飛び級制度 (サッカー)
飛び級制度(とびきゅうせいど)とは、日本サッカー協会が地域リーグ以下のクラスに所属する社会人サッカークラブに対して、特別に上位リーグへの参加条件を緩和する制度のことである。特に、2003年度から実施されている、将来のJリーグ参戦を目標とするクラブに対して全国地域サッカーリーグ決勝大会への参加を優遇する制度のことを指すことが多い。この制度は正式には「Jリーグ加盟を標榜するクラブに対する優遇措置」という。この制度はJリーグのクラブチームが相当数(2012年の正会員が40クラブ=J1:18、J2:22)に達したため2011年度をもって終了した。
目次
概要
2003年度から実施されている飛び級制度(「Jリーグ加盟を標榜するクラブに対する優遇措置」)は、地域リーグ以下のクラスに所属しているチームで将来のJリーグ参戦を目指すものは、リーグ戦の成績に関らず地域リーグ決勝大会に出場でき、決勝リーグ2位以内に入った上で日本フットボールリーグ(以下、JFL)下位チームとの入れ替え戦にも勝てばJFL昇格が認められる、というものである。この飛び級制度の第1号は群馬県のザスパ草津である。当時関東社会人リーグ2部だったザスパにこの制度が適用され、地域リーグ決勝大会で優勝しJFL自動昇格を果たした。(この年はジヤトコサッカー部が休部したためこの大会で1位になったチームが自動的に2004年度のJFLに昇格できた)
ザスパは本来ならJFLに上がるためには関東2部優勝→翌年度関東1部優勝・地域リーグ決勝大会2位以内、という2年がかりの行程を辿らなければならなかったが、この飛び級制度の活用により、JFL昇格を1年短縮することができた。
その後しばらくはザスパ草津以外でこの制度適用が認められた例はなく、この間にどこのチームが申請したかどうかも公表されていなかった。
しかし2010年9月、神奈川県社会人サッカーリーグ1部所属のS.C.相模原がこの「Jリーグ加盟を標榜するクラブに対する優遇措置」の適用を認められた。ザスパ草津以来7年ぶり2例目の適用となった。相模原は同年度の地域リーグ決勝大会に出場が可能となり、勝ち抜けば地域リーグ(関東社会人リーグ1部・2部)を飛び越えてJFLに昇格できたが、1次ラウンドで敗退した(その後、関東2部リーグに昇格)。2011年度も、S.C.相模原に対して2度目の「Jリーグ加盟を標榜するクラブに対する優遇措置」が認められたが4位に終わった。
なお、この制度は同年度をもって廃止されるため、当ページの飛び級制度を利用したJリーグ昇格は結果的にザスパ草津の1クラブのみとなった。
- 優遇措置の適用ケース
年度 | クラブ名 | 当時の所属カテゴリ | 大会結果 |
---|---|---|---|
2003 | ザスパ草津 | 関東2部 | 優勝 |
2010 | S.C.相模原 | 神奈川県1部 | 1次ラウンド敗退 |
2011 | S.C.相模原 | 関東2部 | 4位 |
JFL・地域リーグ以下の社会人チームに対する飛び級・またはそれに準じる制度
また、この例に倣い、都道府県リーグレベルでも、所属クラブで実力が著しく上昇しているクラブに対し、例えばFC琉球のように、沖縄県3部から2部を経由しないで1部リーグに昇格を認めるという事例も出ている。これも広義には「飛び級」であるが、認定する権限があるのは日本サッカー協会ではなく各都道府県のサッカー協会である。
この他、以下の措置も飛び級制度と呼ぶ場合があるが、厳密にはカテゴリーを飛び越える意味の「飛び級」とは異なるものである。
新JFL初期のチーム拡張処置による推薦昇格制度
1999年度〜2001年度において、日本サッカー協会と全国社会人サッカー連盟が、全国地域リーグ決勝大会出場チームのうちJFL参戦を希望するチームのJFL昇格を認めた例がある。自動昇格枠(上位2位以内)に勝ち残れなくても、諸条件を満たしているか今後それを満たすことを条件として、JFLに昇格できるというものである。
この措置を生かして、NTT西日本熊本サッカー部、FC KYOKEN京都、SC鳥取、愛媛FCなどがJFLに昇格した。これはJFLが発足間もなかったため、チーム増が可能だったことによる一時的な措置である。2001年度にJFLは当初予定の最大参加枠である16チームに達したため、この措置は行われなくなった。
全国社会人サッカー選手権大会
2006年から全国社会人サッカー選手権大会(兼国民体育大会サッカー競技リハーサル)から地域リーグ決勝大会に出場できる制度が作られた。当初は同大会の優勝チームのみだったが、2008年から準優勝チーム(この年から3位決定戦を導入)、2012年からは3位チームにも出場権が与えられた(優遇制度による飛び級申請が廃止になったため)。各地域リーグで当該年度1位になっているかで地域リーグ決勝大会出場権を持っている場合や出場辞退するチームが出た場合は4位まで繰り下げて地域リーグ決勝大会出場権が与えられる。この制度により、地域リーグ2部以下所属のチームにも地域リーグ決勝大会出場のチャンスが与えられた。
以下の表は、地域リーグ2部以下所属のチームが全国社会人サッカー選手権大会で上位入賞し、地域リーグ決勝大会出場権を獲得した事例。
回 (年度) | クラブ名 | 当時の所属カテゴリ | 結果 |
---|---|---|---|
47 (2011) | 東京23FC | 東京都1部 | 優勝 |
49 (2013) | ジョイフル本田つくばFC | 茨城県1部 | 4位 |
この制度からJFLに昇格を果たせたのは2007年全社優勝(地域決勝3位)のMIOびわこ草津、2008年全社3位(地域決勝3位)のホンダロック、2009年優勝(全社・地域決勝とも)の松本山雅FC及び2009年全社2位(地域決勝3位)のツエーゲン金沢の4チーム(金沢はその後のJFL入替戦でFC刈谷を下しての昇格。他の3チームは自動昇格)。
このうち、松本山雅FCは2012年のJ2に昇格が決まったため、この全社の特権を利用したJリーグ昇格の第1号チームとなった。