麻酔銃

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麻酔銃(ますいじゅう、テンプレート:Lang-en-short)は、麻酔薬の入った注射筒やダート(矢)を空気圧で射出する空気銃の一種でライフル型のものと拳銃型のものがある。 捕獲銃(Capture gun)とも呼ぶ場合もある。

1950年コリン・アルバート・マードックが発明した。

主に中・大型の野生動物保護の際や、動物園で動物が逃げ出した場合などの捕獲用に、麻酔を打つ際に利用される。中国ではBBQ一901型麻醉枪や五连发麻醉枪などの対人用の麻酔銃が存在している。

使用する薬剤

使用する薬剤は厳密には麻酔薬ではなく不動化薬と呼び、麻酔銃に使用する薬品は麻酔作用のある物に限定はされない。

麻酔銃は投薬方法としては極めて乱暴であるため、使用できる麻酔薬は条件がかなり厳しくなる。

  • 投薬量が多少多くても安全である。
  • 呼吸抑制作用がほとんど無い。
  • 筋肉投与で薬効を発揮すること。
  • 短時間で効果を発揮する。

中に充填する麻酔薬には長年に渡ってケタミンが使用されてきたが、現在では麻薬指定により使用が困難になったため他の薬で代替するために、塩酸チレタミンと塩酸ゾラゼパムの混合薬などが検討されている。 あるいは、麻酔薬ではなく鎮静剤や筋弛緩剤などを使用することになる場合も考えられる。 ゾウ、ウシ、トラなどの大型動物の場合には人間には強すぎて使えないエトルフィンアセプロマジンの組み合わせを使う場合もある。

法規制

日本国内では、麻酔銃が飛翔体を飛ばす「銃」に該当するため銃砲刀剣類所持等取締法の規制対象となり、使用するためには銃砲所持許可が必要である。さらに現在ではケタミン使用のために麻薬研究者などの許可が必要となる。銃を扱える上に、麻酔薬の知識を持つ必要があるこれらの条件があるため、麻酔銃を使用できる立場にあるのは獣医師など特定の人に限られており、大型動物が暴れた場合、麻酔銃を使用できる人の到着に時間がかかる。そのため、大型動物が人を襲いかねない状況下では、通報で駆けつけた警察官の発砲による殺処分を迫られる事態が多発している。

なお日本では法律に基づく名称として「麻酔銃」を「遠隔接種用注射筒」と呼ぶ。概ね10~15メートルの有効射程を持ち、薬剤を詰めた飛翔体をライフル銃のような形状の筒から発射する。大型動物の診療を行う際には、事故を防ぐために必要となる装備であり、動物園に勤務している獣医師は麻酔銃を日頃から使用している。

対人用麻酔銃の研究

漫画ドラマなどのフィクションには、人間を麻酔銃で眠らせるシーンが登場することもあるが、実用化された対人用麻酔銃は欧米では(公式には)存在しない。
法令上の問題点としては軍用には麻酔銃が化学兵器として扱われ、ハーグ陸戦条約化学兵器禁止条約に違反するためである。また警察などの法執行機関では、人間に麻酔をかける行為が医療行為となるため、医師免許を持たない大多数の警察官などが使用することが出来ない。
さらには麻酔に関する資格を有する医師などであっても適正量の判断は難しい(相手の体格や体質による)ため、麻酔銃で人間を撃った結果、死亡したり障害を負わせるリスクが無視できないためである。
しかし、中国では対人用麻酔銃は実用化されており、法施行機関で使用されている(詳細は外部リンクの「BBQ一901型麻醉枪」を参照)。

ヨーロッパでも非殺傷兵器として、一部では研究が行われている[1]

脚注

  1. 非致死性兵器開発の前線

麻酔銃が登場する作品

外部リンク

関連項目

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