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(かんな)は、木工用の工具の1種で、主として材木の表面をけずって加工する目的で使われる。(一般に台鉋を指す)

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大工道具

概要

日本では古代から建築部材の表面仕上げを行うために、槍鉋(やりがんな)が使われてきた。7世紀古墳時代の発掘品が発見された中では最古の例であるが、木材加工跡から、弥生時代にも存在した事が判明している。槍鉋は棒の先にの葉のような形の刃を付けた道具であり、中国にも存在しない日本固有の道具である。 中国では鉋の文字が唐の時代から使われ始めるが、これは現在の台鉋ではなく蜈蚣(むかで/ごこう)鉋子のことで、スクレーパーが複数枚並んだ鑢の様な道具である。

台鉋の起原は明確ではないが、A.D.79年に噴火で埋もれたポンペイから世界最古の台鉋が出土している。また世界各地で、鉋の台頭が無い様な(日本の押し鉋の様な)形のwedged adzが発見されている。 日本の鉋は、写真のように使用者が手前に引く際に木材がけずれるようになっているが、ヨーロッパ中国のものは逆に押した時に削れるようになっているものが多い。ただし、日本で鉋を引く様に統一されたのは江戸時代中頃の事であり、室町時代に中国から台鉋が入って入って来た当初は押して使っていたことが当時の絵図などから判明している。

現在では、建築用には電動式で構造も全く異なる回転刃で切削する備え付け式または可搬式の電動鉋が多用されている。可搬式の電動鉋は全て押して用いる様に設計されている。電動でないものは、主に最終仕上げや複雑な曲線の加工用に使われるが、日本にのみ電動式で手動鉋同様の固定刃で切削する超仕上げ鉋と言われるものがある。

通常は、材木の表面を平滑にするために使われるが、材木に溝を作るなど特殊な目的用の鉋も存在する。

台鉋

台鉋は四角形の木製の台(鉋台)の中に刃を組み込んだ鉋である。

明治時代以降、日本では図のような刃が2枚ある二枚鉋がヨーロッパの鉋から導入され、現代ではこちらのほうが主流である。

2枚の刃うち、下側の刃を「鉋身(鉋刃)」といい、上側の刃を「裏金」という。鉋身は鉋台に斜めに取り付けられており、刃の付いている側は僅かに鉋台から下側に出ており(この部分で木材を削る)、その反対側の部分は鉋台から上側に出ている(その上端の部分を「」という)。また、鉋台のうち、刃が組み込まれている側の端を「台頭」、反対側の端を「台尻」といい、加工材と接する部分を「下端」という。鉋身を出すには鉋身の頭(刃の反対側の部分)を叩いて出し、反対に引っ込めるには台頭(刃の取り付けられている側の鉋台の先端)を叩いて調整する。台には主にシラガシ、アカガシが用いられる。

日本の大工仕事では、台鉋の使い方一つで腕前の良し悪しが判断されることがある。名人級になると、1,000分の3mmの薄さに削ることもできる[1]。ただし、実際は鉋に求められる技量は薄削り以外にも多岐にわたるので、薄削りの名人が腕のいい職人であるとは限らない。

種類

平鉋(ひらがんな)

この鉋の分類上の名称は平鉋であるが、実際はそのように呼ばれる事は殆ど無く、単に鉋と呼ばれる。 鉋には二枚刃と、一枚刃の鉋があり、二枚刃の鉋は、逆目を止める為に明治時代に西洋鉋から移入された技術である。 一枚刃で逆目を止める為に刃口を調整するのは極めて高度な技術が要求されるが、二枚刃では簡単に逆目を止める事が可能である。 1寸4分~2寸までの幅の鉋が主で、寸八(1寸8分)の鉋が最も汎用性があるとされている。 また仕上げの段階に応じて、荒仕子鉋(荒らし上げ鉋、あらしこ)寸4~寸6迄、中仕子鉋(中仕上げ鉋、ちゅうしこ)寸8が多い、上仕子鉋(仕上げ鉋、じょうしこ)の三種類がある。

長台鉋(ながだいかんな)

「中仕上げ」にあたり、より真っ直ぐに仕上げるように長い台に刃が仕込まれている。また材料に特定の決まった角度を再現する為に、木口台・留台と言った治具とあわせて使われる事も多い。少し短めの中台鉋もある。

反り台鉋(そりだいかんな)

丸太や反った凹面や凸面を削るのに用いられる鉋で、工作物それぞれの曲線に対応する為に、作業者自ら古い鉋台を利用して自作する事が多い。 鉋台に対して、縦と横方向いずれかの二次曲面が削れる外丸、内丸と、三次曲面用の四方反、があり、内丸四方反は存在しない。 この鉋は材料と鉋台の接地面積が少なく、台の減りが極めて早いため、刃口に真鍮等の金属を用いる事も多い。 更に、そり台と際鉋の機能を併せ持ったかんなも存在する。

際鉋(きわかんな)

∟面の内側を削ったりするための鉋で、刃が左側面、右側面どちらか一方に付いており、際側の仕上げを重視するため、際部分の刃を尖らせて加工材に先に切れ込む様になっている。それぞれに大小がある。定規付のものもある。

