逆2乗の法則
逆2乗の法則(ぎゃくにじょうのほうそく)とは「物理量の定量的な値が、発生源からの距離の2乗に反比例する」という法則を総じて指したものである。我々のいる空間が3次元であり等方的であることと、この法則は密接に関連する。以下で述べる3つの法則がその代表例である。近代における物理学の形成時に発見されたこの3つの法則は、後の物理学の発達に大きな影響を与えた。物理学者は何らかの変化を認めたとき、その発生源と発生源との距離の2乗とに関連があるかどうかをまず確かめるようになった。
光の減衰の法則
最初に発見された逆2乗の法則は、ヨハネス・ケプラーが発見した、光の減衰の法則である。ケプラーは「光の強さが光源からの距離の2乗に反比例する」ことを証明した。証明の概要は次のとおり。
光源からの距離が一定である球面を想定する。光源から出た光は直進する(ユークリッドの光の直進の法則)ため、すべてがこの球面を通過する。つまりどんな直径の球面を想定しても、その球面を通過する光の量は等しい。一方で球の表面積は半径の2乗に比例するので、光の強さは光源からの距離の2乗に反比例する。
ケプラーの証明は正しかったが、光量を定量的に測定する方法がなかったため、当時は有効に利用されなかった。
万有引力の法則
ケプラーは、全方位に影響を与えるものはすべて逆2乗の法則が利用できると考えたが、太陽が惑星を動かす原動力は全方位ではなく同心円状に広がると考えた。これは観測の結果、惑星の軌道がほぼ同一平面状にあったためである(当時は彗星の軌道は計算されていなかった)。
ロバート・フックとアイザック・ニュートンはそれぞれ独自にケプラーの考え方を拡張し、「万有引力は全方位に影響を与え、その強さは距離の2乗に反比例する」と考えた。当時まだそれを計算するだけの数学が発達していなかったので、ニュートンは微分積分学も開発し、運動の第2法則を導いた。
クーロンの法則
3番目の逆2乗の法則は、クーロンの法則だった。当初この法則は「静電気力は距離の2乗に反比例する」という形態だった。シャルル・ド・クーロンは、磁力も距離の2乗に反比例することを示した。こちらは単極磁石が発見されないため現在は仮想的にしか使われないが、単極磁石の存在が否定されていないため、まだ有効ではある。