合で例えばPが90度回転するとHとBの回転軸が同一となり、一つ回転軸が消失し、自由な回転が不能になる。
- ↑ モデラー上でのボーン作成機能。
- ↑ 移動、回転、拡大縮小のXYZ、HPBのキーフレーム分離。
- ↑ ファーレンダリングプラグインであるサスカッチの機能限定版。
- ↑ ボーン座標系を0°にリセットし、ジンバルロックを回避するための機能。
- ↑ キーフレームをトラック上で操作する機能。
- ↑ 複数モーションの掛け合わせや並び替えを行う機能。
- ↑ 親座標、ローカル座標、ワールド座標を切り替えて操作を行う。アニメーション補完は親座標のみ。
- ↑ FKをIKのように操作する機能。
- ↑ モデラーやレイアウト上のプレビューで透過表示や、GLSL表示がサポートされた(OpenGL 2.0対応のグラフィックスカードでピクセル単位ライティングなどが可能となる[4])。
- ↑ タイムスライダー上でキーフレーム編集。
- ↑ 5角形以上のポリゴンとエッジ対応のサブパッチ。
- ↑ オブジェクトの高速なクローン体制御機能
- ↑ GoZは、LightWaveで作成されたモデルデータをZBrushへ送り、ZBrush側でスカルプティングやテクスチャ処理を行い、テクスチャとノーマルマップの設定を施したまま、そのデータを自動的にLightWaveへと送り返した後、LightWaveでレンダリングする、といった一連のフローを可能にしてくれる、LightWaveとZBrush間でデータを円滑にやり取りするための機能
- ↑ 非ドングルアクティベート
- ↑ モデラーにて、様々なリギングのプリセットが同梱された、他システムとの高い互換性を誇る新しいリグシステム
- ↑ 「メッシュの配置」ツールは、背景レイヤーにあるオブジェクトを、前景レイヤーのメッシュへとスナッピングをきかせながらインタラクティブに追加する。この「メッシュ配置」ツールを利用することで、動物にトゲを加える、ロボットの腕にボルトを配置する、などといったメッシュサーフェイス上に他のオブジェクトを正確に追加することが可能になる。