被虐待児症候群

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被虐待児症候群(ひぎゃくたいじしょうこうぐん、Battered Child Syndrome)は、児童虐待の際にその子どもの症状として頻繁に紹介されるもので、あまりに虐待が継続、日常化した場合、その子どもが抵抗する意欲を失うばかりか、虐待を当然のこととして甘んじて受けるようになってしまう状態のこと。被殴打児症候群(ひおうだじしょうこうぐん)とも称される。

この状態で救出され看護師などから介護、ケアを受けても、この行為に応えて、自ら手を差し出してそれを受け入れることもできなかったりする。アメリカの臨床場面では、それを「お祈りするカマキリ」という言い方をすることもある。手を組んで、それを差し出せないように自ら規制するため。ベテランの看護師が、1週間程度愛情をこめてケアすれば、その手は解けることが多いという。

batteredは「殴打された」という意味ではあるが、これには殴打するだけでなく、蹴ったり、叩いたり、タバコの火を押し付けたり、階段から投げ落としたりといったものも含む。心理学者のマーティン・セリグマンが、こうした現象を「学習性無力感」と名づけた、一種の条件づけでもある。

主な特徴

医師のヘンリー・ケンプHenry Kempe)が1962年に報告した内容は以下に記述する。

  • 被虐児はどの年齢でも生じ得るが、一般的に3歳以下であることが多い。
  • 被虐児の臨床的状態をもたらしたのは、たった一回のエピソードによる例もあるが、多くの場合子どもの健康状態は平均以下であり、皮膚の不潔さ、複数の軟部組織(筋など)の損傷、栄養不足など、ネグレクトの証拠を示す。
  • 臨床所見と親が語った状況との間に、しばしば矛盾が見られる。
  • 硬膜下血腫は非常にしばしばみられる。
  • 様々な回復段階にある多数の骨折が見られる。

関連項目

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