化学兵器禁止条約
テンプレート:条約 化学兵器禁止条約(かがくへいききんしじょうやく、Chemical Weapons Convention、CWC)は、1993年に署名され、1997年に発効した多国間条約である。正式名称は「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」である。
概要
化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用を全面的に禁止するとともに、すでに存在する化学兵器および化学兵器生産施設を条約発効ののち原則として10年以内にすべて廃棄すること、一定の設備を持つ化学産業施設に対する検証措置をおこなうこと等を定めている。また、既存化学兵器の処分に関連して、1925年1月1日以降に他国領域内に同意なく遺棄した化学兵器については、遺棄国に処分に必要な費用や技術の提供を義務付けている。 テンプレート:See 条約の発効にともない、オランダのハーグに化学兵器禁止機関(OPCW)が設置された。
戦争時における化学兵器の使用禁止は、すでに1925年のジュネーヴ議定書で謳われているが、開発・生産・貯蔵といった行為は禁止項目ではなく、そのために化学兵器の開発や生産が米国やソ連、日本などによっておこなわれていた。とくに第二次世界大戦後は、米ソの冷戦の激化にともない、大量の化学兵器が両国によって開発・生産・貯蔵される状態が続いた。
イラン・イラク戦争や湾岸戦争での化学兵器の使用あるいは使用の疑惑といった状況を背景にして、化学兵器の使用だけではなく、開発から生産、貯蔵までをも禁止するべきだとの国際世論が高まり、化学兵器禁止条約の署名に到った。
化学兵器禁止法規制物質一覧
毒性物質 | 原料物質 | |
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特定物質 | (1) O-アルキル=アルキルホスホノフルオリダート(O-アルキルのアルキル基がシクロアルキル基であるものを含み、O-アルキルのアルキル基の炭素数が10以下であり、かつ、アルキルホスホノフルオリダートのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。) | 1) アルキルホスホニルジフルオリド(アルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。) |
(2) O-アルキル=N・N-ジアルキル=ホスホルアミドシアニデート(O-アルキルのアルキル基がシクロアルキル基であるものを含み、O-アルキルのアルキル基の炭素数が10以下であり、かつ、N・N-ジアルキルのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。) | (2) O-アルキル=O-2-ジアルキルアミノエチル=アルキルホスホニット(O-アルキルのアルキル基がシクロアルキル基であるものを含み、O-アルキルのアルキル基の炭素数が10以下であり、かつ、O-2-ジアルキルアミノエチル及びアルキルホスホニットのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)並びにそのアルキル化塩類及びプロトン化塩類 | |
(3) O-アルキル=S-2-ジアルキルアミノエチル=アルキルホスホノチオラート(O-アルキルのアルキル基がシクロアルキル基であるものを含み、O-アルキルのアルキル基の炭素数が10以下であり、かつ、S-2-ジアルキルアミノエチル及びアルキルホスホノチオラートのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)並びにそのアルキル化塩類及びプロトン化塩類 | (3) O-2-ジアルキルアミノエチル=ヒドロゲン=アルキルホスホニット(O-2-ジアルキルアミノエチル及びアルキルホスホニットのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)並びにそのアルキル化塩類及びプロトン化塩類 | |
(4) S-2-ジアルキルアミノエチル=ヒドロゲン=アルキルホスホノチオラート(S-2-ジアルキルアミノエチル及びアルキルホスホノチオラートのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)並びにそのアルキル化塩類及びプロトン化塩類 | (4) O-イソプロピル=メチルホスホノクロリダート(別名クロロサリン) | |
(5) O-ピナコリル=メチルホスホノクロリデート(別名クロロソマン) | ||
(5) 2-クロロエチルクロロメチルスルフィド | ||
(6) ビス(2-クロロエチル)スルフィド(別名マスタードガス) | ||
(7) ビス(2-クロロエチルチオ)メタン | ||
(8) 1・2-ビス(2-クロロエチルチオ)エタン(別名セスキマスタード) | ||
(9) 1・3-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-プロパン | ||
(10) 1・4-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-ブタン | ||
