語幹

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語幹(ごかん)とは語形変化の基礎になる部分のこと。日本語では用言活用しない部分のことを言うが、形容詞形容動詞では独立性が強い。また、語幹に対して、末尾の活用する部分のことを活用語尾ということがある。

日本語膠着語であるため、語幹と活用語尾の区別が比較的しやすい。しかし印欧語屈折語の性格が強いため、語幹と活用語尾の区別が曖昧で、語幹の母音交替ウムラウトあるいはアプラウト)を伴うことがある。印欧語では動詞だけでなく名詞や形容詞についても格・性・数等の変化語尾を除いた部分を語幹という。

日本語においての語幹

語幹に関する考え方は言語学学校文法とでは大きく異なっている。学校文法においては仮名単位で分析されているため、語幹があるないといわれるが、ローマ字単位つまり音素によって分析すれば、語幹はかならず存在する。

動詞

学校文法において動詞には大多数のものに語幹が存在する。しかし、上一段活用の「見る」や、下一段活用の「経る」、カ行変格活用の「来る」、サ行変格活用の「する」などには語幹が存在しない。(上一段活用下一段活用では、活用しない部分が存在するが一般的にはこれを語幹とは言わず、活用形の一部として考える。)普通、動詞は語幹を漢字で表し、活用語尾をひらがなで書くが、例外もある。

形態論的には動詞は音素レベルまで分解して考えられ、動詞には子音語幹動詞と母音語幹動詞に分けられる。子音語幹動詞はいわゆる五段活用であり、変化しない語幹部分を子音までと捉える。なお学校文法でいう -a, -i, -u を伴った語幹は語基と呼ばれる。これらは子音の連続を避けるために緩衝として母音が挿入されたものである。母音語幹動詞はいわゆる上一段活用下一段活用上二段活用下二段活用であり、語幹が /i/ か /e/ で終わるものとして分析される。学校文法では動詞の終止形をそれぞれ別個の活用形と考えるが、-u という語尾があり、子音語幹動詞にはそのまま接続するが、母音語幹動詞に接続する場合は母音連続を避けるため r が挿入されたものと考えられる。なおサ行変格活用カ行変格活用は不規則動詞の一部に含まれ、語幹は s や k のみと考えられる。なお語尾のうちさらに語尾の接続を要求するものを学校文法では助動詞として品詞分類しているが、そのような考え方は取られず、動詞に新たな語幹ができると考える。例えば「書く」の本体は kak であり語幹は k であるが、これに使役を表す語尾 -(s)ase- を付けて kakase とすると語幹は e となり、母音語幹動詞となる。これに -(r)u をつけて文を終わることもできるが、さらに丁寧を表す -(i)mas- をつけて kakasemasu とすることができる。

形容詞

すべて語幹が存在する。形容詞の語幹は語幹用法として使われることがある。基本的には形容詞動詞と同様に語幹を漢字で書くが、語尾が「しい」で終わっている形容詞は「し」までが語幹だが、「しい」をひらがなでかく。

わかい  →若い
うつくしい→美しい

形容動詞

すべて語幹が存在する。語幹用法がある。

助動詞

国文法でいう助動詞には、語幹のあるものと、ないものがある。

  • 語幹があるもの
    られる(受身尊敬自発可能)、させる(使役・尊敬)、ない(打消)、そうだ(様態)、そうだ(伝聞)、たい(希望)、たがる(希望)、ます(丁寧)、らしい(推定)、ようだ(比況・例示・不確かな断定)、です(丁寧な断定)
  • 語幹がないもの
    れる(受身・尊敬・自発・可能)、せる(使役・尊敬)、ぬ(打消)、た(過去・完了・存続)、だ(断定)

ただし、普通は、助動詞は語幹と活用語尾を区別することはほとんどない。助動詞の活用表を見ても、語幹と活用語尾は一緒に書いてある。

関連項目