電気機器の冷却方式
電気機器の冷却方式 (でんきききのれいきゃくほうしき) は、電力機器の損失による熱を放散する方式。
電力機器の正常な動作、寿命の延長のために重要なものである。
目次
風冷式
外部空気で直接冷却するもので、主に小型機器に用いられる。フィンなどで機器の放熱面積を大きくすることが多い。粉塵による放熱面の汚損・吸湿による絶縁体の絶縁耐力低下の対策が必要である。
気体冷却式
機器内部に封入された気体で冷却するもので、主に大型機器に用いられる。内部気体の冷却機構が必要である。
気体の種類
水素ガス
- 乾燥空気冷却との比較
- 風損・摩擦機械損が10%減少する。
- 表面熱伝達率・熱伝達率が大きく、機器の小型化が可能である。
- 不活性ガスであるため絶縁体の劣化が少ない。
- 大容量の電磁石同期発電機に使用されている。
乾燥空気
- 吸湿による絶縁体の絶縁耐力低下が防止できる。
- 粉塵による機器内部の汚損がほとんど無い。
- 絶縁耐力をSF6ガスと同一にするためには、内部圧力を高め圧力容器への収納が必要である。
- 中容量の電磁石同期発電機などに使用されている。
SF6(六フッ化硫黄)ガス
内部気体の冷却機構
- 冷凍機式
- 冷凍機で冷却した冷却媒体と熱交換することにより冷却するもの。
- インナークーラ冷却式
- 主熱交換器のほかに、特に温度上昇を防止したい部分の近くに別の熱交換器を設置し冷却するもの。
- 自冷式
- 熱交換器を外部空気の対流により冷却するもの。
- 風冷式
- 熱交換器をファンによる空気の流通により冷却するもの。
- 水冷式
- 水冷の熱交換器を使用するもの。
相変化冷却式
冷却器内部に封入された熱媒体の相変化で機器を冷却するもので、蒸発冷却・沸騰冷却とも言う。
ヒートレーン(自励振動式ヒートパイプ)
受熱部と放熱部との間を熱媒体を封入した一本の細管を何回も往復させた構造をしている。
受熱部で熱媒体が沸騰し、その気相の膨張により液相と気相が熱とともに放熱部へ移動する。放熱部で冷却されると、気相が収縮し冷却された液相が受熱部へ戻る。この自励振動により熱を輸送する。
一般のヒートパイプと比べ、放熱面の向きに制約が無く、熱媒体が少なくてすむ。
発熱密度の特に高い機器に用いられる。
ヒートパイプ
受熱部を下部、放熱部を上部にした、密閉容器中に熱媒体を封入したものである。途中は、沸騰した気体を通す中心部と凝縮した液体を通す外周部の2重構造になっている。熱媒体として、純水・PFCなどが用いられる。大型の静止機器に用いられる。
液冷却式
一般に、絶縁油が用いられる。絶縁油の管理が必要である。変圧器・電力用コンデンサなどに用いられる。
絶縁油の冷却方式
- 油入式
- 油の温度変化による自然対流を利用したものである。
- 自冷式
- 風冷式
- 水冷式
- 送油式
- 油をポンプで強制循環させるものである。
- 送油自冷式
- 送油風冷式
- 送油水冷式
絶縁油の劣化
変圧器の場合、負荷や周囲温度の変化により油の体積が変化し、空気がタンク内を出入りする。これを呼吸作用という。外部空気中の湿気や酸素により絶縁油が劣化し、不溶性スラッジの生成・絶縁耐力の低下が起こる。
絶縁油劣化防止方式
開放式
コンサベータと呼ばれる小タンクを本体タンク内上部に設けて、その中でシリカゲルなどの吸湿材入りの吸湿呼吸器を通じた呼吸作用を行わせる。
不活性ガス封入式
不活性ガスにより、外気との接触をなくすものである。
- 密閉式
- 圧力タンクを設けるものである。
- 浮動タンク式
- シール用油の入った、浮動タンクで体積変化を吸収するものである。
隔膜式
絶縁油と空気の間に隔膜を設けるものである。
- 袋型隔膜式
- 金属ベロー式
フレオン冷却
クレイ社のスーパーコンピュータ Cray-2 で取られた方式。CPUは高速動作・高密度実装のため高熱を発する。通常の冷却では不可能であった。そこで冷媒フレオンの中にCPUを浸けて、気化熱で冷却した。フレオンの気化熱量は大きく、電気絶縁体であったので選ばれた。そのかわり、メンテナンスのたび毎に、冷媒を抜かなければならず、メンテナンス性はよくない。