導突鉋/木口鉋(どうつきかんな/こぐちかんな)

∟面の内側を削ったり、小口台と併用、又は単体で小口を削るための鉋で、刃が左側面、右側面どちらか一方に付いている。際鉋と似ているが普通の台鉋と似た刃を斜に仕込んでいる所に違いがあり、刃の傾斜が逆に成っていて、際が最後に切れる様に成っている。

五徳鉋(ごとくかんな)

この鉋1丁で平鉋、際鉋右・左、脇取右・左の5つの鉋の機能を持つ。しかし実際は平鉋として用いられる事は殆ど無い。

立鉋(たちがんな)/台直し鉋(だいなおしかんな)

主に鉋台を調整(台を直す)する小鉋で刃は台に対してほぼ直角に仕込んである。その他竹や黒檀と言った普通の鉋では加工しにくい素材の鉋がけにも用いられる。

底取り鉋(そことりかんな)/作理鉋(しゃくりかんな)

敷居や鴨居の類の凹の底面を仕上げる鉋で、∟面の内側などの仕上げ削り作業にも使いる。一般には刃巾、7分を多く使うが、5分~1寸2分位の巾ものもある。 一般的な底取り鉋は鉋屑が鉋台側面から排出される様に作られているが、大阪作理鉋は鉋屑が、普通の鉋同様上面から排出される。

脇取り鉋(わきとりかんな)

溝の側面を仕上げる鉋で底取り鉋とあわせてつかわれる。刃が左側面、右側面どちらか一方に付いており、それぞれに大小がある。

小穴突き鉋(こあなつきかんな)

細い溝を側面定規にスライドさせて作る鉋で、溝の幅に応じて1分~3分位までが良く用いられる。

面取り鉋(めんとりかんな)

糸面から大きな面までガイドによって正確に取れる鉋で、45°の角度で面取りする自由角面取り鉋が一般的であるが、外丸面、内丸面、几帳面、平几帳面、坊主面、銀杏面、自由猿面、剣先面、胡麻柄面、入子面、片紐面など、面の種類に応じた鉋を揃えなければ成らない鉋で、使用者自ら刃を面の形に加工したり、複数の刃を用いて複雑な面を取る鉋を自作する事もある。

飛行機鉋(ひこうきかんな)

組子や障子の桟等を数本まとめて同じ厚みに削る為の鉋で、平鉋の下端の両側に取りはずし可能な定規を付ける事と、材料の浮き上がり防止の為に刃口前方にバネで加工材を押さえつける機構が付く。

印籠鉋(いんろうかんな)

建具類の隣合う枠にそれぞれ凹凸を付け、隙間なく閉じた時に風雨を防ぐ機能を建具に持たせる為の鉋である。凹面を削る鉋(雌木用)と、凸面を削る鉋(雄木用)と、二つが一組になっている鉋で、定規が付属する。雄木用の刃には、二枚の刃を並べて仕込んだものもあり、また凹凸の形には台形や半丸など幾つかの形がある。

なぐり鉋(なぐりかんな)

際鉋の刃先と刃先部の台を丸くした形の鉋で、木材表面にチョウナではつった様な模様を付ける為の鉋である。

南京鉋(なんきんかんな)

主に椅子等の製品の曲線を仕上げる為の小鉋で、鉋左右に突き出た棒を持って操作する。また必要に応じて使用者が自作するとこが多い鉋でもある。 この鉋も台の減りが極めて早いため、刃口に真鍮等の金属を用いる事も多い。

隅突鉋(すみつきかんな)/押し鉋(おしかんな)

西洋鉋と同じく押して用いる鉋で、鉋身が台頭ぎりぎり若しくは台頭前端部に付いている事が特徴であり、普通の鉋では加工不可能な引き出しの内側隅の加工等に用いられる。洗い屋が多用する事で知られる。 底取り隅突鉋なども存在する。

逆刃鉋/返し刃鉋(さかばかんな/かえしばかんな)

堅木や唐木を加工する為に用いられる鉋で、刃の鎬面が上面を向く様に台に仕込まれており、切削角が60°以上ある。立鉋より大胆に堅木を削る事が可能である。 また立ち鉋の刃を逆に入れた返し刃立鉋も存在する。この形式の鉋は刃裏の先端まで台の背中馴染が接触しているため、切削時の刃先の振動が抑えられ刃先に負担がかかる堅木や唐木を通常の仕込みの鉋に比べて綺麗に削る事が出来る。三味線職人が多用することで知られている。

大鉋(おおかんな)

平鉋と同じ構造で、2寸から一尺程度迄の刃の幅の製品が多い。刃の幅が広いため鉋枕や、削りムラの無い仕上げが可能な鉋である。ただしこの鉋は調整や研ぎに普通の鉋以上の技術が要求される。 箱根寄木細工において寄せ木のスライスに用いられる事で有名。

ボード鉋(ぼーどかんな)

主に石膏ボードのサイズを調整する側合わせと言う作業や、面を取ったりするための鉋で、ネジを使った従来の鉋とは全く違う刃の固定方法が用いられている事が多く、さらにカッターナイフの刃を流用出来る構造のモノが多い。