(11) 1・5-ビス(2-クロロエチルチオ)-n-ペンタン | ||
(12) ビス(2-クロロエチルチオメチル)エーテル | ||
(13) ビス(2-クロロエチルチオエチル)エーテル(別名O-マスタード) | ||
(14) 2-クロロビニルジクロロアルシン(別名ルイサイト1) | ||
(15) ビス(2-クロロビニル)クロロアルシン(別名ルイサイト2) | ||
(16) トリス(2-クロロビニル)アルシン(別名ルイサイト3) | ||
(17) ビス(2-クロロエチル)エチルアミン(別名HN1) | ||
(18) ビス(2-クロロエチル)メチルアミン(別名HN2) | ||
(19) トリス(2-クロロエチル)アミン(別名HN3) | ||
(20) サキシトキシン | ||
(21) リシン | ||
第1種指定物質 | (1) O・O'-ジエチル=S-[2-ジエチルアミノ)エチル]=ホスホロチオラート(別名アミトン、VGガス)並びにそのアルキル化塩類及びプロトン化塩類 | (1) 炭素数が3以下である1のアルキル基との結合以外に炭素原子との結合のないりん原子を含む化合物であって、次に掲げるもの以外のもの。 イ 1の項の第3欄(1)から(4)まで及び第4欄に掲げる物質 |
(2) 1・1・3・3・3-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン(別名PFIB) |
2) N・N-ジアルキルホスホルアミジク=ジハリド(アルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。) | |
(3) 3-キヌクリジニル=ペンジラート(別名BZ) | (3) ジアルキル=N・N-ジアルキルホスホルアミデート(ジアルキル及びN・N-ジアルキルホスホルアミデートのアルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。) | |
(4) 三塩化ヒ素 | ||
(5) 2・2-ジフェニル-2-ヒドロキシ酢酸 | ||
(6) キヌクリジン-3-オール | ||
(7) N・N-ジアルキルアミノエチル-2-クロリド(アルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)及びそのプロトン化塩類 | ||
(8) N・N-ジアルキルアミノエタン-2-オール(アルキル基の炭素数が3以下であるものに限り、N・N-ジメチルアミノエタノール及びN・N-ジエチルアミノエタノールを除く。)及びそのプロトン化塩類 | ||
(9) N・N-ジアルキルアミノエタン-2-チオール(アルキル基の炭素数が3以下であるものに限る。)及びそのプロトン化塩類 | ||
(10) ビス(2-ヒドロキシエチル)スルフィド(別名チオジグリコール) | ||
(11) 3,3-ジメチルブタン-2-オール(別名ピナコリルアルコール) | ||
第2種指定物質 | (1) 二塩化カルボニル(別名ホスゲン) | (1) 塩化ホスホリル |
(2) 塩化シアン | (2) 三塩化リン | |
(3) シアン化水素 | (3) 五塩化リン | |
(4) トリクロロニトロメタン(別名クロロビクリン) | (4) 亜リン酸トリメチル | |
(5) 亜リン酸トリエチル | ||
(6) 亜リン酸ジメチル | ||
(7) 亜リン酸ジエチル | ||
(8) 一塩化硫黄 | ||
(9) 二塩化硫黄 | ||
(10) 塩化チオニル | ||
(11) エチルジエタノールアミン | ||
(12) メチルジエタノールアミン | ||
(13) トリエタノールアミン |
化学兵器かどうかの判断は、化学兵器禁止条約の表または上記に記載されているかどうかには必ずしも拠らない。日本は「赤剤(ジフェニルシアノアルシン、ジフェニルクロロアルシン)」および「緑剤(クロロアセトフェノン)」を、遺棄化学兵器として取り扱っている[1]。
例外
化学兵器禁止条約第2条9項の規定により、以下の目的については例外が認められている。
- 工業、農業、研究、医療又は製薬の目的その他の平和的目的
- 防護目的、すなわち毒性化学物質及び化学兵器に対する防護に直接関係する目的
- 化学兵器の使用に関連せず、かつ化学物質の毒性を戦争の方法として利用するものではない軍事的目的
- 国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的
警察などが暴徒鎮圧に催涙弾を使用しても条約違反にならないのはこの条項の「国内の暴動の鎮圧を含む法の執行のための目的」による物である。そのため、解釈によっては国内のテロリストなどに対して化学兵器を使用することは違法行為ではない。
一般的に非致死性の物についてのみ適用されるべきであるが、明確な規定は無い。実際にロシアでは無力化ガスと称するKOLOKOL-1の使用で129人の死者を出しているテンプレート:要出典。
その他
脚注
関連項目
外部リンク
- 化学兵器禁止条約(CWC)の概要(日本国外務省)
- 化学兵器禁止条約(CWC)締約国・署名国一覧(日本国外務省)