零行列
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数学において、零行列(ぜろぎょうれつ、れいぎょうれつ、zero matrix, null matrix)とは、その成分(要素)が全て 0 の行列。O あるいは 0 と記述されることが多い。
- <math>0 = \begin{pmatrix}
0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ 0 & 0 & 0 & \cdots & 0 \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 0 & 0 & 0 & \cdots & 0
\end{pmatrix}</math> また、下付き添字によって行列の型を明記することもある。
- <math> O_2 = O_{2,2} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix},
O_{2,3} = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} </math> 自明な線形変換である零作用素を表す行列であり、正方行列の場合には行列環の零元を与えている。
性質
以下、l, m, n は任意の自然数とする。
- m 行 n 列の零行列 O と m 行 n 列の任意の行列 A の和は A + O = O + A = A となり、差は A - O = A, O - A = -A となる。
- l 行 m 列の零行列 O と m 行 n 列の任意の行列 A の積 OA は、l 行 n 列の零行列となる。
- l 行 m 列の任意の行列 B と m 行 n 列の零行列 O の積 BO は、l 行 n 列の零行列となる。
これらのことから、n 次の正方行列全体のなす環を考えているとき、零行列はその零元になる。