デコラ鉋(でこらかんな)

主にメラミン樹脂で出来たデコラ(住友ベークライトの登録商標でもあり、通称でもある)と言う化粧板の端部を面取りするための鉋で、非常に硬く均質な材質を削るために、HSSの刃、下場のステンレス張り、一枚刃と言う特徴を持つモノが多い。

替刃式鉋(かえばしきかんな)

従来の鉋の刃先だけを交換出来る様に作られて居る鉋で研摩の手間を省く事が出来る。替刃は使い捨て又は再研摩可能な製品もある。鋼材は様々である。

こそげ/洗い屋小刀(あらいやこがたな)

洗い屋だけが用いる鉋で、台が無く、鉋身とそれに直接つながった持ち手だけの様なスクレーパーの様な構造である。上手く使えば鉋の様な切削が可能。

洋鉋(ようがんな)/西洋鉋(せいようかんな)

主に西洋で用いられる鉋で、押して用いる事と、下端が台頭から台尻まで完全な平面に調整される事が特徴の鉋である。近年ではそれに加え、鋳鉄製の鉋台と、螺子による鉋身や刃口の調整等が出来ような機構やハンドルなどを持つモノを指す事が多い。更に日本のカンナとは逆に進行方向から見て刃口が鉋の台の前方に位置していることが多い。世界最古の台鉋はポンペイから出土し、全鋳鉄製の台を持つ鉋は1960年代半ばにアメリカで、レオナルド・ベイリー(en)によって発明された。主に英語圏の国ではベイリーパターンの鉋が、ヨーロッパ地域では古典的は木製の鉋が広く用いられている。

大きく分けて、日本の鉋と同じ様に、鉋身の刃の鎬面を下に向けて鉋台に仕込むBENCH PLANEと、上に向けて仕込むBLOCK PLANEとがあり、前者は荒仕子から仕上げ、長台などに相当する。後者は前者に比べ仕込み勾配が寝ている事が多く、裏金が無い一枚刃であるが、刃口を調整する機構が有る場合逆目は止める事が出来る。BLOCKとは肉切り用の木口を用いたButcher Blockの事であり、その俎板表面の木口の繊維を潰す事無く削り取る事が出来る。又鎬面が上を向くため刃先角を使用者が鉋身を研摩する事で材質にあわせて25°〜60°位まで自由に変化させる事が出来、汎用作業に向く。

また西洋鉋は広葉樹の堅木を加工する事が多い事から、切削角が大きい物が多く、BENCH PLANEは45°〜55°BLOCK PLANEは32°〜50°の物が多い。切刃角は鉋の種類に関わらず25°をPrimary Bevelとし、研ぎを楽にする為に刃先端だけに30°程度のMicro Bevelで刃を付ける事が多い。かつて裏は完全な平面に研摩されていたが、近年は研摩の省力化の為に刃裏先端だけ1°未満のBack Bevelを付けて研摩する事が主流と成っており、砥石と鉋身の間に定規を挟むことからその研磨技術のことをRuler trickと言う。

日本に全く無い種類の鉋として、Scraping PlaneとRouter Plane、それに櫛刃、Ground Bladeと呼ばれる形式の鉋身などが上げられる。Scraping PlaneはScraper bladeを鉋台に仕込んだ物で、立鉋と似ているが刃先に意図的にBurnisherで作った鉤(バリ)を使って切削する鉋で、硬木を楽に削れ、かなり複雑な木目でも逆目が起きない。Router Planeは電動工具のRouterの基に成った鉋で、木に正確な深さの溝やへこみを付ける事が可能な鉋である。櫛刃は材料の大まかな平面を出す時や、逆目の板の荒仕上げ時に用いられる。Ground Bladeは刃先角度が90°の鉋身で切削角は100°以上となりスクレーパーの様な働きをする。

これらすべての洋鉋にはStanley Works社がそれぞれの機能や大きさに振り分けた番号が付いており、他社もそれに従った分類を行っている。

中国の鉋

中国の鉋は押して用いることと、日本の鉋と似た台に刃が仕込まれているが、進行方向から見て鉋身の後方左右に持ち手となる棒が装着されていることが特徴の鉋であり、西洋の木製鉋と同じように鉋身を木製の楔で固定して使用している事が多い。また、台湾や、朝鮮半島、東南アジア地域の国々はそれに準じた構造と使用法の鉋を用いている。これらの鉋は現在の日本では殆使われることが無い。押し使い用に作られている鉋ではあるが、実際の使用時には押して用いる事もあれば、引いて用いる事もある。

その他

  • 冷凍肉を削ったり、鰹節を削るなど、調理にも使われることがある。
  • バイオリンなどヴァイオリン属楽器の製作にも使用される。使用されるのはおもに小型の西洋鉋である。また、日本の三味線、琴等の楽器にも日本の鉋が用いられる。
  • 革細工の仕上げに使われるものや、細革鉋という日本独自の細革(ウェルト)を作る為の鉋もある。

これらは用途によって形状はさまざまである。

出典

  1. 建設通信新聞記事(2011年3月25日16面)


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