野外手術システム
テンプレート:Triple image stack 野外手術システム(やがいしゅじゅつシステム, テンプレート:Lang-en)は、陸上自衛隊後方支援連隊の衛生科に配備されている医療施設の無い場所での外科手術を行うことが出来るシステムである。合計10基を保有する。
コンテナに格納されており、通常は73式大型トラックに車載されて使用されるが、コンテナ部分を切り離すこともできる。災害支援やPKOでよく活用される。
国内においては、展開しても使用される機会がなかった。例えば東日本大震災では展開されたが、使用される機会はなかった。
2010年納入分より新型のものに切り替わりつつある。
特徴
現在の野外手術システムは1988年(昭和63年)に導入されたものである。車台は73式大型トラックをベースとしており、手術車、手術準備車、滅菌車、衛生補給車の4つの車両で1セットになっている。他に、システム維持のため電源装置が2セット、浄水装置が1セット、周術ユニットとして使う大型テントが数セット必要になる。実際に使用される際は、手術車と手術準備車の側面が通路で連接されて一つの部屋のようになる。衛生補給車には、実働の際に用いられる医療機器や薬剤等が搭載されている。
開胸、開腹、開頭の他、火炎放射器や爆発物による熱傷の処置等の高度な外科手術が可能で、システム全体で一日最大30人の手術に対応可能であるとされている。実際には、亜急性期以降の本格的な医療行為は、戦場から遠く離れた比較的安全な地域にある自衛隊病院その他の医療機関(国立病院機構等)で行われることから、野外手術システムで行われる手術は、あくまでも応急的なもので、急性期・超急性期における医療行為に徹することになる。
日本文化チャンネル桜が2010年に北部方面隊隷下師団の野外手術システムを取材したところによれば、周辺事態の際には、戦場近くに展開し、実動するとされる後方支援連隊の衛生部隊(師団収容所、野外病院など)に配置され、大量の負傷者が出た場合は手術前にトリアージの判定が行われる。
設備内容
- 手術車
- 電動手術台、X線撮影装置、無影灯(5灯式)、スポット灯、麻酔器、電気メス、患者監視装置
- 手術準備車
- 簡易血算器、血液ガス分析、血液迅速分析装置(生化学検査)、遠心分離機、双眼顕微鏡、X線フィルムの現像、手術用器材及び薬品の保管
- 滅菌車
- 手術用機材の滅菌・洗浄
- 衛生補給車
- 医薬品、血液、衛生用品の保管・補給
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必要とされる要員
- 手術要員 - 4名
- 手術準備要員 - 3名
人道支援復興活動による展開実績
おおすみ型輸送艦の病院船化
テンプレート:See also スマトラ島沖地震国際緊急援助隊派遣後の2005年6月、おおすみ型輸送艦「しもきた」の車両甲板上に野外手術システムを展開する技術試験を行った結果、複数の野外手術システムの展開が可能とされ、災害時におおすみ型輸送艦を病院船として活用することになった。なお、おおすみ型輸送艦の艦内にも医務室・手術室と数床の集中治療室があり、すでに自衛艦有数の医療機能を備えている。
しかしながら、この試験は「甲板上に仮設手術室が設置できる」事を実証したのみで、実際の運用にあたっては、患者の搬送、手術後の入院治療を維持する人員、莫大な量の医療資材と廃棄物の搬入・搬出などを艦内の限られたスペースでこなす必要がある。
大規模災害時におおすみ型輸送艦と野外手術システムを病院船として運用するためには、演習や自衛隊病院、艦内・駐屯地医務室では経験していないノウハウが必要と思われ、各自衛隊の医官・衛生隊の総力を挙げた取り組みが期待される。
2006年度以降、野外手術システムの電源を艦内から取るための艦内改装工事が行われ、2013年8月には、「しもきた」に陸上自衛隊の野外手術システム(コンテナ式医療モジュール5つ)を搭載し、災害派遣医療チーム(DMAT)やドクターヘリとも連携して、病院船(医療モジュール搭載船)の実証訓練が行われた[1][2]。